アライアンスとは【意味をわかりやすく】使い方やM&A・協業との違い、成功・失敗事例

アライアンスの意味とは、複数の企業が目標や利益を達成するために協力関係を結ぶことです。ニュースで見たことがあるかもしれませんが、M&A(合併・買収)や協業との違いがよくわからない人もいるでしょう。
本記事では、アライアンスの意味をわかりやすく解説し、使い方や成功・失敗事例を踏まえたポイントを解説します。自社のビジネス戦略にお役立てください。


アライアンスの意味とは
アライアンスの意味とは、2つ以上の企業や組織が特定の目標や利益を達成するための協力関係のことです。英語ではallianceと表記され「同盟」「組合」「連携」などと訳されます。
ビジネスシーンでは資本提携や業務提携と表現されることが多いため、単なる提携ではなく、長期的なビジョンも共有する意味合いが含まれています。
アライアンスは、自社の強みを生かしつつ、他社のリソースや能力を活用することで、新しい市場への進出や技術の共有、コスト削減などを目指します。M&A(合併・買収)や協業と混同されがちですが、各企業が独立性を保ちながら協力する点が特徴です。
アライアンスがビジネスで使用されるようになった理由
アライアンスがビジネス用語として使用されるようになったのは、1990年代に発生した航空業界の業務提携が関係しています。急速なグローバル化や規制緩和が進むなかで、アライアンスが促進されました。結果的に事業拡大や路線網の利便性向上が実現しています。
航空業界での業務提携を契機として、アライアンスは自動車産業をはじめとする多様な業界へと波及し、ビジネスで戦略的に用いられるようになりました。

アライアンスの使い方・例文
アライアンスの意味を踏まえて、使い方や例文をご紹介します。
例文
アライアンスの使い方や例文は以下のとおりです。いずれも協力関係や提携を意味する使い方といえます。
例文 | 左記の例文におけるアライアンスの意味 |
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両社は技術開発の分野でアライアンスを結び、新しい製品の共同開発の開始を発表した。 | 技術開発における協力 |
我々の企業は、海外市場への進出を加速するために、現地の企業とのアライアンスを模索している | 海外市場進出のための戦略 |
アライアンスの成果として、双方のノウハウを活かした新サービスが来月ローンチされる予定だ。 | 新サービス共同開発 |
競合他社との間にアライアンスを築くことで、市場全体の拡大を目指す戦略が取られている。 | 市場拡大のための協力 |
アライアンスにより、我々の製品ラインナップは大幅に拡充され、顧客への提供価値が増加した。 | 製品ラインナップの充実 |
今回のアライアンスは、双方の企業が持つリソースや強みを最大限に活用することを目的としている。 | リソースと強みの相互活用 |
アライアンスの交渉は順調に進んでおり、近日中に正式な契約締結の発表が予定されている。 | アライアンス交渉と契約締結のプロセス |
アライアンスに関連する用語
アライアンスに関連する用語を4つ取り上げて解説します。
- アライアンスパートナー
- アライアンス戦略
- アライアンス契約
- アライアンス事業
アライアンスパートナー
アライアンスパートナーとは、アライアンス契約を結ぶ企業のことです。パートナー間で資源や資金を共有し、シナジー効果を生み出す施策を共同で推進します。
アライアンスパートナーは、自社にはないリソースや技術、ノウハウを持つ企業と提携することで、新商品やサービスの開発につながり、企業の競争力を高めることが可能です。
アライアンス戦略(戦略アライアンス)
アライアンス戦略(または戦略アライアンス)とは、複数の企業がそれぞれの強みを活かし、共同で目標を達成するために戦略的にパートナーシップを結ぶことを指します。
市場のシェア拡大や技術開発など競争力を強化するために、連携を戦略的に実施して戦略を練ります。
アライアンス契約
アライアンス契約とは、互いに異なる企業や組織が資本を出しあうことを規定した契約のことです。契約書には双方の役割や契約期間、守秘義務など契約に必要な情報が記載されています。費用分担割合や収益分配に関する取り決めも定めます。
アライアンス事業
アライアンス事業とは、アライアンスパートナーと共同で事業を行うことです。自社だけでは達成できない製品やサービスを共同で開発することで実現します。結果的に、新たな価値創造や競争力の強化につながります。
アライアンスとM&A・協業の違い
アライアンスは、M&Aや協業と混同されやすいです。意味の違いを解説します。
M&Aとの意味の違い
アライアンスは協力して事業を行う経営手法であり、あくまでも協業関係のため、経営権の移譲はありません。お互いに知識や技術を出し合って事業を進めます。
一方、M&Aは、2つ以上の会社が合併したり、一方の会社が経営権を譲り受けて他方の企業を買収したりする意味を持ちます。
知識や技術を出し合って事業を進めます。合弁会社を設立するケースがありますが、
M&Aのメリットは、ビジネス規模の拡大と事業の多角化です。事業を拡大する場合、収入源の多角化は重要な要素といえます。ゼロから参入するとあらゆるリスクが発生しますが、すでにある事業を買収すれば効率的な経営につながります。
M&Aは既存の経営資源の強化や労働力を獲得できるという特徴があります。
協業との意味の違い
協業とは、特定のプロジェクトや業務に限られた協力関係を意味します。協業は柔軟性が高く、独立性を保ちながら行われるのに対し、アライアンスは戦略的で公式な契約に基づくことが一般的です。
アライアンスとは異なり、協業は当初の目標を達成したら関係が解消されることもあるのが違いです。
代表的なアライアンスの種類
アライアンスにはさまざまな種類があります。代表的なアライアンスの種類を6つ紹介します。
- 業務提携
- 資本提携
- 技術提携
- 生産提携
- 販売提携
- オープンイノベーション
業務提携
業務提携とは、複数企業が共同で行う業務のことです。それぞれの企業がリソースを共有して、単独では達成できない目標へ向かうために協力します。アライアンスの一形態として、得意分野で協力していくことで、シナジー効果が期待できるでしょう。
資本提携
資本提携とは、複数の企業が業務や資金面で協力関係を築くための手法です。アライアンスの一環として、一方の企業が提携先企業の株式を取得したり、双方の企業が株式を持ち寄って提携関係を結んだりします。資本提携を通じて、企業は新たな市場へ進出、リスク分散、技術革新などの実現が期待できます。
産学提携
産学提携とは、企業と大学や研究機関が共同で研究開発を行うアライアンスの一形態です。。主に新しい技術の開発を目指して提携しています。
自社だけで開発が難しい製品を大学と連携していくことで、積極的に進められます。大学側も研究結果や技術面から、新たな活動に結びつけられるメリットが期待できるでしょう。
技術提携
複数の企業が技術面で協力し合うアライアンスです。事業は各企業で行いながらも、重要な技術については互いに協力し合う関係性です。新規技術の開発時間やコストが削減されるため、商品販売に多くの時間を確保できます。
生産提携
生産提携は、他社の製造能力を活用して自社の生産力を補完する協力的なアライアンスです。。具体的には、製品の製造工程の一部または全部を提携先企業に委託することで実現します。企業は製品の品質を維持しつつ生産コストを抑えられます。
販売提携
販売提携とは、双方の企業が販売上の弱みを補うためにメリットを提供し合うアライアンスです。。商品力はあるにもかかわらず販売力がない場合、提携企業の販売力を活用して売り上げを伸ばします。
オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、外部の知識や技術を組織に取り入れてイノベーションを創出していくアライアンスです。新しいアイデアや技術は新たな市場を増やす機会が生まれ、競争力の強化につながります。
アライアンスのメリット・期待される効果
アライアンスを実施すると企業にとって以下のようなメリットがあります。
- 市場拡大
- コスト削減
- リスク分散
- 技術向上
新たな市場へのアクセスが可能になると、販売チャネルの拡大が期待できます。コスト削減やリスク分散も同時並行で進められるため、好影響が見込まれるでしょう。
アライアンスのデメリット・想定されるリスク
アライアンスはメリットがある一方で、以下のようなデメリットやリスクも考えられます。
- 利益配分の複雑化
- 競争の激化
- 情報漏えい
- 戦略の不一致
複数の企業が協力することで、さまざまなトラブルに発展する可能性があります。事前に双方で話し合うことが大切です。
アライアンスを結ぶポイント
アライアンスを結ぶ際の以下のポイントに注意しましょう。
- お互いの利益を尊重する
- 契約遵守
- 効果の最大化
アライアンスでは、互いの企業が尊重しながら利益を最大化していく必要があります。自社のことだけを考えていては、よい関係を構築できません。目標を共有して並走できるパートナーを探しましょう。
アライアンスを結ぶ流れ
アライアンスを締結する大まかな流れは以下のとおりです。
- アライアンス先の選定
- 企業の調査
- 条件設定や交渉
- 契約締結
- プロジェクト始動
アライアンス先の選定までに協議を複数回実施します。提携先の事業内容や経営資源、提携によるメリットはあるのかを確認しましょう。提携先の財務状況や事業戦略、市場環境などもあわせて調査する必要があります。
アライアンスの成功事例・失敗事例
アライアンスの成功事例と失敗事例を紹介します。どのような経緯があったのか参考にしてください。
成功:トヨタ×NTT(業務資本提携)
トヨタ自動車株式会社(以下、トヨタ自動車)と日本電信電話株式会社(以下、NTT)は2020年3月業務資本提携に合意しました。
両者が独自に進めているスマートシティ計画において、共同運営が連鎖的な展開に必要だという結論に至り提携が実現しています。スマートシティとは、インフラや施設などを最適化して利便性や快適性の向上をめざす都市です。
業務資本提携により、さらなる都市開発が進むと予想されています。
参考:『NTTとトヨタ自動車、業務資本提携に合意 』トヨタ自動車株式会社
成功:日本郵政×楽天(業務提携)
日本郵政株式会社(以下、日本郵政)と楽天株式会社(以下、楽天)が2021年3月に業務提携に合意しました。
楽天は楽天市場の物流インフラを整えるために外部との連携が必要であったことやモバイル事業の不振により、資金繰りに悩んでいました。日本郵政は郵便物の取り扱い数が減少するなか、物流を増やすことで売り上げを拡大する狙いがあります。
両者の思惑が一致して最終的に日本郵政が約1,500億円出資しています。
参考:『日本郵政グループと楽天グループの業務提携の進捗状況 』楽天グループ株式会社
失敗:スシロー×神明HD×元気寿司(資本提携解消)
神明HDとスシローグローバルHD(以下、スシロー)は、2019年に資本提携を解消すると発表しました。
両社は2017年9月に資本業務提携を発表し、経営統合に向けて協議を進めていました。約1年半にわたる協議のなかで、国内外の事業戦略について検討されています。しかし、ブランド戦略や海外における店舗展開方式の違いから、最終的に協議は中止され、資本業務提携の解消に至っています。
参考:『スシロー、神明、元気寿司/資本業務提携解消 』流通ニュース
まとめ
アライアンスとは、複数の企業や組織が目標を達成するために組む協力関係のことです。技術や資本を提携して両者が利益を生み出せるようにすることが目的です。
アライアンスを実施すると、市場拡大やコスト削減などの効果が見込まれる一方で、情報漏えいや競争の激化といったリスクがともないます。
業務提携を進める場合、話し合いを重ね、細心の注意を払ってパートナーを選びましょう。双方の組織の価値観を大切にしながら、相互の利益を最大化する必要があります。
