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どっちが偉い? CEOと社長との違い|組織での役割分担

どっちが偉い? CEOと社長との違い|組織での役割分担

CEO(最高経営責任者)は、企業の全体的な経営戦略と運営を指揮し、組織の最高位に位置する役職です。2010年代中盤ごろから「CEO」を設置する企業が増えてきました。

ただし、まだCEOは日本企業においてメジャーな役職ではありません。「社長とどちらが偉いのか」と疑問に思っている人もいるでしょう。

本記事では、社長との違いを踏まえたCEOの役割やCEOに関連する役職をご紹介します。

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    CEOとは?

    「CEO」とは、Chief Executive Officerの略で、日本語では「最高経営責任者」と訳されます。企業の全体的な経営戦略と運営を指揮する最高位の役職で、会社の方針を決定したり、組織の成長と成功を導いたりするなど重要な役割を担います。

    CEOの法的定義と代表取締役との違い

    代表取締役は、会社法第349条によって選任義務が定められていますが、CEOには法的選任義務がありません。これがCEOを置いている企業と、置いていない企業がある理由です。

    参照:『会社法 第349条』e-Gov法令検索

    実務面でのかかわりについては企業によってさまざまです。具体的には、大きく3つに分かれます。

    • CEOを実務には関与しない会長職を兼任させている会社
    • 社長がCEO兼務(実務に関与している)会社
    • 社長とCEOが別々に存在し、それぞれが実務に関与している会社

    社長との違い

    社長は会社法で選任が義務づけられており、CEOは設置の義務はありません。社長もCEOも企業の経営や事業の意思決定に携わる役職であり、権限は両者とも同等といえます。

    役員との違い

    役員は会社法第341条において選任が義務づけられています。CEOや社長を決議するのが役員の仕事であり、経営や事業運営が適切に成されているかを管理・監督する役割です。

    参照:『会社法 第341条』e-Gov法令検索

    社内における序列

    CEOは各企業の社内規定で序列が定められています。CEOと社長が別々に存在し、それぞれが経営に関与している企業では、CEOに最終的な意思決定を任せている企業が多い印象です。

    CEOとともに確立されてきた役職

    CEOのように各領域の最高責任者をあらわすその他の役職をご紹介します。

    CTO (Chief Technology Officer)

    CTOは技術革新の先頭に立ち、企業の技術戦略を策定・実行します。この役職は、新製品開発や技術基盤の維持・更新、技術トレンドの追跡、研究開発を主導します。CTOは企業における技術開発の責任者です。

    CHRO (Chief Human Resources Officer)

    人材が企業の最も重要な資源であると考えられる中、CHROは従業員の採用や開発、保持に関する戦略を担います。組織のリーダーシップ開発やパフォーマンスマネジメント、報酬と福利厚生の構造、企業文化と従業員満足度の向上などが役割です。

    COO (Chief Operating Officer)

    COOは企業の日常業務をスムーズに運営し、効率化をはかります。生産や製造、サプライチェーン、品質管理、顧客サービスといった運営面での業務を統括します。

    CFO (Chief Financial Officer)

    CFOは財務の専門家として、企業の財政健全性を保つことを任されます。予算作成やリスク分析、財務報告、会計、資金調達などの責任を担い、企業の長期的な財政戦略を定めます。

    CIO (Chief Information Officer)

    情報技術がビジネスに不可欠な部分となる中、CIOはIT戦略の策定と実行において中核的な役割を担います。これには、データ管理やITインフラストラクチャー、ビジネスプロセスのデジタル化、情報セキュリティの確保が含まれます。

    CMO (Chief Marketing Officer)

    CMOはマーケティング活動全体を指揮し、ブランド戦略や市場調査、広告キャンペーン、顧客エンゲージメントなどを通じて企業の市場でのポジションを高めます。デジタルマーケティングの重要性が増す中、CMOの役割はより複雑で戦略的になっています。

    CAO (Chief Administrative Officer)

    CAOは企業の日常業務を管理し、特定の部門(たとえば、財務や人事、営業など)を統括する役職で、CEOと取締役会に直接報告します。

    CEOの役割

    CEOの業務として以下が挙げられます。ご紹介するのは役割の一端に過ぎませんが、企業を正しい方向に導くためには不可欠な業務です。

    CEOは以下の責務を遂行することで、企業が目指すビジョンに向かって前進できるように導きます。

    戦略立案

    CEOは企業の長期的ビジョンと目標を定め、それを実現するための戦略を立案し実行します。実際には各部署のマネージャー(課長クラス)から、市場分析や競争環境の評価を聞いて、社長とともに戦略を決めます。

    意思決定

    CEOは日々の運営にかかわる重要な意思決定を行い、ときには経営上のリスクをともなう決断も必要とされます。意思決定においては目先の利益だけではなく「長期的にどうなるか」を考えなければなりません。

    また、必要に応じ従業員や取引先、株主に「なぜそうするのか」を説明するのもCEOの役割です。

    社外との契約業務

    CEOは企業代表として、主要な商取引や提携、投資に関する契約を締結します。契約条件の交渉や契約書の確認と承認、契約に基づく企業の義務の遵守を含みます。社外との契約業務は企業の法的および財政的な義務に直接かかわるため、慎重な検討が不可欠です。

    予算の承認

    予算作成は企業の財務計画の中心であり、CEOはその最終的な承認者です。予算承認には、各部門からの予算要求の評価や投資の優先順位付け、収益と支出の予測が含まれます。予算は企業の戦略的目標に沿って作成され、各部門の目標達成をサポートするための人員を割り当てます。

    社内における事業計画の承認

    CEOは、新しい製品ラインの立ち上げや市場拡大計画、組織変更を含む、新しい事業計画や既存事業の変更に関する最終決定権を持ち、それらを実行します。CEOは「リターン」と「リスク」を見聞きしたうえで、最終判断を下さなければなりません。

    採用計画の立案と実行

    企業のもっとも重要な資源は人材です。CEOは採用計画を立案し、実行する責任を持ちます。具体的には、戦略的な採用目標の設定や必要なスキルセットの識別、企業文化に合った人材の選定です。

    「社長」と「CEO」が分けられる理由

    CEOと社長の役割を分けて役職を設置する理由は次の通りです。

    客観歴な事業評価

    社長とCEOを分けて、それぞれの分析と経験に基づいて事業を評価し、経営リスクを限りなく小さくしています。社長が「絶対に利益が見込める」と思っても、その保証はありません。役割を分担して互いに支え合うことで、企業として慎重に意思決定を行えます。

    変化への対応

    CEOを「最終的な意思決定者」、社長を「現場責任者」と分け、組織として変化に対応するための体制を構築している企業も見受けられます。変化する市場で利益をあげ続けるには、顧客のニーズに対応できる体制が不可欠です。

    業務効率化による増益

    社長とCEOを分けることで、それぞれの業務を明確にできます。業務効率が上がり、企業として迅速な意思決定が見込まれるでしょう。

    まとめ

    CEOは企業における最終決定者です。社長と「どちらが偉いか」は社内規定により異なります。CEOと社長の役割を分担すると、ビジネス上のリスクを小さくしたり、変化への適応をより柔軟にできたりします。

    CEOの主な役割は統率だと思っている人もいるかもしれませんが、根幹にあるのは意思決定といえます。CEOは、中長期的な視点でメリット・デメリットを評価し、従業員や取引先に理解されるような判断と説明が求められます。