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ダブルワークの年末調整|複数の会社で働く場合や確定申告の要不要も解説

ダブルワークの年末調整|複数の会社で働く場合や確定申告の要不要も解説

ダブルワークなど複数の会社で働いている場合は、年末調整を給与所得が多いメインの企業で行います。パートやアルバイトの掛け持ちだけでなく、会社員としての本業以外に副業を行っている方も年末調整を行います。メインの企業以外の収入や所得については確定申告を行うことで、正しい所得税の申告・納税が可能です。

本記事では、複数の会社で働くダブルワークにおける年末調整について解説します。ダブルワークを許可している企業の担当者や、ダブルワークをしている人はぜひ参考にしてください。

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    ダブルワークとは

    ダブルワークとは、本業と掛け持ちをして別の仕事を行うことです。一般的には、以下のような働き方をダブルワークと表現します。

    • 会社員や非正規雇用社員が、ほかの企業でも掛け持ちをして仕事をする場合
    • 会社員や非正規雇用社員が、給与収入以外の所得を得ている場合
    • 給与所得はなく、個人で仕事を2つ行っている場合(事業所得や雑所得等)

    ダブルワークにおける年末調整

    ダブルワークにおいて、企業に雇用されている場合は年末調整の対象です。勤務先が1つの場合はその企業で年末調整を行います。勤務先が2社ある場合は給与収入が多いほうをメイン企業として年末調整を行い、もう一方の勤務先による収入は、確定申告を行うことが必要です。ダブルワークでも、給与収入がない場合は年末調整は行わず、自分で確定申告を行います。

    年末調整とは

    年末調整は、企業が従業員の所得を再計算し、源泉徴収税額との差額を精算する手続きのことです。

    企業では、従業員の給与や賞与から一定の所得税を徴収し、本人に代わって納付しています。企業が行う源泉徴収の金額は概算であるため、正確な所得税額ではありません。従業員が本来納付すべき所得税よりも多く源泉徴収していたり不足したりしている場合もあります。年末調整によって、1年間の所得から正しい納税額を算出し、源泉徴収額と照らし合わせることで、還付もしくは追加で徴収を行うのです。

    年末調整のやり方

    年末調整は、例年11月頃から1月31日までに行います。流れとしては、企業側が年末調整に必要な書類を従業員に配布し、従業員から書類を提出してもらいます。その後、企業側が提出された書類をもとに所得税を再計算し、精算を行います。ミスや抜け漏れ等の修正に対応し、最終的に企業側が税務署や市区町村に必要書類を提出するという流れです。年末調整の流れは、ダブルワークの場合でも変わりません。

    年末調整で、従業員が提出する書類は以下の通りです。

    • 扶養控除等(異動)申告書
    • 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
    • 保険料控除申告書(該当者のみ)
    • 各種控除に必要な証明書(該当者のみ)
    • その他必要書類(住宅借入金等別控除申告書や年度途中入社の場合は源泉徴収票など、該当者のみ)

    確定申告とは

    確定申告とは、納税者本人がその年の所得をもとに所得税額を申告する手続きです。納税者本人が、1年間の所得から経費や控除額を差し引き、正しい所得税額を申告・納付します。源泉徴収された所得によって所得税を多く払いすぎている場合は、確定申告によって還付される場合もあります。また、確定申告では、事業所得など給与以外で得た所得や年末調整では対応できない控除等を反映させられます。

    確定申告は、個人事業主のイメージが強いかもしれませんが、状況によって給与所得者も行います。会社員や非正規雇用社員の場合でも、ダブルワークや副業収入によって納付すべき所得税がある場合や医療費控除・寄付金控除を受けたい場合など、確定申告を行うことは少なくありません。

    ダブルワークで確定申告が必要なケース

    ダブルワークにおいて年末調整だけでなく確定申告が必要になるケースをご紹介します。

    2つの勤務先があり、メイン企業で年末調整を受ける

    年末調整は、1人につき1つの企業のみが行う手続きです。2つ以上の企業から給与が支払われている場合、一般的には支払われている給与が多い企業で年末調整を行い、それ以外の企業における給与所得が1年間で20万円を超えた場合、確定申告を行わなければなりません。

    勤務する2つの企業においてどちらも年末調整をしない

    本来、給与所得を得ている場合は、ダブルワークであってもメイン企業で年末調整を行うことが必要です。しかし、「扶養控除等(異動)申告書」が未提出の場合には、給与所得が2箇所以上からあっても、年末調整を行いません。この場合には、自身で確定申告を行い、各種控除の適用を受けることになります。

    企業では、給与から源泉徴収を行っていますが、正しい所得税額ではありません。正しい所得税を納めるために、必ず確定申告を行いましょう。

    扶養控除等(異動)申告書とは

    扶養控除等(異動)申告書は、給与所得者が扶養控除などをはじめとした各種控除を受けるために提出する書類です。ダブルワークで働く場合も、年末調整を受けるためには必ず提出する書類です。

    従業員がこの書類を提出しないと、会社側は年末調整を行えません。つまり、企業は「扶養控除等(異動)申告書」が提出されていることを前提として、1年を通して勤務する従業員を対象に年末調整を行います。

    参照:『A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告』国税庁

    年末調整を複数企業でしてしまったとき

    年末調整は、1つの企業のみで行える手続きであるため、複数企業では行えません。パートやアルバイトを掛け持ちしている場合でも、メインの企業に絞って行います。万が一、複数企業で年末調整をしてしまった場合には、年末調整期限内に修正を行うか、確定申告を行います。

    給与所得以外に20万円を超える所得があるとき

    給与所得や退職所得以外で、1年間で20万円を超える所得がある場合、年末調整とは別で確定申告する必要があります。たとえば副業収入や株式の売買などによって得た所得などが該当します。

    個人におけるダブルワークの所得額が基礎控除額を超えるとき

    個人で複数の仕事(ダブルワーク)をしている場合、所得額によって確定申告を行わなければなりません。事業所得や雑所得など、所得の合計額が基礎控除額の48万円を超えた場合は確定申告が必要です。

    ダブルワークで確定申告が不要なケース

    ダブルワークをしている場合でも、状況によって確定申告を不要とする場合があります。具体的にどのようなケースが該当するのか、確認してみましょう。

    年収が103万円以下

    2つの企業で給与所得を得ていても、その年の給与収入が103万円以下かつどちらの企業でも源泉徴収されていなければ確定申告は不要です。

    そもそも年収103万円以内ということは、課税所得の対象外です。基礎控除48万円と給与所得控除の55万円を適用する場合、合計の控除額が103万円となり、これを給与収入から差し引けます。103万円以内の給与収入であれば、基礎控除と給与所得控除でカバーできるため、課税所得は0円になり、確定申告は不要となるわけです。

    ただし、これは源泉徴収がされていない場合です。源泉徴収は、基本的に88,000円以上の月収がある場合に行います。1年間の給与収入額は103万円以内でも、月によって88,000円以上の収入がある場合は源泉徴収されるため、確定申告を行う必要があるのです。

    参照:『No.2514 パートやアルバイトの源泉徴収』国税庁

    メイン企業でない企業の給与収入や給与以外の所得が20万円以下

    ダブルワークによって、年末調整を受けていない企業における給与収入や、個人の仕事が20万円以下の場合も、確定申告は不要です。ただし、年末調整で対応できない控除を受けるためには確定申告が必要です。総合的に考えて、確定申告の要不要を考えましょう。

    ダブルワークをしている人の確定申告方法

    ダブルワークの年末調整|複数の会社で働く場合や確定申告の要不要も解説

    ダブルワークにおける確定申告も、納税者本人が手続きを行います。納税者は、申告書類を作成・提出し、所得税を納税します。具体的には、1年間の収入から経費を差し引き、所得金額を計算します。さらに、納税者が受けたい控除申請を行い、課税所得額を計算することが必要です。所得金額に応じた税率を課税所得に乗じれば納税額が算出されます。

    確定申告の際も、必要に応じて経費の領収書や控除証明書等を提出しましょう。

    確定申告で必要な書類は以下の通りです。

    • 確定申告書
    • 収支内訳書や青色申告決算書など、所得金額がわかるもの
    • 本人確認書類
    • 各種控除に必要な書類
    • 銀行口座がわかるもの(還付される場合)

    確定申告は、2月中旬から3月中旬にかけて以下のような流れで行います。

    1. 納税者が必要書類を作成(記入)する
    2. 必要書類や証明書等を税務署に提出・納税する
    3. 還付金がある場合は、後日受け取る

    確定申告は、すべて自分で手続きを行います。正しい所得税を申告するために、ミスや抜け漏れに注意し、時間に余裕をもって取り組みましょう。

    ダブルワークの年末調整や確定申告で注意すべき点

    ダブルワークにおける年末調整や確定申告の際に注意しておくべき点をご紹介します。

    確定申告することでダブルワークが発覚する可能性もある

    確定申告を行うと、納付すべき住民税額が記載された「住民税決定通知書」が勤務先に届きます。住民税決定通知書によって、ダブルワークが発覚する場合もあります。メインで勤務している企業では、従業員一人ひとりの住民税額を把握しており、ダブルワークによる合算で税額に変動があったことに気付く可能性があるわけです。これを防ぐには、住民税を自分で納付する普通徴収を選択しなければなりません。普通徴収を選択しておけば、住民税決定通知書は勤務先に届きません。

    源泉徴収票や控除証明書は大切に保管しておく

    年末調整や確定申告では、控除を受けるために控除証明書の添付が求められる種類があります。また、確定申告では、源泉徴収票に記載された内容を転記する項目があるため、源泉徴収票も必要です。確定申告をする場合は、控除証明書や源泉徴収票を紛失しないよう、大切に保管しておきましょう。

    まとめ

    複数の会社で働いている場合や給与以外の所得がある場合にも、給与収入があれば基本的に年末調整が必要です。年末調整は、より給与収入額の多い1つの企業でしか行うことができませんので、それ以外の収入や所得については必要に応じて確定申告を行いましょう。

    年末調整や確定申告のやり方を理解し、ミスや漏れのないよう、正しい所得額の算出を行いましょう。