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インバウンドマーケティングとは? 成功戦略と役立つツール、観光業界の事例からわかるメリット・課題

インバウンドマーケティングとは? 成功戦略と役立つツール、観光業界の事例からわかるメリット・課題

インバウンドマーケティングは、顧客みずから興味を持って情報を求めるように引き寄せるマーケティング手法です。有益なコンテンツを提供することで、顧客の自発的な関心と信頼を獲得し、最終的には購買や契約につなげる戦略を指します。

本記事では、インバウンドマーケティングの意味と成功戦略、役立つツールについて解説します。さらに観光業界を例に挙げ、インバウンドマーケティングを取り入れることで得られるメリットや直面している課題についても紹介します。

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    インバウンドとは?

    インバウンドは幅広い業界で使われ、意味は業界によって差があります。共通しているのは「内へ入ってくる」という意味です。インバウンドの意味と対義語のアウトバウンドとの違いを解説します。

    インバウンドの意味

    インバウンドを日本語に訳すろ「内へ入ってくる」という意味を持ち、使用範囲は広範にわたります。

    観光業界では、外国から観光客が日本に訪れる、つまり国の「内側」に入ってくるという意味で使われます。

    IT業界やマーケティング業界では、顧客がみずから企業にアプローチする手法を指す言葉です。顧客が企業の「内側」に入ってくるという意味合いから派生しています。

    具体的には、企業が提供する情報やサービスに対して、顧客が自発的に関心を持ち、企業に接触することです。このような手法を用いるマーケティングを「インバウンドマーケティング」と呼びます。

    また、企業が顧客からの問い合わせや要望に対応するビジネスモデルを、インバウンドビジネスといいます。顧客が企業にアプローチすることで、企業は顧客のニーズを直接的に把握し、サービスを提供すできます。

    インバウンドとアウトバウンドの違い

    インバウンドは「内側に入ってくる」、アウトバンドは「外側に出て行く」という意味を持つ言葉です。

    インバウンドとアウトバウンドの違いは、「働きかけ」を行う主体がどちらであるかという点にあります。

    インバウンドの主体は顧客です。企業の情報やサービスに関心を持ち、自発的に接触・アプローチすることを意味します。

    一方、アウトバウンドは企業が主体です。企業側から商品やサービスを積極的に顧客に宣伝し、販売を促進することを意味します。

    マーケティングではテレビCMや新聞広告、ダイレクトメールなどが典型的なアウトバウンドの手法です。観光業界では、日本人が日本の「外側」に出て行く、つまり外国へ旅行することを指します。

    インバウンドマーケティングとは?

    インバウンドマーケティングは、現代のデジタルマーケティングの中心的な戦略の一つといえます。意味や手法、アウトバンドマーケティングとの違い、重要性を解説します。

    意味と手法

    インバウンドマーケティングとは、消費者に対して価値ある情報を提供し、その結果として自社の商品やサービスに興味を持ってもらうことを目指すマーケティング手法の一つです。

    具体的には、WebサイトやSNSなどのデジタルメディアを通じて、消費者に対して有益な情報を提供します。情報を見た消費者の関心を引き、最終的には自社の商品やサービスを購入する顧客に昇格させることを目指します。

    主な手法は以下の通りです。

    • Webサイトやページの制作
    • コンテンツの制作(コンテンツマーケティング)
    • SNSの活用
    • Web広告の掲載

    インバウンドマーケティングは、消費者に対して自社の商品やサービスの価値を伝え、消費者の関心を引きつけることを目指します。

    アウトバンドマーケティングとの違い

    アウトバウンドマーケティングは、テレビCMや新聞・雑誌などのメディアを活用して、消費者に対して自社の商品やサービスを積極的に宣伝する戦略です。消費者自身が自社の商品やサービスに興味を持つように導く戦略をとるインバウンドマーケティングとは異なります。

    インバウンドマーケティングの重要性

    インバウンドマーケティングが重要視される理由は、インターネットやSNS、スマートフォンなどの普及により、消費者自身が情報を収集し、自分のニーズに合った商品やサービスを探す時代になったためです。

    あらゆる情報があふれ、情報へのアクセルが多様な昨今は、消費者に対して商品やサービスの価値を伝え、関心を引きつけることが、より重要といえます。

    インバウンドマーケティングを活用することで、消費者を自社の商品やサービスを購入する顧客に昇格させられる可能性が高く、結果として売り上げを安定的に伸ばすことにつながります。

    インバウンドマーケティングの戦略

    インバウンドマーケティング戦略の流れや進め方、集客の方法を紹介します。

    顧客獲得までの流れ

    インバウンドマーケティングで顧客を獲得するまでの流れは、以下の4ステップで構成されています。

    • Attract(潜在層へのアプローチ)
    • Convert(見込み顧客への転換)
    • Close(見込み顧客から顧客化へ)
    • Delight(リピーター・ファン化させる)

    Attract

    潜在的な顧客を引きつけるためのコンテンツを作成し、適切なチャネルで配信します。具体的には、ブログ記事の投稿やソーシャルメディアの投稿、SEO対策が含まれます。

    Convert

    訪問者に何らかのアクションを取らせて、見込み顧客(リード)に変換します。たとえば、ニュースレターの購読や資料のダウンロード、ウェビナーへの登録です。

    Close

    見込み顧客を実際の顧客に変換するステップです。メールマーケティングやCRM(顧客関係管理)システムを使用して、関係性を深め、最終的には購入につなげる重要な段階です。

    Delight

    顧客をリピーターやブランドのファンに変えるステップです。アフターサービスやロイヤルティプログラムを通じて、顧客の満足度を高めることで、長期的な関係性を築けるでしょう。

    コンテンツの構築ステップ

    インバウンドマーケティングで活用するコンテンツの構築ステップは、以下の5つのステップで進められます。

    • 目的・目標の定義
    • ペルソナの設定
    • 戦略立案
    • 情報発信
    • PDCA

    目的・目標の定義

    マーケティング活動の目的と目標を明確にするステップです。具体的な数値目標(例:リード数、コンバージョン率)や、達成したいビジネスの目標(例:ブランド認知度の向上、新規顧客の獲得)を設定します。

    ペルソナの設定

    ターゲットとなる顧客像を定義するステップです。ペルソナは、顧客の年齢や性別、職業、趣味、価値観など詳細に設定します。

    Delight

    目的・目標とペルソナに基づいて、具体的なマーケティング戦略を立案します。たとえば以下のような問いを立てて検討を進めます。

    • どのようなコンテンツを作成するか
    • どのチャネルで配信するか
    • どのように顧客との関係を深めるか

    情報発信

    戦略に基づいてコンテンツを作成し、配信するステップです。ブログ記事の作成やソーシャルメディアの投稿、メールマーケティングなどが挙げられます。

    PDCA(Plan-Do-Check-Act)

    実施したマーケティング活動の結果を分析し、改善点を見つけ、次の活動に反映させることで、マーケティング活動の効果を最大化します。

    集客の方法

    具体的な集客の方法は以下の通りです。

    • 検索エンジンを活用する
    • 自社サイトのSEO対策
    • SNSの活用
    • 自社セミナーやオンラインセミナー
    • ホワイトペーパー

    インバウンドマーケティングのツール

    インバウンドマーケティングを実行するためには、適切なツールの活用が欠かせません。インバウンドマーケティングに役立つMA(マーケティングオートメーション)ツールと活用方法を紹介します。

    主なMAツール

    有名なインバウンドマーケティングツールは以下の通りです。

    • Marketo Engage
    • Hubspot Marketing Hub
    • Account Engagement

    Marketo Engage

    Marketo Engageは幅広いマーケティング活動を一元管理できるツールです。

    • リード管理
    • メールマーケティング
    • 顧客基盤マーケティング

    見込み顧客の情報獲得から商談化までのフェーズを効率化・自動化できます。

    Hubspot Marketing Hub

    Hubspot Marketing Hubは、インバウンドマーケティングに必要な機能をまとめたツールです。

    • SEO対策
    • ブログ投稿
    • ソーシャルメディア管理
    • リード管理

    顧客の行動を詳細に追跡し、パーソナライズされたマーケティング活動を展開できます。

    Account Engagement

    Account Engagementは、顧客との関係を深めるために設計されたツールです。

    • リード管理
    • パーソナライズされたコミュニケーションの自動化
    • エンゲージメントを高めるためのキャンペーンの実行
    • リード管理

    顧客の行動や好みを理解して関連性の高いコンテンツを提供することで、顧客満足度の向上が目指せるとされています。

    MAツールの活用ポイント

    MAツールは見込み顧客の情報を収集し、情報をもとにパーソナライズされたコンテンツを作成し提供するツールです。見込み顧客の関心を引くことで、自社の商品やサービスに対する興味を高められます。

    MAツールを活用することで、マーケティング活動の効果を定量的に測定することも可能です。改善点を見つけ出し、より効果的な戦略を立てられるでしょう。

    インバウンドマーケティングは、一度に大きな成果を上げるものではなく、長期的な視点で取り組むことが重要です。MAツールを活用する場合は、長期的な目線で取り組んでみてください。

    インバウンドにおける観光業界での活用事例

    観光業界は、国内外からの旅行者を迎えるため多様なサービスを提供しています。なかでも訪日外国人観光客、すなわち「インバウンド」の需要を捉えることは、日本経済に大きな影響を与える重要な要素といえます。

    インバウンドと訪日外国人観光客

    近年、日本の国内消費が減少傾向にある中で、インバウンド需要はその分を補う可能性を秘めています。インバウンドを活用した観光業界の取り組みによって、日本経済全体の活性化が期待されています。

    インバウンド需要の影響とメリット

    インバウンドのメリットは、観光客による消費支出よって経済的な恩恵が受けられる点です。観光客は、宿泊施設や飲食店、観光地でのショッピングなど、さまざまな場所で消費を行います。消費活動は地方や観光地の経済に直接的な利益をもたらし、経済の活性化につながります。

    インバウンドの課題と対策

    一方で、インバウンドにはデメリットや課題もあります。その一つが、外部環境の影響を受けやすいことです。

    たとえば、国際情勢や為替レートの変動、自然災害などにより、訪日観光客の数が大きく変動する可能性があります。また、観光地の過剰な混雑、いわゆる「オーバーツーリズム」問題も深刻化しています。

    課題を解決するためには、訪日客のニーズを把握し、魅力的なコンテンツを提供することです。また、多言語対応や決済サービスの充実なども効果的でしょう。訪日観光客が日本を訪れやすく、また滞在中に快適に過ごせる環境を整備することが求められています。

    インバウンドの取り組みの実例

    インバウンドの取り組みの実例としては、国土交通省が進める『ビジット・ジャパン・キャンペーン』や民間のインバウンド誘致事業などがあります。これらの取り組みは、訪日外国人観光客のニーズを理解し、魅力的なコンテンツを提供することを目指しています。

    インバウンド需要を取り込むことは、日本の流通業界にとって重要な課題の一つです。

    参照:『グローバル観光戦略及びビジット・ジャパン・キャンペーンについて』国土交通省

    インバウンドは観光業界で重要視され、日本経済全体の活性化に貢献すると期待されています。訪日観光客が日本を訪れやすくするとともに、滞在中に快適に過ごせる環境を整備することが、観光業界の今後の課題といえます。

    まとめ

    インバウンドとは、外部からの自発的な関心やアプローチです。

    観光業界では外国人観光客の日本訪問を指し、増加が経済に貢献する一方で、多言語対応や決済サービスの充実が課題が指摘されています。

    マーケティングでは価値ある情報を提供し、消費者の自発的な関心を引きつける戦略で、潜在顧客の獲得からリピーター化までのプロセスを含みます。消費者が情報を積極的に求める現代において、企業が顧客に価値を伝え、関心を引きつけることは重要です。

    インバウンドンバウンドマーケティングは長期的な取り組みが必要で、MAツール活用と継続的な改善が求められます。