雇用保険とはどのような制度か|加入のメリットや申請方法を解説
雇用保険とは、従業員が休業や失業した場合でも安心して生活できるように、給付金や就職活動の支援などを行う制度です。企業は、どのようなケースで雇用保険に加入すべきかを理解し、適切な対応ができるように努めなければなりません。本記事では、雇用保険の制度の概要をご紹介するとともに、加入するメリットや申請方法についても解説します。
雇用保険とはどのような制度なのか
まず始めに、雇用保険に関する基本的な概要についてご説明します。
就労継続が難しい場合に給付を受けられる制度
雇用保険とは、従業員が何らかの理由で働けなくなった際に、次の仕事に就くまでに必要な所得保障や再就職支援などを受けられる社会保険の一種です。事業主は、従業員が安心して働ける環境を提供するため、この保険に加入することが求められます。たとえば、病気や失業によって就労が困難になった場合でも、従業員は安心して働くことができるのです。
雇用保険は「強制保険制度」になる
雇用保険は強制保険制度です。そのため、従業員や事業主の意向に関係なく、雇用する従業員が定められた条件を満たしていれば加入しなければなりません。所管のハローワークに届け出て、必要な手続きを行いましょう。
雇用保険の種類
雇用保険は、従業員が失業や休業を余儀なくされた場合に給付金を受け取れる社会保険です。失業時以外にも、出産や育児のために休業した場合などに適用される給付制度が整っています。雇用保険の給付制度について詳しくご紹介します。
雇用保険には「失業等給付」と呼ばれる4つの種類がある
雇用保険による給付の種類は、大きく分けて次の4つがあります。
- 求職者給付
- 就職促進給付
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
上記の給付制度は、それぞれの制度で設定されている条件を満たすことで受給できます。
求職者給付
求職者給付とは、定年退職や倒産、自己都合などの理由で離職した人に対して基本手当を支給し、再就職を促すよう支援する給付金制度です。
就職促進給付
就職促進給付とは、離職後に再就職した際に給付されるものです。求職者給付を受け取っている受給者がなるべく早い段階で再就職できるように促すことを目的としています。
教育訓練給付
教育訓練給付とは、従業員の能力向上やスキルアップ、キャリア形成の支援を目的とした給付金制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練を受講、修了することによって、受講料や入学料の一部を負担してくれます。
雇用継続給付
雇用継続給付とは、従業員が働き続けられるよう支援するための給付金制度です。雇用継続給付には、『高年齢雇用継続基本給付』『介護休業給付』の2つがあります。『育児休業給付』も含めて3種類とすることもあるようですが、厳密には2種類です。
雇用保険の目的
雇用保険の概要について理解できたところで、雇用保険の目的をご紹介します。
失業者の生活を安定させることが目的
雇用保険は、雇用に関するさまざまな支援を実施するための強制保険制度です。失業時や休職時に給付金を支給して、失業者の生活を安定させることを目的としています。さらに、雇用の機会を増やしたり、労働者の能力開発や就職支援をしたりする重要な役割も担っています。失業後や休業時に生活ができない状態にならないように、事業主は雇用保険に加入して、万が一の際に備えて対策する必要があるのです。
企業が雇用保険への加入が必要になるタイミング
企業の雇用保険への加入が必要になるタイミングについてご紹介します。
従業員を雇用したら雇用保険への加入手続きが必要
企業が従業員を1人でも雇用したら、雇用保険への加入手続きが必要となる可能性があります。雇用した従業員が必要条件を満たした場合には強制加入となるため、事前に条件を確認しておきましょう。
雇用保険の加入条件とは
雇用保険への加入条件は、大きく分けて次の2つです。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員を雇用する場合
- 1週間の所定労働時間が20時間以上
それぞれの加入条件に関する詳しい内容を説明します。
31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員を雇用する場合
雇用保険の加入条件の一つは、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員を雇用する場合です。次のようなケースでこの条件に該当します。
- 期間の定めがなく雇用される場合
- 雇用期間が31日以上である場合
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
- 雇用契約に更新規定はないが、同様の雇用契約により31日以上雇用された実績がある場合
参考:『雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!』厚生労働省
1週間の所定労働時間が20時間以上
31日以上引き続き雇用されることが見込まれるという条件を満たすと同時に、従業員の1週間の所定労働時間が20時間以上である場合も雇用保険への加入が必要です。そのため、一時的に週20時間以上働いた時期があったとしても、契約時の所定労働時間が20時間未満であるとこの要件は満たさないため注意しましょう。
パートやアルバイトも雇用保険に加入できるのか
続いて、雇用形態によって雇用保険への加入の可否が異なるかについて詳しく解説します。
パートやアルバイトなどの労働形態にかかわらず加入可能
雇用保険の加入条件を満たすことで、雇用形態や業種にかかわらず雇用保険に加入できます。つまり、正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトの労働者にも適用されるということです。
学生は雇用保険に加入できないケースがある
雇用形態や業種に関係なく雇用保険に加入できるとお伝えしましたが、高校や大学に在学している学生は加入できません。しかし、定時制や夜間学部の学生は加入可能であるため注意が必要です。
労働形態の変更によって雇用保険から外れることがある
従業員の労働形態が変更された場合、雇用保険の対象から外れてしまう場合があるので注意しましょう。
労働時間が変わることで雇用保険の加入条件を満たせなくなるケースもある
労働時間が変更されて一週間の所定労働時間が20時間未満となった場合など、雇用保険の加入条件を満たさなくなった場合は、雇用保険から外れる可能性があります。たとえば、正社員だった従業員がパートやアルバイトに雇用形態を変更したことによって、労働時間が減少するケースなどで想定されます。労働時間を変更する際は注意が必要です。
雇用保険に加入するメリット
雇用保険に加入することで企業側には保険料を納付する必要が生じるため、大きな負担になると感じる方も少なくないでしょう。しかし、雇用保険に加入すると、従業員だけでなく企業や事業者にとっても次のようなメリットがもたらされます。
- 雇用保険によって従業員が安心して働ける
- 従業員と信頼関係を築ける
それぞれのメリットについて詳しく説明します。
雇用保険によって従業員が安心して働ける
雇用保険は、従業員が雇用を失った際の生活保障を提供する制度です。これは、従業員が安心して働き続けるための重要なポイントです。企業が従業員の生活に配慮して雇用保険に加入することが、従業員の士気やモチベーションを向上させる要素といえます。その結果、企業全体の生産性の向上にも大きく貢献できるでしょう。
従業員と信頼関係を築ける
企業が雇用保険に加入すること、そして雇用保険の必要性やメリットを伝えることによって、従業員との信頼関係を構築できるはずです。雇用保険は、企業が従業員の福利厚生に投資していることの具体的な証拠となり、結果として従業員の満足度やロイヤルティを向上させられます。従業員が企業を信頼することが、生産性の向上はもちろん、離職率の低下やよりよい企業文化の形成へとつながるでしょう。
雇用保険の申請方法
雇用保険の申請手続きはハローワークを通じて行います。雇用保険を申請する際の基本的な流れをご紹介します。
はじめて従業員を雇用した場合
はじめて従業員を雇用した場合、ハローワークに『雇用保険適用事業所設置届』を提出しましょう。申請期限は、適用事務所設置日の翌日から10日以内と定められています。適用事務所の設置日とは、雇用保険加入対象者を雇い入れた日と同じです。そのあと、新たに従業員を雇用するたびに『雇用保険被保険者資格取得届』の提出が必要です。雇用契約した翌月の10日までにハローワークに提出してください。
雇用保険への加入手続きをしなかった場合のペナルティ
雇用した従業員が雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず加入手続きを怠った場合には、企業や事業主にペナルティが科せられます。
懲役6か月以下、もしくは罰金30万円が科せられる
加入条件を満たした状態で未加入や手続き漏れがあった場合は、過去にさかのぼって保険料と追徴金が徴収されます。さらに、雇用保険の届け出をしていなかったときや虚偽の申告をしていた場合は、雇用保険法第83条1項により最大で懲役6か月以下または罰金30万円が科されます。しかし、基本的には事前に指導と勧告が行われるため、それに従うことでペナルティは回避できるでしょう。
雇用保険に関する手続きもクラウドサービスの活用がおすすめ
雇用保険は、従業員が何らかの理由で働けなくなったときに失業給付を支給する制度です。従業員や事業主の意向にかかわらず、加入しなければなりません。加入条件を満たせば雇用形態に関係なく加入できますが、加入手続きを怠った場合には罰金などのペナルティが科される可能性があるため、加入条件や必要な手続きの流れについて理解しておきましょう。
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