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休職制度とは【人事向け】設計方法から復職対応まで必要手続きを解説

休職制度とは【人事向け】設計方法から復職対応まで必要手続きを解説

休職とは、従業員が職場での勤務を一定期間休める制度です。

休職を選ぶ従業員が増えているという情報を耳にしたことがあるかもしれません。企業の人事労務担当者にとって、従業員の定着率向上や安心して働ける環境づくりのために、休職制度の整備は重要な課題といえます。

本記事では、休職制度の概要や設計方法、詳しい条件を決める際のポイント、復職までの手続きなどについて解説します。

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    休職・休職制度とは

    休職とは、企業に在籍する従業員が、雇用契約を維持したままの状態で仕事を休むことです。類似する用語との違いがわからない人に向けて、違いと主な休職理由を解説します。

    欠勤との違い

    休職と混同されやすい用語に「欠勤」があります。欠勤は一時的な就業の中断を指します。通常、欠勤は短期間であることが多く、長期にわたることが一般的な休職とは性質が異なります。

    休業との違い

    「休業」は休職と類似していますが、主として企業側の事情による休暇を意味します。一方、休職は基本的に従業員の個人的な理由で休むことを指すため、両者は異なる概念として区別されています。

    主な休職理由・種類

    休職の事由は個々の従業員によってさまざまですが、「病気、ケガ」「留学」「ボランティア」などが主な理由です。

    業務外で発生した病気やケガによる休職は「私傷病休職」の種類に含まれます。一方、業務などがもとで発生した病気やケガについては、労災扱いになるので私傷病休職には含まれません。

    休職制度がない場合|制度設計は義務?

    休職制度は法律で定められているわけではないので、制度の構築や設計は義務ではありません。法律上は、休職制度の設計は任意であり、設けていなくても違法ではありません。

    ただし、企業側・従業員側ともにメリットがあるため、設計しておくと安心でしょう。

    休職制度の構築が求められる理由・メリット

    企業に休職制度の導入が求められる理由は、以下のようなメリットがあるからです。

    企業側のメリット
    離職率を抑えられる
    企業のイメージアップにつながる
    優秀な人材を獲得できるため、事業の発展につながる
    類似ケースが発生した際に対応の手間を省ける
    従業員側のメリット
    安心感をもって業務に打ち込める
    精神的に余裕を持って、病気やケガなどの治療ができる

    近年は休職を選択する従業員が増加傾向にあり、めずらしくありません。そのため、企業は休職制度を事前に整備しておくことが望ましいといえるでしょう。

    休職制度の設計方法

    これから休職制度を導入する企業に向けて、設計方法として、2つの実務対応を紹介します。

    • 条件を決める
    • 就業規則へ記載する

    条件を決める

    休職を認める具体的な条件を設計して定めます。企業によって内容に違いはありますが、主な項目は以下の通りです。

    • 従業員が休職を申請する際に必要な手続き
    • 休職が認められる従業員の範・基準
    • 休職期間の長さ・休職中の過ごし方
    • 診断書の扱い・提出
    • 休職中の給与・賞与の支払い規定
    • 復職に関する条件・ルール

    今現在、休職希望者がいなくても、あらかじめ条件を設計しておけば、急な事態にあわてることがないでしょう。

    就業規則へ記載する

    休職を認める条件や基準、ルールを就業規則に加えます。

    就業規則は、企業が従業員に対して給与や労働時間など勤務規律を定めた社内規定です。常時10人以上が働く事業場において作成が義務づけられています。

    休職の条件を就業規則に定めることで運用が可視化され、従業員からの信頼を得られるとともに、今後のトラブル発生を防ぐ制度設計につながります。

    休職制度の条件を決める際のポイント

    休職制度の条件に該当する項目ごとに、休職制度の条件を決める際のポイントを項目ごとに解説します。

    休職制度の条件を決める際は、従業員の範囲や基準、休職期間の長さや延長の可能性などの要素を慎重に検討する必要があります。

    • 休職申請の手続き
    • 従業員の範囲・基準
    • 休職期間・過ごし方
    • 診断書の提出
    • 給与・賞与の扱い
    • 復職

    条件や基準を明確に定めることで、従業員が安心して休職し、円滑に復職できる環境を整えることができるでしょう。それぞれの項目について詳しく解説します。

    休職申請の手続き

    休職を申し出る際に必要な手続きも明記します。休職届や流れを記載し、手続きの流れを可視化することが重要です。

    休職を申し出る際に必要な手続きも明記します。休職届のフォーマットや提出方法、手続きの流れを記載し、可視化することが重要です。従業員がスムーズに手続きを進められるようにするため、手続きの詳細や担当部署の連絡先もあわせて記載するとよいでしょう。

    従業員の範囲・基準

    休職制度を設計する際には、対象となる従業員の範囲を明確にすることが重要です。たとえば、正社員のみを対象とするのか、パートタイマーや契約社員も含むのかを決めます。

    また、休職を認める基準についても詳細に規定する必要があります。具体的には、欠勤が続いた期間日数や病状の程度など、明確な基準を設けることで、公平な対応につながります。

    休職期間・過ごし方

    休職期間の長さについて条件を設定することが必要です。休職の上限日数や、必要に応じて休職期間を延長する場合の条件についても規定します。

    また、休職中の従業員とのコミュニケーション方法についても決めておくことが重要です。定期的な連絡の頻度や連絡手段をあらかじめ設定しておくことで、従業員が孤立せず、復職に向けたプロセスが円滑に進行します。

    診断書の提出

    病気やケガが原因で休職する場合における、診断書提出の有無も条件に追加します。診断書の提出を必須にすると、休職を認めるための根拠を明確にできます。

    条件やルールを明示するときは。医師が提示する休職期間など、診断書に記載すべき項目も具体的に提示します。

    給与・賞与の扱い

    休職期間中の給与の支払いについても条件として規定することが大切です。

    休職中の給与支給や賞与の取り扱いについて事前に明確な方針を定めておくと、従業員の不安や疑問を解消できます。

    たとえば、休職期間中は給与を一部支給するのか、賞与はどのように計算されるのかを具体的に示します。従業員は経済的な見通しを立てやすくなるでしょう。

    復職

    休職期間が終わったあとは、復職に向けて動き出す必要があります。病気やケガの場合、どのような状態であれば復職できるか、具体的な条件・基準や復職への手続きを記載しましょう。

    復職の際は、休職前と同じ業務を遂行するのが難しい場合もあります。復職後の業務内容や支援体制についても、事前に確認しておくことが大切です。

    休職申請から復職までの手続き対応

    従業員から休職の申請を受けてから、休職明けに復職対応を実施するまでの手順を紹介します。特に病気やケガでの休職では、該当する従業員に配慮した対応ができるように心がけましょう。

    休職前1:従業員からの申し出

    従業員から休職の申し出を受けたら、まずは本人に対して休職の流れを詳しく説明します。休職の申請手続きについては、事前に決めておいた手順に沿って、丁寧に対応を進めましょう。

    休職前2:書面での通知

    休職期間中の給与や会社との連絡方法など、重要事項をすべて書面で通知します。従業員に対して口頭での説明だけだと、十分に理解できない可能性もあります。書面に合意内容を記載することで、のちのコミュニケーショントラブルを回避できます。

    休職中1:定期連絡

    従業員が休職に入ったあとは、現在の状況について定期的に連絡を取り合います。

    休職中は精神的な負担を軽減することを重視し、連絡の頻度や方法については本人の意向を尊重して事前に決めておくことが重要です。連絡は適切なタイミングで実施し、従業員の健康状態を把握しましょう。

    休職中2:社会保険・税金の手続き

    休職期間中でも、社会保険に加入している限り保険料が発生するため、一定額支払わなければなりません。

    住民税も前年の所得に基づいて課税されるため、休職中でも支払いが必要です。休職中は給与の支払いがないので天引きができません。企業が立て替えて支払い、あとで従業員に請求することもできます。

    どのような方法で保険料を支払うのか、就業規則に明記しておくとよいでしょう。

    復職準備1:復帰の判断・意向確認

    従業員が業務に復帰できるかどうか本人に確認する必要があります。特に病気やケガの場合、復職後に再度休職しないよう現在の健康状態を詳細に確認しましょう。必要に応じて医師の診断書を求め、従業員の意向も尊重することが大切です。

    復職準備2:復職計画の作成

    復職が決まったら、具体的な復職計画を作成します。計画には以下を含めます。

    • 復帰日
    • 復帰後の配置や業務内容
    • 勤務時間

    上記のような内容を計画内に組み込み、従業員が安心して復職できるような環境を整えてください。

    復職計画により、従業員が安心して復職できる環境を整えます。必要に応じて従業員の意見を聞きながら、計画の詳細を作成しましょう。

    復職後:フォローアップ

    休職が終わった復職後には適切なフォローアップが必要です。

    特に病気やケガからの復職の場合、定期的な面談を実施して従業員の心身の健康状態を確認します。無理なく業務に取り組めるように、慣らし出勤を取り入れたり、段階的に業務量を増加させたりするとよいでしょう。

    フォローアップ体制を整えることで、復職後のスムーズな業務遂行をサポートします。

    休職満了時に退職・解雇はできる? 注意点は?

    あらかじめ決められた休職期間が経過しても、従業員が働ける状態になかった場合、会社としてどのような対応をしたらよいのでしょうか。

    休職満了時に従業員が労働できないと判断されたとき、退職を促したり、解雇したりすることは可能です。しかし、手続きには十分な配慮が必要です。

    訴訟リスクなどを避けるためにも、適切な手続きを踏み、従業員の権利を十分に考慮したうえで対応することが求められます。以下で注意点を解説します。

    解雇条件などを就業規則に明記する

    休職期間満了後の退職や解雇について就業規則に記載することが重要です。たとえば「休職期間満了後に業務に復帰できない場合には、退職・解雇とする」といった内容が明記されていれば、あとの訴訟リスクを抑えられます。

    解雇を事前に通知する

    解雇について従業員本人に書面で通知することも、注意点の一つです。休職期間が満了する30日前までに「休職期間内に復職できない場合は解雇する」という内容を本人に通知しましょう。

    退職金のルールを決めておく

    休職後の退職は、退職金に関するトラブルが発生する恐れがあります。そのため、休職期間が勤続年数に算入されるかどうかなどの詳細について、事前に従業員と協議し、明確にしておくことが重要です。確認を怠ると、退職金の計算における認識の違いが原因で問題が生じるかもしれません。

    離職理由に合意する

    離職理由に関して双方の理解が一致していないと、退職プロセスにおいて問題が発生する可能性があります。

    特に離職理由は、離職証明書の作成や失業給付の内容に影響を及ぼします。従業員が退職する具体的な理由について、直接確認し、合意する必要があります。

    休職命令を会社から出せる?

    従業員が休職する際は、本人から申し出るだけでなく、企業側から従業員へ休職命令を出すことも可能です。

    ただし、どんなケースでも休職命令を出せるわけではありません。場合によっては、ハラスメント行為にあたるとして訴訟に発展する可能性があります。

    休職命令を出す際は以下のポイントに気をつけましょう。

    • 就業規則において休職命令について記載する
    • 休職命令を発する明確な理由を用意する

    安心して働ける環境に向けて休職制度の設計を(まとめ)

    休職制度とは、企業との雇用契約を締結したまま従業員が業務を一定期間休むことのできる制度です。

    休職制度は、離職率低下や企業のブランディング構築という企業側のメリットに加え、従業員が安心して業務に従事できるというメリットがあります。

    法律上、休職制度の構築は必須ではありません。しかし、休職の条件や復職ルールなどをあらかじめ明記しておくとトラブルが少ないでしょう。

    本記事で紹介した休職制度の設計方法や休職制度の条件を決めるポイント、復職までの流れを制度設計にお役立てください。