雇用保険の加入時にマイナンバーは必要なのか|雇用保険とマイナンバーの関係性を解説
企業が従業員を雇用する際には、雇用保険への加入が必要になる可能性があります。雇用保険に加入するためにはいくつかの書類を提出しなければなりません。書類にマイナンバー(個人番号)の情報を記載する必要があるのかと疑問に思う方も少なくないでしょう。
本記事では、雇用保険の基本的な概要をはじめ、雇用保険加入時にマイナンバーが必要か否かについて詳しく解説します。
雇用保険の加入時にマイナンバーは必要?
雇用保険に加入する際には、申請書にマイナンバーを記載する箇所があります。従業員の雇用によって雇用保険に加入する場合、いくつかの書類の提出が求められ、それぞれに記載すべき内容が異なります。
雇用保険の届出にはマイナンバーの記載が必要
雇用保険の届出にはマイナンバーを記載する項目が存在するため、書類の内容を確認しておくとよいでしょう。マイナンバーとは、日本に住民票を有するすべての人が持つ12桁の番号です。
また、日本に中長期滞在する外国人などにもマイナンバーは付与されています。
マイナンバーは、行政機関で行う手続きの効率化のために導入されました。書類への記入をスムーズに進めるためにも、事前に従業員のマイナンバーを確認しておきましょう。
マイナンバーが必要になる雇用保険に関係する書類
雇用保険の加入手続きをする際に、マイナンバーの情報を記載すべき書類は次の2つです。
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 雇用保険被保険者資格喪失届
それぞれの書類の概要について詳しくご紹介します。
雇用保険被保険者資格取得届
「雇用保険被保険者資格取得届」とは、雇用保険に加入する際に提出する書類です。
従業員を1人でも雇用している場合で、かつ、従業員が雇用保険の加入条件を満たしている場合に提出しなければなりません。従業員のマイナンバーの記載が必要なため、事前に確認しておきましょう。
雇用保険被保険者資格喪失届
「雇用保険被保険者資格喪失届」とは、退職する際に提出する書類です。
この書類は、雇用保険に加入していたことを証明しています。従業員が退職したことを届け出るときに、会社側はこの書類を必ず提出しなければなりません。
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員が退職後に失業保険などを受け取るために必要な書類です。マイナンバーなど必要事項を記載したうえで、会社がハローワークに提出します。
雇用保険の基本について
従業員を雇用するときに、知っておきたい雇用保険の基本的な概要について紹介します。
雇用保険は労働者の休業・失業時をサポートするための制度
雇用保険は、労働者の雇用と生活の安定をはかるための社会保険制度です。
労働者が突然の失業などで収入が途絶えたとき、一時的に生活費を補填する役割を果たします。そのほかにも、給付金制度や能力向上のための支援など、さまざまな方法で労働者をサポートしている制度です。
雇用保険の加入対象者
雇用保険の加入対象者は、適用基準を満たすすべての労働者です。具体的には、以下の基準を満たす人が対象です。
- 勤務開始時から最低31日間以上働く見込みがあること
- 週あたりの所定労働時間が20時間以上であること
- 学生ではないこと(※夜間部や定時制の学生は除く)
参照:『雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか!』厚生労働省
上記の基準を満たしている従業員は、職種や業種にかかわらず雇用保険に加入できます。
雇用保険は雇用形態にかかわらず加入可能
雇用保険は、雇用形態にかかわらず、加入条件を満たせば誰でも加入できます。
つまり、正社員だけでなく、パートタイムやアルバイトの労働者にも適用されます。このように、雇用保険は幅広い雇用形態の従業員をカバーすることが可能です。
雇用の安定や生活保障のための重要な制度であるため、雇用者や人事担当者は雇用保険に必要な手続きを適宜行い、対象となる従業員が雇用保険の保護を受けられるように配慮しましょう。
雇用保険に求められる役割
雇用保険の加入対象者について理解できたところで、ここからは雇用保険に求められる役割について詳しく紹介します。
労働者が万が一の際にも安心して生活できる基盤をつくる
雇用保険は労働者が突然の失業や病気、ケガ、育児、介護などを理由に働けなくなった場合でも安定した生活を維持できるよう支援する政府運営の強制保険制度です。
万が一の際でも生活の基盤が揺らがないように、生活費の一部を補填するための給付金が支給されます。これにより、労働者は生活に不安を抱くことなく、新たな就職先を探せるでしょう。
雇用保険の手続き方法について
雇用保険の手続きは、従業員を雇用した際、そして従業員が退職する際に必要です。具体的な手続き方法について紹介します。
- 雇用した翌月の10日までに手続きをする
- 退職時にも手続きが必要
雇用した翌月の10日までに手続きをする
新たに雇用保険に加入する従業員を雇用した際は、雇用した月の翌月の10日までに「雇用保険被保険者資格取得届」を管轄のハローワークに提出しなければなりません。この届出には、従業員のマイナンバーなどの情報が必要です。
退職時にも手続きが必要
従業員が退職する際は、企業は「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を管轄のハローワークに提出する必要があります。提出後に、退職した従業員に対し「雇用保険被保険者離職票」が交付されるのが、一般的な手続きの流れです。
雇用保険被保険者離職票は、失業手当を給付する際に必要な書類です。基本的に従業員が希望する場合のみ発行しますが、以下のケースでは交付が必要なので注意しましょう。
- 退職者本人が離職票の発行を希望するとき
- 59歳以上の従業員が退職するとき
雇用保険に欠かせないマイナンバーとは
マイナンバーは日本の社会保障と税、災害対策の分野における個人識別番号制度のことで、雇用保険の管理にも欠かせない情報の一つです。マイナンバーの基本的な概要について紹介します。
マイナンバーとは住民票を持つすべての個人に割り当てられた番号
マイナンバーは、日本の住民票を持つすべての個人に指定される12桁の番号で、行政の効率化や国民の利便性を高める制度として創設されました。
「個人番号通知書」により通知され、カード申請をすることで「マイナンバーカード」が発行できます。なお、日本人だけではなく、日本に中長期滞在する外国人や特別永住者などもマイナンバーの対象です。
マイナンバーの必要性
マイナンバーの概要について理解できたところで、マイナンバーの必要性について紹介します。
公平・公正な社会の実現を目的とした制度
マイナンバーは、公平・公正な社会を実現することを目的に創設された制度です。マイナンバーカードの目的は、主に次の3つです。
- 公平・公正な社会の実現
- 行政の効率化
- 国民の利便性の向上
参照:『マイナンバー(個人番号)とは』マイナンバーカード総合サイト
マイナンバーが付与されることで、行政機関は個人の所得や社会保障の受給状態を把握し、公平なサービスを提供できます。たとえば、マイナンバーを活用して不正受給などの問題を見抜くことで、社会全体の公平性と公正性が高まるでしょう。
そのほかにも、行政機関や地方公共団体における各種確認作業が簡略化されることでさまざまな手続きが効率化し、国民の利便性も大いに向上することが期待されています。
マイナンバーの記載が必要な書類
日本における社会保障や税などのさまざまな手続きには、マイナンバーの情報が必要です。ここでは、マイナンバーの記載が必要な書類についてご紹介します。
マイナンバーはさまざまな書類に記載される
雇用保険の手続きにおいて、マイナンバーの情報を記載すべき書類は次のとおりです。
- 雇用保険被保険者資格取得届
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 介護休業給付金支給申請書
参照:『雇用保険の届出にマイナンバーの記載が必要です。』厚生労働省
雇用保険の手続き以外にも、健康保険や所得税などの各種手続きでマイナンバーの情報が必要です。
健康保険 | ・資格取得・喪失届 ・被扶養者異動届 ・傷病手当金支給申請書 など |
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所得税 | ・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書 ・支払調書 ・給与所得の源泉徴収票 ・給与支払報告書 など |
このように、マイナンバーの情報はさまざまな手続きで使用します。従業員を雇用する際は、なるべく早めにマイナンバーの提出を依頼しましょう。
マイナンバーに関する注意事項
マイナンバーの取り扱いに関する注意点について紹介します。
従業員のマイナンバー提出は強制ではない
マイナンバー法では、企業は従業員に対してマイナンバーを収集するよう義務づけています。
しかし、従業員に対してマイナンバーの提出を強制できず、提出せずとも従業員への罰則は発生しません。マイナンバーを提出しなくても、雇用保険や社会保険などの加入自体は可能です。
ただし、提出しないと手続きに時間を要する可能性があること、そしてマイナポータルを活用したサービスを利用できないことなどのデメリットを従業員に対して説明する必要があります。
雇用保険などの手続き以外でもマイナンバーの情報が必要となるケースは多いため、従業員に対して協力するよう依頼していきましょう。
雇用保険関連の手続きもクラウドサービスの活用がおすすめ
雇用保険は、労働者の雇用と生活の安定をはかるための社会保険制度です。
失業した際はもちろん、在職中のキャリアアップを考える際にも活用できます。教育訓練給付や育児休業給付などの雇用保険制度に関する理解を深めながら、必要な手続きを行いましょう。
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