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労働保険における継続事業の一括とは【本社でまとめる方法】認可申請先や書類

労働保険は本来、事業場ごとに加入する必要があります。一方、労働保険における継続事業の一括とは、労働保険の手続きを本社でまとめて行える制度の一種です。しかし、一括で手続きを済ませるためには、一定の要件を満たす必要があります。

本記事では、労働保険における継続事業の一括について、制度の概要や必要要件、一括認可申請の手続き方法などを解説します。具体的な手順と注意点を押さえて、労働保険の手続きをスムーズに進めるためにお役立てください。

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    労働保険の一括とは

    労働保険の一括とは、労働保険(雇用保険・労災保険)を1つの事業場にまとめることです。本来、労働保険は支店や営業所ごとに手続きを行う決まりになっています。

    労働保険の一括制度を利用すれば、労働保険の手続きや管理を1つの事業場に集約することが可能です。基本的には、事業場ごとに成立している労働保険を、本社にまとめる場合が多いでしょう。

    継続事業と有期事業について

    労働保険における「事業」とは、経営組織としての独立性を持つ経営体を指します。

    たとえば、東京に本社を置くA社が名古屋支社と大阪支社を有している場合は、それぞれ別々の事業として扱われます。本社を含む各支店を総合した「A社」そのものを指すわけではない点に注意しましょう。

    また、事業には継続事業と有期事業の2種類があります。

    継続事業期間が予定されない事業(事務所、工場、商店など)
    有期事業期間が予定される事業(建設事業や立木の伐採事業など)

    どちらも一定要件を満たせば労働保険を一括とすることが可能ですが、本記事では継続事業の一括について解説します。

    参考:『労務費率調査|用語の解説』厚生労働省

    労働保険における継続事業の一括とは

    労働保険における継続事業の一括とは、適用要件に当てはまる継続事業について、労働保険の手続きを1つの事業場で一括で行える制度です。建設や林業などの一部事業(有期事業)を除く一般的な事務所や商店などが、労働保険の手続きを本社にまとめられます。

    継続事業の一括申請が認められると、複数の事業場の保険関係が1つの労働保険番号で管理され、厚生労働省が指定する「指定事業」に集約されます。これにより、労働保険関連の手続きや保険料納付などを1つの会社としてまとめて行えるようになるのです。

    一括の必要性

    本来、労働保険は本社はもちろん支社・支店などの各事業場で成立し、手続きも個別に行います。しかし、複数の事業場を構える企業にとっては、事業場ごとに手続きをするのは負担が大きいものです。

    継続事業の一括制度を活用すれば、労働保険の手続きを本社でまとめて処理できるため、業務の効率化をはかれます。労働保険料も一括で納付できることで、各事業場の業務負担が大きく軽減されるでしょう。

    参考:『労働保険|継続事業一括申請の手続き』神奈川労働局|労働基準監督署|ハローワーク 

    参考:『複数の事業(支店、営業所等)の処理を一括したいとき』厚生労働省兵庫労働局

    【労働保険】継続事業の5つの一括要件

    労働保険において、継続事業の一括の適用を受けるためには、次の5つの要件を満たす必要があります。

    1.各事業が継続事業で保険関係が成立している
    2.指定事業と被一括事業の事業主が同一
    3.事業の期間が予定されていない(継続事業)
    4.各事業が労災保険率表上、事業の種類が同一のもの
    5.各事業が保険適用区分上、同一のもの

    継続事業の一括では、本社のように労働保険を取りまとめる事業場を「指定事業」、そのほかの支店や支社などを「被一括事業」と呼びます。

    2つめの要件の通り、労働保険の手続きをまとめるためには、指定事業と被一括事業の事業主が同一でなければなりません。本社とは別の法人として独立しているグループ会社や、事業主が本社とは異なる支社・支店は認可されないため注意しましょう。

    労災保険率表・保険関係区分とは

    継続事業の一括の適用要件にある労災保険率表とは、事業を種類ごとに区分し、それぞれの保険料率を記載した表です。労働保険の手続きを1つの事業場にまとめるためには、労災保険率表上、各事業の種類が同一である必要があります。

    また、保険関係区分とは、労働保険の適用に関する区分のことです。労働保険の適用事業は、一元適用事業と二元適用事業に分かれます。

    一元適用事業雇用保険と労災保険が1つの番号で管理されている事業
    二元適用事業雇用保険と労災保険が別々の番号で管理されている事業

    ほとんどの場合、雇用保険と労災保険はひとまとめで管理されます。しかし、事業の実態として2つを別々に管理する必要がある場合は、二元適用事業として手続きをします。

    建設業や農林水産業などは、二元適用事業に該当する場合が多いでしょう。継続事業の一括の適用を受けるためには、それぞれの事業場が保険適用区分上、同じでなければなりません。

    参考:『労働保険|継続事業一括申請の手続き』神奈川労働局|労働基準監督署|ハローワーク

    【労働保険】継続事業の一括認可申請手続き

    労働保険における継続事業の一括は、事業主の申請に基づいて内容を審査したうえで、認可がおりると適用されます。提出書類や提出先などは、以下の通りです。

    提出書類労働保険継続事業一括認可・追加・取消申請書
    添付書類被一括事業(支社・支店など)の労働保険関係成立届のコピー
    提出先管轄の労働基準監督署
    提出期限一括適用を希望する際、速やかに

    手続きの手順については、以下で詳しく解説します。

    各事業場で保険関係を成立させておく

    労働保険における継続事業の一括を受けるためには、支社・支店などの各事業場で保険関係を成立させておく必要があります。

    まずそれぞれの事業場で労働保険(雇用保険・労災保険)の手続きを済ませたあとで、1つの事業場にまとめるための申請をする流れです。

    労働保険は農林水産の事業の一部を除いて、従業員を1人でも雇っていれば加入する義務があります。そのため、既存の事業場であればすでに保険関係は成立しているはずです。支店や営業所などを新しく設置する場合は、まず保険関係を成立させてから一括申請を行います。

    新しく保険関係の成立手続きをする場合

    新しく保険関係の成立手続きをする場合は、継続事業の一括を申請することを忘れずに申し出ましょう。窓口で申し出ると仮保険番号が付与されるので、一括申請の際にはその番号を使用します。

    各事業場の保険関係が成立したら、保険関係成立届の控えを指定事業とする予定の事業場に送付しましょう。

    一括手続きを行う事業場を決める

    各事業場の保険関係成立届が集まったら、労働保険の一括手続きを行う指定事業を決定します。

    各事業場の手続きや保険料納付を取りまとめることになるため、本社を指定する場合が大半です。

    一括申請の書類を作成する

    次に、一括申請の書類を作成します。『労働保険継続事業一括認可・追加・取消申請書』を入手し、申請書の上部と下部にある「新規」または「追加」に○をつけたら、次の内容を記載して提出しましょう。

    • 指定事業の労働保険番号
    • 指定事業の住所や名称など
    • 被一括事業の労働保険番号や仮保険番号
    • 被一括事業の住所や名称など

    提出先は、指定事業の所在地を管轄する労働基準監督署です。提出期限はありませんが、一括適用を受けたいときは、すみやかに提出する必要があります。

    書類の控えを保管する

    労働保険の一括に関する申請書類の企業控えは、大切に保管しておきましょう。

    また、継続事業の一括の認可がおりると、企業に対して認可通知書が交付されます。認可通知書の再発行はされないため、紛失しないよう注意が必要です。

    被一括事業に対しては、それぞれに整理番号が付与されます。今後の申請・手続きで必要になるので、整理番号も大切に管理しましょう。

    参考:『労働保険|継続事業一括申請の手続き』神奈川労働局|労働基準監督署|ハローワーク

    参考:『労働保険の成立手続』厚生労働省

    【労働保険】継続事業の一括に関する疑問

    最後に、労働保険における継続事業の一括に関するよくある疑問に回答します。

    一括を取り消す場合はどうする?

    支社や支店などを廃止・閉鎖した場合は、認可申請の際と同じ『労働保険継続事業一括認可・追加・取消申請書』を用いて手続きします。申請書の上部と下部にある「認可の取消」に○をつけ、次の内容を記載して提出しましょう。

    • 指定事業の労働保険番号
    • 指定事業の住所や名称など
    • 被一括事業の整理番号
    • 被一括事業の住所や名称など

    取り消す時点で、すでに労働保険番号は指定事業に一本化されているので、被一括事業については整理番号を記載します。

    事業変更や名称変更があったらどうする?

    指定事業の変更や、被一括事業の住所・名称などの変更があったら、『労働保険継続事業一括変更申請書/継続被一括事業名称・所在地変更届』を用いて手続きします。

    申請書の上部と下部にある「指定事業の変更」や「被一括事業の名称等の変更」に○をつけて、管轄の労働基準監督署に提出しましょう。

    たとえば、被一括事業の住所・名称などを変更する場合は、変更したい被一括事業の整理番号を記入したうえで、次の内容を記載して提出します。

    • 指定事業の労働保険番号
    • 指定事業の住所や名称など
    • 被一括事業の新しい住所や名称など(変更箇所のみ)
    • 被一括事業のもともとの住所や名称など

    一括事業の労災事故は本社が届け出をする?

    労働保険における継続事業の一括の適用を受けていても、労災事故が起きた場合には、各事業場を管轄する労働基準監督署に請求する必要があります。そのため、労災請求については指定事業でまとめて請求することはできません。

    なお、被一括事業者が労災請求をする際に必要な労働保険番号は、指定事業の番号を使用します。

    複数事業場の労働保険の手続きは一括申請が便利

    労働保険における継続事業の一括とは、一定要件を満たす継続事業について、複数事業場の労働保険関係を1つにまとめられる制度です。

    継続事業の一括が適用されれば、支社や支店など複数事業場の労働保険料の申告や納付を、1つの事業場でまとめて行えます。事業場ごとの手続きが不要となるため、それぞれの拠点における担当者の負担を軽減できるでしょう。

    ただし、一括申請が認められても、労災事故に関しては各事業場を管轄する労働基準監督署にそれぞれ請求する必要があります。基本的な仕組みや注意点を理解したうえで、手続きの簡便化をはかりましょう。

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