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ペーシングとは? 意味や効果、ビジネスでの活用方法、実践のポイントをわかりやすく解説

ペーシングとは? 意味や効果、ビジネスでの活用方法、実践のポイントをわかりやすく解説

ペーシングは、相手の話し方や行動を相手のペースに合わせ、コミュニケーションを円滑に進める手法です。相手に安心感や親近感を与えることで、信頼関係を築きやすくなるでしょう。

本記事では、ペーシングの意味や実践のコツ、活用方法などを解説します。他者とのコミュニケーションを円滑にしたい、関係性を構築したいと考えている方は参考にしてください。

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    ペーシングとは?

    ペーシングとは、文字通り相手との「ペース」を合わせることを指します。ペーシングは、コミュニケーションの中で相手の話し方や行動を観察し、相手に合わせて自分の行動を調整するスキルです。

    具体的には、話す速度や声の高さ、相づちや頷きのタイミング、話し方、声のトーンなどを相手に合わせます。たとえば、相手がゆっくりと話している場合、自分もゆっくりと話したり、相手が大きな声で話している場合は自分も大きな声で話したりすることが挙げられます。

    ペーシングは、相手とのコミュニケーションをスムーズに進めるために、相手の感情や意図などの非言語情報を理解し、相手との波長を合わせる手段といえるでしょう。

    ペーシングの目的と効果

    ペーシングの主な目的は「信頼関係の構築」です。相手に同調することで安心感や親近感を与え、信頼関係を構築しやすくなるためです。

    たとえば相手が悲しんでいる場合、自分も悲しむ表情を見せることで、相手の感情を理解しようとする姿勢を示すことができます。相手は「自分を理解しようとしてくれている」と感じ、積極的に心を開いたり、コミュニケーションを取りやすくなったりするでしょう。

    ペーシングを構成するスキル

    ペーシングは主に、

    • ミラーリング
    • マッチング
    • バックトラッキング

    の3つのスキルで構成されています。それぞれのスキルについて解説します。

    ミラーリング

    ミラーリングとは、相手の表情や仕草を、鏡のように真似することです。ミラーリングは、人間が他人の行動を自然に模倣する傾向があることを利用したものといわれています。

    たとえば、相手が笑顔であれば笑顔を返したり、相手が手を組んでいれば、同じように手を組んだりすることが挙げられます。その結果、相手は自分が理解され、受け入れられていると感じ、相手の警戒心を解くことができるのです。

    しかし、ミラーリングは適度な範囲で行うことが重要です。相手のすべての動作を完全に模倣すると、相手は不快感を覚えるかもしれません。そのため、さりげない模倣を心掛けましょう。

    マッチング

    マッチングとは、相手の声のトーンや話すスピード、大きさに合わせることです。

    具体的には、相手がゆっくりと話している場合は、相手に合わせてゆっくりと話すことや、相手が声のトーンを下げたときは同じように声を低くすることなどです。これにより、相手は自分と同じペースで話してくれる相手に安心感を覚え、信頼関係を築きやすくなるでしょう。

    マッチングもやりすぎないことが重要です。話し方を完全に模倣すると、相手に違和感や嫌悪感を与える可能性があります。そのため、要所でさりげなく相手のペースに合わせることが大切です。

    バックトラッキング

    バックトラッキングとは、相手の話を聞き、話の要点を繰り返すことです。

    たとえば、相手が「私は最近仕事が忙しくて大変だ」と言った場合「仕事が忙しくて大変なんですね」と繰り返します。その結果、相手は自分の話を理解し、共感してくれたと感じ、相手に対して心を開きやすくなるでしょう。

    バックトラッキングも執拗に繰り返さないように注意しましょう。相手の言葉をそのまま繰り返すだけだと、相手は自分の話を真剣に聞いていないと感じるかもしれません。そのため、適度に取り入れることはもちろん、話を聞いているという姿勢を保つことも大切です。

    ペーシングの活用方法【ビジネスシーン】

    ペーシングはビジネスにおいても有効な手法として注目されています。特に営業や部下のマネジメントなど、人間関係が重要な場面での活用が多く見られます。それぞれの場面での活用方法について解説します。

    営業でのペーシング

    営業やマーケティングの場面では、特に話し方に注意することで、顧客との信頼関係の構築や、効果的なコミュニケーションを実現しやすくなります。

    まずは顧客の話をじっくりと聞きながら、マッチングやバックトラッキングを活用し、相手のペースに合わせて自分の話を進めることが求められます。このとき、相手の話を遮ったり、自分の意見を一方的に話したりしないよう注意しましょう。

    これにより、顧客は「自分の話を理解してくれる」と感じ、信頼感を抱きやすくなるのです。

    部下のマネジメントでのペーシング

    部下の指導やマネジメントにおいても、ペーシングは有効です。特に上司との1on1では、緊張してしまってうまく話せない部下もいるでしょう。

    上司が話すスピードを合わせたり同調したりなど、上司が部下のペースに合わせてコミュニケーションを取ることで、部下の緊張を解き、本音を引き出しやすくなるのです。

    部下の悩みに寄り添ったり、必要に応じてアドバイスをしたりすることで、部下のモチベーションを上げることができれば、チーム全体の生産性向上にもつながります。

    ペーシングを実践するときのポイント

    ペーシングの実践に役立つポイントを3つ解説します。

    話し方や声のトーンを合わせる

    ペーシングの1つめは、相手の話し方や声のトーンに合わせることです。相手の言葉のリズムや声の高さ、スピードなどを観察し、自分の話し方を調整することを意味します。

    たとえば、相手が早口で話している場合、自分も同じように早口で話すことで、相手とのコミュニケーションのリズムを合わせられるため、コミュニケーションをより円滑に進められるでしょう。

    特定の言葉を使用する

    ペーシングの2つめは、相手が使用している特定の言葉を自分も使用することです。相手が使用している言葉や表現を観察し、自分も使うことで、相手との共感を生み出す効果があります。

    具体的な例には、相手が「楽しい」という言葉を頻繁に使用している場合、自分も「楽しい」という言葉を使用することで、相手の共感を得やすくなるでしょう。

    価値や信念に同調する

    ペーシングの3つめは、相手の価値観や信念に同調することです。相手の価値観や信念に対して理解や共感を示すことで、相手との深い信頼関係の構築を目指します。

    たとえば、相手が環境保護に深い関心を持っている場合、自分も環境保護に対する理解や共感を示すことで、相手は親近感を覚え、信頼関係を築きやすくなるでしょう。

    ペーシングを実践する際の注意点

    ペーシングは、コミュニケーションの一部として有効ですが、実践する際にはいくつか注意点があります。主な注意点を2つ解説します。

    相手に気付かれないようにする

    ペーシングを実践する際には、ペーシングしていることを相手に気付かれないようにすることが重要です。ペーシングは、相手の行動や言葉、感情などに合わせて自分自身の行動や言葉を調整することで、相手との関係性を深める手法です。

    しかし、これが相手に気付かれてしまうと、相手は自分がバカにされていると感じ、不快感を覚える恐れがあります。本来の目的と反対に、関係性を壊してしまうことにもなりかねません。

    そのため、ペーシングは自然に行うようにしましょう。たとえば、相手の話し方や身振りを完全に真似するのではなく、雰囲気に合わせて行動を調整することが大切です。

    相手をコントロールしようとしない

    ペーシングは相手をコントロールしようとするものではありません。

    ペーシングの目的は、相手とのコミュニケーションを円滑に進め、相手との関係性を深めることです。そのため、相手の感情や行動を誘導することはあっても、相手の意志を尊重したうえでのことであり、相手を操作しようとするものではありません。

    相手をコントロールしようとする行為は、相手に不快感を与え、信頼関係を損なうかもしれません。そのため、ペーシングを行う際には、相手の意見や感情を尊重し、自分の意見や感情を押し付けることなく、相手との対話を進めることが大切といえるでしょう。

    ペーシングの理解におすすめの資料

    最後に、ペーシングの理論と実践の学習に役立つ資料をご紹介します。ペーシング活用の前に一読してみるとよいでしょう。

    書籍

    ペーシングの学習には専門的な書籍が有用です。なかでも特に推奨される書籍を4つご紹介します。

    1. マンガでやさしくわかるNLP
    2. 脳と言葉を上手に使う NLPの教科書
    3. 伝え方が9割
    4. 雑談力が上がる話し方

    まず1つめが『マンガでやさしくわかるNLP』です。本書は、マンガ形式でNLP(神経言語プログラミング)の基本的な理論を解説しています。ペーシングはNLPに含まれるため、NLP全体の理解を深めることで、ペーシングの理解も進むでしょう。

    2つめの『脳と言葉を上手に使う NLPの教科書』は、NLPの理論をより深く学びたい方に向けたもので、ペーシングについても詳しく解説されています。

    3つめの『伝え方が9割』は、コミュニケーションの重要性と方法について解説した書籍です。ペーシングはコミュニケーションの一部であり、コミュニケーション自体を学ぶことで、ペーシングも理解しやすくなるでしょう。

    最後に『雑談力が上がる話し方』もペーシングの学習に役立ちます。本書では、日常会話でのコミュニケーションスキルを向上させる方法が紹介されており、ペーシングの実践に役立つでしょう。

    レポート

    書籍以外にも、NLP-JAPANラーニング・センターが提供する無料レポートは、ペーシングの学習に有用でしょう。本レポートでは、ビジネスでの成果や人間関係の解決、コミュニケーション能力の向上、マネジメント能力の向上など、NLPを学ぶことで解決できる内容が詰まっています。

    また、ペーシングを理論だけでなく、実際のビジネスや人間関係にどのように応用するかについても詳しく解説しています。ペーシングを実践的に学びたい人にとっては特に役立つかもしれません。

    参考:『NLP無料レポート』NLP-JAPAN ラーニング・センター

    まとめ

    ペーシングは相手の話し方や行動を観察し、相手のペースに合わせることです。相手に親近感や共感を与え、相手との信頼関係築きやすくする効果があるといわれています。

    ペーシングはビジネスシーンでも有効であり、営業やマーケティング、部下のマネジメントなどで活用されます。ただし、ペーシングを実践する際には、すべてを真似するのではなく、適度に取り入れながらコミュニケーションをとるように心がけましょう。

    相手との信頼関係や関係性を構築したいと考えている方は、本記事でご紹介した実践のコツや活用方法を参考に、実践してみてください。