休職と休業の違い【わかりやすく】定義や手当、給与・社会保険料の支払い義務を解説
休職と休業は、雇用関係を継続したまま業務をしないという点で共通しています。しかし、休職は主に従業員都合による長期休暇の取得を指し、休業は会社都合または法律による労働の免除を意味するという点で大きく異なります。
本記事では、休職と休業の違いについて、定義や手当、給与・社会保険料の支払い義務などを詳しく解説します。
休職と休業の違い|1.定義
休職と休業は、雇用関係を継続したまま業務をしていないという点で似ていますが、理由や性質に大きな違いがあります。
休職の定義とは
休職とは、従業員が個人的な理由により、雇用契約を維持しつつ、一定期間職場を離れることです。休職制度に関する法的な規定はないため、条件や期間は各企業が独自に就業規則などで設定できます。
休業の定義とは
休業とは、従業員本人に就労の意思があっても、事情により労働ができない場合、企業の判断または法律の定めにより、就労を免除することです。休業理由には会社都合と自己都合の2つがあります。
休職と休業の違い|2.法律による規定の有無
休職と休業は、法的な位置づけが大きく異なります。休職は法律による明確な規定がなく、企業の裁量に委ねられている一方、休業はさまざまな労働関連法による規定があります。
休職は法律の規定がない
休職は、法律による明確な規定がありません。そのため、各企業が独自に休職制度を設けて運用します。休職制度を導入する場合は、就業規則や労働協約などで明文化する必要があります。
休業は法律の規定による
休業は、労働基準法などの法律で規定されています。条件を満たす従業員から休業の申請があると、企業側には休業を認める義務があります。正当な理由なく休業を拒否することはできません。
各休業が規定されている法律は以下の通りです。
休業の種類 | 法律 |
---|---|
産前・産後休業 | 労働基準法 |
育児休業 | 育児・介護休業法 |
介護休業 | 育児・介護休業法 |
労災による休業 | 労働基準法、労働者災害補償保険法 |
休職と休業の違い|3.期間
休職と休業の期間設定は大きく異なります。休職期間は企業が就業規則で定めます。一方で休業期間は、会社都合を理由とした休業と法定休暇で決まり、法定休暇は法律で期間が明確に規定されています。
休職期間は就業規則で定める
休職期間は、各企業が就業規則で定めなければなりません。
休職期間は法律上の規定がなく、企業の裁量に委ねられているため、トラブルを防止するためにも、明確に就業規則で定めておくことが重要です。
ある調査によると、私傷病による休職の期間は、勤続年数によって設定する割合が高いと報告されています。企業規模や業種によって異なるものの、休職期間は3か月〜3年程度で、平均的には1年半程度です。
参照:『私傷病欠勤・休職制度に関する実態調査』労政時報 第4077号(2024年5月10・24日発行)(P.21)
休業期間は法定休暇であるかによる
休業期間は、会社都合の休業と法定休暇で異なります。一時帰休や天災による事業所閉鎖など会社都合による休業は、会社が期間を決定します。
一方、産前産後休業や育児休業、介護休業などの法定休暇は、法律で期間が定められています。各法定休暇の期間は以下の通りです。
法定休暇の種類 | 休業の期間 |
---|---|
産前産後休業 | 産前6週間・産後8週間 |
育児休業 | 原則として子が1歳に達するまで |
介護休業 | 対象家族1人につき通算93日まで |
休職と休業の違い|4.給与の支払い義務
休職中の給与支払いは法的な義務がなく、企業の裁量に委ねられています。
一方、休業時の給与は休業理由により異なり、企業都合の場合は休業手当の支払いが必要です。従業員都合の休業は原則として無給ですが、各種保険からの給付がある場合もあります。
休職期間は給与の支払い義務はない
休職中の給与支払いは、各企業の就業規則や労働協約に基づいて決定します。休職は従業員の自己都合によるものなので、企業が給与を支払う義務はありません。また、休職中の賃金支払いや勤続年数への算入を従業員側が企業に要求する権利はありません。
一方、従業員への配慮から、福利厚生の一環として一部の企業では休職中も給与の一定割合を支給しているようです。
休職中の給与支払いは、各企業の就業規則や労働協約に基づいて決まります。
休職は従業員の自己都合によるため、企業に給与を支払う義務はありません。また、休職中の賃金支払いや勤続年数への算入を、従業員が企業に求める権利もありません。
ただし、従業員への配慮から、福利厚生の一環として、休職中も給与の一部を支給する企業もあるようです。
休業期間の給与の支払いは、会社都合か従業員都合かによる
企業の都合で従業員を休業させるとき、平均賃金の60%以上を休業手当として支払うことが、労働基準法第26条により義務づけられています。ただし、地震や台風などの自然災害のように、企業が最善の努力を尽くしても避けられない事由による休業は対象外です。
一方、従業員都合の理由による休業では、就業規則などに定めがない限り、原則として企業に給料支払い義務はありません。ただし、休業の種類によっては、労災保険や雇用保険、健康保険から手当が支給される場合があります。
休職と休業の違い|5.社会保険料の支払い義務
休職中の社会保険料は原則として支払い義務があり、免除規定はありません。一方、休業においては種類により免除されることがあります。
休職期間は社会保険料の免除規定がない
休職期間中の社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料)は、免除される規定がないため、休職中も支払い義務が生じます。
休職中に給与が支給されていなくても、社会保険料は直前の標準報酬月額をもとに計算されるため、保険料の支払いが必要です。
実際に支払われた賃金により計算する雇用保険料は、給与が支給されない月には発生しません。
休業期間の社会保険料は免除されることがある
産前産後休業や育児休業の期間中は、申請により、従業員と会社の双方に対する健康保険料と厚生年金保険料の支払いが免除されます。手続きを担当するのは企業で、届け出先は健康保険組合や年金事務所です。
しかし、家族介護のための休業期間については、社会保険料の免除制度が設けられていません。介護休業中も従業員と会社は、通常通り社会保険料を支払う必要があります。
休職と休業の違い|6.手当・給付金
傷病休職では条件を満たすと傷病手当金を受給できます。一方、休業は種類に応じて、さまざまな手当や給付金があり、支給額もそれぞれ異なります。
傷病休職の場合、傷病手当金を受給できる
傷病休職の場合、健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に加入していれば、傷病手当金を受給できる可能性があります。傷病手当金とは、業務外の病気やケガで働けない場合に、連続して3日間休んだあとの4日目から支給される給付金です。
傷病手当金の支給額は、1日につき標準報酬日額(直近12か月の標準報酬月額の平均÷30)の3分の2相当額です。支給期間は、支給を始めた日から最長1年6か月間です。
傷病手当金を受給するためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 業務外の事由による病気やケガであること
- 仕事に就くことができないこと
- 連続する3日間を含み4日以上仕事に就けなかったこと
- 休んでいる期間について、給与の支払いがないこと
休業は手当または給付金を受給できる
休業の場合、種類に応じて手当や給付金を受給できる可能性があります。具体的には以下の通りです。
休業の種類 | 手当・給付金 | 支給元 | 支給額 |
---|---|---|---|
会社都合による休業 | 休業手当 | 企業 | 平均賃金の60%以上(労働基準法第26条) |
労災による休業 | 休業補償給付(休業特別支給金含む) | 労災保険 | 給付基礎日額の80% ※休業補償給付のみでは60% (休業4日目から) |
出産による休業(産前産後休業) | 出産手当金 | 健康保険 | 1日につき直近12か月の標準報酬月額の平均÷30の3分の2相当額 |
育児休業 | 育児休業給付金 | 雇用保険 | 休業開始時賃金の67%(180日経過後は50%) |
介護休業 | 介護休業給付金 | 雇用保険 | 休業開始時賃金の67% |
休職・休業と混同しやすい|休暇と休日、欠勤の意味
休職や休業と似ている言葉として休暇や休日、欠勤があります。労務管理をするうえでも大切な休職・休業の類義語の意味は以下の通りです。
用語 | 意味 |
---|---|
休暇 | 労働者が労働契約上の労働義務を免除される日 |
休日 | 労働契約において、労働義務のない日として定められた日 |
欠勤 | 労働義務のある日に就労しないこと |
休暇とは
休暇とは、従業員に労働義務がある日に、従業員の申請により労働提供義務を免除される期間を指します。一般的に、休職・休業より短い期間の休みです。法定の年次有給休暇や、企業が独自に定める特別休暇などが「休暇」に該当します。
休暇中は雇用関係が継続しており、多くの場合、給与も支払われます。
休暇の目的は、従業員の心身のリフレッシュや私的な用事の遂行などであり、労働者の権利として保障されています。年次有給休暇以外の休暇については、企業の規定や労使間の合意に基づいて取得します。
休日とは
休日とは、労働契約上、従業員に労働義務がないと定められた日です。法定休日(週1日または4週4日)と、企業が独自に定める所定休日(法定外休日)があります。
休日は従業員の休息と生活のために設けられ、原則として労働を要求されません。
ただし、休日労働が行われる場合もあり、割増賃金の支払い義務が発生します。法定休日に就労した場合は35%以上、所定休日に就労した場合は25%以上の割増率が適用されます。
休日は労働義務がない日であるため、年次有給休暇の取得対象日には該当しません。
欠勤とは
欠勤は、従業員が労働契約上の労務提供義務がある日に、就労しないことを指します。
欠勤には法律上の定義があるわけではありません。しかし、休暇や休職とは異なり、事前の申請や承認を経ずに、勝手に休むことと定義している会社が多いかもしれません。
欠勤は原則として無給扱いとなり、頻繁な欠勤は減給や解雇など懲戒処分の対象となる可能性があります。ただし、病気や事故など、やむを得ない事情による欠勤は、事後の届け出により承認されることもあります。
休職と休業の違いを理解して適切な労務管理を
休職と休業は、雇用関係を継続しながら業務をしない点では共通しています。しかし、目的や法的根拠、期間、給与や社会保険料の扱いが異なります。
休職と休業の違いを理解することで、状況に応じた労務管理が可能となるでしょう。人事労務担当者は、休職と休業の違いを正しく把握し、社内制度や社会保険手続きを適切に進めることが大切です。
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