雇用保険とは何かわかりやすく解説! よくある疑問にお答えします
失業した際や育児、介護などさまざまな理由で離職や休職をした際に、私たちの生活を支えてくれるのが雇用保険です。
本記事では、雇用保険がどのような保険なのかや、社会保険と労災保険との違い、雇用保険に加入する際の手続きの手順についてわかりやすく解説します。
雇用保険とは? わかりやすく解説
雇用保険に関する理解を深めるために、雇用保険の概要についてご紹介します。
雇用保険とは国が行う社会保険制度の一つ
雇用保険とは、働いている人々の生活と雇用の安定を目的とする社会保険制度の一つです。
具体的には、保険加入者が失業や一時的な休職をする場合をはじめ、育児や介護を理由に休職をせざるを得ない場合など、収入が減少する人を対象に給付金が支給されます。そのほかにも、離職後に再就職した人に対する就職促進給付やキャリア形成のための教育訓練給付なども雇用保険の対象です。
雇用保険は任意加入ではなく、強制加入の保険です。加入条件を満たす従業員を1人でも雇用している場合は、雇用保険に加入しなくてはなりません。ただし、なかには事業主の意思で加入するかどうかを決定できる「暫定任意適用事業」も存在します。
土地の耕作若しくは開墾又は植物の栽植、栽培、採取若しくは伐採の事業その他農林の事業(いわゆる農業、林業と称せられるすべての事業)
動物の飼育又は水産動植物の採捕若しくは養殖の事業その他畜産、養蚕又は水産の事業
引用:『労働保険関係の成立と対象者』厚生労働省 群馬労働局
雇用保険による給付の種類
雇用保険による給付は、次の4つに分類されます。
- 求職者給付
- 就職促進給付
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
求職者給付
求職者給付とは、被保険者が失業した際に支給される給付です。失業の原因が自己都合である場合でも、一定の条件を満たしていれば給付金を受け取れます。求職活動を行う期間に、生計を支えるための経済的な支援をすることを目的としています。
就職促進給付
就職促進給付は、失業者が新しい就職先を見つけた際に支給される給付です。失業者の速やかな再就職を促進することを目的としています。
教育訓練給付
教育訓練給付は、失業者が新たな技能や知識を身につけるための訓練を受ける際に支給される給付です。新たな雇用機会を増やすこと、そしてよりよい雇用条件を得るためにキャリア形成をすることを目的としています。
雇用継続給付
雇用継続給付は、雇用している従業員が働き続けられるよう援助、促進することを目的とした給付です。高年齢雇用継続給付や介護休業給付があり、それぞれ働けない事由がある場合に所得を保障します。
このように、雇用保険は求職活動を行っている人や新たな仕事に就くための訓練を受けている人など、労働者のさまざまな状況に対応しているのです。
雇用保険と社会保険・労災保険の違いをわかりやすく解説
雇用保険と似たような制度に「社会保険」と「労災保険」があります。これらの制度はとても似ていて混同されがちですが、それぞれに異なる特徴や役割があります。
それぞれの制度の基本的な定義と目的の違いを明確にしておきましょう。
広義では社会保険に含まれる
社会保険とよく混同される用語として、社会保険や労災保険があります。これら3つの保険はいずれも私たちの生活を保障する保険であり、広義ではこれらを総称して「社会保険」と呼ぶ場合があります。
しかし、雇用保険と社会保険、労災保険はそれぞれ異なる目的と特性を持っています。雇用保険は労働者の生活と雇用の安定を目的とした制度ですが、社会保険と労災保険には次のような目的があります。
社会保険と労災保険の目的や雇用保険との違いについて、詳しくご紹介します。
雇用保険と社会保険の違い
狭義の社会保険には健康保険や厚生年金保険、介護保険などが含まれており、年金や介護、医療など人々の生活を生涯にわたって支える社会保障制度のことを指します。厚生労働省が定める社会保険の目的は、次のとおりです。
国民が゙病気、けが、出産、死亡、老齢、障害、失業など生活の困難をもたらすいろいろな事故(保険事故)に遭遇した場合に一定の給付を行い、その生活の安定をはかることを目的とした強制加入の保険制度
引用:『社会保障制度とは』厚生労働省
このように、社会保険は生活におけるさまざまなリスクに対処し、国民の生活の安定をはかることを目的としています。この観点から雇用保険も社会保険の一環として考えることもできますが、雇用保険は、特に「雇用」という観点から労働者を保護するのが特徴です。
雇用保険と労災保険の違い
労災保険は、業務上または通勤における負傷や疾病などに適用され、労働者の社会復帰や遺族の援護をはかります。労災保険の目的は次のとおりです。
労災保険の目的は、労働者の業務災害及び通勤災害に対して迅速かつ公正 な保護をするために保険給付を行い、あわせて被災労働者の社会復帰の促進、 被災労働者及びその遺族の援護、適正な労働条件の確保などをはかることにより、 労働者の福祉の増進に寄与しようとするものである。
引用:『労働者災害補償保険制度の概要』警察庁
労災保険は、労働者が業務中や通勤中に負傷、疾病を患ったり死亡したりした際に、医療費の補償や給付金の提供を行い、生活を支えることを目的としています。
このように、労災保険は労働者の業務災害に対する保護を目的とした制度であり、雇用保険とは異なった目的を持つことがわかるでしょう。
また、雇用保険と労災保険はあわせて「労働保険」とも呼ばれています。なお、広義の社会保険は、狭義の社会保険と労働保険をあわせたものです。
企業に必要な雇用保険の手続きをわかりやすく解説
雇用保険を適用するためには、所定の手続きが必要です。新たに雇用保険に加入する際の手続きの流れをわかりやすく解説します。
従業員を雇用する際の手続き
企業が新たに従業員を雇用する際は、管轄のハローワークに必要書類を提出しましょう。
具体的には、従業員を1人採用するごとに『雇用保険被保険者資格取得届』を提出する必要があります。初めて従業員を雇用する場合は『雇用保険適用事業所設置届』も一緒に提出してください。
必要書類の提出手続きを終えると、管轄のハローワークから『雇用保険被保険者証』および『雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)』が発行されるので、従業員に交付すれば手続き完了です。
雇用保険の資格喪失の手続き
従業員が離職する場合やなんらかの理由で雇用保険の資格を喪失する場合も同様に、管轄のハローワークに『雇用保険被保険者資格喪失届』を提出する必要があります。資格喪失の主な理由は、従業員の退職や死亡、雇用形態の変更などがあります。
雇用保険の加入条件は所定労働時間が週20時間以上であることから、労働時間が20時間未満になると資格を喪失します。従業員の雇用形態が正社員からパートに変更になる場合や、勤務日数を減らすなどして契約当初よりも労働時間が短縮される場合は注意しましょう。
企業が雇用保険に加入するメリット
雇用保険への加入は、従業員だけでなく企業にとっても次のようなメリットをもたらします。
雇用保険の助成金や補助金の対象
雇用保険に加入する企業は、条件によって助成金や補助金を受け取れるのが大きなメリットです。助成金や補助金を活用することで、企業の雇用創出や雇用維持に役立つでしょう。
そこで雇用保険で受け取れる助成金や補助金について詳しくご紹介します。ご紹介する内容は2023年4月時点の情報であるため、最新の情報については官公庁のホームページなどを確認してください。
雇用調整助成金
雇用調整助成金とは、経済上の理由から事業縮小を余儀なくされた事業主に対して、雇用維持をはかるための休業や教育訓練、出向に必要な費用を助成する制度です。
新型コロナウイルス感染症の影響によって事業縮小を余儀なくされた場合も、雇用調整助成金の対象です。事業主が従業員に休業手当などを支払う場合、その一部が助成されます。
業務改善助成金
業務改善助成金は、中小企業の生産性向上を支援するための助成金です。事業場内最低賃金を30円以上引き上げた中小企業・小規模事業者が生産性向上に向けた取り組みを行う場合に、その費用の一部を助成します。
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金とは、より働きやすく、魅力的な職場づくりのために労働環境の向上をはかる事業主や事業協同組合などに対する助成金制度です。労働者が魅力を感じる雇用を創出することによる人材の確保・定着を目的としています。
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
働き方改革推進支援助成金(時間外労働上限設定コース)とは、時間外労働の削減をはじめ、年次有給休暇や特別休暇の促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主を支援するための助成金制度です。
なお、経済的な理由から機械の更新が滞っている企業を支援する「既存不適合機械等更新支援補助金」は、2022年度以降募集を終了しています。
雇用保険の加入によって社会的に信頼されやすくなる
企業が従業員を雇用保険に加入させることで、社会的な信頼を得られ、働きやすい職場と認識されます。雇用保険の加入は企業の信頼性を示す指標でもあるため、従業員の採用活動がスムーズに進むだけでなく既存の従業員の定着率アップにも貢献し、人材確保にも役立つでしょう。
企業が雇用保険に加入しないデメリット
雇用保険の加入義務を怠った場合、厳しい罰則が科されます。
雇用保険の未加入は雇用保険法第7条違反
雇用保険の加入義務を怠った場合、雇用保険法7条における違反行為に該当します。届け出を出していないケースはもちろんのこと、被保険者がいないといった虚偽の届け出をした場合も違反とみなされるため注意が必要です。
雇用保険に未加入だと罰則も
加入対象の従業員がいるのにもかかわらず加入させないと法律違反とみなされ、雇用保険法83条により懲役6か月以下、もしくは30万円以下の罰金が科される危険性があります。
さらに、雇用保険料の追徴金や延滞金が請求されることもあります。雇用保険加入条件に該当する従業員に対しては、確実に加入の手続きを行いましょう。
雇用保険の手続きはクラウドサービスの活用がおすすめ
雇用保険とは、失業や育児・介護などによる休業で収入が減った際に、労働者の生活を支えるために設けられた強制保険制度です。
雇用保険への加入には、法的義務が課されています。しかし、従業員を雇用保険に加入させることによって、社会的信頼や人材確保、さまざまな助成金・補助金の対象となるなど、企業にとっても多くのメリットがあります。
未加入の場合には厳しい罰則が科される可能性もあるため、注意が必要です。企業の持続的な発展を支えるためにも、雇用保険の基本的な概要を理解するとともに適切な対応をしていきましょう。
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