e-Gov(イーガブ)電子申請でできることとは? 機能やメリット・デメリットを徹底解説
現在、国の政策として企業におけるデジタル化が進められており、なかでも行政手続きの電子申請は大きな注目を集めています。
「e-Gov(イーガブ)」は、電子申請手続きに欠かせないサービスの一つです。人事労務の業務効率化のためにも、e-Govを活用したいと考えている方は多いのではないでしょうか。
本記事では、e-Govを使って電子申請できることやe-Govの主要機能、メリット・デメリットなどについて解説します。e-Govの活用方法やおすすめの企業についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
e-Gov電子申請でできること
「e-Gov(イーガブ)」は、デジタル庁が運営するポータルサイトで「電子政府の総合窓口」ともいいます。行政情報の総合的な検索・案内サービスが利用できるほか、行政機関への電子申請の窓口としての役割もあります。
e-Gov電子申請でできることを5つ取り上げて解説します。
- 健康保険・厚生年金保険関連の手続き
- 労働保険関連の手続き
- 雇用保険関連の手続き
- 労働基準法関連の手続き
- 最低賃金法関連の手続き
健康保険・厚生年金保険関連の手続き
e-Govで電子申請できる健康保険・厚生年金保険関連の手続きの例を紹介します。
- 被保険者報酬月額算定基礎届
- 被保険者報酬月額変更届
- 被保険者賞与支払届
労働保険関連の手続き
e-Govで電子申請できる労働保険関連の手続きの例を紹介します。
- 継続事業に取り組む事業主が提出する以下の申告書(※一括有期事業を含む)
- 年度更新に関する申告書(概算保険料申告書、確定保険料申告書、一般拠出金申告書)
- 増加概算保険料申告書
雇用保険関連の手続き
e-Govで電子申請できる雇用保険関連の手続きの例を紹介します。
- 被保険者資格取得届
- 被保険者資格喪失届
- 被保険者転勤届
- 高年齢雇用継続給付支給申請
- 育児休業給付支給申請
労働基準法関連の手続き
e-Govで電子申請できる労働基準法関連の手続きの例を紹介します。
- 時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)
- 就業規則(変更)届出
- 1年単位の変形労働時間制に関する協定届 など
最低賃金法関連の手続き
e-Govで電子申請できる最低賃金法関連の手続きの例を紹介します。
- 最低賃金の減額特例許可の申請 など
e-Gov電子申請の主な機能
それでは、e-Gov電子申請ではどのようなことができるのでしょうか。e-Gov電子申請の主な機能について紹介します。
- 電子申請可能な手続きの検索
- 申請・届け出
- 公文書のダウンロード
- 処理状況の確認
- メッセージ通知
電子申請可能な手続きの検索
電子申請が可能な手続きの検索を行うことができます。この機能はパソコンとスマートフォン、両方についており、e-Govサイトの手続検索ページから受け付け可能な手続きが検索できます。
「状況から探す」「手続名称から探す」「手続分野分類から探す」「所管行政機関から探す」の4種類の検索方法があります。
申請・届け出
各省庁が所管するさまざまな行政手続きについて、申請や届け出を行うことができます。申請や届け出はパソコンだけの機能のため、注意しましょう。
また、e-Gov電子申請にはユーザーごとの「マイページ」があります。過去に自分が申請した手続きは、マイページ上に一覧で表示され、現在の処理状況や提出先機関からのお知らせなどが確認できます。
公文書のダウンロード
e-Gov電子申請には、国の行政機関から発出された電子公文書を取得する機能があります。
「申請案件一覧」の「申請案件状況」画面から公文書をダウンロードできますが、こちらはパソコンだけの機能です。また、該当する公文書の詳細表示にも対応しています。
処理状況の確認
e-Gov電子申請では、自分が申請や届け出をした案件の処理状況を確認できます。パソコンとスマートフォンの両方にある機能で「申請案件状況」画面にてステータスや各府省からのメッセージなどの詳細を見ることができます。
メッセージ通知
申請・届け出を行った案件に関する通知や、手続きに関する案内というe-Govで受け取れるメッセージを確認する機能もあります。パソコンとスマートフォンの両方にあり、担当者にとって便利な機能といえるでしょう。
「申請案件に関する通知一覧」から確認できます。「既読状況」「種別」「申請者氏名」「手続名称」を利用した絞り込み検索にも対応しています。
参考:『e-Gov電子申請で使える主な機能』e-Gov電子申請
e-Govを使ってできる電子申請以外の機能
e-Govの機能は電子申請するだけではありません。e-Govを使ってできる電子申請以外の機能を2つ紹介します。
- キーワードによる法令検索
- 政策に対する意見投稿
キーワードによる法令検索
e-Govには、政府の統計情報・報道発表資料など、行政サービスの情報がすべて集約されています。そのため、電子申請の手続き方法や、企業が行うべき申請・届け出内容について調べたいときは、いつでも簡単に調べられるため、業務が効率化できるでしょう。
また、憲法や法律、政令に勅令、規則などのすべての法令がデータベース化されており、キーワードで検索して閲覧することもできます。
政策に対する意見投稿
e-Govでは「パブリックコメント制度」における意見・要望を提出できます。
パブリックコメント制度とは、行政や公共機関が新しい規則・政策などを定める際、国民に対して意見を求める制度で、平成11年から実施されています。e-Govを利用すれば、より簡単に政府へ意見を届けられるでしょう。
参考:『パブリック・コメント制度について』e-Govパブリック・コメント
e-Gov電子申請のメリット
e-Gov電子申請にはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを3つご紹介します。
- 行政機関に行かなくてよい
- 24時間365日手続きできる
- 申請書類が不要である
行政機関に行かなくてよい
e-Govによって自宅や職場からオンラインで手続きができ、行政機関の窓口に行かなくて済みます。わざわざ足を運んだり、混雑した窓口に並んだりする必要がありません。異なる省庁の手続きも行えるので、手続きのために複数の行政機関に出向いていた場合、業務負担を軽減できるでしょう。
書類を持ち運ぶ必要がないことから、盗難・紛失など情報漏えいのリスクが軽減することも大きなメリットです。
24時間365日手続きできる
e-Govを利用すれば、時間や場所を選ばず、手続きができます。電子申請受付は24時間365日対応可能なので、行政窓口のような「平日夕方まで」という縛りがなく、申請のためにスケジュールを調整する必要がありません。
また、テレワークや遠隔地の人も手続きができ、遠方にある支社の申請手続きも簡単に行えます。
申請書類が不要である
e-Gov電子申請によって、申請書類が不要になるのもメリットの一つです。
業務のペーパーレス化が実現し、紙代・印刷代などのコスト削減や業務効率改善、文書のデータ化などDXの推進に役立ちます。資料の物理的な管理が不要なため、セキュリティ強化やオフィスの省スペース化にもつながるでしょう。
e-Gov電子申請の課題
e-Gov電子申請は、メリットだけではなく課題も存在します。3つの課題を取り上げて解説するので、ぜひ把握しておきましょう。
- 入力ミスの確認ができない
- e-Govでできない手続きがある
- 申請書類のアップロードに手間がかかる
入力ミスの確認ができない
e-Govでは、直接画面に必要事項を入力し、必要書類をアップロードして電子申請を行います。
申請作業はパソコンへの手入力であるため、紙ではできるような不備の有無や内容の照合などの確認作業が行えず、入力ミスに気づきにくいという課題があります。
また、もし不備があった場合は提出後に返戻され、再度入力して申請し直さなければなりません。
e-Govでできない手続きがある
e-Govでできない手続きがあるのも課題の一つです。
たとえば、健康保険組合や企業年金基金は電子申請に対応していないため、これらに加入している事業所はe-Govの利用ができません。e-Govで申請できない場合は、マイナポータル経由で電子申請を行います。
使用ソフトによってはマイナポータル経由でも電子申請ができないケースがあります。特に健康保険組合の電子申請は、厚生労働省が公表する受付体制の状況を、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
参考:『健康保険組合における電子申請受付体制状況について』厚生労働省
申請書類のアップロードに手間がかかる
申請書類のアップロードに手間がかかる点も、e-Govの課題です。
e-Gov電子申請のアップロードでは、申請書類を一つずつアップロードする「通常申請」と、申請に必要なデータを一つに圧縮したファイルをアップロードする「一括申請」の2つがあります。
通常申請では、申請書類に1項目ずつ入力し、あわせて添付書類を一つずつアップロードするという手間がかかります。
また一括申請でも、必要なファイルを準備し、圧縮作業が必要です。PC操作に慣れていない場合、時間を要する可能性が高いでしょう。
e-Gov電子申請の利用手順
e-Gov電子申請を利用する手順は大きく分けて下記のような流れになります。
- 電子証明書を取得する
- アカウントを取得する
- ブラウザの環境設定を確認する
- アプリケーションをインストールする
1.電子証明書を取得する
e-Gov電子申請では、対象手続きに応じて電子証明書が必要となる場合があります。電子証明書とは、認証局が本人であることを電子的に証明するものです。書面の手続きにおける実印や印鑑証明書に相当し、書類の改ざん防止に使用します。
ただし、法人でも代表者がマイナンバーカードを取得していれば、電子証明書としてそのまま使用できます。カードがない場合は、ファイル形式で提供を受けられます。
電子証明書が必要な手続きは以下の通りです。
社会保険関係手続き | 健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 健康保険・厚生年金保険被保険者賞与支払届 など |
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雇用保険関係手続き | 雇用保険被保険者資格取得届 雇用保険高年齢雇用継続給付の申請 など |
労働保険関係手続き | 労働保険概算・増加概算・確定保険料申告書 など |
2.アカウントを取得する
e-Govのウェブサイトでログインに必要なe-Govアカウントを取得します。
e-Govアカウントは、仮登録・メール確認・本登録の3ステップで取得できます。アカウントを利用するときは、2要素認証または追加認証の設定をしましょう。
ただし、GビズID・Microsoftアカウントでログインを行う場合、仮登録の必要はありません。
3.ブラウザの環境設定を確認する
e-Gov電子申請の利用を始める前に、ブラウザの環境設定を確認します。
ブラウザのポップアップブロックを「有効」にしていると適切な画面表示ができません。あらかじめポップアップブロックの解除を行っておきましょう。ブラウザがInternet Explorer 11なら、インターネットオプションから「信頼済みサイト」へ設定を登録しておく必要があります。
4.アプリケーションをインストールする
最後に、e-Gov電子申請のウェブサイトからアプリをインストールします。
Windows版、Mac版のアプリケーションが用意されているため、自社に必要なアプリケーションを選んでインストールしましょう。完了後はアプリケーションを起動させ、マイページの画面に従って電子申請を進めていきます。
e-Gov電子申請の有効な活用方法
e-Gov電子申請を利用することで、さまざまな効果があります。業務管理に有効な2つの活用方法をご紹介します。
- マイページを使って申請の一元管理をする
- 上手に活用し業務の効率化を実行する
マイページを使って申請の一元管理をする
e-Gov電子申請には、ユーザーごとの専用マイページがあります。専用のマイページを使って申請を一元管理できます。申請済みの案件に関するステータスや通知、一時保存した案件の確認ができ、書類をコピーする必要がありません。
また、よく利用する手続きのサイトは、ブラウザにブックマークしておくことができます。
上手に活用し業務の効率化を実行する
e-Govによる電子申請を活用することで企業のデジタル化が進み、業務効率の向上につながるでしょう。たとえば、対象データを一括で届け出ることで作業工数が大幅に削減できます。申請漏れがないか、届け出状況の確認もできるため、業務効率が向上するでしょう。
e-Gov電子申請がおすすめの企業
e-Gov電子申請がおすすめなのは「支店・事業所の多い企業」や「入退社する人が多い企業」です。これらの企業が行う行政手続きはe-Gov電子申請によって大幅に簡略化されるため、業務効率の改善が見込めるでしょう。
なお2020年4月1日から、資本金などの額が1億円を超える法人や相互会社、投資法人、特定目的会社など、特定の法人において一部の手続きの電子申請が義務化されました。
まとめ
e-Gov電子申請は、手続きの申請や届出だけでなく、検索や公文書のダウンロード、処理状況・メッセージの確認などさまざまな機能があります。
オンライン上で申請できるため、行政機関に足を運んだり、時間を気にしたりする必要がありません。業務の効率化をはかるなら、e-Gov電子申請の導入を検討しましょう。
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