年齢別の社会保険の手続き方法や注意点を解説!
社会保険の手続きは従業員の年齢ごとに変わる場合があるため、担当者は正しく把握しておく必要があります。本記事では、年齢ごとの社会保険の手続きを、狭義の社会保険である「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」についてご紹介します。従業員の年齢ごとの手続きや変更点を知りたいと思っている方は、ぜひ参考にしてください。
従業員の年齢ごとの社会保険の手続きを把握する重要性
社会保険にはさまざまな種類があり、それぞれの保険によって年齢ごとに資格喪失などの変更手続きが必要です。対象の年齢になったときに必要な手続きをしなかった場合、従業員に大きな影響を与えることもあります。
また「改正高年齢者雇用安定法」など、高年齢者が社会で活躍できるように環境整備をはかる法律も施行されているため、年齢ごとの社会保険の手続きを把握しておくことは大変重要といえます。
従業員の年齢ごとに必要な社会保険の手続き
従業員の年齢ごとに必要な社会保険の手続きを、40歳と60歳、65歳、70歳、75歳それぞれの場合で解説します。
40歳:介護保険
従業員が40歳を迎えると「第2号被保険者」となり「介護保険料」の徴収が開始されます。企業として必要な届け出はありませんが、給与から介護保険料を控除するため、給与計算を行う際は注意しましょう。
60歳:雇用保険・健康保険・厚生年金保険
従業員が60歳になった場合「定年退職」か「継続再雇用」かで手続きが異なります。それぞれのケースごとに解説します。
従業員が定年退職する場合の手続き
従業員が定年退職する場合、社会保険と雇用保険の資格喪失手続きが必要です。通常の退職者手続きと同様「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者資格喪失届」を作成して提出しましょう。
従業員が再雇用された場合の手続き
60歳になって雇用を継続する場合、条件を満たすことで「高年齢雇用継続基本給付金」の受給が可能です。高年齢雇用継続基本給付金の概要は下記の通りです。
高年齢雇用継続基本給付金の条件 |
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・60歳以上65歳未満の雇用被保険者 ・賃金が60歳到達時の賃金月額の75%未満 ・被保険者であった期間が5年以上 |
必要書類(初回申請) |
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・雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書 ・高年齢雇用継続給付受給資格確認票 ・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書 ・被保険者が雇用されていることの事実がわかるもの ・年齢が確認できるもの |
必要書類が揃ったら、管轄のハローワークに提出します。
再雇用後の給与に応じた標準報酬月額を決定する際は「同日得喪」の手続きを利用します。定年後の再雇用で給与が減額された場合、通常4か月後に社会保険料が改定されますが、その間は高すぎる社会保険料を支払い続けることになります。そのため「同日得喪」の手続きを行い、下がった後の給与額に見合った標準報酬月額を決定します。
65歳:介護保険
65歳からは介護保険の「第1号被保険者」となります。介護保険料は「満65歳(65歳の誕生日の前日)に達したとき」から徴収されなくなるのがポイントです。企業としては、特に必要な届け出はありません。
70歳:厚生年金保険
70歳を迎えると厚生年金保険の被保険者資格が喪失し、以降は厚生年金保険70歳以上被用者に該当します。基本的に会社での手続きは不要ですが、70歳到達日の標準報酬月額が従前と異なる場合は「70歳到達届」の提出が必要です。また、新たに70歳以上の従業員を採用した場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」と「厚生年金保険70歳以上被用者該当届」を提出します。どちらも提出先は、年金事務所になります。
参考:『健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得 厚生年金保険70歳以上被用者該当届』日本年金機構
75歳:健康保険
75歳になると健康保険の資格が喪失し「後期高齢者医療制度」への加入が必要になります。後期高齢者医療制度は、75歳以上、または65歳以上75歳未満で一定の障害のある人が加入する医療保険制度です。
後期高齢者医療制度の加入に関しては手続きが不要ですが、健康保険の資格喪失の手続きは必要です。「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格喪失届」を作成し、健康保険証と高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証とともに年金事務所へ提出しましょう。
社会保険の年齢ごとの手続きにおける注意点
社会保険を年齢ごとに手続きする際の注意点を解説します。
年齢到達日とは「誕生日の前日」を指す
社会保険では「誕生日当日」を1日目とします。そのため、基準となる年齢到達日は原則として誕生日の前日であり、たとえば社会保険で65歳となるのは、65歳の誕生日の1日前と捉えられます。具体的に、誕生日が1日の人のケースで考えてみましょう。介護保険料において誕生日が6月1日の場合、40歳の到達日が5月に属するため、5月分から徴収されることになります。ただし、75歳の健康保険の資格喪失の場合は誕生日当日が基準のため、注意が必要です。
雇用保険・労災保険に年齢上限はない
雇用保険・労災保険に年齢上限はなく、65歳以上も条件を満たす場合は「高年齢被保険者」として雇用保険の適用対象です。また、労災保険にはすべての労働者が加入しなければいけません。
高年齢雇用継続給付金の見直しについて把握しておく
高年齢雇用継続給付金については見直しが行われており、令和7年度から新たに60歳となる労働者への給付率が賃金の15%から10%に縮小されます。その背景として、高年齢者雇用安定法の改正により、高年齢者でも働ける環境が整備されてきていることが挙げられます。高齢者の離職が増える可能性があるため、企業としても対策が必要です。
参考:『高年齢雇用継続給付の見直し(雇用保険法関係)』厚生労働省
そのほか年齢以外で知っておきたい社会保険の変更手続き
そのほか、知っておくべき社会保険の変更手続きについて解説します。
住所変更があった場合の手続き
マイナンバーと基礎年金番号が紐づいている従業員であれば、原則として届け出は不要です。一方、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていない場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届」を年金事務所に提出しなければいけません。
健康保険・厚生年金保険 被保険者住所変更届は2枚つづりになっており、単身赴任などで従業員本人だけが引っ越すときは1枚目だけを提出し、被扶養家族全員で引っ越す場合は「被扶養配偶者の住所変更欄」への記載が必要です。配偶者が国民年金第3号被保険者に該当するケースでは、2枚目の「国民年金第3号被保険者住所変更届」も提出します。
氏名に変更があった場合の手続き
従業員の氏名に変更があった場合、原則手続きは不要です。ただし、マイナンバーと基礎年金番号が結びついていなかったり、健康保険(全国健康保険協会管掌)のみに加入していたりといった場合は「健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更届」が必要になります。
まとめ
社会保険では、年齢ごとに資格喪失などの変更手続きが必要です。そのため、従業員が対象年齢に到達した際は、それぞれに対応した適切な手続きを行うことが重要です。40歳からは介護保険料の徴収が開始され、65歳になると終了します。また、60歳では定年退職するか再雇用するかで対応が分かれる点がポイントです。70歳で厚生年金保険70歳被用者になり、75歳では後期高齢者医療制度への加入が必要になります。
これらの手続きで注意すべき点として、誕生日の前日が年齢到達日に該当することや雇用保険・労災保険には年齢上限がないことが挙げられます。さらに、高年齢雇用継続給付金の近年行われた見直しについても把握しておかなければなりません。
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