派遣社員の年末調整は誰がどこでやる? 2社で働く場合や短期はどうする?
派遣社員の年末調整も、正社員と同じように、会社が手続きを担当します。
ただし、担当するのは派遣社員が就業する派遣先企業ではなく、派遣社員を雇用する派遣元の会社です。また、派遣社員が年末調整の対象外となる場合、本人が確定申告をしなければなりません。
本記事では、派遣社員の年末調整をする際の概要や手続きの流れについて詳しく解説します。2社を掛け持ちして働く派遣社員や短期で働く派遣社員の年末調整の対応方法も紹介します。
派遣社員の年末調整は必要?
派遣社員についても年末調整の手続きが必要です。正社員や非正規社員などの雇用形態に関係なく、会社に勤務するすべての人が年末調整の対象です。
年末調整は、給与や賞与から源泉徴収された所得税の過不足を精算するための手続きです。
1年間の給料支払い額が合計2,000万円を超えた場合や、年の途中で海外へ転出した場合などを除き、会社はすべての従業員を対象に年末調整をする必要があります。
派遣社員の年末調整は誰がどこでやる?
派遣社員の年末調整は、派遣先の会社ではなく、派遣元の会社が担当しなければなりません。実際に就業する派遣先企業ではなく、雇用契約を締結している派遣元の会社ですることに注意が必要です。
また、年末調整の手続きは原則として会社が実施するので、派遣社員が個人的に対応することもできません。
派遣会社は、年末調整の計算が完了したら、必要な書類を翌年1月末までに税務署と従業員の居住する市区町村に提出します。
派遣社員の年末調整の流れ
派遣社員の年末調整を進める手順について、詳しく解説します。
- 派遣会社が郵送・連絡する
- 派遣社員が書類を準備する
- 派遣社員が書類を提出・申請する
- 派遣社員が給与明細で還付金を確認する
1.派遣会社が郵送・連絡する
年末調整について、派遣社員の雇用主である派遣会社から、本人宛に郵送や連絡が入ります。派遣元の会社は、11月前半を目途に、書類やオンライン申告のお知らせなどを、メールや郵送で通知します。
2.派遣社員が書類を準備する
派遣会社からの連絡を受けて、派遣社員は年末調整に必要な書類を準備します。
年末調整の手続きには、主に下記の申告書の提出が必要です。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除等申告書
また、必要に応じて、以下の書類も派遣社員自身で用意します。
必要な場合 | |
---|---|
前職の源泉徴収票 | その年に転職して派遣会社で働き始めた場合 |
各種保険料控除証明書 | 生命保険や地震保険など、個人で保険を契約している場合 |
給与所得者の 配偶者控除等申告書 | 扶養対象の配偶者がいる場合 |
書類の提出締切日は派遣元会社によって異なり、11月中旬から下旬にかけて設定されていることが多いようです。
3.派遣社員が書類を提出・申請する
派遣社員は、期日までに必要な書類を派遣元会社に提出します。
提出した書類に不備があったり、記載漏れがあったりすると、訂正や修正をしなければなりません。手間やコストがかかるため、記入ミスがないかを確認したうえで、派遣元会社へ送付します。
4.派遣社員が給与明細で還付金を確認する
派遣会社で年末調整の手続きが完了し、所得税額が確定すると、その年に給与から手引きされた源泉徴収税額との差額が決まります。
源泉徴収税額が実際に納めるべき所得税額よりも多い場合は、派遣社員に還付金として返金され、不足している場合は追加徴収の対象となります。
還付金の支払いや追加徴収は、12月もしくは翌年1月に給与とまとめて実施されるのが一般的です。派遣社員は12月と翌年1月の給与明細を受け取ったタイミングで、記載されている内容を確認する必要があります。
また、年末調整の終了後、翌年1月31日までに源泉徴収票も発行されます。
2社掛け持ちで登録している派遣社員の年末調整はどうする?
派遣社員が2社掛け持ちをして登録していても、年末調整ができるのは1社のみです。年末調整をした派遣会社以外で受け取った給与については、派遣社員自身で確定申告をする必要があります。
ただし、年末調整をするタイミングの12月に、本業として働く1社からしか給与を受け取っていない場合は、会社でまとめて年末調整ができるため確定申告は不要です。
また、1年間で複数の派遣会社を利用して働いていたとしても、重複する期間がない場合は、以前働いていた派遣会社の源泉徴収票もまとめて提出すれば、年末調整の手続きができます。
派遣社員でも年末調整ができない場合
派遣社員が年末調整の対象外となる2つのケースを紹介します。
- 12月に勤務実績がない
- 12月に給与の支払いがない
12月に勤務実績がない
年末調整の手続きをする時点で派遣元の会社と雇用関係にない場合は、年末調整の対象外です。
たとえば、11月時点では派遣会社に登録をして働いていたとしても、12月以降に勤務実績がなければ、11月までの分の年末調整は実施されません。
12月に勤務実績がない場合は、11月まで働いていた派遣元の会社で、11月までの源泉徴収票を発行してもらい、新たな勤務先で年末調整の手続きをしてもらうか、本人が確定申告をする必要があります。
12月に給与の支払いがない
12月に給与の支払いがない場合も、年末調整の対象外です。派遣会社の給与締め日や支払い規定により、給与が翌月払いになることがあるためです。
たとえば年末から働き始めて、12月分の給与が翌年の1月に支払われる場合、12月の時点で調整できる給与の支払いがないため、年末調整は対象外となります。
派遣社員が自分で確定申告が必要な場合
派遣社員が勤務先である派遣元の会社で年末調整をせずに、自分で確定申告が必要になる3つのケースを紹介します。
- 副業している
- 医療費控除や住宅ローンがある
- 給与の中に交通費が含まれている
副業をしている
派遣社員が副業をしていて、派遣の仕事以外で収入を得ているケースもあるでしょう。副業による収入の額が20万円を超える場合は、確定申告をする必要があります。
配当所得や不動産所得などの副業所得が20万円を超える場合も同様です。
医療費控除や住宅ローンがある
生命保険や地震保険などの各種保険料控除は年末調整で適用されますが、以下の控除は年末調整では対応できません。
- 医療費控除
- 雑費控除
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
- 寄附金控除
医療費控除や住宅ローン控除を受けたい場合は、確定申告による手続きが必要です。ただし、住宅ローン控除については1年目のみ確定申告が必要で、2年目以降は年末調整で対応可能です。
給与の中に交通費が含まれている
派遣社員の時給に交通費が含まれている場合、交通費を含んだ金額が課税対象となります。本来、交通費は非課税のため、確定申告を行えば払い過ぎた所得税が還付金として戻ってくる可能性があります。
給与に交通費が含まれる派遣社員は、派遣元の会社から『通勤交通費証明書』を発行してもらい、確定申告の手続きを進めるとよいでしょう。
短期派遣社員の年末調整はどうする?
短期の派遣社員も、原則として源泉徴収が実施されます。
年末に雇用されている派遣元の会社が、年末調整に対応している場合は、年内に働いた分の源泉徴収票をまとめて提出することで、年内の収入を合算して手続きが進められるでしょう。
ただし、年末調整に対応できる派遣会社がない場合は、本人が確定申告をする必要があります。
派遣社員の年末調整は派遣元で実施(まとめ)
派遣社員についても、正社員と同様に年末調整の手続きが必要です。派遣社員の給与は派遣会社が支払っているため、派遣先の会社ではなく、派遣元の会社が手続きを進めます。
派遣会社から年末調整に関する連絡が入ったら、派遣社員は必要書類を準備して期日までに提出しなければなりません。
派遣社員が派遣元の会社に出向く機会は少ないため、郵送やメールでやり取りをするケースが多いでしょう。しかし、書類の郵送は時間や手間を要し、記入漏れやミスがあった際の対応にコストがかかります。
派遣社員をはじめ、従業員の年末調整を簡略化するためには、年末調整に労務管理システムの導入がおすすめです。
システムを導入して手続きを自動化することで、年末調整書類の回収から申請まですべてWeb上で一括管理できます。各種書類の提出状況も確認できるため、書類の不足や修正などへの対応も時間をかけずスムーズに進められるでしょう。
年末調整の手続きに課題がある企業は、手続きの電子化を検討してみてはいかがでしょうか。
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