年末調整は期限内なら再調整できる! 修正方法をケース別に解説
年末調整は、源泉徴収税額と年間納税額を一致させる手続きです。書類や計算の誤りに気づいたとき、どう対処すればよいかわからず、焦ってしまった経験を持つ方も多いでしょう。
本記事では、年末調整の再調整(再年調)のやり方について解説します。また、実際に起こりうるケースごとの修正方法についても確認していくため、年末調整の担当者の方はお役立てください。
年末調整は再調整できる
年末調整でミスがあった場合、翌年1月31日まで、かつ源泉徴収票を発行する前であれば、再調整(再年調)が可能です。ただし、従業員の源泉所得税の再計算だけでなく、法定調書合計表や給与支払報告書も再作成が必要です。これにより、担当者には大きな負担がかかります。
再度年末調整が必要になるケースとは
年末調整の再調整が必要になるのは、どのようなケースが存在するのでしょうか。再度年末調整が必要になるケースの中で、よくある5つの事例を解説します。
- 扶養親族などの人数が変わった
- 見積もっていた所得に差額が生じた
- 追加で給与を支払った
- 保険料を支払った
- 住宅借入金等特別控除申告書を受け取った
扶養親族などの人数が変わった
年末調整のあとに、扶養親族などの人数が変わった場合、再度年末調整(再年調)が必要です。年末調整は、従業員からの扶養環境に関する申告を受けて、扶養控除額を決定します。しかし、扶養親族などの数に変更があると、控除額も変わるため、計算を再度行わなければなりません。
よくあるケースとして、子どもが生まれたり、親を扶養に入れたりした場合があります。このときは扶養人数の変更が必要です。従業員からの申請を受けたあと、新しい扶養人数で年末調整を再計算しましょう。
参照:『No.1180 扶養控除』国税庁
参照:『No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき』国税庁
見積もっていた所得に差額が生じた
配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けている従業員の見積もり合計所得金額が、実際の合計所得金額と異なった場合も再度年末調整が必要です。
配偶者控除と配偶者特別控除は、従業員本人とその配偶者の合計所得金額に応じて控除金額が定められています。そのため、見積もり額と実際の合計所得に差額があった場合、控除額が変わることから再年調が必要です。
追加で給与を支払った
年末調整のあとに追加で給与や賞与を支払った場合は、合計所得金額が変わるため再年調が必要です。ただし、給与や賞与の追加支給が翌年になった場合、再年調する必要はありません。
保険料を支払った
年末調整のあとに、従業員が生命保険料や地震保険料などを支払った場合も保険料控除額に変更が生じるため、再度年末調整を行う必要があります。追加で保険料を支払った従業員から再度保険料控除申告書を提出してもらい、その申告書をもとに再計算を実施します。
ただし、事務処理の都合上、再年調ができない場合は該当する従業員に依頼し確定申告をしてもらうことも可能です。
住宅借入金等特別控除申告書を受け取った
年末調整のあとに、従業員から住宅借入金等特別控除申告書の提出を受けた場合も再度年末調整を行わなければなりません。提出を忘れていた従業員からだけでなく、訂正があった申請書も再年調の対象です。
【ケース別】年末調整の再調整のやり方を解説
よくある事例ごとに年末調整の再調整の方法を解説します。
扶養親族などを変更する場合
扶養していた子どもが独立した場合など、扶養親族の人数が変わったときは、扶養控除申告書を従業員に訂正してもらいましょう。変更箇所には二重線を引くか、所定の箇所に追記します。
「異動月日及び事由」の欄には、変更日と理由を記入します。現在、訂正印の押印は不要ですので、社内ルールに従いましょう。
参照:『No.2671 年末調整の後に扶養親族等の人数が異動したとき』国税庁
給与を追加払いした場合
給与や賞与の追加支給により、合計所得金額が変わった場合、給与所得者の基礎控除申告書を訂正する必要があります。「あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算」の記載額に二重線を引き、新しい所得金額を記入します。
従業員の合計所得金額が変わると、配偶者の控除額も変わる可能性があるので、「配偶者の控除額」の欄も必要に応じて訂正してもらいましょう。
保険料控除・住宅ローン控除の内容を修正する場合
保険料控除の内容を修正する必要がある場合は、保険料控除申告書の変更箇所に二重線を引いたうえで変更後の内容を記載します。
保険料控除申告書の提出を忘れていた場合や必要事項の記入漏れは、所定の箇所に正しい情報を記載のうえ提出してもらいましょう。住宅ローン控除を追加申請する場合も同様です。
また、これらの控除内容を変更する場合は控除証明書を添付する必要があるため、忘れずに従業員から提出してもらいましょう。
再度年末調整を行う際の手順
年末調整の再年調の手順について解説します。
- 年末調整の内容を確認する
- 申告内容を元に、再計算する
- 差額を求め、精算する
1.年末調整の内容を確認する
12月までの給与および賞与をもとに一度精算した源泉徴収税額の過不足額を把握します。年末調整システム上で源泉徴収税額を管理している場合は、ここでデータのバックアップをとっておくと安心です。
2.申告内容を元に、再計算する
次に、従業員から再提出を受けた申告書の内容をもとに再度年末調整を行い、本来の源泉徴収税額とその過不足額を計算します。
3.差額を求め、精算する
手順1と2の差額を計算し、差額分を従業員に追加で精算します。
たとえば、扶養人数が増加した場合、増加した控除金額を反映したあとの源泉徴収額と、一度精算した源泉徴収税額との差額を追加で支払わなければなりません。
このときの精算方法は、過不足額を現金や振込で精算する方法と、1月分の給与もしくは賞与で精算する方法の2通りです。
年末調整を再調整する際に気を付けたいポイント
年末調整を再度行う場合、注意すべきポイントを3つご紹介します。
- 必要書類を把握しておく
- 翌年2月1日以降または源泉徴収票発行後は、再年調できない
- 過年度の誤りが発覚したら再調整が必要
必要書類を把握しておく
従業員から申告書の再提出を受け、再度年末調整を行ったあとは、再年調した内容をもとに法定調書も修正します。提出先別に関連書類をご紹介します。
税務署に提出する書類
税務署に提出する年末調整関連書類は以下の3つで、年末調整を行った翌年1月31日までに提出する必要があります。
提出書類 | 記載内容 |
---|---|
給与所得の源泉徴収票 | 給与から天引きされた税金の情報をまとめた書類で、収入や源泉徴収税額などが記載されています。変更後の給与所得をもとに源泉徴収額を記載します。 |
支払調書 | 会社が支払った給与や賞与などの情報をまとめた書類で、受取人ごとに支払い額や源泉徴収税額が記載され、税務申告などに利用します。 |
給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計票 | 会社が源泉徴収票などの情報を集計し、まとめた表で、各従業員の税金計算に用いられます。 |
参照:『源泉徴収義務者(給与の支払者)の方へ(令和4年分)』国税庁
市区町村に提出する書類
市町村には、給与支払報告書の提出が必要です。給与支払報告書は「個人明細書」と「総括表」により構成されています。
個人明細書には、源泉徴収票と同様に給与の支払いを受ける従業員の氏名や住所、給与額や保険料控除の額などが記載されています。総括表は、住民税額を決定させるために必要な書類で、市区町村ごとに作成が必要です。
参照:『令和4年分年末調整のしかた(手順などの説明)』国税庁
翌年2月1日以降または源泉徴収票発行後は、再年調できない
再年調ができるのは、源泉徴収票を発行する前かつ年末調整を行った翌年1月31日までの期間です。
提出期限の遅延や源泉徴収票を発行したあとは、たとえ会社側のミスであったとしても再年調することはできないため、翌年2月16日から3月15日までの間に従業員自身で確定申告を行ってもらうようにしましょう。
参照:『6 年末調整後に給与の追加払や扶養親族等の異動があった場合の再調整』国税庁
過年度の誤りが発覚したら再調整が必要
過年度分の年末調整に誤りがあった場合も再調整が必要です。
修正後に不足が発生し、追加徴収が必要な場合は、会社から税務署に不足税額分を支払い、そのあと会社から従業員に追加徴収分を請求します。過納が判明した場合は、従業員から税務署に請求をしてもらい、税務署から直接還付を受けます。
税務署からやり直し通知が来ることもある
過年度分の年末調整に誤りが発覚した場合、税務署から通知が来るケースもあります。
これは、年末調整を行った半年後に来ることが一般的です。税務署から通知が来た場合は、従業員にその内容を確認したうえで申告内容をすみやかに修正しましょう。
そのあと、修正した申告書をもとに年末調整の再計算を行い、不足税額分を納付します。特に、所得申告に漏れがあった場合は、無申告加算税が発生することもあるため注意が必要です。
まとめ
年末調整の実施後に扶養人数の変更や所得の変更が発覚した場合、年末調整の計算や書類の作成をやり直さなければならなくなるため、担当者には負担がかかります。
このような事態を防ぐためには、従業員から提出を受ける必要のある申告書類の管理や、申告書類の提出期限に関する情報の周知をスムーズに行うとよいでしょう。この機会に、年末調整にもクラウドシステムを導入してみてはいかがでしょうか。
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