月の途中で入社した社員の社会保険料控除はいつから? タイミングと計算方法を解説

月の途中で入社した社員の社会保険料控除はいつから? タイミングと計算方法を解説

月の途中で入社した中途新入社員の社会保険料控除はいつから始まるのでしょうか。答えは「入社翌月の給与から」です。入社月に保険の加入条件を満たしていれば、入社した次の月の給与から控除がスタートします。

本記事では、社会保険料控除の開始時期や計算方法について、中途新入社員への対応で、おさえておきたいポイントを具体例を交えて解説します。

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    社会保険料が控除されるタイミング

    そもそも社会保険料の控除には、2つの原則があります。

    原則1当月分(社会保険に加入している月)の社会保険料は、翌月に支払われる従業員の給与から控除する
    原則2社会保険料は月単位で徴収し、日割りにはしない

    たとえば、5月1日に入社した従業員の場合、5月分の社会保険料は6月の給与から徴収されます。パート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、社会保険の加入条件を満たしていれば、控除の取り扱いは同様です。

    月の途中で入社した社員の社会保険料はいつから控除?

    原則1の「社会保険料は翌月の給与から控除する」は、従業員が月の途中で入社してきた場合も変わりません。同様に「月単位で徴収する」という原則2も適用されます。

    そのため、月の途中で入社した従業員の社会保険料は、入社2か月目に支払われる給与から控除することになります。

    ただし、具体的なタイミングについては、給与の締め日によって異なります。例として、次の2つのパターンを考えてみましょう。

    • 控除の例1.5月10日入社(当月15日締め、当月25日支払い)
    • 控除の例2.5月10日入社(月末締め、翌月25日支払い)

    控除の例1.5月10日入社(当月15日締め、当月25日支払い)

    5月10日に入社して当月締め当月払いの会社では、入社して最初の給与支給日が入社当月にあたります。しかし、入社月の給与支払いでは社会保険料を控除しません。

    入社月社会保険料を初めて控除する月
    5月6月

    当月払いの会社でも、5月分(=入社月分)の社会保険料は、翌6月の25日に支給される給与から徴収します。ただし、少数ではありますが、当月の給与から社会保険料を控除する一部の企業もあるようです。

    控除の例2.5月10日入社(月末締め、翌月25日支払い)

    5月10日に入社して月末締め翌月払いの会社では、入社した翌月以降の最初の給与支給日である翌6月25日に社会保険料を徴収します。

    入社月社会保険料を初めて控除する月
    5月6月

    「入社して最初の給与支給日」ではなく「入社した翌月以降の最初の給与支給日」から徴収が始まるのがポイントです。

    月の途中で入社した社員の社会保険料の計算

    月途中入社の社会保険料控除がいつから始まるのか整理できたところで、次は具体的な金額を計算してみましょう。

    広義の社会保険は5種類あります。それぞれの社会保険料の計算方法は、以下のとおりです。

    社会保険の種類計算方法
    ・健康保険
    ・厚生年金保険
    ・介護保険
    標準報酬月額×各保険料率
    ・雇用保険
    ・労災保険
    賃金総額×各保険料率

    標準報酬月額とは、1か月あたりの賃金(基本給+各種手当)を一定の幅で区分したものです。

    また賃金総額とは、基本給や各種手当など、企業が従業員に対して支払ったすべてを合計したものを指します。

    標準報酬月額や賃金総額について、さらに知識を深めたい方は以下の記事をご確認ください。

    計算の具体例

    以下のケースを例として実際に健康保険料を計算してみましょう。

    Aさん(35歳)
    ・協会けんぽの健康保険に加入
    ・神奈川県在住
    ・月給40万円(基本給+各種手当)
    ・12月10日入社(月末締め、翌月25日支払い)

    健康保険料の計算式は「標準報酬月額×保険料率」です。40歳以上の場合は健康保険料と一緒に介護保険料も徴収しますが、Aさんは40歳未満なので健康保険料のみ考えます。

    健康保険料は都道府県により異なるため、本記事ではAさんが在住している神奈川支部の情報を参照します。

    2024年度における協会けんぽ神奈川支部の健康保険料率は、10.02%です。またAさんは月給40万円で、標準報酬月額表にあてはめると等級27の41万円となります。

    よってAさんの健康保険料は以下のとおりです。

    41万円×10.02%=4万1,082円

    健康保険料は企業と従業員が半分ずつ負担するため、Aさんの給与から天引きするのは2万541円です。

    Aさんは12月10日入社、Aさんの会社は月末締め翌月25日支払いなので、健康保険料は入社翌月の1月25日の給与から徴収します。

    参照:『令和6年度 保険料率について』協会けんぽ神奈川支部

       『令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表』協会けんぽ神奈川支部

    計算を間違えてしまったら?

    社会保険料の計算を誤ってしまった場合は、できるだけ当月中に現金で精算するのが望ましいとされています。しかし「当月締め・当月払い」のように当月中の精算が難しい場合は、翌月以降の給与で精算しても問題ないでしょう。

    また翌月の精算が間に合わなかった場合や、計算ミスの金額が大きい場合は、年末調整で精算するのも手段の一つです。

    月の途中で退職した社員の社会保険料はどうする?

    月の途中で入社した社員の社会保険料について一通り理解いただけたと思いますが、では月の途中で「退職」した社員の社会保険料はどのように対応すればいいでしょうか。取り扱いについて解説していきます。

    退職した従業員の社会保険料については、以下の2つの原則が適用されます。

    原則1資格喪失日は退職日の翌日
    原則2資格喪失月の前月まで社会保険料が発生

    例として、次の2つのパターンを考えてみましょう。

    • 控除の例1.7月10日退職(当月締め、当月払い)
    • 控除の例2.7月20日退職(月末締め、翌月払い)

    控除の例1.7月10日退職(当月締め、当月払い)

    退職日が7月10日の場合、社会保険の資格喪失日は7月11日です。社会保険料は資格喪失月の前月分まで発生するため、6月分までが社会保険料の支払い対象となります。

    当月締め・当月払いを採用している企業で、社会保険料を控除するタイミングが「入社後2回目の給与」からの場合、退職月である7月の給与から、6月分の社会保険料を控除する必要があります。

    ただし、給与から当月分の社会保険料を控除している企業では、最後の7月分の給与から保険料を控除する必要はありません。

    控除の例2.7月20日退職(月末締め、翌月払い)

    退職日が7月20日の場合、資格喪失日は7月21日です。社会保険料は資格喪失月の前月分まで発生するため、6月分までの社会保険料が発生します。

    月末締め・翌月払いのこの会社では、6月分の社会保険料が、7月支払いの給与から控除されます。

    月末退職の場合

    従業員が月末に退職した場合は、最終日が属する月までの社会保険料が発生します。

    たとえば、退職日が7月31日の場合、資格喪失日は8月1日です。つまり資格喪失月は8月となり、前月の7月分まで社会保険料が発生します。

    月末退職の場合、締め日によっては退職月の給与から2か月分の社会保険料を徴収することもあります。

    月の途中で入社し、退職した社員の社会保険料はどうする?

    非常にめずらしいですが、従業員が月の途中で入社したあと、月末を迎える前に退職してしまうケースも考えられます。

    月途中入社、当月退職のように、社会保険の資格を取得し、同月中に喪失手続きを行うことを「同月得喪」といいます。

    同月得喪では、入社した月について1か月分の社会保険料が発生し、通常とは処理が異なるため注意が必要です。

    同月得喪の詳しい実務対応を知りたい方は以下の記事をご確認ください。

    月の途中で入社した社員の賞与に対する社会保険料はいつ控除される?

    社会保険料は通常支給される賃金だけではなく、賞与に対しても発生します。対象は資格取得月以降に支給された賞与です。

    月の途中で入社した従業員についても、入社月に賞与を支給した場合は、控除の対象となり、翌月の給与支給日に徴収します。

    また、賞与を支給した月の途中で従業員が退職した場合、退職月について給与と同様に賞与からも社会保険料は徴収しません。

    一方、月末退職の場合は資格喪失日が翌月となるため、退職月に支給する賞与から社会保険料を徴収する必要があります。

    賞与に適用される社会保険料の計算方法を確認したい方は、以下の記事もご確認ください。

    月の途中で入社した従業員の社会保険料に関する注意点

    月の途中で入社した従業員の社会保険料について、「特別な対応が必要なのでは?」と不安に感じることもあるかもしれません。しかし、基本的なルールを押さえておけば、対応自体はシンプルで、過度に複雑に考える必要はありません。

    標準報酬月額や社会保険料率の確認など、おさえておきたい注意点はいくつかありますが、いずれも実務でよくあるケースです。

    以下の3つのポイントについて詳しく解説します。

    1. 標準報酬月額は見直される
    2. 社会保険料率は定期的に改定される
    3. 入社月の社会保険料は見直されることもある

    基本的な考え方を理解し、実務での疑問解消に役立てましょう。

    標準報酬月額は見直される

    標準報酬月額は従業員の1か月の賃金に基づき決まるもので、減給や昇給があれば標準報酬月額も変動する場合があります。

    標準報酬月額は毎年4〜6月の3か月の賃金に基づいて9月に決定されます(=定時決定)。定時決定とは別に、従業員を雇用した段階で、就業規則や労働契約に基づいた報酬月額を届け出なければなりません。

    月の途中で入社した従業員も同様に、入社月(資格取得月)には報酬月額を届け出て、その時点での標準報酬月額を決定する必要があります。

    また、従業員の給与に大幅な変動があった場合は、標準報酬月額を改定する手続きが必要です(=随時改定)。継続した3か月間に支払われた賃金の平均額と現在の標準報酬月額に2等級以上の差が生じる場合に対応が求められます。

    定時決定と随時改定に適切に対応するために、詳しく確認したい方は、以下の記事もご覧ください。


    社会保険料率は定期的に改定される

    社会保険料率は常に一定ではなく、定期的に改定されています。たとえば協会けんぽでは、健康保険料と介護保険料の料率を毎年見直しています。

    前年から据え置きの場合もありますが、保険料を計算する際は常に最新の情報をチェックするよう心がけましょう。

    入社月の社会保険料は見直されることもある

    入社月については給与支給の実績がまだないので、あくまでも「給与をこのくらい支給するであろう」という予測のもとに計算します。大幅な差が生じるケースはそれほど多くありませんが、予測していた給与との差が大きい場合は、随時改定が必要です。

    月の途中で入社した従業員も例外ではなく、実際に支給する給与を適切に管理し、必要に応じて対応する必要があります。

    社会保険料は翌月からの徴収が原則(まとめ)

    従業員の社会保険料は、原則として当月分を翌月の給与から控除します。月の途中で入社した従業員も、入社月の保険料は翌月支給の給与から控除するのが基本です。

    ただし「当月締め・当月払い」の企業では、入社後はじめて支給する給与からではなく、翌月支給の給与から天引きになることが原則である点に注意しましょう。

    社会保険料の取り扱いルールは難しく感じる方もいるため、管理を効率化するには、給与計算システムの活用がおすすめです。システムを活用すれば、社会保険料の改定にもスムーズに対応が可能な場合があります。

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