休業手当の計算方法|休業補償との違いや支給条件も解説
休業手当の計算は、休業を開始する日以前3か月における賃金総額を3か月の暦日数で割った平均賃金をもとに計算します。企業の都合によって従業員を休業させる場合は、休業手当を支払う義務があるため、担当者は特に理解しておかなければなりません。
本記事では、休業手当の計算について、計算方法や支給条件などを解説します。企業の経営層や人事労務担当者はぜひ参考にしてください。
休業手当とは
休業手当とは、企業が会社側の都合で休業することになり、従業員が働けなくなった場合に支給する手当のことです。休業手当の支払いは、労働基準法に定められており、条件等に該当していれば、企業側は従業員に休業手当を支払う義務があります。
参照:『賃金の支払い(第24条) 休業手当(第26条) 労働時間(第32条)』厚生労働省愛媛労働局
休業手当と混同しやすい休業補償
休業手当と休業補償は、従業員が休業するに至った原因に違いがあります。休業補償とは、労働災害によって従業員が怪我や病気にかかり、働けない(休業せざるを得ない)場合に、企業が平均賃金の6割を支給する補償制度です。
労働基準法に定められた災害補償の事由が生じた場合、労災保険法に基づき、災害補償に相当する金額が給付される場合もあります。この場合、企業側は休業補償の支払い義務が免除されます。
休業手当と有給休暇との違い
有給休暇とは、労働基準法で定められた休暇で、企業は条件を満たす従業員に付与する義務があります。休業手当は、企業側の都合や責任によって休業する従業員に支給する手当てであり、有給休暇は企業側が付与する義務のある有給の休暇です。
休業手当の申請方法
休業手当を申請する方法をご紹介します。休業手当は、企業側が従業員に支給する手当であるため、従業員が会社に申請を行います。企業側は、従業員が休業手当をスムーズに申請できるよう、ルールや申請方法をまとめておきましょう。申請する際は、企業側が用意する書類などに記載を行い、提出をします。
休業手当の計算方法
休業手当の計算方法について解説します。まず、休業手当の1日あたりの支給金額は、平均賃金の60%以上とするという点を理解しておかなくてはなりません。実際の計算では、まずは平均賃金を正しく算出したうえで、総額を計算することになります。休業手当の計算方法は以下の通りです。
- 平均賃金を計算
- 1日あたりの休業手当を計算し、総額を算出
それぞれのステップを解説します。
平均賃金の計算
休業手当を計算する際に重要となるのが「平均賃金」です。平均賃金は、以下の計算式に当てはめて算出します。
(1)休業開始日以前の3か月間の賃金総額÷該当する3か月間の暦日数
(2)休業開始日以前の3か月間の賃金総額÷該当する3か月間の労働日数×0.6
上記2種類の計算式がありますが、原則(1)の計算式が適用されます。ただし、労働日数が少ない場合においては、(1)と(2)両方の計算式を行い、(2)のほうが数字が大きくなった場合はその金額を最低保証額として用います。なお、賃金締切日がある場合は、直前の賃金締切日から遡って3か月となります。
賃金総額には、基本給だけでなく、通勤手当や時間外手当なども含まれます。ただし、臨時で支払われる賃金や3か月を超える期間ごとに支払われる賃金は賃金総額に含まれませんのでご注意ください。
1日あたりの休業手当を算出し、総額を計算
平均賃金をもとに、1日あたりの休業手当を算出しましょう。休業手当は、「平均賃金×60%」の計算式を使って求めます。1日あたりにおける休業手当の金額を算出できたら、休業日数を乗じます。これで休業期間中に支給される休業手当の総額が計算できます。
参照:『休業手当(平均賃金の60%以上)の計算方法』厚生労働省大分労働局
参照:『休業手当の計算方法』厚生労働省山形労働局
休業手当の支給条件
休業手当を支給する条件にはどのような内容があるのでしょうか。企業が休業手当を支給しなければならないケースとする必要のないケースについて、それぞれ解説します。
支給されるケース
休業手当を企業が支給する代表的な例は、以下のようなケースが挙げられます。
- 資金難や原料不足などによって会社を休業する場合
- 予告なしに解雇する際の予告期間中の休業
- 企業側が採用内定者に対して入社日以降も自宅待機の指示を出す場合
上記のように、企業側の都合で休業する場合は、休業手当を支給しなければなりません。
休業手当が支給されないケース
休業手当を企業が支給する必要のない代表的な例には、以下のようなケースが挙げられます。
- 自然災害などによって企業が運営できない(会社が使えない)場合などによる休業
- 労働安全衛生法による健康診断結果によって従業員が休業しなければならない場合
- ロックアウトによる休業
- 代休付与命令による休業
上記のように、会社側の都合による休業ではない場合、企業側は休業手当を支給しないこともあります。企業側が休業するに至った理由によって、休業手当の支給有無が異なりますので注意しましょう。
雇用形態における休業手当の支給有無
休業手当が支給されるかどうかは、状況によっても異なります。そこで、状況別の休業手当の支給有無を解説します。
アルバイトやパートの場合
アルバイトやパートは、企業と雇用契約を締結しているため、休業手当の対象です。そのため、休業手当を支給する条件を満たせば、企業側はアルバイトやパートにも休業手当を支給しなければなりません。
休業手当の支給目安は以下の通りです。
休業の程度 | 支給金額 |
---|---|
終日休業 | 平均賃金の60% |
一部の時間を休業 | 該当日における実労働分賃金が、平均賃金の60%に満たない場合は、その差額分 |
アルバイトやパートは、労働日数に変動があるため、直前3か月の暦日数をもとに計算する方法では、平均賃金が低くなりすぎてしまいます。そのため、労働日数で割る計算式も用います。労働日数で割る計算式のほうが金額が高くなるのであれば、そちらを平均賃金として採用しましょう。
派遣社員の場合
派遣社員の休業手当は、原則として、派遣先企業ではなく派遣元企業が支給します。以下で状況別の対応を確認しましょう。
派遣先の都合で休業 | 派遣元が平均賃金の6割を休業手当として支給 ※場合によっては派遣元が派遣先に損害賠償請求できる |
派遣先の都合で派遣先企業との契約が解除されて休業 | 派遣元が休業手当を負担 ※場合によっては派遣先に費用負担を求められる |
派遣社員の都合で派遣先企業との契約が解除されて休業 | 派遣元が負担 ※派遣社員の業務態度などを理由に派遣先との契約を解除された場合、調査結果によっては派遣社員を解雇でき、正しい解雇手続きなどを行うことで休業手当の支払い義務も免除される |
参照:『派遣労働者の労働条件・安全衛生の確保のために』厚生労働省
日雇い労働者の場合
日雇い労働者の場合も、企業側の都合による休業が生じた場合は、休業手当を支給する必要があります。
日雇い労働者の場合も平均賃金から支給額を算出しますが、勤務日数などに差があるため、以下の計算式に当てはめて計算します。
- 本人に同一事業場で1か月間に支払われた賃金総額÷その間の総労働日数×73/100
- 同種労働者の賃金総額÷その間の同種労働者の総労働日数×73/100
※当該事業場で1か月間に働いた同種労働者がいる場合
まとめ
休業手当は、会社側の都合で従業員を休業させた場合に企業に支給義務が発生する手当です。休業手当を支給する際は、該当する計算式に当てはめて正しく算出し、支払わなけばなりません。
このように、企業ではさまざまな状況に応じて、給与計算を行います。手動やエクセルでの計算や管理では、人的ミスも少なくないでしょう。企業は、給与計算の担当者の負担もふまえ、給与計算を効率化できるシステムを活用するのがおすすめです。給与計算システムにはさまざまな種類があります。複数のシステムを比較し、自社に最適なサービスを探してみましょう。
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