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理想の組織風土とは【改革事例あり】意味や醸成する手順とポイント

理想の組織風土は、従業員のエンゲージメントや生産性の向上など、さまざまなメリットをもたらします。

本記事では、理想の組織風土を構成する要素について解説します。よい組織風土を醸成するための手順やポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

理想の組織風土とは【改革事例あり】意味や醸成する手順とポイント
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    組織風土とは

    組織風土とは、組織を構成するメンバー間で共通認識となっている独自の考え方や思想、価値観、ルールを指す経済学用語です。組織風土は組織の経営計画や業務の進め方、従業員のメンタリティなどに大きな影響を与える要素なので、健全に保つ必要があります。

    そもそも「風土」とは

    そもそも風土とは、土地や地域が固有の特徴として持っている気候や地形、景色などを意味する言葉です。物理的な特徴だけでなく、土地に根づいた特有の考え方や価値観、文化を指すこともあります。

    風土は、ビジネスシーンでも使われる言葉です。ビジネスシーンにおいては、定着したルールや価値観を「組織風土」や「企業風土」と表現します。

    よい組織風土の例

    よい組織風土とは、共通した目標を実現するために、それぞれの従業員が行動するための環境やルールなどが整備されている状態を指します。

    よい組織風土の具体例は次の通りです。

    オープンなコミュニケーション上司や部下、同僚とのコミュニケーションを取りやすく、誰もが意見や考えを自由に共有できる環境が整っている
    成長と学習の機会従業員がスキルを向上させるための教育プログラムやキャリアアップの機会が豊富にあり、個々の成長が組織全体の成長につながっている
    共有されたビジョンと価値観組織の目標や価値観が明確で、従業員によって共有されている。これにより、全員が一丸となって目標に向かえる

    従業員同士が対立することなく、協力しながら成果を出そうと挑戦し続けられるのが、理想的な組織風土といえるでしょう。

    悪い組織風土の例

    悪い組織風土が悪い状態の具体例は、次の通りです。

    トップダウンの意思決定上層部が一方的に意思決定を行い、従業員の意見やフィードバックが考慮されない。
    恣意的な評価と報酬能力や実績よりも、上司との人間関係や事務的なルールによって評価や報酬が決まる
    ハラスメントや差別性別や年齢、人種、宗教などでの差別やハラスメントが存在すると、組織は健全とはいえない

    組織風土が悪いといわれる企業では、風通しがよくないことによる行き違いやハラスメント、差別、誹謗中傷などが起こりやすく、組織運営が健全とはいえません。結果的に従業員に不公平感が生まれ、エンゲージメントやモチベーションが低下している事例が見られます。

    組織風土と組織文化、企業風土、社風との違い

    組織風土と似たような言葉として「組織文化」「企業風土」「社風」などがあり、それぞれ違う意味合いを持っています。

    組織文化との違い

    組織文化とは、組織を構成する従業員によってつくられた、現在進行形で存在する価値観やルール、行動指針です。企業の目標やビジョン、組織を構成する従業員によって柔軟に変化するのが特徴です。組織風土とは異なり、コントロールしやすく、意図的に形成できます。

    企業文化との違い

    企業文化とは、企業と従業員の間で共有されている独自の価値観や行動規範です。企業全体で見られる行動様式を指し、部署や部署などの組織文化と区別します。

    企業文化も組織文化と同様、課題や目標を発信することで意図的にコントロールできる点が、組織風土との大きな違いです。

    企業風土との違い

    企業風土とは、企業独自の環境や風習に根づいている従業員の行動や思考傾向です。企業としての風土であるため、組織風土に比べて示す範囲が広くなります。

    社風との違い

    社風とは、企業文化や組織文化です。従業員が感じる職場の雰囲気や特徴を反映しています。具体的な例は次の通りです。

    • 経営スタイル
    • 経営層の影響力

    組織内の独自ルールから生じるものであり、人間関係や労働環境、仕事のスタイルなどから各従業員が感じ取っている会社の特徴といえます。

    組織風土を構成3つの要素

    組織風土を構成するものとして3つの要素が挙げられます。

    • ソフト(目に見えない要素)
    • ハード(目に見える要素)
    • メンタル(心理面に影響する要素)

    ソフト(目に見えない要素)

    組織風土を構成するソフト要素とは、それぞれの従業員の心構えや価値観によってつくられる、視覚化できないものです。具体的には次のような例が挙げられます。

    • 上下関係や勢力関係
    • 社員間のコミュニケーション
    • 業務へのモチベーション
    • 責任の所在
    • 社員同士の信頼関係

    明文化されていない暗黙のルールや職場の雰囲気など、目に見えないものであると覚えておきましょう。

    ハード(目に見える要素)

    組織風土を構成するハード要素とは、組織内で明文化されている行動規範やルールです。具体的には次のような例が挙げられます。

    • 経営理念
    • ビジョン
    • クレド
    • 経営計画
    • 人事制度
    • 組織構造や組織体制
    • 就業規則
    • 社訓
    • 事業内容や業務プロセス
    • コンプライアンス など

    ハード要素は経営層で話し合って設定されるものであり、それらの要素に応じてさまざまな意思決定が繰り返されます。ハード要素をもとにソフト要素も醸成されます。

    メンタル(心理面に影響する要素)

    組織風土を構成するメンタル要素とは、従業員の心理や精神面に大きく影響を与えるソフト要素の一部です。具体的には次のような例が挙げられます。

    • 自分の意見や考えを率直に伝えられるか
    • チャレンジ精神を持って業務に取り組めるか
    • 新たなプロジェクトに積極的にかかわる姿勢があるか
    • 変化を柔軟に受け入れられるか
    • 社員間で協力する姿勢が見られるか
    • コミュニケーションを円滑に行えているか

    感情的な部分であるためコントロールしにくいものの、仕事に対するモチベーションや従業員のエンゲージメントを高める重要な要素です。

    よい組織風土・悪い組織風土とは何か

    よい組織風土と悪い組織風土の特徴をそれぞれ紹介します。

    よい組織風土・ブリリアンス型
    ・仲良しクラブ型
    悪い組織風土・ギスギス型
    ・腐敗型

    よい組織風土:ブリリアンス型

    チームワークや成果に対して高い意識を持つ、代表的な理想的な組織風土です。組織内の人間関係が良好で、互いに協力し合って成果を出す風土が整っています。

    従業員は充実感を持って業務に取り組めるうえ、人間関係によるストレスも少ないのが特徴です。離職率も低いため、人材育成にも力を入れやすいでしょう。

    悪い組織風土:仲良しクラブ型

    チームワーク力は高いものの、成果に対する意識が低い組織風土を指します。協力体制は見られますが、従業員同士の衝突や指摘を避ける傾向があり、従業員の成長につながりにくいのがデメリットです。

    互いに指摘をしない状況は、組織としてのチェック体制が機能しないことを意味します。大きなトラブルや不祥事が起こるリスクも高まってしまうでしょう。

    悪い組織風土:ギスギス型

    成長意欲は高いものの、チームワーク力が低い組織風土です。個々の成果を求めるあまり、従業員同士の協力やサポートが行われず、組織内の雰囲気が険悪になりがちです。何かトラブルが発生すると責任を転嫁する傾向があります。

    悪い組織風土:腐敗型

    成果に対する意識が低くて職場の雰囲気もよくない組織風土です。成果意識とチームワーク両方のレベルが低いため、業務を効率よく進めて成果につなげることが難しい環境といえます。

    組織風土の改革が必要なとき

    組織風土の改革が必要なタイミングは、次の通りです。

    • 社会環境が変化したとき
    • 不祥事が発生したとき
    • 従業員の離職が続くとき

    社会環境が変化したとき

    現代は、新型コロナウイルスの感染流行や働き方改革をはじめとする法改正など、社会環境が目まぐるしく変化する時代です。複雑でとらえにくく、先の見通しを立てにくいVUCA時代において、組織風土の改革が求められています。

    個々の従業員の多様性を活かしながら、進化し続ける組織を目指すためにも、改革は必要不可欠です。

    不祥事が発生したとき

    不祥事やトラブルを隠ぺいしてしまう企業は、トップダウンで風通しが悪い傾向があります。隠ぺい体質が明るみに出たときには、組織体制を見直すだけでなく、従業員の意見が経営層に届くようなボトムアップの組織風土に変えていくことが大切です。

    従業員の離職が続くとき

    人材流出が続いてしまうと、組織に残った従業員に業務負担が集中し、さらなる離職につながる恐れがあります。従業員のエンゲージメントやモチベーションを高めるためにも、「働き続けたい」と思えるような組織風土をつくることが重要です。

    よい組織風土を醸成する効果やメリット

    よい組織風土を醸成することによって、得られる効果やメリットを解説します。

    • 企業が目指すビジョンが浸透する
    • 従業員エンゲージメントが向上する
    • 生産性・業績向上につながる

    企業が目指すビジョンが浸透する

    企業の経営計画や目標、価値観を共有できていると、経営層と従業員の双方が同じビジョンを持って仕事に取り組めます。よい組織風土では、企業目標に向かって従業員が一丸となって行動できるため、目標達成を目指しやすくなるでしょう。

    業務の意義や目的が明確になることで、従業員が主体的に行動できるようになり、モチベーション向上にもつながります。

    従業員エンゲージメントが向上する

    よい組織風土だと従業員にとって働きやすい環境が整っているため、従業員のエンゲージメントが向上します。従業員同士の関係性がよく、何かトラブルがあっても協力し合える環境は、従業員の離職率低下にも大きく貢献するでしょう。

    生産性・業績向上につながる

    よい組織風土だと多くの場合、従業員同士が切磋琢磨しながら成長できる環境が整っており、生産性向上が期待できます。チームワークが強化されると、互いに協力し合って業績を伸ばそうという意識も高まるでしょう。

    組織風土改革の進め方

    組織風土改革の進め方は、次の通りです。

    1. MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定する
    2. 組織風土改革の目的や実施を社内共有する
    3. プロジェクトチームを発足する
    4. 従業員アンケートを行う
    5. 組織風土改革の実施について社内で共有する

    1.MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)を策定する

    MVVとは、企業における使命やあるべき理想像、価値観です。従業員に対して、会社の存在意義や目標を示す役割を果たします。

    経営理念や将来のビジョン、行動指針などは組織風土に大きく影響するため、既存のビジョンや行動指針をあらためて見直してみましょう。

    2.組織風土改革の目的や実施を社内共有する

    組織風土改革を実行する前に、改革の目的や実施することを社内で共有します。実際に風土をつくるのは、現場で活躍する従業員です。特に現場を管理する管理職やベテラン従業員の理解を得て、協力を仰ぐことが大切です。

    3.プロジェクトチームを発足する

    行き過ぎたトップダウンによる改革は、組織風土の悪化を招く原因になりかねません。改革のために、専門のプロジェクトチームを発足させます。

    立候補制にしたり、若手社員をメンバーに入れたりして多角的な視点から意見を取り入れるとよいでしょう。

    4.従業員アンケートを行う

    プロジェクトチームを発足させたら、現場で活躍する従業員たちの意見を吸い上げるためにアンケートを実施します。企業が抱える問題点や現在の不満などについて、ヒアリングした内容をもとに分析し、風土改革に必要な情報をまとめます。

    5.組織風土改革の実施について社内で共有する

    改革すべき点が明らかになったら、企業が求める人物像や行動基準を設定します。それらの内容を人事制度評価に反映させると、従業員も納得したうえで業務に取り組めるでしょう。公平な人事評価制度は、よい風土をつくるうえで重要な要素です。

    従業員の意識や行動から風土変革を促すためにも、会社にポスターを張ったり、社内ポータルサイトやチャットツールを活用したりして社内に浸透させてください。自社サイトにMVVを掲載し、外部に公表するのも有効な手段です。

    組織風土の改革事例

    組織風土の改革に成功した事例を3社ご紹介します。

    • キリンホールディングス株式会社
    • オリンパス株式会社
    • テルモ株式会社

    キリンホールディングス株式会社

    キリンホールディングス株式会社は、かつてビール類の市場シェアNo.1から転落したことをきっかけに「新キリン宣言」を掲げ、組織風土の改革に乗り出しました。

    当時の社長が主導して従業員と対話を繰り返し、お客さま第一の考えで新商品開発に取り組む姿勢を浸透させていったといわれています。

    その結果、新型コロナウイルスによる外出自粛が追い風となり、消費者の在宅ニーズに対応できたことが功を奏して、2020年11年ぶりに再びトップシェアに返り咲きました。

    参考:『追悼 キリンビール布施前社長が最後に語った風土改革への思い』日経ビジネス
    参考:『多様な人財と挑戦する風土』キリンホールディングス株式会社
    参考:『組織風土』キリンホールディングス株式会社

    オリンパス株式会社

    2011年に組織ぐるみの粉飾決算が発覚し、風土改革に着手したのがオリンパスです。改革の一環として、経営理念を再定義し、経営層との対話や社内報を通じて理念の浸透をはかりました。

    創立100周年を迎えた2019年には『Transform Olympus』が発表され、グローバル企業への転換が目指されています。

    参考:『社内報で経営陣と従業員の距離を縮める(オリンパス株式会社)』社内報ナビ
    参考:『企業変革プラン「Transform Olympus」について』オリンパスグループ企業情報サイト

    テルモ株式会社

    テルモ株式会社は、1990年から3期連続で赤字を出したため、組織風土改革に踏み切ります。

    具体的には表彰制度や社長と従業員が直接対話する機会の導入です。これにより従業員のモチベーションを高め、主体的な行動を促せたことが成功につながり、結果的に2017年3月期決算で売り上げ回復に成功しました。

    参考:『2017年3⽉期 上期 決算概要』テルモ株式会社 
    参考:『サステナビリティレポート2021』テルモ株式会社

    組織風土改革を進める注意点・ポイント

    組織風土改革を進める際に気をつけるべきポイントは、次の4つです。

    • すべての組織風土を洗い出すのは困難
    • 改革には時間がかかることを理解する
    • 組織体制や制度自体を変更する必要もある
    • 社内トラブルに発展する恐れがある

    組織に根づいてきた風土を改革するには、多くの場合、長い年月がかかります。また、理想とする組織風土への改革にあたって、組織体制や制度を変更することも必要です。

    「トップダウンからボトムアップ」「年功序列から成果主義」のように業務体制に大幅な変化がともなう場合は、社内トラブルに発展するリスクもあるため注意しましょう。

    理想の組織風土改革にタレントマネジメント推進も

    理想の組織風土づくりに向けて社内改革を推進するには、タレントマネジメントの導入も一案です。

    タレントマネジメントとは、人材情報を一元管理して従業員一人ひとりのスキルや能力を可視化し、戦略的なデータ活用によって人材配置や人材育成の効果を高める手法です。一人ひとりの適性にあった固有のマネジメントに取り組むことで、能力を最大限発揮してもらい、組織全体の生産性向上を目指します。

    タレントマネジメントを通じた従業員の能力開発は、組織風土にもよい影響をもたらします。組織が個々の成長を支援する文化を醸成することで、モチベーションの向上による離職率の低下、そして全体のパフォーマンスの向上につながるでしょう。

    • 人材育成に着手できていない
    • 離職率が高い
    • 組織風土を社内に浸透させたい

    という企業はご検討ください。