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就業規則の変更届の作成方法とは? タイミングや方法、注意点も詳しく解説

就業規則の変更届の作成方法とは? タイミングや方法、注意点も詳しく解説

就業規則は、法律の改正や労働環境の変化に応じて変更する必要があります。その際には「変更届」を作成しなくてはいけません。担当者の中には、就業規則の変更方法や変更届についてよくわかっていない方もいるのではないでしょうか。

そこで本記事では、就業規則のタイミングや注意事項などをご紹介します。就業規則の変更を行う際に、お役立てください。

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    就業規則に記載されている内容

    就業規則の変更にあたっては、就業規則に記載されている内容を把握しておくことが重要です。就業規則の記載内容は大きく分けて、「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意的記載事項」の3つです。それぞれの事項について解説します。

    就業規則の絶対的必要記載事項

    「絶対的記載事項」は、就業規則に必ず記載しなければいけない事項です。絶対的記載事項の記載がない場合、就業規則として法的不備があるとみなされます。絶対的記載事項の具体的な内容は、下記の通りです。

    • 始業時刻
    • 終業時刻
    • 休憩時間
    • 休日
    • 休暇(交替制の場合には就業時転換に関する事項)
    • 賃金の決定、計算の方法
    • 賃金の支払の方法
    • 賃金の締切りおよび支払の時期
    • 昇給に関する事項
    • 退職に関する事項(解雇事由を含む)

    就業規則には、これらすべての項目が揃っている必要があります。

    就業規則の相対的必要記載事項

    「相対的必要記載事項」とは、企業に定めがあれば、記載しなければならない事項です。相対的必要記載事項の具体例は、以下の通りです。

    1. 退職手当に関する事項
    2. 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
    3. 食費、作業用品などの負担に関する事項
    4. 安全・衛生に関する事項
    5. 職業訓練に関する事項
    6. 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
    7. 表彰・制裁に関する事項
    8. その他、全労働者に適用される事項

    たとえば、テレワーク制度を取り入れている企業では、在宅勤務の際に負担してもらう通信費について3.の事項を記載しなくてはいけません。

    参照:『就業規則を作成しましょう』 厚生労働省

    就業規則の任意的記載事項

    「任意的記載事項」は、就業規則に記載するか否か自由である記載事項です。記載の義務はありませんが、書けば有効と判断されるため、労務トラブルに備えて項目を設けておくのもよいでしょう。

    任意的記載事項の具体例は、以下の通りです。

    • 「服務規律」に関する規定
    • 「休職」に関する規定
    • 「採用」に関する規定
    • 「異動」に関する規定

    また、必要に応じて以下の事項も追加しておきましょう。

    • 就業規則の適用範囲に関する規定
    • 試用期間に関する規定
    • 身元保証に関する規定
    • 業務の過程で発明や著作物の作成があったときの知的財産権の帰属に関する規定
    • 残業に関する規定
    • 会社から従業員に損害賠償を求める場合に関する規定

    参照:『モデル就業規則(R4.11版)』 厚生労働省

    就業規則を変更するタイミング

    就業規則を変更するタイミングを2つご紹介します。

    労働関連の法令の改正

    労働関連法の改正や最低賃金の見直しがされた場合、就業規則の変更が必要です。労働関連法とは労働基準法だけでなく、育児・介護休業法や労働安全衛生法など多岐にわたる点に注意しましょう。

    地域別最低賃金は毎年秋に改定されるため、定期的に確認する必要があります。改定された最低賃金を下回るようであれば、早急に賃金を引き上げた就業規則に変更しなければいけません。

    なお、法令よりも従業員の待遇や立場が不利な就業規則の該当部分は無効となります。

    労働環境の変化や経営状況

    法令関連だけでなく、企業や事業所の個別の事由による以下のようなケースでも就業規則を変更する必要があります。

    • 実態と就業規則の内容がそぐわない場合
    • 経営状況が悪化し、賃金水準の維持が困難な場合
    • 企業の成長やデジタル化、働き方改革などによって労働環境が変化した場合

    参照:『中小企業のための就業規則講座』 厚生労働省

    就業規則の変更に必要な書類

    就業規則変更の際に必要となる書類は、「就業規則変更届」「従業員代表の意見書」「変更後の就業規則」の3つです。それぞれについて解説します。

    就業規則変更届

    就業規則を変更する際は、「就業規則変更届」を作成して労働基準監督署長に提出します。就業規則変更届の様式は任意ですが、厚生労働省の様式を利用すると効率的に進められるでしょう。

    参照:『主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)』 厚生労働省

    従業員代表の意見書

    従業員代表の意見書は、肯定的な内容でなくても構いません。「特に意見なし」や「変更に反対」の意見書であっても、労働基準監督署長は変更届を受理するため、届出は有効です。

    従業員代表に意見を聞くこと自体が重要です。ただし「不利益変更」の場合は、労使の合意がなければ就業規則の変更はできません。企業側で一方的に進めることはできず、説明会などを開いて従業員の同意を得る必要があります。

    変更後の就業規則

    「変更後の就業規則」は、自社の様式でよいとされています。また、変更部分の朱書きや新旧比較表の添付も可能です。

    従業員代表の選出方法

    従業員代表は、企業側から指名して選出することはできません。また、従業員代表は以下の2要件を満たす必要があります。

    • 労働基準法第41条第2号に定める管理監督者でないこと
    • 正しい手続きに基づいて選ばれた代表であり過半数を超える代表であること

    従業員代表を選出する際は、その有効性を確保することが重要です。そのため、選出は下記の流れで行うとよいでしょう。

    1就業規則変更のための従業員代表を選出することを明確にしてから立候補を募る
    2立候補者の経歴書を作成する
    3全従業員に対し、就業規則変更のための従業員代表を選出することを告示する
    4投票による選挙などの民主的な方法で過半数代表者を選出する(話し合いによる選出の場合は議事録が必要)
    5従業員代表の決定を社内に周知する

    参照:『労働基準法』 e-Gov法令検索

    就業規則の変更方法

    就業規則の変更は、以下の手順で行います。

    1.変更する部分を決めて条文を作成する

    就業規則の変更か所を検討し、合理的で従業員に理解されやすい条文を作成します。変更内容によっては、従業員への説明と同意が必要となるケースもあります。従業員全員が納得できる条文にすることが重要です。

    2.労働者代表による意見書を作成する

    労働基準法第90条によると、就業規則の変更は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないと定められており、この意見内容を記して「意見書」を作成します。意見書の一般的な項目は、以下の通りです。

    1. 記入した日付
    2. 宛名(企業名・社長名)
    3. 就業規則の変更に対する意見
    4. 労働組合の名称もしくは労働者代表の役職・氏名
    5. 労働者代表の選出方法

    参照:『労働基準法 第九十条』 e-Gov法令検索
    参照:『就業規則意見書』 東京労働局

    3.就業規則変更届を作成する

    次に「就業規則変更届」を作成します。就業規則変更届には決まった規定はありませんが、厚生労働省や労働基準監督署のWebサイトからダンロードすると迷うことなく作成できます。就業規則変更届の一般的な内容は、以下の通りです。

    1. 記入した日付
    2. 宛名(労働基準監督署長)
    3. 主な変更事項
    4. 労働保険番号
    5. 事業所名
    6. 所在地
    7. 使用者職氏名(社長名)
    8. 業種
    9. 労働者数

    3.の「主な変更事項」には、就業規則の変更か所について、変更前・変更後に分けて記載しましょう。

    参照:『就業規則(変更)届』 厚生労働省

    4.新しい就業規則を作成する

    新しい就業規則を作成します。もとの就業規則を変更しても問題ありません。労働基準監督署長に提出できるように仕上げましょう。

    5.必要書類を所轄労働基準監督署長に提出する

    必要な書類がそろったら確認し、所轄の労働基準監督署長に提出します。届出は、就業規則の変更日までに行う必要があります。窓口への持参や郵送に加え、電子申請でも届出可能です。「e-Gov」を利用すれば、いつでもどこからでも届け出ることができて大変便利です。

    参照:『労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について』 厚生労働省

    就業規則変更届の注意点

    就業規則変更届の作成や届出の際、注意するべきことがあります。ここでは、就業規則変更届における注意点を4つご紹介します。

    必ず従業員に周知する

    労働基準法第106条により、就業規則を変更した場合は全従業員に周知させることが義務づけられています。周知の方法としては、変更した就業規則の文書を目立つ場所への掲示や、全ての従業員に変更内容を配布することが推奨されます。これにより、新しい就業規則を理解し、適切に行動できるでしょう。届出をしても従業員に周知されなければ無効となるため、注意が必要です。

    参照:『就業規則を作成しましょう』 厚生労働省

    変更届出は速やかに行う

    労働基準法施行規則第49条に、「使用者は、常時十人以上の労働者を使用するに至つた場合においては、遅滞なく、法第八十九条の規定による就業規則の届出を所轄労働基準監督署長にしなければならない」とあります。そのため、届出の際は、所定の手続きを行い速やかに届け出ることが大事です。

    参照:『労働基準法 施行規則第四十九条』 e-Gov法令検索

    従業員にとって不利益な変更には合理的な理由が必要

    労働契約法第9条に「使用者は労働者と合意することなく就業規則を変更することにより労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と定められています。以下のような就業規則変更は労働者の不利益に該当するため、注意が必要です。

    • 賃金の引き下げ
    • 労働時間の変更
    • 手当の廃止
    • 年間休日の削減
    • 福利厚生の廃止

    ただし、判例により、就業規則変更の理由が合理的であれば、従業員に不利益であっても変更が可能とされています。

    参照:『労働契約法 第九条』 e-Gov法令検索
    参照:『就業規則の不利益変更は許されるか』 厚生労働省

    意見書の作成を拒否された場合は報告書を提出する

    不利益変更では意見書の聞き取りを拒否されるケースもあります。意見書が準備できない場合は、意見を聴取した証明として報告書を提出しましょう。

    報告書の具体的な内容は、以下の通りです。

    • 説明した日時
    • 従業員に対しての説明内容
    • 意見の聴取方法
    • 意見の聴取を拒否された経緯

    このような報告書であれば受理されます。

    法律や労働協約などと就業規則の関係性

    就業規則は、法律や労働協約などと関連する部分も多いです。ここでは、法律や労働協約などと就業規則の関係性をご紹介します。

    法に抵触する場合

    書類が揃っていても、法に抵触する就業規則は無効です。労働に関する法律はひんぱんに改正されているため、常に最新の情報を入手する必要があります。法律が改正された場合は、遵守した内容の就業規則に変更しなければいけない点に注意しましょう。

    労働協約と矛盾する就業規則の変更の場合

    企業では、就業規則以外に、企業と労働組合が労働条件などを取り決めた「労働協約」が存在するケースがあります。労働基準法92条では「就業規則は、法令または当該事業場について適用される労働協約に反してはならない」と定められているため、就業規則に労働協約と矛盾する場合は、労働協約の内容が優先されます。

    また、「行政官庁は法令または労働協約に抵触する就業規則の変更を命ずることができる」とも定められています。優先されるのは労働協約であるため、就業規則を変更する際は法律以外に労働協約も遵守することが大切です。

    参照:『労働基準法 第九十二条』 e-Gov法令検索

    就業規則の変更を従業員が反対した場合

    従業員の反対があっても、就業規則の変更は可能です。ただし、不利益変更では合理性が必要であり、法律や労働協約に反する内容は無効です。裁判になるケースもあるので注意しましょう。

    まとめ

    就業規則は、労働関連の法令の改正や労働環境、経営状況が変化したタイミングで変更が必要です。

    就業規則変更の際は、「就業規則変更届」と「従業員代表の意見書」「変更後の就業規則」を作成し、所轄の労働基準監督署長に届出を行います。その際は、従業員に必ず周知し、速やかに届出を行うように注意しましょう。

    また、合理的な理由がなければ、従業員にとって不利益な変更はできません。規定内容の優先順位は、法律・労働協約・就業規則の順であることも覚えておきましょう。

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