雇用保険被保険者証の概要について|必要な場面や手続き方法について解説
一定条件を満たす企業や従業員は、雇用保険の加入手続きを行う必要があります。そして、手続きを終えると交付される書類が、雇用保険被保険者証です。事業主・従業員それぞれに、雇用保険被保険者証が必要になる場面はさまざまあります。申請が遅れると手続きが煩雑になるため、やり方や期限を確認し、スムーズに発行できるように備えておくと安心です。
そこで本記事では、雇用保険被保険者証の手続き方法について解説します。必要なタイミングや再発行手続きについても紹介するので、ぜひお役立てください。
雇用保険被保険者証の概要について
まずは、雇用保険被保険者証の概要や記載内容について解説します。実物を見たことがない方や、交付手続きを初めて担当する方はぜひ参考にしてみてください。
雇用保険被保険者証は雇用保険の加入時に発行される証明書
雇用保険被保険者証は、雇用保険の加入時に発行される書類です。
記載されている内容
記載内容は、以下の通りです。
- 被保険者番号
- 被保険者(従業員)氏名
- 被保険者(従業員)の生年月日
このように、雇用保険被保険者証には個人を特定できる重要情報が記載されているため、取り扱いには十分注意しましょう。資格取得日や事業所名は通知書に記載されています。
雇用保険被保険者証が必要になる場面
雇用保険被保険者証は、雇用保険の加入手続きの際に自動的に交付されます。しかし、発行後一度も使用しないまま、保管するだけになっていることも多いものです。
それでは、一体どのような場面で必要になるのでしょうか。
従業員を新規で雇用するとき
一定条件を満たす従業員を雇用した場合、企業は雇用保険に加入させる義務があります。
そして、手続きにより発行された「雇用保険に加入していることを証明する書類(=雇用保険被保険者証)」は、従業員に確実に渡さなければなりません。
新しく雇用する従業員が雇用保険の加入条件を満たしている場合は、必要書類をそろえてハローワークで手続きを行いましょう。
転職者を雇用するとき
他社からの転職者は、以前の職場で雇用保険に加入していたケースも多いでしょう。
その場合は、前職の職場で渡された雇用保険被保険者証を提出してもらったうえで、ハローワークで手続きを行う必要があります。なぜなら、雇用保険の被保険者番号は、初回加入時に発行されたものを使用し続けるためです。
従業員から雇用保険被保険者証を求められることもある
従業員の求めに応じて速やかに対応できるよう、従業員が雇用保険被保険証を必要とするケースを把握しておきましょう。
従業員が退職するとき
雇用保険に加入していたことのある従業員は、次に就職する企業に自分の被保険者番号を伝える必要があります。そのため、転職する従業員は、転職先の会社から雇用保険被保険者証を求められることが多いでしょう。
教育訓練給付の支給申請をするとき
雇用保険被保険者証は、教育訓練給付を申請する際にも必要です。
教育訓練給付とは、働く意欲のある人々のキャリア形成や能力開発をあと押しする制度。厚生労働大臣の指定講座を受講すると、修了時に費用の20~70%の金額が支給されます。
教育訓練給付は雇用保険の制度なので、受給申請は従業員自身が行います。手続きにはいくつかの書類が必要となるため、企業側も制度の概要を把握しておくと安心です。
雇用保険被保険者証を発行するタイミング
続いて、雇用保険被保険者証を発行する時期について解説します。
従業員が被保険者となった翌月の10日までに手続きをする
「雇用保険者被保険者証の交付手続き」は「雇用保険への加入手続き」とイコールです。
そして、雇用保険の加入手続きは、従業員を雇用した日の翌月10日までに行うよう定められています。たとえば、入社日が10月22日なら、翌月11月10日までに手続きを行わなければなりません。
手続きはハローワークの窓口のほか、オンラインや郵送でも可能です。ただし、オンラインや郵送の場合は、申請から発行までに時間がかかる点に注意しましょう。
雇用保険被保険者証に有効期限はあるのか
転職者を雇い入れる際は、前職で発行された雇用保険被保険者証を提出してもらう必要があります。では、前職に勤めていたのが数年前である場合、書類の有効期限を気にする必要はないのでしょうか。
雇用保険の資格を喪失してから7年が目安
原則、雇用保険被保険者証は雇用保険の資格喪失日、つまり前回の離職から7年間有効とされます。離職後7年が経過すると、ハローワークから被保険者番号の記録が消えてしまいます。
そのため、離職後に起業した場合や妊娠・出産などで離職していた場合など、雇用保険に非加入の状態が7年以上続いている人を雇用する際は、新規の加入手続きを実施しましょう。
雇用保険被保険者証を再発行するには
雇用保険被保険者証は、所定の手続きを行うことで再発行できます。従業員から「雇用保険被保険者証を紛失した」などの相談を受けた場合は、必要な手続きを案内してあげると親切でしょう。
ハローワークで『雇用保険被保険者証再交付申請書』を提出する
雇用保険被保険者証を紛失してしまった場合は、ハローワークに『雇用保険被保険者証再交付申請書』を提出することで再交付されます。
手続きは基本的に被保険者本人が行いますが、企業が行うことも可能です。雇用保険被保険者証には、多くの個人情報が記載されているため、取り扱いには十分注意しましょう。
従業員を初めて雇い入れる場合の雇用保険の手続き
以下の条件を満たす従業員を雇い入れる場合、企業は雇用保険に加入する義務があります。
- 31日以上働く見込みがある
- 所定労働時間が1週間に20時間以上
- 学生ではない(例外あり)
初めて従業員を雇用する際は、以下の手続きを行いましょう。
ハローワークに『雇用保険適用事業所設置届』『雇用保険被保険者資格取得届』を提出する
雇用保険の加入条件を満たす従業員をはじめて雇い入れる場合は、下記2点の書類をハローワークへ提出します。
- 雇用保険適用事業所設置届
- 雇用保険被保険者資格取得届
これらの書類は、どちらもハローワークの公式ホームページから入手できます。事前に記載方法などを確認しておき、スムーズに手続きができるよう備えましょう。
新たに従業員を雇い入れる場合の雇用保険の手続き
高校や大学を卒業したばかりの新卒者など、新たに従業員を雇い入れる場合は、以下の手続きをとります。
ハローワークに『雇用保険被保険者資格取得届』を提出する
新たに従業員を雇い入れる場合は、ハローワークに『雇用保険被保険者資格取得届』を提出しましょう。申請が受理されると、雇用保険に加入した証明として雇用保険被保険者証が交付されます。発行されたあとは、従業員本人に渡すのが基本です。
なお、雇用保険被保険者証は従業員本人による保管が原則ですが、実態としては退職するまで企業が保管しておくケースもあります。
従業員が離職した際の雇用保険の手続き
雇用保険に加入していた従業員が、会社を辞める際は、次の手続きが必要です。
『雇用保険被保険者資格喪失届』と『離職証明書』を提出する
雇用保険に加入していた従業員が離職する際は、以下2点の書類をハローワークへ提出します。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 離職証明書
離職証明書とは、その従業員が間違いなく離職したことを証明する書類です。企業との雇用関係が失われた事実を証明することで、失業手当の給付申請に必要な『離職票』を発行できます。
なお、事業主と離職者の離職理由が食い違っていると、ハローワークが事実関係を調査することになるため注意が必要です。
そのほかのケースにおける雇用保険の手続き
ここまでご紹介した例以外にも、雇用保険の手続きが必要なケースはいくつかあります。雇用保険の手続きが遅れると必要書類が増え、担当者の負担が増してしまいます。ペナルティを科されないためにも、手続きが必要なケースを把握しておきましょう。
事業所の名称や所在地が変更になった場合にも手続きが必要
事業所の名称や所在地が変更になった場合は、変更があった日の翌日から10日以内に管轄のハローワークや労働基準監督署で手続きを行う必要があります。
なお、提出が必要な書類は以下の2つです。
- 労働保険名称、所在地等変更届
- 雇用保険事業主事業所各種変更届
そのほか、親会社から子会社へ転勤になる場合など、同じ企業内の事業所間で従業員を転勤させる際にもハローワークで手続きをしなければなりません。
雇用保険の加入手続きは速やかに行い、雇用保険被保険者証を交付しましょう
雇用保険被保険者証は、当該従業員が雇用保険に加入していることを間違いなく証明するための書類です。従業員の氏名や雇用保険被保険者番号などの重要情報が記されており、主に転職者を受け入れる際に使用します。
また、従業員が退職する際や、教育訓練給付を受給する際にも雇用保険被保険者証が必要です。スムーズな手続きを実現するために、手続き方法や期限をあらかじめ確認しておきましょう。
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