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中途入社の年末調整はどうやる? 源泉徴収票の書き方や前職なしの場合ほかケース別に解説

年末調整とは、従業員の賃金から差し引いた所得税の過不足を調整する手続きです。年末調整はほとんどすべての従業員を対象に実施しますが、中途入社の従業員について「何か特別な対応は必要なのか?」と疑問に思う人もいるでしょう。

本記事では、年末調整を実施する人事労務担当者向けに、中途就職者の年末調整において重要なポイントを解説します。基本的な手続きや必要書類、源泉徴収票の書き方はもちろん、源泉徴収票が用意できない場合や前職がない場合の対応についても紹介します。

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    中途入社の年末調整は何が違う?

    年末調整は、所得税の過不足を精算する処理です。月々の源泉徴収額は、あくまでも概算の金額です。実際の額には差が生じるため、過不足を調整して精算する手続きです。

    国税庁のWebサイトでは、1年を通じて勤務している従業員だけでなく、中途入職者も年末調整の対象となる旨が明記されています。

    1年を通じて勤務している人のほか、年の中途で就職し、年末まで勤務している人についても年末調整の対象になります。

    引用:『No.2674 中途就職者の年末調整』国税庁

    中途入社と1年以上勤務している人の違い

    中途入社の年末調整において、1年を通じて勤務する人とのもっとも大きな違いは、自社と前職での源泉徴収を合算する点です。

    中途入社の年末調整では、アルバイトやパートなどの雇用形態にかかわらず、前職での給与支給における源泉徴収を考慮する必要があります。

    中途入社の年末調整を転職先でする理由

    中途入社の人の年末調整は、年末調整の段階で在籍している企業で行われます。

    1年間の収入や控除額が確定してからでないと、正しい所得税額を算出できないためです。

    たとえば、Aさんは10月に前職を辞め、11月に転職先に入社したとします。前の会社はAさんの給与を10月分までしか把握していないため、その年1年間の正しい所得税額は計算できません。

    そのため、1年の途中で転職した人については、前職ではなく転職先が年末調整をする決まりです。

    中途入社の年末調整で提出してもらう書類

    中途入社の人には、年末調整で以下の書類を提出してもらう必要があります。

    • 源泉徴収票
    • 給与所得者の扶養控除等(異動)申請書
    • 給与所得者の保険料控除申告書
    • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
    • 国民年金・国民健康保険料の支払証明書

    それぞれどのような書類なのか、以下で詳しく解説しましょう。

    源泉徴収票

    中途入社の人の年末調整では、自社が支給した給与のほかに、前職での給与に対する源泉徴収について把握する必要があります。そのため、中途入社の人には、前職の源泉徴収票を提出してもらうよう声をかけておきましょう。

    給与所得者の扶養控除等(異動)申請書

    控除対象となる扶養家族について申請するための書類です。扶養家族がいる場合はもちろん、いない場合も提出が必要です。

    給与所得者の扶養控除等(異動)申請書は、その年の最初に給与を支給する前日までに、税務署長および市区町村長に提出する決まりです。

    たとえば、中途入社の人に最初に給与を支払うのが7月20日である場合、7月19日までには提出しなければなりません。そのため、中途入社の人には、入社してすぐに提出してもらうようにしましょう。

    給与所得者の保険料控除申告書

    生命保険料や社会保険料などの保険料控除を申請するための書類です。

    新たに入社する社員の入社時期が年末調整の時期と重なる場合は、既存の従業員と同様のタイミングで必要書類を提出してもらうようにしましょう。

    給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書

    基礎控除や配偶者控除などを申請するための書類です。以前は配偶者控除を受ける人のみが対象でしたが、2020年分の年末調整からはすべての従業員に提出してもらう決まりになりました。

    年末調整と同じタイミングで必要なので、給与所得者の保険料控除申告書と一緒に提出してもらうとよいでしょう。

    国民年金・国民健康保険料の支払証明書

    自社に就職するまでの間に、国民年金や国民健康保険の保険料を支払っている場合に必要な書類です。どちらも社会保険料控除の対象となるので、紛失した場合は再発行を依頼してもらいましょう。

    【中途入社の年末調整】源泉徴収票の書き方|合算はどこに書く?

    中途入社した人の源泉徴収票は、基本的に既存の従業員と同じように記載します。ただし、支払金額や所得控除後の金額などの欄については、従業員が前職で受けた収入分を加味し、自社と合算して記載しましょう。

    また、中途入社の場合は、「中途就・退職」欄の「就職」欄に◯をつけ、就職した年月日を記入する必要があります。

    摘要欄には、前職の情報を忘れずに記載しましょう。具体的には、以下の内容を記載する必要があります。

    • 前職で支払われた給与や賞与などの金額
    • 前職で源泉徴収された所得税や復興特別所得税の金額
    • 前職で控除された社会保険料の金額
    • 前職の社名や所在地(住所)
    • 前職を退職した年月日

    【中途入社の年末調整】源泉徴収票がない場合はどうする?

    中途入社の人から「前職の源泉徴収票をなくしてしまった」と言われたときは、本人から前の会社に連絡してもらい、再発行を依頼しましょう。源泉徴収票の発行は所得税法で定められた企業の義務なので、本人が連絡をとれば発行してもらえます。

    源泉徴収票の再発行が不可能な場合

    なかには前の会社が倒産している場合や、なんらかの理由で源泉徴収票の発行を拒まれる場合など、源泉徴収票が手に入らないケースもあります。

    前職の源泉徴収票がないと1年間の所得を確定できないため、担当者は年末調整をすることができません。

    どうしても源泉徴収票が手に入らない場合は、従業員本人に確定申告をしてもらう必要があります。確定申告は初めての人にとってはハードルが高く、源泉徴収票が手に入らない場合は、別途、源泉徴収票不交付の手続きもしなければなりません。

    従業員本人にとってもリスクが大きいため、前職で源泉徴収票を受け取っていないと言われた場合は、早めの対処を促しましょう。

    年末調整が不要になるその他の条件

    前職の源泉徴収票がどうしても手に入らない場合、企業側が年間の所得を把握する方法はないため、当該従業員の年末調整は実施しません。そのほか、以下のようなケースでは年末調整は不要です。

    • 年間の給与収入が2,000万円を超えている
    • 災害被害により、『災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律』の適用を受けている
    • 2か所以上の職場に勤務しており、ほかの職場で扶養控除等(異動)申告書を提出している、あるいは年末調整までに扶養控除等(異動)申告書を提出していない

    参照:『Ⅱ 年末調整とは』国税庁

    年末調整は、給与収入が2,000万円以下の人が対象です。そのため、前職と自社を合わせた給与収入が2,000万円を超えている場合は、従業員本人に確定申告をしてもらう必要があります。

    【ケース別】中途入社の年末調整における対応・注意点

    中途入社の人の年末調整における対応や、注意点について6つのケースを取り上げて解説します。

    • 年末時点で給与の支払いがない場合
    • 前職なし(前職での給与支払いなし)の場合
    • 前職がフリーランス・個人事業主の場合
    • 年末調整前の前に退職した場合
    • 前職で年末調整が済んでいた場合
    • 年内に複数回転職している中途入社の場合

    年末時点で給与の支払いがない場合

    従業員が12月に転職してきた場合は、最初の給与の支払いは翌年1月になることもあります。年内に自社で給与支払いがないのであれば、年末調整の手続きは不要です。

    従業員が前職で給与支払いを受けている場合、次の2つの対応が考えられます。

    • 前の会社で年末調整をする
    • 従業員本人が確定申告をする

       ※前職の年末調整のスケジュールに間に合わない場合や、前職の規定の関係上対応してもらえない場合など

    前職なし(前職での給与支払いなし)の場合

    前職がなく、その年の途中で入社してきた従業員については、自社で支払った給与に基づいて年末調整をします。

    たとえば、学校を卒業してから数か月後の9月や10月など、年の途中に入社した場合、その年内にほかの職場で給与を受け取っていないこともあります。年末調整では自社の給与のみを考慮すれば問題ありません。

    前職がフリーランス・個人事業主の場合

    前職がフリーランスや個人事業主は、自社に入社してからの期間についてのみ年末調整をします。

    たとえば、5月までフリーランスとして働いていた人が6月に入社したとすると、年末調整では6~12月中に支払った給与が対象です。5月以前にフリーランスとして得た収入は、従業員が自分で確定申告をする必要があります。

    年末調整前の前に退職した場合

    中途入社した人が年末調整の前に退職した場合は、退職後に従業員自身が確定申告で各種控除を申請します。年末調整の手続きは不要ですが、源泉徴収票を発行する必要はあるので注意しましょう。

    前職で年末調整が済んでいた場合

    前職で年末調整が終わっていても、年内に自社で給与支払いがある場合は年末調整が必要です。

    たとえば、当初は年内の転職の予定がなく前職で年末調整を済ませていたものの、急に自社への入社が決まったというケースです。

    前職での給与支払いについて年末調整が終わっていれば、前職分は合算せず、自社が支払った給与分のみ手続きすれば問題はありません。

    年内に複数回転職している中途入社の場合

    1年間で何度か転職している場合は、それぞれの勤務先で発行された源泉徴収票が必要です。年内に複数回転職している人が入社したら、なるべく早めにその旨を伝えておくと安心です。

    中途入社の年末調整は前職の源泉徴収票の回収から(まとめ)

    中途入社した人の年末調整では、前職と自社で支払われた給与を合算して手続きします。そのためには、前職の源泉徴収票が必要です。

    従業員が源泉徴収票を受け取っていない、あるいは紛失した場合は、本人から前の会社に再発行を依頼してもらいましょう。

    なんらかの理由で源泉徴収票が用意できない場合は、年間の給与総額を把握できないため年末調整はできません。自身で確定申告をしてもらう必要があり、従業員本人にとっても負担がかかってしまいます。

    万が一のトラブルに備えるためにも、中途入社の人にはなるべく早めに源泉徴収票を提出してもらうようにしましょう。

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