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年末調整の「めんどくさい」をラクにするには【なぜ必要】やらないリスクと原因から見えてくる効率化のヒント

年末調整の「めんどくさい」をラクにするには【なぜ必要】やらないリスクと原因から見えてくる効率化のヒント

年末が近づくと、年末調整の業務に頭を悩ます担当者は多いのではないでしょうか。年末調整の手続きは煩雑で、書類の山や複雑な計算、厳格な締め切りなどを面倒に感じてしまいがちです。年末調整は所得税法において課せられた義務であり、従業員が一定の条件を満たした場合は手続きをしなければなりません。

本記事では、「年末調整がめんどくさい」と感じてしまう原因や、年末調整の手続きを怠るリスクを詳しく解説します。年末調整の業務効率化に役立つ方法も紹介するため、担当者の作業負担を少しでも減らすヒントとしてお役立てください。

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    年末調整がめんどくさいと感じるのはなぜ? 原因

    年末調整は、毎年10月から翌1月にかけて行われる手続きです。年に一度しかないため、手続き方法や書類作成に慣れない従業員も多く、不備や記入ミスなどが発生しやすい業務といえます。

    担当者の業務負担を少しでも軽減するためにも、年末調整が煩わしく感じられる理由を知ることから始めてみましょう。

    申告書が期日までに集まらない

    年末調整の対象となる人は12月31日時点で会社に勤務している従業員であり、パートやアルバイトも含むため、手続きがどうしても煩雑になりがちです。

    すべての従業員の申告書や必要書類を期日までに回収できれば、担当者は滞りなく業務を進められるでしょう。しかし、年末の多忙な時期ということもあり、従業員が期日を遵守できないケースも少なくありません。

    期日を過ぎても書類が提出されない場合は、当該従業員へ個別に対応しなければならず、担当者の作業が増えてしまいます。

    参考:『No.2665 年末調整の対象となる人』国税庁

    申告書に不備があると再提出を依頼しなければならない

    年末調整の手続きをする際は、『扶養控除等(異動)申告書』や『保険料控除申告書』などさまざまな申告書を提出しなければなりません。

    年に一度しか記入しない書類なので、なかには記入方法や申請方法をよく理解できていない従業員もいるでしょう。そのため、記載ミスがある状態で申告書を提出されることもあります。

    具体的な不備としては、以下の例が挙げられます。

    • 収入金額が正しく記載されていない
    • 配偶者(特別)控除を受けられないにもかかわらず、控除額が記載されている
    • 保険料の控除限度額を超えているにもかかわらず、保険情報が記載されている

    ほかにも、申告書を手書きで記入している場合には、文字が読めない、書き損じがあるなどのミスも発生しやすいでしょう。

    計算が複雑である

    年末調整で行う所得控除は、12種類もあります。従業員によって申告する所得控除は異なるため、個々に合わせて計算しなければなりません。

    年末調整の対象となる従業員が多ければ多いほど、計算にかかる時間や手間も膨大になるでしょう。近年実施された法改正により、従来よりも提出書類が多様化し、計算方法が複雑になっていることも、年末調整をめんどくさいと感じてしまう要因といえます。

    変わる制度規定に対応しなければならない

    年末調整の制度は定期的に改正されており、ルールが都度変わります。規定が変更されるたびに、新制度に合わせた計算方法や提出方法で手続きをしなければならず、慣れない間は時間がかかってしまうでしょう。

    また、年末調整の作業を始める前に、改正された事項がないかをチェックする必要もあります。

    書類の作成に時間がかかる

    年末調整では、以下の申告書を通して従業員から必要な情報を収集します。

    • 扶養控除等(異動)申告書
    • 保険料控除申告書
    • 基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書

    住宅ローンを借り入れている従業員は、『住宅借入金等特別控除申告書』の提出も必要です。ほかにも年の中途で入社した従業員がいる場合には、源泉徴収票も回収しなければなりません。

    それぞれの従業員の計算が完了したら、計算結果に応じて、従業員に対してすでに支払った所得税の過不足分を還付・徴収します。

    さらに、税務署や自治体への報告書類の作成・提出も必要です。提出する書類は以下の通りです。

    • 支払調書
    • 法定調書合計表
    • 源泉徴収票
    • 給与支払報告書

    このように、年末調整を実施するためにはさまざまな書類を作成しなければならず、時間と手間がかかります。

    参照:『各種申告書・記載例(扶養控除等申告書など)』国税庁

    従業員ごとに異なる控除内容を確認しなければならない

    従業員によって年末調整で受けられる控除は異なるため、申告書に記載された控除内容が適用されるものであるかを確認する必要があります。

    配偶者控除や保険料控除などさまざまな所得控除について、従業員ごとに異なる所得や条件を一つひとつ照らし合わせながら確認することが「めんどくさい」と感じてしまう人も少なくありません。

    配偶者控除や保険料控除など、さまざまな所得控除について、従業員ごとに異なる所得や条件を一つひとつ照らし合わせる確認作業を「めんどくさい」と感じる人も少なくありません。

    多忙なスケジュールのなか、ミスが許されない

    年末調整の時期は、人事や総務の担当者にとって1年の中で忙しいタイミングにあたります。ほかの仕事と並行しながら年末調整の業務も進め、提出期限までに手続きを終えなければならないため、担当者の負担はとても大きいものです。

    年末調整は、計算ミスや記載ミスが許されない業務であるため、プレッシャーや責任が重く感じるでしょう。

    めんどくさい年末調整はなぜ必要?

    年末調整とは、従業員の給与や賞与から源泉徴収で天引きされた所得税の過不足を調整する手続きです。毎年10月から翌1月にかけて実施されます。所得税法第190条に基づいて、雇用主には年末調整が義務づけられています。

    年末調整では、納税者の置かれている状況や事情に合わせて税負担を軽減する「所得控除」が適用されます。企業は、従業員から提出された必要書類を取りまとめて、税額の計算に反映させ、年間の所得を確定させるのです。

    このように年末調整は、仮で天引きしていた所得税を精算することを目的とする重要な業務です。

    参照:『所得税法』e-Gov法令検索

    年末調整をやらないリスクとは?

    年末調整は人事担当者にとって大きな負担となるものの、実施しないと企業・従業員の双方にとってデメリットが生じます。年末調整の手続きを怠ることで考えられるリスクを、企業と従業員に分けて詳しく解説します。

    【企業】罰則を科される恐れ

    年末調整は、所得税法によって定められている給与支払者の義務です。対応を怠るとさまざまな罰則や罰金が科され、リスクが生じます。

    企業側から見た年末調整をやらないリスク
    1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金
    10年以下の懲役または200万円以下の罰金
    延滞税の発生
    資産の差し押さえ
    企業イメージの低下

    意図的に手続きを怠ると、脱税とみなされて「1年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金」が科されることがあります。極めて悪質性が高いと判断されると、「10年以下の懲役または200万円以下の罰金」もしくは双方が科される恐れもあるでしょう。

    また、徴収した所得税を期日までに納付しないと、期日の翌日から日数に応じて延滞税が課されます。2か月を過ぎると税率が大幅に上がるため注意が必要です。

    そのほかにも、本来納めるべき所得税額よりも少なく納税していた場合は、過少申告加算税が発生します。

    年末調整をせずに正しい納税額を収めない場合、資産を差し押さえられるリスクも考えられます。

    年末調整をしないと罰則が科されるだけでなく、企業としての社会的な信用や信頼を失う事態にもなりかねません。リスクを回避するためにも、期日内に正しい方法で手続きを進めましょう。

    【従業員】金銭的な損失・確定申告の手間

    年末調整をしないことで、従業員にも大きな不利益が発生します。年末調整を行うほとんどのケースでは、所得税が過払いの状態です。会社が年末調整によって納めるべき年税額を確定させなければ、本来なら受け取れる還付金が返されないままとなってしまうでしょう。

    万が一、会社が年末調整をしなかった場合、従業員が個人で確定申告をして年税額の過不足を精算しなければなりません。従業員にとって、給与の集計や申告書作成などの手間は大きな負担となるでしょう。

    めんどくさい年末調整をラクにするには?

    面倒な年末調整の手続きをラクにするための解決策を紹介します。

    • 代行サービス・アウトソーシングに依頼する
    • スケジュールと役割分担を明確にする
    • 給与計算システム・会計システムを導入する
    • 申告を電子化する

    代行サービス・アウトソーシングに依頼する

    年末調整の業務では、書類作成や複雑な計算などを処理しなければならないため、担当者にかかる負担は計り知れません。社内でのリソース確保が難しい場合は、税理士や専門業者に外部委託するのも一つの方法です。

    外注により本来注力すべき業務に集中できるメリットがある一方で、委託料が発生します。従業員の負担や残業代を含む人件費と委託料のバランスを見極めたうえで、本当に外注すべきかどうかを判断しましょう。

    スケジュールと役割分担を明確にする

    年末の多忙な時期に年末調整の手続きを滞りなく進めるためには、事前に作業スケジュールを作成し、役割分担を明確にしておくことが大切です。

    必要に応じて業務フローを見直したり、工程ごとに担当者を割り振ったりすることで、業務を円滑に進められるでしょう。

    年末調整の作業スケジュールの一般的な流れは、以下の通りです。

    時期作業内容
    10月下旬〜11月・年末調整の申告書の配布
    ・手続きにまつわる注意事項の周知
    ・申告書の回収
    ・申告書の内容チェック
    ・申告書の修正依頼
    12月・年末調整の計算
    ・源泉徴収簿の作成
    1月・源泉徴収税の納付
    ・法定書類の作成と提出

    従業員に申告書の作成を依頼する際は、記入マニュアルのような資料を準備しておくと、修正作業の手間の大幅な削減につながります。

    給与計算システム・会計システムを導入する

    年末調整の煩雑な計算から解放されるために、専用のシステムやツールの導入を検討しましょう。

    最近では、機能が充実している給与計算システムや会計システムも多くあります。年末調整の計算にかかる手間や時間が大幅に削減されるだけでなく、普段の給与計算にも活用できます。

    申告を電子化する

    年末調整の業務を効率化したい場合は、紙での申告方法を電子化することも検討しましょう。申告方法を電子化すると、以下のメリットがあります。

    • 紙の回収が不要となり、手間やコスト削減につながる
    • 計算や記入作業が簡略化されるため、ミスも減る
    • 給与システムと連携すれば、年税額も簡単に計算できる
    • 用紙を保管する必要がなくなる
    • 控除証明書を電子データでやり取りできる

    国税庁が無料で提供している『年調ソフト』や、民間企業が取り扱っている年末調整システムや多機能型の労務クラウドサービスを導入する方法があります。

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    年末調整がめんどくさい最大の原因は「紙」?

    年末調整の担当者が多忙を極める主な原因として、各種申告書や添付される証明書が「紙」であることが考えられます。

    担当者の手を煩わせる代表的な業務は、書類の回収作業や、回収した書類の内容をシステムに入力する作業です。特に、紙の申告書でやり取りをすると記載もれや計算ミスが発生しやすいため、担当者の負担は増すばかりでしょう。

    年末調整の業務を簡略化させたい場合には、給与管理システムや会計システムなどの導入、申告の電子化をおすすめします。

    めんどくさい年末調整をシステムで効率化(まとめ)

    年末調整の業務がめんどくさいと感じてしまう理由として、期日までに書類を回収できないことや書類の不備、煩雑な計算などが挙げられます。しかし、年末調整の手続きを怠ってしまうと、企業・従業員の双方にさまざまなデメリットが生じるため注意が必要です。

    年末の多忙なスケジュールの中でミスなく年末調整をするために、電子システムの導入や申告の電子化を検討してみてはいかがでしょうか。業務効率化がはかれ、負担の軽減につながります。

    本記事で紹介した内容を参考に、年末調整にかかる手間やコストを削減して効率よく作業を進めましょう。

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