事業計画書とは? 書き方や内容例を項目別に徹底解説
事業計画書は、会社の設立や資金の調達時に、自社の状況と将来像を金融機関や投資家に説明するために作成する書類です。なかには、事業をこれから始めたい方や、独立したばかりで必要な書類や内容がわからない方もいるでしょう。
本記事では、事業計画書の書き方をわかりやすく解説します。必要な項目や注意点についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
事業計画書とは
事業計画書とは、事業の運営計画や戦略を説明する書類です。
事業計画書は企業の概要や市場状況、販売戦略、資金調達計画などを盛り込み、客観的な情報と将来像を内外に説明するために使用します。
事業計画書を作成する際のポイントは、誰が読んでも理解できるようにまとめることです。特に資金調達が目的の場合、適切な事業計画書が作成できると、投資家や融資担当者にビジネスプランが伝わりやすくなります。
事業計画書の作成や提出は義務ではありません。しかし、事業に関する情報や計画の整理、資金調達の際に役立ちます。
事業計画書の目的
事業計画書には以下の5つの目的があります。
- 資金調達
- 経営者が持つ事業イメージの可視化
- 経営課題や問題点の整理
- 無理な借入れの防止
- 社内外の説明資料
事業運営には資金が必要です。
資金調達を行うためには、金融機関や投資家を納得させなければなりません。そのため企業は、具体的な情報と練られた戦略を盛り込んだ事業計画書を用意しましょう。
しかし、事業計画書の作成が目的になってしてしまっては本末転倒です。まずは目的を正しく理解することが大切です。
事業計画書を作成するメリット
事業計画書の作成には以下の3つのメリットが挙げられます。
- 事業内容の可視化
- 方向性の共有
- 資金調達
事業計画書を作成することで、自社の事業内容や戦略を具体的に可視化できるため、改善点を見つけて事業の成功確率を高められるでしょう。
また、事業の計画や戦略が明確に記載されていると、今後の方向性も共有できます。計画や戦略がしっかり練られた事業計画があれば、企業の信頼性が高まり、資金調達や外部からの支援を受けやすくなるでしょう。
事業計画書に記載する項目・書き方
事業計画書に記載する内容として、一般的に以下の項目が挙げられます。
- 創業者や代表者の紹介
- 企業の概要
- 事業内容
- 理念や目的
- 従業員状況
- 競合や市場規模
- 自社の強み・特徴
- 販売やマーケティング戦略
- 資金調達に関する計画
創業者や代表者の紹介
事業の創業者や代表者を紹介します。学歴や経歴、保有資格などを簡潔に明記しましょう。特に、これまでの経験が事業にどのように活かせるのかをアピールしましょう。
ただし、事業と関係のない内容を書く必要はありません。
企業の概要
企業の概要に必要な内容を記載しましょう。具体的には以下の通りです。
- 企業名
- 代表者名
- 事業内容
- 所在地
- 設立年月日
- 資本金
- 役員
- 株主構成
- WebサイトのURL
- 主要取引先
- 主力商品 など
事業内容
展開しようとしている事業についてまとめましょう。
- 対象者(エンドユーザー)
- 提供するサービスや商品
- 提供方法
1つでも欠けていると、事業内容が伝わりにくくなり、話がスムーズに進まなくなる恐れがあります。
特に資金調達では、金融機関や投資家がよく見る項目です。イメージしやすく、わかりやすい表現で記載しましょう。
また、言葉だけでなくイラストや図を挿入すると視覚的に捉えやすく、よりわかりやすくなります。
理念や目的
事業理念や目的を詳細に記載しましょう。
- なぜこの事業を行うのか
- この事業で何を成し遂げたいのか
- 事業を通じて社会にどのような貢献ができるのか
以上を明確に示すことで、企業の思いや情熱が伝わりやすくなります。
ビジネスでは、客観的な視点や数字だけでなく、人柄や熱意も重要です。特に会社設立や新規事業開始の際は、過去の実績がない状態なので、事業への熱意を伝えることが重要です。
従業員の状況
従業員に関する項目は、役員数と従業員数を記載します。
役員数には、取締役や監査役などの役員者の数を記載しましょう。また、従業員数には、正社員や契約社員だけではなく、パートやアルバイトなどすべての雇用形態の人数を記載します。
また、今後の雇用計画について記載することも大切です。
- 人員配置計画
- 人員増加計画
あわせて、雇用したい人物像も記載しておくと効果的です。
- 求めるスキルや経験
- 人柄や価値観
- チームワーク など
競合や市場規模
競合や市場規模の記載に必要な項目は以下の通りです。
- 事業環境
- 市場規模や成長率
- トレンド
- 競合他社との差別化ポイント
事業における市場や周囲を取り巻く環境を簡潔にまとめます。視覚化された情報やデータなどを活用するとよいでしょう。客観的な数字を根拠にできれば、説得力や信頼感が増します。
また、競合他社の存在と状況も記載したうえで、差別化のポイントを紹介しましょう。
自社の強み・特徴
自社だからこそできる強みや、自社で提供する付加価値も紹介しましょう。競合他社が多くいる場合は、同様のことをしていてもあまり意味がありません。
販売やマーケティング戦略
事業の拡大方法や販売計画、マーケティング施策を紹介します。競合他社との差別化だけでなく、顧客ニーズの把握や分析ができると説得力も増します。
売上計画
売上計画では、販売する商品や提供するサービスでどのくらいの売り上げを見込んでいるのか記載します。
売上計画でも、複数の商品やサービスがある場合は、それぞれに分けて記載すると情報を整理しやすくなります。今後どのサービスをどれだけ伸ばせば効果的であるかなどの判断もしやすくなるでしょう。
利益計画
利益計画は事業計画書の中でも重視されている項目です。事業で計上した利益を見るための項目であり、具体的には、以下の順で利益を予測します。
- 売り上げ
- 売上原価
- 人件費
- 減価償却費
- 販売費
- 管理費
- 借入利息
- 法人税
各費用項目の分析は、収益性向上のための重要な判断材料です。
資金計画
資金計画も重視される項目です。利益計画の中で、利益が出ていることがわかったとしても、十分な資金があることにはなりません。金融機関からすると返済能力があるか否かは特に重視するポイントなので明確に書きましょう。
事業計画書が必要になるタイミング
事業計画書が必要になるのは、主に以下の3つのタイミングです。
- 会社設立時
- 既存事業の内容変更時
- 資金調達時
それぞれの場面でなぜ事業計画が必要なのか、確認してみましょう。
会社設立時
会社を設立して新しい事業を始める際は、情報や計画を整理するために事業計画書を作成するとよいでしょう。頭の中だけで思い描いたり、メモに残したりする程度では、十分な計画が立てられません。
事業計画書によって、さまざまな項目の計画を記載することで、全体のスケジュールが見えやすくなり、今後の戦略や軌道修正を行う際などにも活用できます。
既存事業の内容変更時
既存事業の定期的な見直しをするときにも、事業計画書を作成します。市場の分析ができ、企業を取り巻く環境の変化や市場の変化に対応するために役立ちます。
資金調達時
事業計画書は、事業に出資や融資をしてもらう場面で必要です。資金調達の際は事業計画書の内容が重要な判断材料になります。
特に財務計画(販売計画・利益計画・資金計画)には、整合性の取れた情報を記載し、説得力のある事業計画書を作成しましょう。
事業計画書を作成する際の注意点
事業計画書を作成する際の注意点について紹介します。
- できるだけ詳細に書く
- 表やイラストを使用する
- 市場状況や競合情報も記載する
できるだけ詳細に書く
事業計画書では、客観的な数字や計画だけを記載するのではなく、質的な情報もできるだけ詳細に記載しましょう。
たとえば、代表者の思いや事業の強み、市場状況、競合他社との差別化、今後の課題などを記載しておくことで、企業の全体的な雰囲気や将来像がわかります。
事業計画書に詳細な情報も含めることで、事業の魅力を効果的に伝え、投資家や金融機関からの信頼を得られます。
表やイラストを使用する
事業計画書は簡潔にまとめて、表・イラストなどを用いながら、できるだけわかりやすい資料にしましょう。できるだけ見やすく記載することを意識します。
文章で情報を詰め込みすぎると、読み手に理解されません。表やイラストを使用することで、読み手を飽きさせない工夫が必要です。
市場状況や競合情報も記載する
市場状況や競合他社の情報を記載することが非常に大切です。自社だけの情報で、今後の見通しを立てるのは、信憑性に欠けてしまいます。市場分析は、さまざまな予測を立てやすくするためにも詳細に記載しましょう。
事業計画書のテンプレート
事業計画書は決まった形式がないため、オリジナルで作成しても問題ありません。しかし、テンプレートなどを活用すると効率的に進められます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫では、Webサイト上でビジネスに必要なさまざまなテンプレートを提供しています。
事業計画書としては、以下の2種類が提供されています。
- 中小企業経営力強化関連用
- 創業後目標達成型金利用
状況に応じて自社に必要な方を活用してみるとよいでしょう。
J-Net21
J-Net21は、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する、起業家や中小企業の経営者向けのウェブポータルです。このサイトでは、事業計画書の雛形に加えて、その作成方法についても詳しく解説しています。
サイト内の事業計画書サンプルのセクションでは、「飲食業」「小売業」「サービス業」という3つの主要な事業分野に基づいた具体的な事業計画書の例が提示されています。内容が簡潔にまとめられており、各業種特有の注意点を踏まえた計画書の作り方を示しています。
参照:『事業計画書の作成例』独立行政法人中小企業基盤整備機構
まとめ
事業計画書は、事業の方向性や計画を整理・可視化できる書類です。
事業計画があれば、会社内部だけでなく外部にも情報を伝えやすくなるでしょう。特に会社立ち上げ時や資金調達など、何らかの取り引きや支援をしてもらう場面で有効です。
事業計画書の作成には決まった書式はないため、一般的な項目を網羅したうえで、わかりやすさを意識して記載するのがよいでしょう。
注意点は、ほかの事業計画書をそのままコピーしないことです。ほかの事業計画書や記入例などをそのまま活用してしまうと、自社の強みがアピールできないだけではなく、実情と相違がある内容になってしまいます。
せっかく事業についてアピールできる機会があったとしても、オリジナリティのない事業計画書では相手に響きません。事業の魅力や可能性が相手に伝わるよう、工夫して作成しましょう。