産業医面談は意味ない? 目的や拒否に対する企業側の対応と促進ポイントを解説

産業医面談は意味ない? 目的や拒否に対する企業側の対応と促進ポイントを解説

産業医面談とは、従業員が健康的に長く働けるようサポートする制度です。 特に長時間労働者や高ストレス者に対して義務づけられている一方、一部の従業員から「産業医面談に意味がない」と、拒否されることもあります。
産業医面談の実施されない状況を放置してしまうと、企業として安全配慮に欠け、従業員の健康リスクを高めてしまいかねません。産業医面談は、従業員のパフォーマンス向上を目指すためにも重要です。

本記事では、産業医面談が「意味がない」と感じられる理由と、本来の目的や意味を踏まえて、企業の適切な対応策を解説します。また、従業員が面談を拒否した場合の対応方法についても紹介します。 産業医面談の重要性を社内に周知し、従業員の理解と協力を得るために、お役立てください。

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    産業医面談が意味ないと感じる理由

    なぜ産業医面談に意味がないと感じる従業員がいるのでしょうか。主な理由を7つ紹介します。

    • 本人がメンタル不調に気づいていない
    • 信頼関係が築かれていない
    • 中立性が欠如していると思っている
    • プライバシーが守られるか不安である
    • 形式的なものしか行われていない
    • 実施しても変化が感じられない
    • 目的や意義を見出せていない

    本人がメンタル不調に気づいていない

    社員本人がうつ病など精神的な不調に気づいていない場合、産業医面談の重要性を理解できず、「意味がない」と思われることがあります。

    メンタルの不調は徐々に進行する傾向にあり、自分では変化に気づきにくいものです。医師との面談は、心の状態をチェックできるよい機会です。本人に自覚がなくても、産業医面談をきっかけに気づいてもらうことが大切です。

    信頼関係が築かれていない

    産業医との間に信頼関係が築かれていないと、従業員は心を開いて自分の悩みを正直に話せません。多くの人は信頼関係がないと、本音で話すことに抵抗を覚えます。

    特に過去の面談であまり効果を感じなかったり、冷たい対応をされた経験があったりすると、産業医面談は意味がないと感じられてしまいます。

    企業側としては、従業員一人ひとりが安心して相談できる環境を整えるフォローが必要です。

    中立性が欠如していると思っている

    産業医が企業側から派遣されていると理解していると、従業員は公平性に疑問を抱き、産業医面談を意味がないと拒否するかもしれません。産業医の健康指導やアドバイスに対して、不安を覚える人もいるでしょう。

    当然ながら企業は、産業医面談の実施内容に介入できません。また産業医は、従業員側にも過度に同情することなく、中立性が保って健康に関する助言を行います。

    プライバシーが守られるか不安である

    産業医面談で話した内容が会社に伝わるのではないかという懸念から、面談を避けるケースもあります。

    産業医面談において本人のプライバシーを保護することは重要です。企業は、面談内容の守秘義務について、あらかじめ従業員に説明し、安心して相談できる環境を提供する必要があります。

    産業医面談の内容はルールに沿って管理され、上司や同僚に共有されることもないという原則を伝えることで、従業員の不安を軽減できるでしょう。

    形式的なものしか行われていない

    産業医面談の中身が形式的な内容だと、従業員は自身の問題に向き合う姿勢を失い、表面的な対応しかしないでしょう。相手が真剣に向き合ってくれず、健康に関する悩みや課題に対する具体的な解決策が提示されないと、面談は意味がないものになってしまいます。

    なかには企業に名前が登録されているだけで、実務をしていない産業医がいる企業もあるようです。産業医が職責を果たしていないと、違法性が疑われ、最悪の場合、企業に罰金が科されるおそれもあります。

    実施しても変化が感じられない

    産業医面談の実施後、いっこうに職場環境や働き方が改善が改善されないと、従業員は面談の有効性を疑い、無意味だと感じてしまいます。

    また産業医面談は治療の一種だと誤解している人もいるようです。そのため「具体的な変化がない」と、面談に時間を使った意義を感じられず、悪い印象を持つ人もいます。

    企業はすみやかに改善策に取り組み、実施が遅れたり、形だけの対策に終わってしまったりすることがないようにしましょう。面談後のフォローアップも、改善の実感に影響します。

    目的や意義を見出せていない

    そもそも従業員が、産業医面談の意味を十分に理解していないと、面談時間は無駄と感じられます。 

    事前に企業は、面談を行う目的や意義を具体的に説明する必要があります。どのように個人の健康や環境の改善につなげるのかを、明確に伝えることが大切です。

    産業医面談の重要性を事例や体験談とともに共有することで、従業員に意味を理解してもらえるでしょう。

    産業医面談を実施する意味・目的・効果

    そもそも産業医面談には、従業員の健康維持と職場環境の改善という大切な目的があります。実施により企業と従業員それぞれにとってメリットや効果が期待できます。

    産業医面談を実施する意味や主な目的・効果を、あらためて解説します。

    • 従業員の健康維持・改善
    • 問題の早期発見・防止
    • 離職・休職防止
    • 生産性向上
    • 職場環境の改善

      従業員の健康維持・改善

      産業医面談は、従業員の健康管理と改善において重要な役割を果たします。

      面談の実施により、従業員が自覚していない健康問題や、潜在的に抱えているストレス・

      リスクを発見できるでしょう。病気や不調の予防につながります。

      体調不良は異変に気づいた段階で、対処することが大切です。高血圧や慢性的な疲労、メンタル不調を発見したら、初期の段階で、より専門的な医療機関の受診につなげられます。

      従業員の健康を守り、体調の悪化を防ぐうえで、産業医面談は重要です。

      問題の早期発見・防止

      産業医面談は、抱えている健康問題や職場での課題を早期に発見し、防ぐ目的もあります。普段は上司や同僚に言いにくい職場の悩みも、第三者や信頼できる産業医であれば、安心して相談できることもあるでしょう。

      産業医面談の実施により、健康リスクや職場のトラブルのを、深刻になる前に解説につなげることが可能です。

      離職・休職防止

      産業医面談による問題の早期発見により、離職・休職の原因を特定し、必要な支援を迅速に提供することが可能です。従業員の精神的・身体的な不調が、深刻になる前に対応できます。

      従業員の変化に気づくのが遅れると、最終的に突然の退職を招いてしまうかもしれません。

      離職や休職を防ぎ、長く定着する社員が増えれば、長期的な視点で人材育成に取り組めるため一定の効果が期待できます。

      離職や休職にともなう採用・教育コストも削減でき、採用の費用対効果において意味があります。優秀な人材に自社に残ってもらうには、産業医面談をはじめとした健康経営につながる取り組みが必要です。

      生産性向上

      産業医面談により、ストレスが軽減して健康状態が維持されると、従業員は集中して仕事に取り組めます。心身の不調が少なく健康な社員が増えれば、病気やケガによる欠勤が減るため、生産性向上の効果も期待できるでしょう。

      社員のメンタルヘルスを充実させた結果、職場全体の業務効率が向上し、業績アップにつながったケースもあるようです。

      従業員満足度も向上するため、離職率が低下して、定着率が高まる可能性もあります。

      職場環境の改善

      産業医面談を通して、職場環境の改善に役立てることも目的の一つです。

      サービス残業や人間関係の問題などを明らかにすることで、改善策を講じられます。働きやすい環境が整って職場内のモラルも改善するでしょう。

      産業医面談を意味ないと思われないためには? ポイント

      さまざまな理由で「意味ない」と思われてしまう産業医面談ですが、進め方や企業のフォローによって意義を高めることができます。

      産業医面談を意味がないと思われないためのポイントを6つ取り上げて解説します。

      • 目的を周知する
      • プライバシーに配慮して連絡する
      • 相談窓口を設置する
      • 事後にフォローアップする
      • 実施を受けて環境改善に努める
      • 守秘義務を遵守する

      目的を周知する

      産業医面談の目的・重要性をあらかじめ従業員に伝えておくと、面談の効果を高められるかもしれません。事前の共有がないと産業医面談そのものを「意味がない」と感じてしまい、形式的な面談になりやすいです。具体的には、説明会を設けたり、定期的に社内で案内を発行したりする方法を活用してみましょう。

      プライバシーに配慮して連絡する

      医師が産業医面談で聴いた話については、最大限プライバシーへの配慮が必要です。

      職場内で必要以上に個人情報を明かすことをためらう従業員も多くいます。面談の日程調整のメールなども、限られた人しか見られないようにするとともに、不注意で外部にもらすことのないよう、注意しましょう。

      なお、産業医面談は一定の条件でオンラインでの実施も認められています。必要に応じて、従業員に案内しましょう。

      相談窓口を設置する

      従業員の不調に包括的に対処するには、産業医面談とは別途、従業員みずから匿名で相談できる窓口などを開設するのもポイントです。

      専用の相談窓口があると、従業員が自分のタイミングで問題を相談できるようになります。

      産業医の選任が義務づけられていない、50人未満の中小企業では、特に有効な方法といえます。地域の産業保健推進センターなどの外部の専門家との連携も視野に入れ、従業員が安心して相談できる環境を整えることが大切です。

      本人だけでなく、一緒に暮らす家族からの相談も受けられるようにすると、不調のサインにを早期に発見できます。

      実施を受けて環境改善に努める

      産業医面談の実施を受けて、労働環境の具体的な改善を実施することが大切です。従業員の不調の原因となっている問題を解決し、働きやすい職場環境を整えると、面談に意味を見出せるでしょう。

      たとえば、過重労働が問題になっている場合には、勤務時間の調整や業務分担の再割り当てなど、具体的な行動を実行することが重要です。

      事後にフォローアップする

      産業医面談は一度やったら終わりではなく、実施後にフォローアップすることが大切です。面談後に職場環境や働き方に改善が見られないと、従業員は産業医面談を意味がないと認識してしまいます。従業員の状況に応じたサポートを続けることで、信頼関係を強化しましょう。

      守秘義務を遵守する

      産業医面談で聴いた従業員の健康情報や個人情報は、原則として守秘義務により保護されます。つまり、本人の同意なく外部に明かされることはありません。ただし産業医の判断により、対象者の安全が守られないリスクがあるときだけ、企業に報告されます(報告義務)。

      守秘義務が徹底されていないと、従業員は面談で正直に話すことをためらい、結果として思うような効果が期待できません。情報の取り扱いには十分に注意しましょう

      産業医面談の実施が必要なケース

      そもそも前提として産業医面談は企業側に実施が義務づけられている場合があります。産業医面談の実施が必要なケースは以下の通りです。

      • 長時間労働
      • ストレスチェック時
      • 休職・復職時
      • 健康診断後

      長時間労働

      働き方改革関連法施行により、基準となる月の時間外労働時間を超える従業員に対して、産業医面談による指導が義務づけられています。

      長時間労働が常態化すると、疲労が蓄積して心身の負担となり、健康リスクを高めます。リスクを回避して、従業員の健康を守るために産業医面談の実施が必要です。

      なお、長時間労働者の産業医面談は、申し出により実施されるものです。しかし高度プロフェッショナル制度を適用する労働者は、基準の労働時間を超えると、申し出がなくても実施しなければなりません。

      ストレスチェック時

      ストレスチェックで、従業員が高ストレス状態と判定されると、結果に基づいて、産業医面談を実施します。2015年から、従業員を常時50人以上雇用する事業場では、ストレスチェックの実施が義務づけられました。

      高ストレスと判断された従業員には、任意で産業医が面接指導を行います。企業は従業員のメンタルヘルスを守るため、精神的な健康にも配慮して、適切な対策を講じる必要があります。

      休職・復職時

      従業員の体調不良が深刻な場合、休職の妥当性を判断するために、産業医面談を実施します。 また、休職からの復職を判断する際も、主治医の診断に基づいて、最終的に産業医が復帰の可否を判断します。

      健康状態は、本人や周囲では状況を冷静に正しく判断できません。産業医の医学的な知見と現状の職場環境から見て、総合的に休職・復職は判断されます。

      企業は産業医の意見に基づいて、休職・復職に際したサポートを行い、再発しないように努める必要があります。

      健康診断後

      健康診断で異常が見つかった場合、産業医面談が実施されます。具体的には、再健診や経過観察が必要とされる症状が見つかった従業員が対象です。結果に基づいて今後の健康管理について面接指導が行われます。

      産業医面談を「意味ない」と拒否されたらどうする? 

      産業医面談は従業員側に受ける義務はないので強制はできません。ただし企業側は、長時間労働者や高ストレス状態の従業員に、産業医面談を提案する義務があります。

      いろいろと対策をしても、従業員から「意味がない」と産業医面談を拒否されたら、企業としてどのように対応すればよいのでしょうか。

      産業医面談を拒否された場合、人事労務担当者ができることを4つ取り上げて紹介します。

      • 拒否した理由に理解を示す
      • 懸念点を排除する
      • 従業員側のメリットを伝える
      • 別の相談窓口を案内する

      拒否した理由に理解を示す

      産業医面談を拒否する理由には、さまざまな背景が考えられます。まずは背景にある懸念や不安に理解を示して、共感することが重要です。

      安心して面談に臨めるよう、メンバーの立場として考え、懸念点を把握して信頼関係を築きましょう。

      懸念点を排除する

      産業医面談を拒否した理由を把握したら、懸念を解消するため、具体的な対策が必要です。

      たとえば、プライバシー保護への不安がある場合は、産業医には守秘義務があり、内容が外に漏れないことを伝えます。面談が形式的であると感じている場合は、目的を確認して進め方を再検討し、個別の希望に対応した方法で検討します。

      また、産業医面談で使うツールや時間は、都合にあわせて調整できることを伝え、安心感を持ってもらいましょう。不安を取り除き、落ち着いた環境を提供することで、産業医面談への参加意欲を高められます。

      従業員側のメリットを伝える

      産業医面談が、従業員にとってどのようなメリットがあるかを具体的に説明し、重要性を再認識してもらいます。 

      産業医面談は、本人の健康を守るため、今の状態を確認し、働きやすい職場環境を整えるのが目的です。従業員にとっても組織全体にとっても前向きな効果が期待できます。

      産業医面談のメリットを強調し、積極的に面談を受けられるように配慮しましょう。

      別の相談窓口を案内する

      産業医面談に対して強い抵抗感を示す従業員には、別の相談窓口や専門家との面談を提案するのも一つの方法です。従業員がより受け入れやすい方法も選択します。

      個別の健康状態やニーズに合わせて、必要なタイミングで必要なサポートが受けられるよう、柔軟な対応を検討しましょう。

      産業医面談の拒否により企業側に責任が問われる場合も

      従業員が産業医面談を拒否し、本人の意思で実施されなかった場合でも、企業側に法的な責任が問われる可能性があります。

      産業医面談は、労働安全衛生法に基づき、従業員の健康を保護するために必要な措置として義務づけられています。たとえば、ストレスチェックで高ストレス者となった者から申し出があれば、安産配慮義務として、企業は産業医面談を実施しなければなりません。

      面談の義務を怠った場合、労働基準監督署から是正勧告を受けることもあります。また、重大な禁止が認められた場合には、罰則が科されるおそれもあるでしょう。

      従業員が産業医面談を拒否したあとに健康を害し、原因が企業の対処不足によるものと判断されると、損害賠償を請求されるリスクも考えられます。法的責任を理解して、従業員に対して理解を求める対応が必要です。

      産業医面談を意味ある機会にするために(まとめ)

      産業医面談は、従業員の健康を守り、職場の安全を確保する方法の一つです。しかし「産業医面談は意味がない」と感じられてしまうこともあります。

      産業医面談を拒否されたとしても、企業側には適切なフォローアップが求められます。従業員に産業医面談の意味を理解してもらうためにも、本人のプライバシーに最大限配慮し、相談しやすい仕組みを整備しましょう。

      また、産業医面談の対象者を生じさせない、職場環境づくりも大切です。

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