年末調整にボーナスは含まれる? 控除額や調整方法について解説
年末調整とは、従業員の給与から源泉徴収した所得税の過不足を精算する手続きです。
年末調整の対象範囲は、毎月支給する給与だけではなく、ボーナスも含まれます。年間の所得税額を正しく計算するためには、対象範囲を把握することが大切です。
本記事では、年末調整におけるボーナスの取り扱いについて、控除や調整方法などを詳しく解説します。
年末調整の計算にボーナスは含まれる
ボーナスは年末調整の対象に含まれます。毎月決まって支払われる給与だけでなく、ボーナスも給与所得として源泉徴収の対象となるためです。
国税庁は、ボーナスを以下のように定義しています。
賞与とは、定期の給与とは別に支払われる給与等で、賞与、ボーナス、夏期手当、年末手当、期末手当等の名目で支給されるものその他これらに類するものをいいます(以下略)。
引用:『No.2523 賞与に対する源泉徴収』国税庁
記載の仕方
年末調整では、毎月の給与だけでなく、ボーナスを含めた年間の給与総額を「給与所得」として計算する必要があります。そのため、従業員が提出する『給与所得者の基礎控除申告書』や、企業が作成する源泉徴収票では、ボーナスも含めた金額を記載します。
年末調整でボーナスから控除される額
従業員に支払うボーナスからは、支給時に社会保険料と所得税、復興特別所得税が控除されます。
まずボーナスの金額から社会保険料を差し引き、差し引き後の金額を用いて、所得税と復興特別所得税を計算して控除するという流れです。
年末調整で税額に不足分が生じた場合は、所得税と復興特別所得税を追加で徴収します。
年末調整自体は税金の過不足を調整する手続きですが、社会保険料の計算にミスがあった場合は年末調整の際に精算するという方法もあります。
ただし、基本的にはミスが発覚したタイミングで、当月や翌月に精算するのが望ましいでしょう。
社会保険料
ボーナスから差し引かれる社会保険料は、健康保険料・介護保険料(40歳以上の場合)・厚生年金保険料・雇用保険料の4種類です。
それぞれ従業員と企業が負担し合って納付するので、ボーナスからは従業員負担分のみを差し引きます。
社会保険料は、年末調整で社会保険料控除の対象です。また、従業員自身だけでなく、配偶者や扶養親族の国民健康保険料や国民年金保険料を支払った場合も控除の対象です。
所得税/復興特別所得税
ボーナスから差し引く所得税は、『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表』を用いて算出します。また、復興特別所得税は、所得税額から各種控除を差し引いた「基準所得税額」に2.1%を乗じて計算します。
年末調整で基礎控除や社会保険料控除などの各種控除を適用したあと、最終的に算出した所得税額(年調所得税額)に不足があった場合は、その分を追加で徴収します。
参考:『令和5年分 源泉徴収税額表』国税庁
参考:『賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表(令和 5 年分)』国税庁
12月にボーナスを支給したら年末調整はどうなる?
年末調整では1年間に支払った給与を対象とします。12月にボーナスを支給した場合はどのように処理をすればよいのでしょうか。
年末調整における12月のボーナスの取り扱い方には、次の2つがあります。
- 本年最後の源泉徴収を省略する
- 本年最後の給与支払でも源泉徴収をする
それぞれのケースについて、以下で詳しく解説します。
本年最後の源泉徴収を省略する
年末調整を行う場合、その年の最後に支払う給与の源泉徴収を省略できます。
そのため、12月に給与やボーナスを支給する際には源泉徴収をせず、年末調整で処理することが可能です。
この処理方法では、毎月の源泉徴収額と年末調整の税額には自然と差が生じるため、過不足分の精算が必要です。
本年最後の給与支払でも源泉徴収をする
1年の最後に支払う給与についても源泉徴収を省略せず、通常通り手続きをすることも可能です。12月の給与を支払った時点で、ボーナスを含めて源泉徴収をします。
また、年末調整の書類に記載する年間の給与金額についても、12月の給与やボーナスを含めて計算します。
年末調整を12月に支払うボーナスで処理する場合はある?
基本的に、年末調整で発覚した税金の過不足は、「その年の最後」に支払う賃金で、従業員へ精算します。
ただし、その年の最後でなくても、企業が任意のタイミングで実施することもできます。つまり、12月支給のボーナスで年末調整をすることは可能です。
年の最後の支払いが「月の給与」である場合
毎月20日に給与を支払っている企業の最終支払い日は、12月20日です。年末調整の手続きにより把握した税金の過不足を、12月20日支払いの給与で調整します。
年の最後の支払いが「賞与」である場合
年の最後に企業から支払われるのがボーナスであれば、そのタイミングで年末調整をすることも可能です。月の給与支払い日が12月5日、ボーナス支払い日が12月10日の企業では、1年で最後に支払うのは冬のボーナスとなり、そのタイミングで調整します。
企業が任意のタイミングで年末調整を実施する場合
12月にボーナスを支払う場合、給与が支給されるタイミングの方が遅くても、ボーナスで年末調整をすることも可能です。つまり、支給がその年の最後でなくても、12月の給与で年末調整をするのか、ボーナスで年末調整をするのかは、企業の任意で選べるということになります。
年末調整を12月に支払うボーナスで処理する方法・注意点
12月支給のボーナスで年末調整をする方法は、一般的なやり方とほとんど変わりません。
従業員に必要書類を提出してもらって、給与から天引きした税額と実際の税額との差を把握し、過不足分を精算します。
12月のボーナスで年末調整をする場合は、ボーナスの金額の見積もりが必要です。
従業員に提出してもらう「基礎控除申告書」には、。ボーナスを含む年間の給与所得額を記入する欄が設けられています。
ボーナスで年末調整をする場合、比較的早い段階から書類の提出を求める必要があります。そのため、従業員は12月のボーナスがいくらになるかわからないので、支給額を見積もって記入しなければなりません。
従業員に配偶者がいる場合、配偶者の年間の給与所得額もまだ確定していないことも多いでしょう。
12月支給のボーナスで年末調整をすると年間の給与所得額について不確定な部分が大きくなるため、従業員からさまざまな質問が寄せられる可能性があります。従業員がスムーズに手続きできるよう、具体的な方法や、見積もりが誤っていた場合の修正方法などを周知しておくことをおすすめします。
ボーナス支給後に給与を支払う場合の注意点
ボーナス支給後に12月の給与を支払う場合、制度上はボーナス支給のタイミングでの年末調整が認められていますが、給与が未確定のうちに年末調整をすることになります。
そうなると、ボーナスに加えて給与も見積もり額での計算となるため、実際の金額と相違がないように注意が必要です。見積もり額と実際の金額にズレがあると、修正が必要になり担当者の負担が増してしまいます。
また、12月のボーナスで年末調整をする場合は、ボーナスの計算と年末調整の処理を同時進行で進めなければなりません。余裕を持って進めるには早めの着手が望ましいです。しかし、早すぎると控除証明書や支払証明書などの必要書類が従業員に届いておらず、手続きが進められない可能性もあります。
どちらも滞りなく計算や手続きを進められるよう、綿密な計画を立てることが大切です。
ボーナスが増えると年末調整で追加徴収の可能性も
ボーナスは基本給をもとに算出される場合が多いため、昇進や転職で基本給が上がると年末調整で追加徴収が発生する可能性があります。個人の成績や会社の業績向上でボーナスが増えた場合も同様です。
また、ボーナスにかかる所得税率は前月の給与を基準に決定します。毎月の給与とボーナスの金額が大きく異なると、年末調整で追加徴収が発生する可能性があります。
年末調整とボーナスに関する疑問
最後は、年末調整とボーナスに関するよくある疑問に回答します。
年末調整におけるボーナスの申告は見込み額?
年末調整の必要書類は11月下旬から12月中旬にかけて回収するため、従業員が記入する時点では年間の給与総額が確定していない場合が多いでしょう。ボーナスについても、書類の記入時点でまだ支給されていない場合は、見込み額を記載します。
12月にボーナスを支給する場合、年末調整はいつやる?
12月にボーナスを支給する場合、年末調整のタイミングは次のように決定するのが基本です。
12月の給与支給よりもボーナス支給が前の場合 | 給与支給のときに年末調整 |
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12月の給与支給よりもボーナス支給が後ろの場合 | ボーナス支給のときに年末調整 |
あとに支給されるもので調整します。
ただし、給与支給がボーナスより後ろの場合でも、会社の任意でボーナス支給を年末調整のタイミングとすることができます。
年末調整ではボーナスを含めた年間の給与総額を計算(まとめ)
年末調整にはボーナスも含まれ、給与と同様に重要な調整の対象となります。ボーナスは年間の給与総額に加算され、給与所得控除や各種所得控除の計算に影響を与えます。
年末調整では、毎月の給与だけでなくボーナスも含めた年間の総収入に基づいて、適切な所得税額を再計算します。
年末調整を正確に行うためには、給与とボーナスを含めた年間の総収入を正確に把握し、適切な控除を適用することが重要です。従業員は必要な書類を遅滞なく提出し、企業は税制改正に注意を払いながら、慎重に計算する必要があります。
年末調整では、毎月の給与だけでなくボーナスも含めて計算する必要があります。12月にボーナスを支給する場合は、そのタイミングで年末調整をすることも可能です。
12月のボーナスで年末調整をする場合も基本的なやり方は変わりませんが、従業員には支給日よりも前に必要書類を提出してもらうため、ボーナス分は見込み額で計算します。従業員が書類を記入する際に迷ってしまわないよう、具体的なやり方を事前に周知しましょう。
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