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雇用保険の加入手続きは遡ってできるのか|未加入のケースや対処法も解説

労働者に雇用保険の未加入期間がある場合であっても、遡って加入できるため、発覚した時点で速やかに手続きを行わなければなりません。

雇用保険に未加入の場合、失業手当や育児・介護休業給付が受けられないなど、労働者にとってさまざまな不利益があります。

企業は労働者の雇用保険について、未加入期間がある場合は遡って加入させ、新たに従業員を雇用する際は加入手続きの漏れがないよう徹底する必要があります。

本記事では、雇用保険の手続き漏れなどによって、遡って加入する場合の対応を解説します。企業の担当者はぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

雇用保険の加入手続きは遡ってできるのか|未加入のケースや対処法も解説
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    雇用保険が未加入になるケースと対処法

    雇用保険が未加入になるケースには、どのような状況が考えられるでしょうか。具体的に起こり得るケースを紹介します。

    • 企業が労働保険に未加入の場合
    • 企業が雇用保険のみ未加入の場合
    • 加入要件を満たす従業員の手続きをしていない場合
    • 前職で加入したままの状態

    企業が労働保険に未加入の場合

    雇用保険が未加入になるケースの1つめは、企業そのものが労働保険に加入していない場合です。

    労働保険とは労災保険・雇用保険の総称であり、ともに未加入であるときは、適切な流れで加入手続きを進める必要があります。

    労災保険の加入手続き

    まずは労災保険への加入手続きを行います。

    企業が、事業所を所轄する労働基準監督署に「保険関係成立届」と「労働保険概算保険料申告書」を提出します。年度をまたいで加入する場合は、それぞれの年度ごとに「労働保険概算保険料申告書」を提出しましょう。

    雇用保険の加入手続き

    労災保険の加入手続きにより、労災保険番号を発番したら、管轄のハローワークにて「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

    6か月以上前に遡って加入手続きを行う場合は、遅延理由などを示す追加書類の提出を求められる場合があります。

    企業が雇用保険のみ未加入の場合

    雇用保険が未加入になるケースの2つめは、労働保険のうち、何らかの事情で企業そのものが雇用保険のみ未加入であるという場合です。

    企業が労災保険には加入していて雇用保険のみ未加入であるときは、管轄のハローワークにて加入手続きを行います。

    必須書類は「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」です。必要に応じて追加で書類も提出しましょう。たとえば、2年を超える期間を遡って加入するときは、雇用保険料の支払いを証明できる書類が必要です。

    企業が雇用保険に未加入である場合、雇用保険料の納付ができていないため、労働保険料も正しく納付できていないことになります。年度を遡って雇用保険の加入手続きを行うときは、すでに申告済みの労働保険料も修正しましょう。

    労働保険料の修正は、修正が必要な年度分の賃金集計表と確定保険料申告書の修正版を作成し「労働保険料再確定申告理由書」と「確定済みの申告書、賃金集計表」を提出します。なお、同一年度での加入手続きでは、翌年に確定保険料の申告を行うため、修正申告は行いません。

    加入要件を満たす従業員の手続きをしていない場合

    雇用保険が未加入になるケースの3つめは、企業が労働保険には加入していて、従業員への雇用保険加入手続きに漏れがある場合です。

    この場合、該当する従業員の「雇用保険被保険者資格取得届」を提出し、手続きを行います。従業員が雇用保険に未加入だったときも、正しく雇用保険料が納付できていません。年度を遡って雇用保険の加入手続きを行う場合は、すでに申告済みの労働保険料も修正しましょう。

    また、従業員の雇用保険加入手続きが漏れており、遡って加入手続きを行うということは、過去の保険料も納付しなければなりません。

    本来、雇用保険料は企業と従業員の双方で負担するものです。しかし、企業の落ち度によって過去の保険料を納付しなければならないときは、企業側が負担しましょう。

    前職で加入したままの状態

    雇用保険が未加入になるケースの4つめは、労働者が前職で雇用保険に加入したままの状態である場合です。

    雇用保険制度では、労働者一人ひとりに雇用保険番号(雇用保険被保険者番号)が付与されるため、転職先でも同じ番号を使って労働者を管理します。

    そのため、前職で雇用保険の資格喪失手続きを行っていないと、次の転職先で雇用保険の手続きが進められません。

    企業は、退職した従業員の雇用保険の資格喪失手続きを忘れずに行うとともに、新たに採用した人材の雇用保険加入状況を確認する必要があります。

    雇用保険未加入によるデメリット

    雇用保険に未加入である場合に、企業に生じるデメリットをご紹介します。

    • 企業が罰則対象になる
    • 労働者が雇用保険の給付やサポートを受けられない

    企業が罰則対象になる

    雇用保険は、要件を満たす従業員を雇用する企業が加入します。対象者の加入手続きは企業側が行わなければなりません。

    要件を満たす従業員に雇用保険の加入手続きを行わなかった企業は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

    参照:『雇用保険法第83条』e-Gov法令検索

    労働者が雇用保険の給付やサポートを受けられない

    雇用保険に未加入であると、労働者が離職や休業をする際に、必要な給付やサポートを受けられない可能性があります。

    たとえば、従業員にとって、以下の不利益が生じる可能性があります。

    • 失業手当を受けられない
    • 育児休業や介護休業に対する給付が受けられない
    • 就職促進給付が受けられない

    雇用保険は、労働者の雇用や再就職に関する支援を行う保険制度です。加入要件を満たしているにもかかわらず加入できていないと、本来受けられる給付が受けられなくなるため、従業員にとって大きな損失になるでしょう。

    雇用保険を遡って加入する対処法

    企業が従業員の雇用保険加入手続きを行っておらず、雇用保険の未加入期間がある場合、手続きを行うことで遡って加入できます。

    雇用保険に遡って加入する際のポイントを紹介します。

    • 2年以内の期間の場合
    • 2年を超える期間も遡って加入できる
    • 2年を超える期間を遡って加入する方法

    2年以内の期間の場合

    雇用保険の未加入期間が2年以内の場合、雇用契約書や労働者名簿、賃金台帳などによって、雇用されていたことが確認できる範囲内で遡って加入できます。

    2年を超える期間も遡って加入できる

    雇用保険未加入期間が2年を超える場合も、雇用保険料が給与から天引きされていたことがわかる給与明細や源泉徴収票などがあれば、遡って加入できます。

    遡って加入できる対象者は、以下の通りです。

    • 平成22年10月1日以降に離職した方
    • 在職中の方

    平成22年9月30日までは、遡れる期間を2年としていましたが、平成22年10月1日以降は2年を超える期間も遡って納付できるようになりました。

    ただし、遡って加入手続きを行い、必要な給付の申請を行っても、時効によって消滅した給付や申請期限を過ぎた給付などは受けられないことがあります。

    2年を超える期間を遡って加入する方法

    雇用保険未加入期間について、2年を超える期間の加入手続きをするときは、以下のいずれかの書面を添付する必要があります。

    • 給与明細
    • 賃金台帳
    • 源泉徴収票

    上記の書類を持参して、最寄りのハローワークで手続きを進めましょう。

    参照:『~雇用保険の加入手続漏れの是正期間が変わります~』厚生労働省

    雇用保険の加入条件

    雇用保険の加入手続きは遡ってできるのか|未加入のケースや対処法も解説

    雇用保険の主な加入条件は、以下の通りです。

    • 週の所定労働時間が20時間以上
    • 雇用見込みが31日以上

    このように、雇用保険の対象者は、年齢や雇用形態にかかわらず、一定の条件を満たす従業員が該当します。上記以外にも設定されている細かい条件も含めて、雇用保険の加入条件を確認しましょう。

    参照:『雇用保険事務手続きの手引き』厚生労働省

    雇用保険の加入を確認する方法

    雇用保険の加入状況を確認したい場合、以下の方法で確認できます。

    • 給与明細で確認
    • 雇用保険被保険者証で確認
    • 雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票を提出

    給与明細で確認

    雇用保険の加入状況は、従業員の給与明細でも確認できます。雇用保険に加入していれば、給与明細に雇用保険の徴収額が記載されているためです。

    給与明細の控除項目「雇用保険」で控除されているかどうかを確認しましょう。

    雇用保険被保険者証で確認

    雇用保険に加入した従業員には、ハローワークから「雇用保険被保険者証」と「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」が交付されます。2つの書類が交付されていれば、雇用保険に加入済みということです。

    なお、雇用保険被保険者証は、従業員が退職するまで企業が保管するケースもあります。

    雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票を提出

    企業から雇用保険被保険者証などが交付されていない場合などは、ハローワークでも確認できます。管轄のハローワークで、「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」を提出し、確認しましょう。

    まとめ

    企業が雇用する労働者に雇用保険の未加入期間があった場合は、2年を超える期間も遡って加入できるため、発覚した時点で速やかに手続きを行わなければなりません。

    雇用保険が未加入になる原因には、主に以下の4つがあります。

    • 企業が労働保険に加入していない
    • 企業が労災保険のみに加入していた
    • 企業は労働保険に加入しているが、労働者の加入手続きを行っていない
    • 前職で雇用保険の喪失手続きができておらず、加入手続きが行えない

    雇用保険は、労働者の雇用や再就職について給付やサポートする目的の保険制度です。雇用保険加入期間が短いと、労働者が不利益を被ることがあるため、責任をもって実施しなければなりません。

    労働者の加入漏れが判明したら、すぐに加入手続きや労働保険料の修正申告に取り掛かりましょう。