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企業が副業を禁止するのは違法? なぜダメ? 禁止する理由や懲戒処分となる例、解禁した企業事例を解説

副業は、職業選択の自由として憲法で認められており、原則として禁止できません。ただし、合理的な理由があれば制限できる可能性があるため、副業禁止を検討する企業もあるようです。しかし、従業員の副業を認めることはデメリットだけでなく、メリットもあります。

本記事では、副業禁止について解説し、副業を解禁するメリットや副業を解禁した企業事例などをご紹介します。副業の扱いに悩んでいる担当者は、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

企業が副業を禁止するのは違法? なぜダメ? 禁止する理由や懲戒処分となる例、解禁した企業事例を解説
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    副業禁止は憲法違反?

    副業とは、本業以外で行っている仕事を指します。たとえば、日中は会社員として働きながら、夜や週末にフリーランスの仕事を請け負うことです。

    企業が副業を禁止することは、厳密には憲法違反です。従業員が副業していたというだけで法的に罰することもできません。なぜなら、憲法22条1項に「職業選択の自由」が定められており、本業の労働時間以外に副業するのは個人の自由であるためです。

    ただし、合理的な理由があれば、就業規則に副業禁止を記載することは違反にあたりません。実際に、競合避止義務や職務専念義務、秘密保持義務などを根拠に、副業を禁止している企業もあるようです。

    参考:『日本国憲法』e-Gov法令検索

    公務員の副業は法律で禁止されている

    公務員の副業については、国家公務員法第103条や第104条、地方公務員法第38条によって明確に禁止されています。公務で得られた情報の漏えいを防ぐことや、社会的立場の信用を失わないようにすることなどが主な理由です。

    ただし例外として、実家が経営する農業や林業、水産業の手伝いや株式投資といった資産運用などは認められています。

    一方、2018年の閣議決定の中で、国家公務員の副業解禁について整備中であると発表されており、今後は公務員の副業が解禁される可能性もあるでしょう。

    参考:『国家公務員の兼業、政府が容認へ 公益活動に限定』日本経済新聞

    政府は副業・兼業を推進している

    近年の日本では、政府が副業を認める動きが加速しています。

    厚生労働省は『モデル就業規則』を2018年1月に改定し「許可なく他の会社などの業務に従事しないこと」という文言を削除しています。また、副業に関して「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」という規定を新たに設けました。

    ガイドラインにおいても「雇用されない働き方も含め、その希望に応じて幅広く副業・兼業を行える環境を整備することが重要」と指摘しています。

    参考:『モデル就業規則』厚生労働省労働基準局監督課
    参考:『副業・兼業の促進に関するガイドライン』厚生労働省

    企業が副業を禁止する理由

    企業が副業を禁止したい理由について3つ取り上げて解説します。

    • 過重労働と本業への支障を防ぐため
    • 情報漏えいのリスクがあるため
    • 人材流出を防ぐため

    過重労働を防ぐため

    企業が副業を容認することで、従業員が健康を損ない、本業に支障が出る可能性があります。

    労働安全衛生法により、企業には従業員の労働時間を客観的に把握することが義務づけられています。たとえ自社での勤務時間を正しく管理できていたとしても、本業以外でどれだけ働いているかまでは把握しきれません。

    なかには、無理をして副業に費やす従業員もいるかもしれません。働きすぎで体調を崩してしまう可能性もあります。それにより本業に穴を開けることや、不注意による事故を防ぐためにも一律で副業を禁止しているのです。

    情報漏えいのリスクがあるため

    従業員の副業は、企業の秘匿情報が漏れてしまうリスクをともないます。本業に近い業種・業態の副業先は特に注意が必要です。

    ちょっとした不注意から顧客データが副業先に流出し、個人情報保護法違反に問われる可能性も否定できません。そのため、秘匿性の高い個人情報を主に扱っている企業では、副業を制限していることも多いのです。

    人材流出を防ぐため

    人材流出の防止を理由として副業を禁止することもあります。なかには将来の転職や独立を目指して副業に励む人もいるためです。あるいは、副業が軌道に乗ったり、収入が本業を超えたりしたタイミングで、退職を決断する人もいるでしょう。

    企業にとって、コストをかけて育成した人材が他社に流れてしまうことは大きな痛手といえます。

    企業が副業の解禁で得られるメリット

    さまざまな理由から副業を禁止する企業がある一方で、副業はデメリットばかりではありません。企業が副業の解禁で得られる3つのメリットをご紹介します。

    • 従業員のスキルアップが期待できる
    • 優秀な人材を確保できる
    • 対外的にアピールできる

    従業員のスキルアップが期待できる

    副業解禁のメリットの1つめは、従業員のスキルアップが期待できる点です。自社では経験できないスキルや経験を積み、それを会社に還元してくれる可能性があります。また、新たな知識を得て前向きに業務に取り組む従業員は、ほかの従業員にとってもよい刺激になるでしょう。

    優秀な人材を確保できる

    副業を認めると働き方の選択肢が増え、従業員にとって働きやすさが向上します。結果として、社員の定着率の向上が見込めるかもしれません。

    また、副業を希望している人は副業を禁止している企業への応募を避ける傾向にあるため、優秀な人材を確保するには、間口を広げるのも一つの方法です。

    さらに、企業が他社の副業人材を受け入れることで、自社にはいない高い能力や専門知識を持つ人材を雇用できる可能性もあります。多様なスキルと経験を持つ人材を活用できるのは大きなメリットです。

    対外的にアピールできる

    働き方の多様化やワークライフバランスが重視される現代において、副業ができる企業は魅力的といえます。「副業可能」を対外的にアピールできるため、企業のブランディング効果も高まるでしょう。

    企業が副業を解禁するときの注意点

    企業が副業を解禁するときに注意すべきポイントを3つ取り上げて解説します。

    就業規則を整備する

    企業が懸念する副業のリスクやデメリットを避けるには、あらかじめ就業規則で副業について規定しておくとよいです。

    たとえば、以下のような規定が考えられます。

    • 副業を行う場合、企業が定めた必要事項を事前に申告する
    • 所定労働時間内や、業務上必要があって指示された時間外労働時間における副業は認めない
    • 従業員の副業が業務の遂行に支障を生じさせると判断した場合、副業の時間を短縮、もしくは中止を命じることがある

    健康状態を管理する

    副業をしていなくても、企業は従業員の健康状態を管理する必要があります。そのため、本業と副業による労働時間や業務量などを踏まえて、心身に不調がある場合は産業医などに相談できる体制をつくることが重要です。

    労働時間を正確に把握する

    労働基準法により、企業は原則として副業と本業を通算して労働時間の管理を行わなければならないとされています。法定労働時間は「1日8時間、週40時間」であり、これを超える副業の労働時間と合算して時間外労働の上限内に収める必要があります。

    副業禁止を守らない従業員への対処方法

    万一、副業禁止のルールを守らない従業員がいた場合、対象者には慎重に対処しなければなりません。一回の違反行為で懲戒解雇にすることは、よほどの理由があるとき以外、解雇権の濫用にあたります。また、憲法で職業選択の自由が保障されているため、就業規則での規制も難しいといえるでしょう。

    副業禁止を守らない従業員に対しては、以下の順番で勧告するとよいです。

    1. 戒告
    2. けん責
    3. 減給
    4. 出勤停止
    5. 降格
    6. 諭旨解雇や懲戒解雇

    万が一、副業に関して従業員とのトラブルが起きたときは、大きな問題に発展する前に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

    副業規定を守らないことで懲戒処分になる例

    副業規定を守らず懲戒処分になる例を3つ取り上げて解説します。

    本業に支障が出た場合

    1つめは副業により本業に支障が出た場合です。副業の影響で遅刻や欠勤が続き、雇用契約通りに労働が行われなかったり、本業の労働時間中にも副業をしていたりすると「職務専念義務違反」として懲戒処分になる可能性があります。

    企業が不利益を被った場合

    2つめは企業が具体的な損害を受けた場合です。本業の情報やデータを副業先や外部に流出してしまったときは「秘密保持義務違反」に、競合他社での副業は「競合避止義務違反」にあたる可能性があります。被害の内容によっては、損害賠償を請求できることも覚えておきましょう。

    企業の信用に影響を及ぼした場合

    3つめは企業の信用低下につながった場合です。副業の内容が公序良俗に反していたり、違法行為に該当したりすると、企業のブランドや信用が損なわれてしまうため、懲戒処分の理由になる可能性があります。

    副業禁止を解禁した企業事例

    副業禁止を解禁した大手3社の事例をご紹介します。

    • 株式会社JTB
    • カゴメ株式会社
    • SMBC日興証券株式会社

    株式会社JTB

    旅行業大手の株式会社JTBは、コロナ禍に旅行客が大幅に減少し、従業員から副業の問い合わせが増加したことで、2020年10月に副業ルールを明確化した社内ガイドラインを制定しました。

    副業を希望する従業員は、社内ガイドラインを遵守する旨や副業内容、時間を誓約書に書いて提出します。禁止する副業は、競業や機密情報の漏えいのおそれがあるもの、公序良俗に反するものなどで、副業を行う時間は1か月35時間を上限としています。

    カゴメ株式会社

    カゴメ株式会社では「可処分時間の中に成長の機会がある」という考えにより、2019年に副業ルールを明確化しています。

    副業の要件は、カゴメ株式会社における年間総労働時間が1,900時間未満、かつ月平均の時間外労働15時間以下であることとされており、比較的生産性が高い従業員に認められているのが特徴です。また、社員の成長につながる可能性もあるため、同業他社での副業を一律には禁止していません。

    SMBC日興証券株式会社

    SMBC日興証券株式会社は、社員がいきいきと働き、能力を最大限発揮できる組織風土の構築を目的として「週3日・週4日勤務制度」や最長3年の「チャレンジ休暇」の導入とともに、原則禁止だった副業を解禁しています。

    ただし、労働時間の通算や副業先各社との社会保険に関する連携等の負荷が課題のため、雇用による副業・兼業は認めていません。また、副業希望者は、eラーニング研修を受け、副業解禁の趣旨や背景、副業にともなうリスクや注意事項を理解したあとに申請する必要があります。

    参照:『副業・兼業に取り組む企業の事例について』 厚生労働省

    まとめ

    副業は法律によって個人の自由とされていますが、就業規則に禁止の記載をしても違反にはあたりません。合理的な理由がある場合は、基本的に副業を禁止しても問題ないとされています。

    副業には、労働時間の把握が難しい、情報漏えいや人材流出のリスクといったデメリットだけでなく、従業員のスキルアップや優秀な人材の確保などのメリットもあります。また、政府は副業や兼業を推進しており、解禁に踏み切った大企業も多いです。

    副業を解禁する場合、就業規則の整備や、健康状態と労働時間の正確な把握・管理を行うことが重要です。本記事でご紹介した企業事例を参考に検討してみてはいかがでしょうか。

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