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試用期間中に解雇できる理由|不当解雇や注意点もご紹介

試用期間の労働者を解雇するには正当な理由が必要です。正当な理由とは、社会通念上、相当と認められるものや、会社に損失や不利益をもたらすようなものが挙げられます。

試用期間を設ける場合、企業は解雇を行う権利を持ちますが、簡単に解雇できるとは限りません。

本記事では、試用期間中の解雇理由について、認められるケースや不当解雇になるケースを解説します。記事後半では、試用期間中に解雇できないときの対処方法も紹介しますので、企業の経営層や人事担当者は参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

試用期間中に解雇できる理由|不当解雇や注意点もご紹介
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    試用期間とは

    試用期間とは、企業が求職者を本採用する前に、実際に働いてもらったうえで適性があるかどうかを判断するための期間です。試用期間を設ける企業は、雇用契約書や就業規則に明記しておく必要があります。

    期間の目安としては、1〜6か月程度とするのが一般的ですが、明確な基準や決まりがあるわけではありません。

    また、試用期間は雇用形態にかかわらず設定が可能です。そのため、正社員だけでなく、アルバイトやパートなどの短時間労働者を採用する際に設けても問題ありません。。

    試用期間の目的は、自社の従業員として問題なく働けるかどうか適性を見極めることです。試用期間中の勤務に問題がなければ、労使双方の合意のもとで本採用に進みます。

    試用期間と本採用の雇用条件

    試用期間中の雇用条件は、一般的に本採用と同等です。

    ただし試用期間と本採用で条件を変えることもできます。試用期間中の条件を本採用と別に設ける際は、就業規則などに規定しなければなりません。

    試用期間と本採用の賃金差

    試用期間中と本採用で賃金差を設ける場合、試用期間中でも最低賃金を超えるように設定しなければなりません。

    ただし、最低賃金未満の賃金を設定したい場合、都道府県労働局長の許可を得たうえで、個別に対応します。減額率は20%、期間は6か月まで認められています。

    参照:『最低賃金の減額の特例許可申請について』厚生労働省

    試用期間中の保険

    試用期間中の各種保険の扱いは、本採用と変わりません。

    企業は加入条件を満たす人材を、労働保険や社会保険などの各種保険に加入させる義務があるため、労働者の意思に左右されることはありません。

    労働者が各種保険の加入条件を満たすかどうかは、雇用契約や労働条件、就労実態から判断し、企業が加入手続きを行います。

    試用期間中の解雇

    試用期間中、企業側には労働者を解雇できる権利があります。

    しかし、試用期間だからといって、企業は簡単に労働者を解雇できるわけではありません。企業が試用期間中の労働者を解雇するには、正当な理由が必要です。

    また、試用期間中に企業が労働者を解雇するときは、30日前に予告するか、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)を支払わなければなりません。ただし、試用期間の開始から14日以内であれば、予告通知や手当の支払いをせずに解雇できます。

    参照:『労働基準法第20条、21条』e-Goc法令検索

    試用期間中の解雇と対応

    試用期間中に労働者を解雇したい場合、正当な理由がなければ、不当解雇と判断される恐れがあるため、注意しなければなりません。

    また、試用期間中に解雇するには、就業規則などに明記しておく必要があります。

    さらに、解雇する労働者が理由を求めたときは、解雇理由も明示しなければなりません。そのため、実際に解雇する際は、企業が解雇日や解雇理由を記載した解雇通知書を作成し、発行するとよいでしょう。

    試用期間中の解雇理由

    試用期間中の解雇理由は、正当であり社会通念上相当である必要があります。具体的にどのような理由が認められるのか紹介します。

    • 能力不足が改善しない
    • 会社に損失を与えている
    • 健康上の理由で業務遂行が難しい
    • 勤怠に問題がある
    • 採用選考時の情報と相違があった

    能力不足が改善しない

    試用期間中に解雇できる理由には、労働者の能力不足が改善しないケースが挙げられます。このときに大切なのが、企業側が十分な指導や教育を行ったかどうかという点です。

    単なる能力不足であるだけでなく、企業側が十分な指導を行っても改善が見込めないような状況でなければ認められません。

    繰り返し指導し、特定の部署だけでなく複数の部署の業務に従事させるなど、改善を試みる必要があります。

    会社に損失を与えている

    労働者が会社に損失を与えている場合も、試用期間中に解雇できる理由になります。

    たとえば、労働者によるミスやトラブルなどが続き、会社に損失や経営上の支障が生じるような状況です。

    労働者が会社に損失を生じさせているという理由で解雇するときは、客観的な根拠が求められるため、準備しておきましょう。

    健康上の理由で業務遂行が難しい

    試用期間中に解雇できるケースには、健康上の理由も挙げられます。

    たとえば、試用期間中に労働者が病気などによって長期的な治療を必要とし、その後の業務遂行が難しい状況です。

    健康上の理由で解雇を検討するのであれば、まずは企業側が休職などの対応を取り、治療後の復職を待ってみましょう。復職後や相当期間の経過後も業務遂行が難しい場合、解雇できる可能性があります。

    勤怠に問題がある

    試用期間中に解雇できる理由として、遅刻や欠勤の多さなど、勤怠に問題がある場合も挙げられます。このときも、企業が注意や指導をしたうえで判断しましょう。

    採用選考時の情報と相違があった

    試用期間中に解雇できる理由は、採用選考で把握していた内容に、相違があったケースでも認められます。

    たとえば、経歴詐称や面接時の発言と実態に、大きな食い違いがあった場合などです。実際に業務に支障が生じたり、経歴詐称が発覚したりすると、正当な解雇理由に該当するでしょう。

    不当解雇になり得るケース

    企業が試用期間中の労働者を解雇するときは、正当な理由であり、社会通念上相当と認められなければなりません。反対に不当解雇として扱われる可能性が高いケースを紹介します。

    • 能力不足のみを理由とした解雇
    • 労働者の言い分を聞かない解雇
    • 予告なしの解雇

    能力不足のみを理由とした解雇

    試用期間中に能力不足という理由のみで解雇するのは、不当解雇に該当する恐れがあります。

    労働者が能力不足と認められる場合、企業は指導や教育、配置転換など考えられる措置を可能な限り取らなければなりません。十分な考慮や措置を行ったうえで、簡単な業務さえも遂行できないのであれば、解雇が認められる可能性があります。

    特に、新卒採用や未経験者採用は、能力がないことを前提とした採用であるため、注意しましょう。

    労働者の言い分を聞かない解雇

    試用期間中に解雇する際は、労働者の言い分も聞く必要があります。労働者の話に耳を傾けず、一方的に解雇すると、あとからトラブルに発展する恐れがあります。

    企業が試用期間中の労働者を解雇したいのであれば、まずは労働者との話し合いの場を設け、互いの言い分を伝え合いましょう。

    予告なしの解雇

    試用期間中の解雇でも、労働基準法上、企業は通常の解雇と同様に解雇予告を行う必要があります。そのため、解雇予定日から30日前までに解雇の旨を労働者に伝えなければなりません。

    即日解雇を行う場合は、解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払い義務が発生します。

    参照:『解雇には30日以上前の予告が必要です』厚生労働省

    試用期間に解雇する際の流れ

    試用期間中に解雇できる理由|不当解雇や注意点もご紹介

    試用期間中に労働者を解雇する際も、正しい手順で必要な手続きを踏む必要があります。不当解雇とならないように、適切な手順を把握しておきましょう。

    1. 解雇理由の明示
    2. 解雇予告

    1.解雇理由の明示

    企業は、試用期間中の解雇について、就業規則などに明記しておく必要があります。

    解雇理由に該当する可能性がある内容も具体的に明記し、今回の解雇がどれに当たるのかどうかも確認できるようにしておきましょう。

    2.解雇予告

    試用期間の開始からの経過日数を確認し、解雇予告が必要かどうかを確認します。

    試用期間開始から14日以内であれば解雇予告は不要です。しかし、14日を超える場合は30日以上前に解雇予告をしなければなりません。

    試用期間が14日を超えているにもかかわらず、解雇予告なしに解雇するのは、不当解雇に該当し、トラブルに発展するのは避けられない可能性があるため、注意しましょう。

    また、試用期間開始から14日以内に適性や素質などを見極めるのは難しいのも事実です。そのため、企業側が必要な措置を取れていないとみなされ、不当解雇にあたることもあります。

    なお、企業の解雇予告は、解雇通知書などの書面を発行して実施するのが望ましいでしょう。

    解雇通知書に記載する内容は、以下の項目です。

    • 解雇の通知日
    • 解雇する従業員の氏名
    • 解雇する企業名
    • 解雇日
    • 解雇理由

    解雇通知書を発行すれば、解雇日や解雇通知を行った事実を証明できるため、あとのトラブル防止にもつながります。

    試用期間中の解雇における注意点

    試用期間中に解雇を行う場合、企業側は注意すべき点があります。

    • 試用期間中の解雇は会社都合になる
    • 企業が十分な指導や教育をせず、能力不足のみを理由にしていないか
    • 解雇予告を行ったか
    • 試用期間の途中で解雇していないか

    特に、試用期間終了を待たずに解雇することは、期間中に十分な指導や教育を行っていないとみなされてしまうと、不当解雇と判断される可能性もあります。

    解雇の事案は労使間でトラブルに発展しやすいため、あらかじめ注意点を心得ておきましょう。

    試用期間中の解雇が難しい場合

    試用期間中の解雇ができない状況において、企業ができる対処法を紹介します。

    • 退職を勧める
    • 試用期間を延長する

    退職を勧める

    試用期間中に解雇したい場合、労働者に退職をすすめる方法があります。ただし、退職推奨は強制力がないため、企業側が退職を推奨しても労働者が応じない可能性もあります。

    また、繰り返し退職をすすめると、パワーハラスメントや退職強要に該当する恐れもあるため、程度や伝え方に注意しましょう。

    試用期間を延長する

    試用期間中に解雇が難しいのであれば、期間を延長するという方法もあります。

    試用期間の延長は、以下のケースで認められます。

    • 就業規則や雇用契約書などに試用期間延長の可能性を明記している
    • 試用期間延長の可能性を対象者に事前に伝えている
    • 延長すべき正当な理由がある
    • 延長期間が適切である

    試用期間を延長する際は、労働者の同意が必要であるため、事前に話し合いの場を設けるなどして双方納得のうえ、決定しましょう。

    まとめ

    試用期間中の解雇理由は、正当であり社会通念上相当と考えられるものでなければなりません。

    解雇が認められる可能性が高い理由は以下の通りです。

    • 能力不足が改善しない
    • 会社に損失を与えている
    • 健康上の理由で業務遂行が難しい
    • 勤怠に問題がある
    • 採用選考時の情報と相違があった

    試用期間中に解雇を実施する場合、正当な理由として認められないと、あとに労務トラブルに発展し、不当解雇と扱われたりするリスクがあるため、慎重に判断しましょう。