試用期間とは? 解雇や待遇、注意点も解説

試用期間とは? 解雇や待遇、注意点も解説

試用期間とは、企業が本採用を行う前に、求職者が自社で働く適性があるかどうかを見極める期間です。試用期間を設けることで、採用後のミスマッチを避けられ、人材定着にもつながります。

試用期間を設定していない企業の中には、試用期間の内容やメリットがわからないというケースもあるでしょう。

本記事では、試用期間の内容や目的、メリット・デメリット、注意点などを解説します。採用後のミスマッチに悩んでいる企業や、試用期間の導入を検討している経営層・人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

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    試用期間とは

    試用期間とは、企業が求職者を従業員として本採用する前に、実際の働きぶりなどを見て、適性があるかどうかを判断するための期間です。

    試用期間を設ける場合、企業は雇用契約書や就業規則に明記しなければなりません。特に、試用期間と本採用で勤務条件などに違いがある場合は注意する必要があります。

    試用期間後は、労使双方の合意のもと、本採用を行います。

    試用期間の長さ

    試用期間には具体的な規定はありませんが、通常は長期的な雇用を前提として設定されます。一般的な試用期間の目安は、1〜6か月程度です。

    試用期間を設ける対象

    試用期間は、正社員だけでなく、アルバイトやパート、契約社員など、あらゆる雇用形態において設定できます。企業は、雇用形態にかかわらず、適切な試用期間を設定して従業員の適性を評価します。

    試用期間の目的

    企業が試用期間を設ける目的は、自社の従業員として問題なく働けるかを確認するためです。試用期間の働きぶりを見て、適性があるかどうかを見極めます。

    研修期間との違い

    試用期間と研修期間の違いは、設定の目的です。

    試用期間は、自社で働くうえで適性があるかどうかを見極めることを目的として設定されます。

    一方、研修期間を設定する目的は、採用した人材が仕事をこなせるようになるために、業務の指導や訓練を行うことです。

    試用期間中の解雇

    企業は、試用期間中であっても、採用した人材と長期雇用を前提とした契約を締結している状態であるため、簡単には解雇できません。

    解雇できるケースとしては、勤務態度の問題や経歴詐称、欠勤の多さなど、正当な理由がある場合です。

    企業が正当な理由をもとに、試用期間中に解雇する場合も、30日前に予告するか解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払わなければなりません。ただし、試用期間が開始してから14日以内は、解雇予告の義務を果たさずに解雇できます。

    参照:『労働基準法 第20条、21条』e-Goc法令検索

    試用期間中の待遇

    試用期間中の待遇は、一般的に本採用の場合と同等です。

    試用期間中の待遇を別に設けたいときは、試用期間と本採用における待遇の内容や労働条件を就業規則などに明記しなければなりません。

    試用期間と本採用の賃金差

    試用期間中と本採用で賃金差を設ける場合、試用期間中であっても、原則として最低賃金を超えなければなりません。

    仮に、最低賃金を下回る給与を設定したい場合は、都道府県労働局長の許可を得たうえで、個別に対応します。許可を得たとしても、減額率は20%、期間は6か月までという点に注意しましょう。

    参照:『最低賃金の減額の特例許可申請について』厚生労働省

    試用期間中の保険

    試用期間中でも、各種保険の扱いは本採用と変わりません。

    企業は、採用した人材の意思に関係なく、労働保険や社会保険などの加入条件を満たす人材を各種保険に加入させなければなりません。

    加入条件を満たすかどうかは、雇用契約や労働条件、就労実態を踏まえて判断し、企業側が保険加入の手続きを行いましょう。

    試用期間を設けるメリット

    試用期間を設けるメリットには、どのような点が挙げられるのでしょうか。具体的な内容を紹介します。

    • 採用のミスマッチを防止できる
    • 人材配置に役立つ

    採用のミスマッチを防止できる

    試用期間によって、採用した人材の適性を見極められるため、本採用におけるミスマッチを回避できるでしょう。

    試用期間中であったとしても、企業は正当な理由なく解雇することはできません。ただし、勤務態度の問題や遅刻・欠勤などが目立ったり、契約当初に期待していたスキルが著しく不足していたりする場合は、本採用に移る前に解雇できることもあります。

    人材配置に役立つ

    試用期間を設けることで、企業側は採用した人材の働きぶりや適性を見れるため、本採用後の配属決定に役立ちます。適材適所の人材配置をしやすくなる点もメリットの一つといえるでしょう。

    試用期間を設けるデメリット

    試用期間にメリットがある一方、デメリットもあります。具体的なデメリットを確認してみましょう。

    • 採用コストがかかる
    • 本採用を辞退するリスクがある

    採用コストがかかる

    試用期間を設けることで、採用コストの負担が大きくなります。

    試用期間中は、上司や人事担当者などが採用した人材を観察しなければなりません。教育や指導などのサポートも必要です。通常業務と並行して行わなければならないため、人的コストの負担が増えるでしょう。

    本採用を辞退するリスクがある

    試用期間によって、採用した人材が職場や業務について不満や不安を抱えた場合、本採用を辞退する可能性も少なくありません。

    そのため、試用期間を設けたとしても、コストや労力が無駄になってしまうリスクも考えられます。

    試用期間中に確認すべき点

    企業側が試用期間中に確認すべき点は、採用された人材が自社で問題なく働けるかどうか本採用の判断や本採用後の人材配置などにも有効です。

    本採用を判断するためには、具体的に以下のような点を確認します。

    • 勤務態度は問題ないか
    • 勤務実績は問題ないか
    • 採用選考時に記載されていた内容や発言に相違はないか
    • 企業のルールを守れているか
    • 業務遂行が問題なく行えるか

    人材配置や定着においては、以下の点を確認します。

    • 業務に適性があるか
    • 人間関係に問題はないか
    • 部署やチームの雰囲気に合っているか
    • 積極的にコミュニケーションや会議中の発言があるか

    解雇だけでなく、本採用後の人材配置においてもさまざまな視点から試用期間中の人材を観察する必要があります。確認する際は、共通のチェックシートなどを活用すると効率的です。

    試用期間における注意点

    試用期間とは? 解雇や待遇、注意点も解説

    試用期間中や試用期間後において、企業側が注意すべき点を紹介します。

    • 本採用時と同様の労務管理を行う
    • 試用期間の延長は労働者本人の合意が必要
    • 正当な理由なく解雇はできない

    本採用時と同様の労務管理を行う

    試用期間と本採用において、労務管理の方法に差はありません。試用期間であっても労働者には権利があり、各種保険や有給休暇、福利厚生の制度も適用されるためです。

    とりわけ、有給休暇の付与には注意しなければなりません。

    有給休暇は、条件を満たす労働者に与えられる権利です。付与条件には「6か月間継続して勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者」と勤務期間が定められています。継続勤務の期間には、試用期間も含んで計算しましょう。

    参照:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省

    試用期間の延長は労働者本人の合意が必要

    企業が、当初設けた試用期間だけで本採用を決定できない場合は、採用した人材の合意を得たうえで延長できます。

    試用期間の延長は、以下のケースで認められます。

    • 就業規則や雇用契約書などに試用期間延長の可能性を明記している
    • 試用期間延長の可能性を対象者に事前に伝えている
    • 延長すべき正当な理由がある
    • 延長期間が適切である

    正当な理由なく解雇はできない

    試用期間において、正当な理由がない状況では、採用した人材を解雇できません。正当な理由とは社会通念上、以下のケースが挙げられます。

    • 勤務実態が良好でない場合
    • 勤務態度が悪い場合
    • 経歴詐称が見つかった場合
    • 健康状態に問題があり、業務遂行が行えない場合
    • 会社や業務への適性が著しく乏しい場合

    このように、客観的に合理的な理由がなければ企業側が解雇することはできません。

    また、勤務実態や勤務態度においては、本人が改善できるよう、企業側が注意・指導する努力義務もあるため、注意しましょう。

    また、企業が正当な理由のもとに解雇するときは、適切に解雇通知を実施する必要があります。企業は口頭で解雇通知をするだけでなく、書面を通して通知するのが望ましいでしょう。

    解雇通知書に記載する内容は、以下の項目です。

    • 解雇の通知日
    • 解雇する従業員の氏名
    • 解雇する企業名
    • 解雇日
    • 解雇理由

    解雇通知書を発行すれば、解雇日や解雇通知を行った事実を証明できるため、トラブル防止にもつながります。

    試用期間で人材を見極めるポイント

    試用期間において、企業が人材を見極めるポイントを紹介します。本採用の判断だけでなく、本採用後の人材定着などにもお役立てください。

    • 質問やフィードバックの機会を設ける
    • 職場全体の雰囲気を理解できるようにする
    • 教育担当者の負担も考慮する

    質問やフィードバックの機会を設ける

    試用期間は、企業側だけでなく採用された人材が会社を見極める期間でもあります。

    試用期間の業務を通して、不安点や質問したい点が出てくることもあるでしょう。企業側も、試用期間中にフィードバックを行う必要があります。

    面談や1on1ミーティングを設け、労使間で気軽に話し合ったり、コミュニケーションを取ったりできる時間を用意しましょう。

    職場全体の雰囲気を理解できるようにする

    試用期間中は、業務を行う部署やチームだけでなく、企業の全体像を把握できるような体制を整えておきましょう。

    企業の全体像を把握してもらうためには、組織図の説明や他部署の見学、会社案内の実施など、さまざまな方法があります。

    採用された人材が企業の全体像を把握することで、より働くイメージを深めたり、自分との相性を見極めたりする材料にできるでしょう。

    教育担当者の負担も考慮する

    試用期間中は、採用した人材だけでなく、教育担当者へのサポートも実施します。

    教育担当者は、通常業務に加えて教育業務を請け負うため、負担が重くなりがちです。企業側は、担当業務の整理や定期的な面談などを行うなどして、教育担当者の状況も考慮しましょう。

    まとめ

    試用期間とは、企業が求職者を従業員として本採用する前に、適性があるかどうかを判断するための期間です。

    試用期間を設けることは、採用のミスマッチ防止や本採用後の配属にも役立つため、人材採用や適切な人材配置に課題を感じる企業が取り入れています。

    試用期間の設定は、メリット以外にもデメリットや注意点もあるため、本記事で紹介した内容も参考にしたうえで、検討してみてはいかがでしょうか。