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雇用保険の傷病手当とは? 条件や期間、基本手当(失業給付)との関係

雇用保険の傷病手当とは? 条件や期間、基本手当(失業給付)との関係

雇用保険には、傷病手当という給付支援制度があります。傷病手当とは、労働者が病気やけがによって仕事を続けられなくなってしまった場合に給付金を支給する制度です。

傷病手当には雇用保険によるものと、健康保険による傷病手当金があり、どのような違いがあるのか整理できていない方もいるでしょう。

本記事では、雇用保険の傷病手当について、条件や受給期間支給金額を解説します。健康保険の傷病手当金との違いや基本手当である失業保険との関係もわかりやすくご紹介します。経営層や人事労務担当者だけでなく、雇用保険の被保険者(労働者)も参考にしてください。

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    雇用保険の傷病手当とは?

    雇用保険における傷病手当とは、被保険者であった人が失業後に病気やけがによって仕事に就けない場合に受給できる給付金です。傷病手当には、被保険者であった人が失業中で働けない期間の生活費を保障する目的があります。

    雇用保険で受けられる給付

    雇用保険では、労働者が失業や休業した場合に必要な給付支援(失業等給付)を行います。失業等給付は、大きく分けて以下の4種類です。

    概要
    求職者給付労働者が失業状態の際、生活安定と円滑な求職活動を行うための給付
    就職促進給付失業者が再就職するための援助や促進を目的とした給付
    教育訓練給付労働者の主体的な能力開発を支援し、
    雇用安定と再就職促進を目的とした給付
    雇用継続給付労働者の職業生活を継続するための援助や促進を目的とした給付

    傷病手当は、失業等給付における求職者給付のうち、一般被保険者に対する求職者給付です。

    求職者給付の具体的な給付内容は、以下の通りです。

    求職者給付の具体名称
    一般被保険者に対する求職者給付・基本手当
    ・技能習得手当
    ・寄宿手当
    ・傷病手当
    高年齢被保険者に対する求職者給付高年齢求職者給付金
    短期雇用特例被保険者に対する求職者給付特例一時金
    日雇労働被保険者に対する求職者給付日雇労働求職者給付金

    参照:『雇用保険事務手続きの手引き』厚生労働省(令和5年8月版)

    雇用保険の基本手当と傷病手当の違い

    雇用保険には、さまざまな失業等給付があり、その中に基本手当や傷病手当があります。

    雇用保険の基本手当は通称「失業保険」と呼ばれ、失業理由など一定の条件を満たせば受け取れる手当です。基本手当は、次の仕事に就くまでの生活費などに充てられます。

    雇用保険の傷病手当は、基本手当の要件を満たしたうえで、一定の要件を満たすと支給される手当です。傷病手当の要件には「継続して15日以上病気やけがで仕事に就けない」などがあります。

    雇用保険の傷病手当と健康保険の傷病手当金の違い

    雇用保険の傷病手当と似た言葉に、健康保険の「傷病手当金」があります。両者の違いは、手当を申請する際の雇用状態と要件です。

    また、健康保険の傷病手当金の特徴は、給与の一部にあたる金額を支給される点です。

    雇用状態主な要件
    雇用保険の傷病手当失業中病気やけがによって、
    継続して15日以上仕事に就けない場合
    健康保険の傷病手当金在職中および離職後療養のため労務に服することができず、
    継続した3日間の待期期間を満たすこと

    また、健康保険の傷病手当金の特徴の一つは、給与の一部にあたる金額を支給される点です。

    参照:『基本手当について』ハローワークインターネットサービス
    参照:『傷病手当金 | こんな時に健保 』全国健康保険協会

    雇用保険の傷病手当の受給条件

    雇用保険の傷病手当を受給できる具体的な要件を確認してみましょう。

    まず、雇用手当の傷病手当を受給するためには、基本手当の要件を満たす必要があります。基本手当の受給要件は以下の通りです。

    基本手当の受給要件
    ・管轄のハローワークに求職申し込みをしている
    ・就職する意思と能力があるにもかかわらず、仕事に就けていない
    ・仕事を辞める日の前2年間に雇用保険に加入していた期間が通算12か月以上ある

    参照:『よくあるご質問(雇用保険について)』ハローワークインターネット

    上記の要件を満たしたうえで、さらに傷病手当の受給要件を満たす必要があります。傷病手当の受給要件は以下の通りです。

    傷病手当の受給要件
    ・基本手当の受給要件を満たしている
    ・仕事を辞めたあとに、ハローワークに求職の申し込みをしている
    ・病気やけがによって、継続して15日以上仕事に就けない
    ・求職の申し込みをしたあとに発生した病気やけがであること

    参照:『基本手当について』ハローワークインターネット

    雇用保険の傷病手当の受給期間

    雇用保険の傷病手当とは? 条件や期間、基本手当(失業給付)との関係

    雇用保険の傷病手当の受給期間について解説します。

    基本手当の受給期間

    雇用保険における傷病手当の受給期間は、基本手当を受給している間に病気やけがで仕事に就けない期間です。厳密には「基本手当の所定給付日数」から「基本手当が支給された日数」を差し引いた日数が傷病手当の上限日数です。

    基本手当の所定給付日数とは支給期間のことで、離職日の翌日から原則として1年間以内です。所定給付日数は、離職理由や雇用保険の被保険者だった期間に応じて90日から最大360日まで変動します。

    また、病気やけがなどによって仕事に就けない期間が30日以上になる場合は、基本手当の受給期間を最大4年間とすることが可能です。基本手当と傷病手当は重複して受け取れません。どちらを受給するかは失業期間などによって異なります。

    失業期間に応じて支給される手当は以下の通りです。

    • 失業期間が15日未満の場合は基本手当を受給
    • 失業期間が15日以上30日未満の場合は傷病手当を受給
    • 失業期間が30日以上の場合は基本手当か傷病手当の受給を延長

    また基本手当は、以下の通り受け取れない期間があります。期間中は傷病手当も受け取れません。

    手当を受給できない期間
    待機期間受給資格決定日から7日間
    給付制限期間一般的な自己都合退職の場合、2~3か月間

    参照:『基本手当の所定給付日数』ハローワークインターネットサービス

    雇用保険の傷病手当の支給金額

    傷病手当の支給金額は、基本手当と同様です。基本手当の支給金額は、退職する前の6か月間における平均給与から、賃金日額を計算し、対応した給付率を乗じて計算します。

    計算式は以下の通りです。

    傷病手当の支給金額=(退職前の6か月間の給与合計÷180)×給付率

    給付率は、離職時の年齢によって異なります。

    60歳未満の場合は50〜80%、60歳以上は45〜80%であり、賃金日額が低いほど、給付率が高くなるという特徴があります。

    参照:『雇用保険の基本手当日額の変更 ~8月1日(火)から実施〜』厚生労働省

    基本手当日額の上限額

    雇用保険の基本手当日額について、以下の通り令和5年8月から上限額が変更されました。

    離職時の年齢賃金
    日額上限
    (変更前)
    賃金
    日額上限
    (変更後)
    基本手当
    日額上限
    (変更前)
    基本手当
    日額上限
    (変更後)
    29歳以下13,670円13,890円6,835円6,945円
    30~44歳15,190円15,430円7,595円7,715円
    45~59歳16,710円16,980円8,355円8,490円
    60~64歳15,950円16,210円7,177円7,294円

    参照:『雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和5年8月1日から~』厚生労働省

    雇用保険における傷病手当の申請方法

    雇用保険の傷病手当の申請は、従業員本人が行います。申請する際の手続き方法を紹介します。

    1. 傷病手当支給申請書に必要事項を記入
    2. 記入した傷病手当支給申請書をハローワークへ提出

    各ステップのポイントを解説します。

    1.傷病手当支給申請書に必要事項を記入

    傷病手当支給申請書を、申請者本人がハローワークの窓口もしくはホームページで入手して必要事項を記入します。

    傷病手当支給申請書に記入する項目は、以下の内容です。診療担当者の証明欄は、医師と相談のうえ、記入してもらいましょう。

    記入内容
    申請者の個人情報・氏名
    ・性別
    ・生年月日
    診療担当者の証明・傷病の名称や程度
    ・初診年月日
    ・傷病の経過
    ・傷病のために仕事に就けないと認められる期間
    ・診療機関のサインや名称、診療担当者名
    支給申請期間・同一の傷病により受けられる給付
    ・上記の期間
    ・内職もしくは手伝いをした日、または収入があった日と金額 など

    参照:『傷病手当支給申請書』厚生労働省

    2.記入した傷病手当支給申請書をハローワークへ提出

    傷病手当支給申請書に必要事項を記入したら、申請者本人が住所地を管轄するハローワークへ書類を提出します。窓口で直接提出する以外に、電子申請も可能であり、委任状があれば代理人による申請もできます。

    申請を行う際は「傷病手当支給申請書」のほかに「雇用保険受給資格者証」も必要であるため、事前に準備しておきましょう。

    雇用保険における傷病手当申請に関する注意点

    雇用保険の傷病手当申請では、以下の点に注意しましょう。

    • 申請期限がある
    • 在職中から引き続く病気やけがの場合は申請できない
    • 医師に記入してもらう欄は早めに依頼する

    傷病手当は、失業後の病気やけがが対象です。在職中から続く場合は申請できません。

    また傷病手当の申請は、病気やけがが治ったあとの最初の失業認定日までに、申請する必要があります。医師(診療担当者)が記載する欄もあるため、あらかじめ余裕を持って依頼しておきましょう。

    まとめ

    雇用保険では、傷病手当を支給しています。傷病手当では、労働者が失業後に病気やけがをしたことによって、継続して15日以上仕事に就けない場合に、給付金を給付します。

    傷病手当の受給要件をおさらいすると、以下の通りです。

    • 基本手当の受給要件を満たしている
    • 仕事を辞めたあとに、ハローワークに求職の申し込みをしている
    • 病気やけがによって、継続して15日以上仕事に就けない
    • 病気やけがは求職の申し込みをしたあとに発生する

    受給要件を満たしている場合は、傷病手当支給申請書に必要事項を記入のうえ、雇用保険受給資格者証とともにハローワークへ提出しましょう。