モラールサーベイとは? メリットや実施の流れ、活用事例を解説
モラールサーベイとは、従業員の意欲や態度を測定するための意識調査です。企業は、業績や経営目標を達成するために、従業員の意欲やパフォーマンスを向上させる必要があります。
モラールサーベイは、従業員の意識レベルや士気を把握でき、パフォーマンスの最大化に役立つため、重要な調査の一つといえるでしょう。
本記事では、モラールサーベイについて総合的に解説し、意味やメリット、注意点なども紹介します。企業の成長のために、従業員のパフォーマンスを最大化させたいと考える経営者や人事担当者は参考にしてください。
モラールサーベイとは
モラールサーベイとは、従業員の意欲や態度を測る調査です。モラール(morale)は、日本語で「士気」や「勤労意欲」などの意味をあらわします。
企業は、業績向上や経営目標の達成のために、従業員のパフォーマンスを最大化させる必要があるでしょう。パフォーマンスには、組織全体の士気や従業員の意欲が深く関係しているため、モラールサーベイが有効とされています。
具体的には、モラールサーベイで組織の士気や従業員の意欲(=モラール)が阻害されている問題点を見つけます。企業がモラールサーベイの結果を踏まえ、職場環境の改善やチームワーク強化などの改善策を実施することで、従業員の意欲向上やパフォーマンスの最大化につながるのです。
モラールサーベイの種類
モラールサーベイの方式には「NRK方式」と「厚生労働省方式」の2種類があります。それぞれの特徴を紹介します。
NRK方式のモラールサーベイ
NRK方式のモラールサーベイは、社団法人日本労務研究会によって1955年に開発された調査で、従業員300人以上の企業を対象とし、マークシート方式で実施されます。
本調査では、従業員の働く意欲に関する要因を分析するために、以下の5分野から質問を構成し、分析を行います。
- 労働条件
- 人間関係
- 管理
- 行動
- 自我
本調査の特徴は、プライバシーに配慮して匿名で実施するため、従業員の本音を引き出しやすい点です。
参照:『モラールサーベイ(NRK方式)について~日本労務研究会(NRK)』一般社団法人日本労務研究会
厚生労働省方式のモラールサーベイ
厚生労働省方式のモラールサーベイは、厚生労働省の協力のもと、社団法人日本労務研究会によって『中小企業従業員態度測定』として1957年に開発されました。
その後、名称を『厚生労働省方式・社員意識調査(NRCS社内コミュニケーション診断)』と変更し、従業員300人未満の中小企業を対象としたマークシート方式で実施しています。
本調査は、従業員の仕事や組織に関する意識を分析するために実施され、以下のような効果が期待されています。
- 問題点の指摘に納得感がある
- 経営に対して、従業員の参加意識や信頼感が向上する
- 経営層の管理意欲が向上する
- 経営の効率化に役立つ
- 従業員の不平や不満を解消する
厚生労働省方式のモラールサーベイは従業員が、仕事や給料、上司といった会社全般についてどのような意見を持っているかを測定し、現在の意識レベルを測定するものといえます。
参照:『厚生労働省方式・社員意識調査(NRCS)~日本労務研究会(NRK)』一般社団法人日本労務研究会
サーベイの種類
サーベイとは、ものごとの全体像を把握するために行う調査です。最近はサーベイを通して従業員の組織全体に対する認識や問題点を把握し、改善に取り組む企業が増えてきました。
サーベイにはいくつかの種類があり、代表的なものは以下の通りです。
- 組織サーベイ
- 従業員サーベイ
- パルスサーベイ
- エンゲージメントサーベイ
- コンプライアンス意識調査
組織サーベイ
組織サーベイは、従業員のモチベーションやエンゲージメント、人間関係といった組織状況の把握と改善のために行うアンケートです。
組織サーベイの実施方法によっては、従業員が企業や組織へ感じていることだけでなく、各部署間の意識差なども把握できるでしょう。企業や組織としての問題点や課題を明確にし、環境の改善につなげることで、離職防止にも役立ちます。
従業員サーベイ
従業員サーベイとは、従業員を対象に会社への満足度を測るアンケートです。従業員が感じている不安や不満を抽出し、企業の問題点を把握するために実施されます。
企業は明らかになった問題点をもとに改善策を講じ、組織の課題解決を目指します。
パルスサーベイ
パルスサーベイとは、従業員満足度の意識を測るアンケート調査です。定期的かつ高頻度で実施することが特徴で、企業が現時点で抱えている問題点や課題をすぐに把握できます。
企業は、パルスサーベイの実施によって従業員の不安や不満を早期に解決できれば、従業員満足度の向上も期待できます。
エンゲージメントサーベイ
エンゲージメントサーベイは、従業員と組織の心のつながり(=エンゲージメント)を測るアンケートです。従業員の会社に対する愛着度や信頼感などを調査します。
エンゲージメントサーベイは、人材開発や離職率といった人事課題を抱えている多くの企業で実施されています。人事に関する課題を数値化することで、特に注力すべき人事施策を明確にできるでしょう。
コンプライアンス意識調査
コンプライアンス意識調査は、従業員のコンプライアンスに関する意識を測る調査です。コンプライアンスリスクが高い組織の発見や法令に関する従業員の意識レベルを把握できます。
企業は、コンプライアンス意識調査を通して、法令遵守の強化やコンプライアンスリスクの抑制に役立てます。
モラールサーベイのメリット
モラールサーベイのメリットはどのような点にあるのでしょうか。具体的なメリットは以下の通りです。
- 経営目標の達成や業績向上
- 離職率の改善
- 組織力の強化
経営目標の達成や業績向上
モラールサーベイの実施によって、エンゲージメントやストレスなどのモチベーションに関する課題を解決できれば、従業員のパフォーマンスや組織力が向上します。最終的には、経営目標の達成や業績向上にもつながるでしょう。
離職率の改善
モラールサーベイは、従業員の組織に対する不満も測定できます。企業が有効な解決策を実施すれば従業員の満足度が向上し、離職率の改善にも効果が期待できるでしょう。
組織力の強化
モラールサーベイは人事課題を明確にできるため、企業は自社に合った有効な人事施策を実行できます。明らかとなった課題を踏まえて適切な人材配置や人材育成などが実施できると、組織力の強化も期待できるでしょう。
モラールサーベイのデメリット
モラールサーベイには、メリットがある一方で、デメリットもあります。具体的なデメリットは以下の通りです。
- コストがかかる
- 従業員の不満が拡大する場合もある
コストがかかる
モラールサーベイにおけるデメリットの一つは、コストがかかる点です。モラールサーベイの実施でかかるコストは、調査そのものにかかる費用や担当者の人件費、従業員が回答する際にかかる時間分の人件費などが該当します。
企業はコストをかけてモラールサーベイを実施するため、目的を明確にして効果的な解決策につなげることが大切です。
従業員の不満が拡大する場合もある
企業がモラールサーベイを実施しても、課題が改善されない場合、従業員の不満が拡大する恐れがあります。
コストや時間を割いてモラールサーベイが実施するのであれば、課題解決に向けた有効な改善策を検討し、実行することが求められるでしょう。
モラールサーベイを実施する流れ
今後モラールサーベイの実施を検討している企業は、以下の手順を参考にしてください。
- 実施方法の決定
- 従業員への周知
- モラールサーベイの実施
- 調査結果の分析
- 調査結果や改善策の共有
1.実施方法の決定
まず、モラールサーベイを実施する際は、実施方法を決定しましょう。予算や目的を踏まえ、自社で実施するのか、外部に委託するのかを決めます。外部に委託する場合は、委託先の選定も行います。
さらに、実施時期や質問項目、集計方法、回答結果の基準値や期待値も考えておきましょう。
2.従業員への周知
モラールサーベイを行う場合は、あらかじめ従業員へ周知しましょう。企業は、従業員の理解を得るために、モラルサーベイの実施目的を伝える必要があります。
また、従業員が本音で回答できるよう、匿名制で実施することや回答の使用目的をあらかじめ明確に伝えておきましょう。
3.モラールサーベイの実施
次に、モラールサーベイを実施します。モラールサーベイは匿名で行う調査であり、企業は閲覧の権限設定を厳重にし、管理体制を強化します。
調査項目は選択式だけでなく、自由項目欄を設けて従業員の意見を求めるとよいでしょう。普段は言いづらいことを知る機会になり、企業が見えなかった現場の所感も理解することができます。
4.調査結果の分析
モラールサーベイの実施後は、調査結果を分析します。企業は、調査を実施して終わりにするのではなく、分析によって現状の課題を把握することが大切です。
項目ごとの数値が低い部分と高い部分の特徴と原因を洗い出すことで、必要な改善策を突き止めやすくなるでしょう。
5.調査結果や改善策の共有
企業は、モラールサーベイの結果を従業員に共有します。共有する際のポイントは、調査結果そのものだけでなく、分析によって得られた改善策も伝えることです。
企業が改善策を一方的に実施するのではなく、従業員の意見やほかの改善策を募集してから実施すると、当事者意識を持たせることができます。
企業は組織や人事課題について改善する姿勢を従業員に見せることで、従業員の調査に対する納得感や理解を得られるでしょう。
モラールサーベイ実施における注意点
企業はモラールサーベイの実施を有意義にするために、あらかじめ注意点を把握しておきましょう。
- 匿名で行う
- 質問文を工夫する
- 課題や不満を受け入れる
匿名で行う
モラールサーベイは匿名で行い、閲覧や管理体制を厳重にしましょう。従業員が安心して調査に協力するためにも、匿名性の厳守を徹底しなければなりません。
質問文を工夫する
モラールサーベイは、従業員に本音で回答してもらうため、わかりやすい言葉遣いや表現で行いましょう。堅苦しい文章の質問は、従業員が答えにくく、本音で回答するのが難しい場合もあります。
課題や不満を受け入れる
モラールサーベイによって、企業は組織の課題や従業員の課題を把握できます。調査によって得られた一つひとつの課題を真摯に受け止め、改善策の検討と実施に努めましょう。
モラールサーベイの事例
モラールサーベイを実施した企業ではどのような効果が得られたのでしょうか。具体的な2社の事例を紹介します。
- イオン株式会社
- 富士ゼロックス株式会社
イオン株式会社
イオン株式会社は、全従業員を対象に、隔年でモラールサーベイを実施しています。従業員満足度の向上をよりよいサービスの提供につなげ、顧客満足度の向上までを目的としています。
同社は、モラールサーベイの調査結果を客観的に把握し、組織や制度設計などの具体的な施策に役立て、さらなる満足度向上を目指しているようです。
富士ゼロックス株式会社
富士ゼロックス株式会社では、毎年従業員意識調査を行っています。2018年度はエンゲージメントサーベイを実施し、対象従業員の94%の回答を得ることができました。従業員の自発的な貢献意欲や、期待される行動の発揮度合いを把握できるようにしています。
具体的には、従業員の士気を測るうえで重要な以下の5項目を「コア・モラール」とし、スコア化しています。
- 仕事のやりがい
- 職場の働きがい
- 上司への信頼度
- 人事運営への満足度
- 組織運営への満足度
参照:『Sustainability Report 2019 マネジメント編』富士フイルム株式会社
まとめ
モラールサーベイは、従業員の意識レベルや組織全体の士気を計測できる調査です。
企業の業績向上や経営目標の達成には、従業員のパフォーマンスや組織力の強化が不可欠です。これらを解決するためには、企業が、組織や従業員のモラールにおいてどこに課題があるのかを把握し、改善のために取り組むことが大切でしょう。
定期的にモラールサーベイを実施し、自社の課題解決や経営目標の達成を目指しましょう。
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