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雇用保険は前職で抜けていないと加入できない|加入状況を確認する方法や注意事項を解説

雇用保険の加入手続きで多いトラブルが、「前職で雇用保険に加入しているため、手続きを進められない」というもの。前職で雇用保険に加入中になっている場合は、新たに加入手続きを進めることはできません。

本記事では、前職の企業が手続きを済ませていないケースも含めて、雇用保険に加入できる条件・できない条件を詳しく解説します。企業で雇用保険の手続きを担当している方は、参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

雇用保険は前職で抜けていないと加入できない|加入状況を確認する方法や注意事項を解説
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    雇用保険は従業員を守る制度

    雇用保険とは、「雇用の安定」と「就労の促進」を目的とした公的保障制度です。従業員が失業した場合や休業を余儀なくされた場合などに、一定額の給付金が受給できます。また、失業・在職中のスキルアップや職業訓練などの費用を給付する制度も設けられています。

    雇用保険への加入は、雇用保険法第7条に定められた企業の義務です。企業は、一定の加入条件を満たしたすべての従業員を雇用保険に加入させる必要があります。

    参照:『雇用保険制度』厚生労働省

    企業側には罰則がある

    雇用保険への加入は、従業員を雇用する企業が責任をもって行うものです。従業員が加入していなくても罰則はありませんが、企業が加入手続きを怠った場合は懲役6か月以下または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。加入手続きを怠った場合の罰則については、雇用保険法第83条1項に記載されています。

    参照:『雇用保険法』e-Gov法令検索

    なお、実際にはただちに罰則が科せられるケースはあまり見られません。しかし、労働局による調査が行われたり、指導・勧告がなされたりする可能性は十分あります。企業のイメージ低下にもつながりかねないため、手続きは忘れずに行いましょう。

    雇用保険の加入条件

    従業員が雇用保険に加入するには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

    • 勤務開始から最低31日以上働く見込みがあること
    • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    • 学生ではないこと(例外あり)

    労働日数については、「31日以上働かないことが明白である場合」以外のすべてのケースが当てはまります。雇用契約に「31日未満で雇い止めすること」といった記載内容がなければ、基本的にはすべての従業員が該当すると考えてよいでしょう。労働時間については、契約上の所定労働時間で算定します。そのため、実際に20時間以上働いた週があっても、契約上の所定労働時間が週20時間未満の場合は該当しません。

    また、学生は基本的に雇用保険の対象外ですが、大学の夜間学部や定時制高校に通っている生徒など、一部例外が設けられています。加入条件の詳細は、厚生労働省の資料をご覧ください。

    参照:『第4章 被保険者について』厚生労働省

    雇用保険は前職で抜けていないと加入できない

    従業員が前職で雇用保険に加入していた場合は、入社時の手続きに注意しましょう。自社で新たに雇用保険に加入するためには、前職で雇用保険を抜ける手続きを済ませていることが必要です。雇用保険に加入できない条件について詳しく解説します。

    雇用保険の加入条件

    雇用保険の適用外となる条件は、雇用保険法第6条に定められています。主な条件の中から3つご紹介します。

    1週間の所定労働時間が20時間未満

    たとえば、「1日4時間×週4日勤務」のパート従業員など、1週間の所定労働時間が20時間未満の場合は雇用保険に加入できません。また、あくまで契約上の所定労働時間で判断されるため、一時的に労働時間が週20時間を超えたといった場合は対象外です。

    31日以上の雇用見込みがない

    正社員は無期契約が前提なので、基本的には条件を満たせるでしょう。一方、短期アルバイトの従業員は、雇用期間の定めによっては加入条件を満たせない可能性があります。

    昼間学生である

    昼間の学校に通う学生は、原則として雇用保険に加入できません。なお、例外として、卒業前に内定企業で勤務を開始し卒業後も働き続けることが確定している場合などは、雇用保険の加入条件を満たします。

    雇用保険の加入手続き

    雇用保険制度では、労働者1名につき1つの番号が割り当てられます。この番号は、給付金の受給要件である『雇用保険被保険者期間』や、給付日数を算定する際の期間を確認するために用いられるものです。転職先や再就職先の企業でも同じ番号を使用し続けることで、雇用保険にまつわる個人情報を一元管理できます。

    トータルの被保険者期間を算定するために便利なシステムですが、転職者を雇用する際の手続きには注意が必要です。たとえば、番号に紐づいたデータが「A社で雇用保険に加入中」である場合、新たにB社で雇用保険に加入することはできません。転職先のB社で手続きするためには、まず前職のA社で雇用保険から抜ける必要があります。

    雇用保険への加入ができないケース

    2つの企業に同時に所属している、いわゆる「オーバーラップ」の状態でも、新たに雇用保険に加入することはできません。たとえば、有給消化期間に次の会社に就職した場合は、データ上はまだ前職で雇用保険に加入しています。また、パラレルワーカーの場合、先に就職した会社で雇用保険に加入しています。いずれも、新たに入社する企業で雇用保険に加入するためには、現在加入している企業で保険資格を取り消しましょう。

    雇用保険未加入で起こる従業員の損失

    企業が雇用保険の加入手続きを適正に行わなかった場合、従業員にさまざまな損失が生じるおそれがあります。具体的にどのような損失が生じ得るのか、一つひとつ解説していきましょう。

    失業手当を受けられない

    失業中に受給できる『失業手当』は、雇用保険の制度の一つです。雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず、企業が手続きを怠った場合は、退職者が本来受け取れるはずの手当を受給できなくなってしまいます。失業手当は退職後の生活設計に大きく影響するため、企業の過失によって元従業員の生活が困窮するケースもあるでしょう。場合によっては元従業員から損害賠償を求められるおそれもあるため、十分注意が必要です。

    介護休業給付が受けられない

    雇用保険には、『介護休業給付』という給付金もあります。介護休業給付とは、家族の介護のために休職せざるを得ない人のための保障制度です。介護が必要な家族や従業員自身が一定条件に該当する場合、休業開始時賃金月額の最大67%が支給されます。

    しかし、雇用保険に未加入の状態では、当然ながら介護休業給付を受け取ることができません。「困窮を避けるために介護休業を取得できない」「その結果、家族が適切なケアを受けられない」といった事態にもなりかねないため、企業の責任は重いといえるでしょう。

    育児休業給付が受けられない

    『育児休業給付』とは、1歳未満の子どもを育てるために休職する従業員が、給与の最大67%を受給できる制度です。こちらも雇用保険の制度の一つなので、未加入の場合は給付金を受け取ることができません。

    育休中の給与は支払われないケースも多いため、育児休業給付は産後の従業員にとって大切な収入源です。雇用保険の加入は企業に課せられた義務なので、場合によっては企業が給付金を負担しなければならなくなるおそれもあります。

    就職促進の給付が受けられない

    雇用保険は就労支援を目的とした制度でもあり、次のようなさまざまな給付金を利用できます。

    • 再就職手当
    • 就業促進定着手当
    • 就業手当
    • 常用就職支度手当

    たとえば、再就職手当とは、早期に再就職するほどより多くの給付金を受給できる制度です。また、再就職手当を受け取って転職した人は、転職先の給与が前職より低い場合、就業促進定着手当を受け取ることができます。雇用保険未加入の場合は、上記のような就職促進にかかわる給付も受け取れません。

    雇用保険の加入を確認する方法

    雇用保険の加入状況は、以下の3つの方法で確認できます。

    自社のシステムや従業員名簿で確認

    雇用保険の加入状況は、自社の給与管理システムや従業員名簿で確認しましょう。今現在は雇用保険の加入条件を満たしていなくても、企業や従業員の都合により働き方が変われば、新たに加入条件を満たす可能性も考えられます。雇用保険の手続きの担当者は、全従業員の毎月の勤務日数や労働時間などを確認し、雇用保険の加入条件を満たしているかどうかチェックすることが大切です。

    給与明細で確認

    雇用保険の加入状況は、各従業員の給与明細でも確認できます。雇用保険の加入手続きが済んでいる従業員は、給与明細に雇用保険の徴収額が記載されているためです。従業員の加入状況を個別に確認する際は、給与明細の控除項目に『雇用保険』の記載があるかチェックしてみましょう。何か疑念がある場合は、経理担当者にヒアリングを行うことも大切です。

    雇用保険被保険者証で確認

    雇用保険に加入した従業員には、ハローワークから『雇用保険被保険者証』と『雇用保険被保険者資格取得等確認通知書』が交付されます。これらの書類が従業員宛に交付されている場合は、雇用保険に加入済みと判断してよいでしょう。なお、雇用保険被保険者証は従業員自身が保管する決まりになっていますが、実際には退職するまで企業が保管するケースもあります。

    雇用保険未加入時の対応

    万が一、加入条件を満たしている従業員が未加入だった場合、企業側は責任を持って対応する必要があります。具体的には、以下のような対応を実施しましょう。

    企業が責任をもって加入手続きを行う

    雇用保険未加入は企業の過失であるため、早急に加入手続きを済ませる必要があります。

    未加入の状態を放置していると労働基準監督署から指導を受けたり、最悪の場合は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられたりする可能性もあります。未加入であることが発覚した時点で、速やかに手続きを進めましょう。

    遡って雇用保険に加入

    雇用保険の保険料は、2年まで遡って納付することが可能です。未加入の状態を長らく放置してしまっていた場合も、速やかに対応することで従業員の損失を軽減できるでしょう。たとえば、失業手当の受給条件には、雇用保険の加入期間が関係しています。さかのぼって雇用保険に加入することで、加入期間が増えます。従業員は必要な手当を受給できる可能性が高くなるでしょう。また、企業としての責任を考えれば、未加入期間の保険料は企業側が全額負担するとともに、該当従業員へ心から謝罪することも大切です。

    雇用保険に関する面接時の注意事項

    新たに従業員を採用する際は、雇用保険について以下の点に注意しましょう。

    前職の退職日の確認

    転職者を採用する際は、前職の退職日を確認することが大切です。自社で雇用保険に加入するためには、前職で雇用保険の資格喪失手続きを行っている必要があります。また、前職の籍が残っている場合も雇用保険の手続きを進められないため、前職を完全に退職しているのか、有給消化期間も含めて確認しておきましょう。前職の退職日を把握すれば、加入申請のやり直しなどの二度手間を防げます。

    正確に情報提供をする

    求職者自身が前職での在籍状況や、雇用保険の加入状態をあまり把握していないケースは珍しくありません。求職者に悪気がなくても、不確実な情報を提供される可能性があります。

    何よりも求職者自身が不利益を被らないために、企業から正確な情報を提供するよう働きかけることが大切です。雇用保険に限らず、すべての保険制度に関する手続きや税務に共通していえることなので、正確な情報提供が重要であることを企業側も意識しておきましょう。

    雇用保険の手続きを進める前に、まずは前職の加入状況を確認

    雇用保険に加入するためには、前職で資格喪失手続きを済ませている必要があります。また、有給消化期間により2つの企業に同時に所属している「オーバーラップ」の状態でも、雇用保険に加入することはできません。新たな従業員、特に転職者を雇用する際は、前職での雇用保険の加入状況を事前に確認しておくと安心です。

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