パラダイムシフト(転換)とは? 意味や身近な例と変化への対応策を組織と個人に分けて解説

パラダイムシフト(転換)とは? 意味や身近な例と変化への対応策を組織と個人に分けて解説

世界では、ITや医療など多くの領域で「パラダイムシフト」が起こっています。

パラダイムシフトとは、新しい技術や発見により、従来の価値観や考え方が根本的に変わる現象です。たとえば、クラウドサービスが場所を選ばない働き方を、個別化医療が患者一人ひとりに適した治療を提供するようになりました。

パラダイムシフトは私たちの生活やビジネスに影響を及ぼしていますが、身近な例がすぐには思い浮かばない人もいるでしょう。

本記事では、パラダイムシフトの意味を身近な例をあげて紹介しています。また、今後訪れる変化に対して組織や個人がどのように適応し、対応すべきかも解説します。

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    パラダイムシフトを簡単に解説

    まずはパラダイムの概要を紹介しながら、パラダイムシフトの意味を解説します。

    パラダイムの意味

    パラダイム(paradigm)とは、ある時代や領域において、人々の考え方や捉え方などの根本を支える規範のことです。簡単にいうと「その時代において当たり前とされていたこと」を指します。

    パラダイムシフトの意味

    パラダイムシフトとは、パラダイムがシフト(移動)すること、つまりその時代や領域における「当たり前」が大きく変わることです。

    具体的には、以下のように使用します。

    領域例文
    マーケティングインターネットの普及によりパラダイムシフトが起こり、マーケティングの主戦場はWebサイトやSNSとなった。
    市場市場にパラダイムシフトを起こすため、これまでの常識にとらわれない方法を議論する必要がある。
    消費者意識消費者の価値観の変化を見逃さず、パラダイムシフトをビジネスのチャンスに変える。

    近年はIoTやAI技術の進化などにより、パラダイムシフトが加速していると考えられています。もしかすると今後、数年のうちに、私たちの価値観や生活を大きく変えるようなパラダイムシフトが起こるかもしれません。

    パラダイムチェンジとの違い

    パラダイムシフトとパラダイムチェンジは、インターネット上でほとんど同じ意味で使われています。

    あえて違いを明確に区別するなら、パラダイムシフトは価値観や考え方、パラダイムチェンジは社会制度の変化について言及する際に使われることが多いようです。

    ただし、表現としてはパラダイムシフトがより一般的であり、パラダイムチェンジをパラダイムシフトと言い換えても差し支えないでしょう。

    ビジネスにおけるパラダイムシフト

    ビジネスにおけるパラダイムシフトとは、企業や従業員が「経営」や「働き方」に対する考え方や価値観を変えることです。たとえば、デジタル化の波に沿ってリモートワークを取り入れたり、持続可能な開発目標(SDGs)に沿ったビジネスモデルへ移行したりすることが該当します。

    ステークホルダーからの期待や労働市場などにおいて、ビジネス環境は絶えず変化します。企業が外部環境の変化に適応し、競争力を持ち続けるには、従業員一人ひとりと新しい価値観を共有し、変化を受け入れることが大切です。

    パラダイムシフトは、企業が持続可能な成長を遂げるために必要な、根本的な価値観や行動様式の変化といえます。実現するには、組織文化を見直して変化を受け入れ、新しい働き方やビジネスモデルを積極的に採用する必要があるでしょう。

    パラダイムシフトが起きている要因

    現代社会においてパラダイムシフトが加速している背景には、主に次の4つの要因があります。

    • IT・DX技術の進化
    • インターネット・SNSの普及
    • 新型コロナウイルスの流行
    • 少子高齢化と人生100年時代

    IT・DX技術の進化

    パラダイムシフトのきっかけとなった要因の1つめは、IT化やDX化です。

    デジタル技術の発達にともなう社会のIT化・DX化は、私たちの生活に大きな変化をもたらしました。現在もIoTやAI技術は加速度的な進化を続けており、今後も人々の価値観や行動に大きな影響を与えていくでしょう。

    インターネット・SNSの普及

    パラダイムシフトのきっかけとなった要因の2つめは、インターネットやSNSの普及です。

    インターネットの普及にともない、人々はWebサイトや動画配信サイト、SNSなどで気軽に情報を収集できるようになりました。情報収集のツールが変化したことで、マーケティングの主戦場もテレビや新聞からWebサイト・SNSへと変化しています。

    新型コロナウイルスの流行

    パラダイムシフトのきっかけとなった要因の3つめは、近年猛威を振るった感染症です。

    2020年頃からの新型コロナウイルスの流行は、私たちの生活様式や価値観に変化をもたらしました。たとえば、テレワークの普及が加速した結果、テレワークを前提とした採用活動が行われたり、対面での打ち合わせが縮減されたりと「働き方」が大きく変わりました。

    また、外出自粛によりオンラインビジネスが活況となり、国からの自粛要請がなくなった現在においても多様な種類のサービスのオンライン化が定着しています。

    少子高齢化と人生100年時代

    パラダイムシフトのきっかけとなった要因の4つめは、少子高齢化に端を発する価値観やライフスタイルの変化です。

    日本では少子高齢化が進んでおり、人口に対する高齢者の割合は今後も増加していく見込みです。また、「人生100年時代」といわれるように医療技術の発達によって人々の寿命が延びていくと、人生設計においても新たな価値観や常識が生まれる可能性があるでしょう。

    パラダイムシフトが企業にもたらす影響

    パラダイムシフトによって、企業には、以下に書くような影響が出てきます。

    消費者の行動が変化

    消費者の行動様式が大きく変化することで、既存の商品やサービスの需要が急激に低下する可能性があります。一方で、この変化を的確に捉えた企業には、飛躍的な成長のチャンスが訪れます。従来の事業モデルにとらわれない柔軟な対応が、企業の成長を左右する重要な要素となります。

    社会全体で認識や価値観が変化

    社会全体の認識や価値基準が変化することで、これまで注目されなかった分野が新たな価値を持つようになります。新型コロナウイルスの流行時に見られたように、特定の業界では従来のビジネスモデルの継続が困難になることもあります。この変化に適応できるかどうかが、企業の存続に大きく影響します。

    法制度の変化

    テクノロジーの進歩や社会構造の変化に伴い、新たな法規制の制定や既存の法律の改正が実施されます。企業は法制度の変化に迅速に対応することが求められます。

    【個人・日常】パラダイムシフトの身近な例

    パラダイムシフトの身近な例を日常生活に即して紹介します。

    スマートフォンの普及

    スマートフォンは私たちの生活を大きく変え、まさにパラダイムシフトの代表例といえるでしょう。

    2010年は3.6%だったスマートフォン普及率は、2022年には93.5%に上り、ビジネスや生活に欠かせないツールとして定着しています。ゲームやSNS、買い物、行政手続きにいたるまで多彩なサービスが登場し、生活に欠かせないアイテムになりました。

    参照:『モバイル社会白書Web版 第1章 携帯電話の所有・利用状況』モバイル社会研究所

    キャッシュレス決済の普及

    近年、加速するパラダイムシフトの例として、キャッシュレス決済の普及による、現金を持ち歩かない習慣が挙げられます。

    今や、さまざまな種類のクレジットカードや電子マネーなどが登場しています。硬貨やお札を持たずに外出する人が増えた結果、コンパクトな財布やバッグの需要が高まるという日常の変化もありました。

    サブスクリプションサービス

    パラダイムシフトは、人々の余暇の過ごし方にも及んでいます。

    サブスクリプションサービスとは、定額料金を支払うことでサービスを期間単位で利用できるビジネスモデルです。

    特に映画やドラマ、音楽などのデジタルコンテンツはサブスクリプション市場が活況です。DVDをレンタルショップへ借りに行くのではなく、自宅にいながらデジタルコンテンツを視聴するスタイルへ、エンターテインメントの楽しみ方に大きな変化をもたらしました。

    自動改札機・交通系ICカード

    都会ではすっかり定着した自動改札機や交通系ICカードも、じつは身近なパラダイムシフトの代表例です。

    しかし、導入当初は「ICカードの反応が遅く、改札をスムーズに通過できない」という課題がありました。ICカードの反応速度を速くする試みは、なかなか実現できず、技術者たちは苦戦を強いられます。

    そこで採用されたのが「改札を長くして、改札を通る時間を延ばす」という方法です。固定概念にとらわれないアイデアによって、見事に課題が解決したパラダイムシフトです。

    【ビジネス】パラダイムシフトの代表例

    次にビジネスにおけるパラダイムシフトの具体例を紹介します。

    働き方:画一的から多様化へ

    働き方改革などの流れに乗じて、人々の働き方においてパラダイムシフトが起こっています。

    テレワークやワークライフバランスへの注目度が高まるにつれ、働き方は多様化しました。また、「同じ会社で定年まで働き続ける」という従来の価値観に縛られず、多様なキャリアを選択する人が増えています。

    情報アクセス:画一的から多様化へ

    パラダイムシフトの身近な例としても挙げたスマートフォンの普及により、私たちはよりさまざまな情報にアクセスできるようになりました。動画配信サービスやSNS上での影響力を持つ『インフルエンサー』に代表されるように、個人が発信する情報を消費の判断基準とする人も増えています。

    消費:所有から共有へ

    サブスクリプションサービスやシェアリングサービスが一般化し、資産やコンテンツは「所有」より「共有」へと軸足が移りました。消費者の意識も「使いたいときに、使いたいものを使う」という方向性へと変化していると考えられるでしょう。

    企業価値:短期的利益から持続的な社会貢献へ

    2008年9月の金融危機を契機として、企業の評価基準についてもパラダイムシフトが起こりました。

    今まで企業価値は「短期でいかに効率的に利益をあげられるか」によって判断されてきました。しかし、リーマンショック以降、経済活動を通じた社会貢献が強調され、持続的な成長が目指されています。

    特に若い世代は社会貢献への意識が高い傾向があり、SDGs(持続可能な開発目標)への取り組みを積極的にアピールする企業も増えてきました。

    人材:人的資源から人的資本へ

    変化が激しい時代に対応するには、組織力の強化が不可欠です。そのため、近年は従業員一人ひとりを大切な「資本」とみなす考え方が浸透し、それぞれのスキルや個性を最大限に発揮できるような環境の整備に取り組む企業が増えています。

    パラダイムシフトに対応するためのポイント

    パラダイムシフトに対応するためには、以下のポイントを押さえることが重要です。

    組織のナレッジを蓄積する

    知識やノウハウをデータベース化しておくと、パラダイムシフトが起こった際も社会のニーズに柔軟に対応しやすくなります。また、先人の知見を活用すれば、新たな価値を創造することも可能です。

    オープンイノベーション

    オープンイノベーションとは、企業が自社の枠を超えて、他社のアイデアや技術を活用し、新たな価値を創造する取り組みです。日本ではまだ一般的ではありませんが、オープンイノベーションを率先して進めると、社会や市場に変革をもたらすきっかけが増やせるでしょう。

    共有プラットフォームを構築する

    昨今は、サービスやコンテンツを提供する「場所」を用意するプラットフォーム型のビジネスモデルが急成長しています。こうした「場所」でユーザーとつながるスタイルのビジネスを展開すれば、ビジネスを効率化できるだけでなく、より多くの情報を収集できるようになるでしょう。

    多様化する顧客ニーズを理解しようとする

    パラダイムシフトを起こすためには、多様化する顧客ニーズを敏感に察知する力が必要です。市場や流行にアンテナを張り、社会環境の変化にいち早く気づき、柔軟に受け入れる姿勢を持ちましょう。

    多様な価値観・人材を迎える

    これまでの常識をくつがえすためには、多様な価値観を柔軟に受け入れることが大切です。さまざまな背景やスキルを持つ人材を採用して活かしていくことで、ダイバーシティ&インクルージョンが実現できると、パラダイムシフトを起こせる企業へと成長できる可能性が高まります。

    【組織】パラダイムシフトの対応策

    ポイントを押さえたうえで、組織がパラダイムシフトに対応するために必要な具体策を紹介します。

    人事評価制度を検討し直す

    従業員のそれぞれの頑張りを公正に評価できる仕組みを取り入れましょう。評価制度の透明性を保ち、不当な評価や待遇格差を是正することも重要です。個人の成績や実力を評価する制度を構築できると、従業員のモチベーション向上も期待できます。

    ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む

    パラダイムシフトに対応するには、多様な価値観を取り入れて、それらを活かすことが重要です。

    ダイバーシティ&インクルージョンとは、従業員の多様性を尊重し、それぞれが活躍できる組織を構築する仕組みです。

    社会に大きな変革をもたらすような商品やサービスを生み出すために、多様な人材が必要です。一人ひとりが自分に合う働き方やキャリアパスを選択できる制度の構築とともに、個性や能力を存分に発揮できる環境を用意しましょう。

    採用の人材要件を再定義する

    これまで以上に多様な人材を確保するためには、採用の人材要件を再定義することも大切です。採用活動で重視するポイントやボーダーラインを検討すれば、これまでとは異なる強みを持つ人材を確保できる可能性があります。

    人的資本経営・CSR活動

    パラダイムシフトに対応するには、自社の利益ばかりを追求するのではなく「人材に投資することが企業価値を高める」という視点を持ちましょう。また、企業活動を行うにあたっての社会的な責任をまっとうし、持続的な成長を目指すことも大切です。

    個人がパラダイムシフトに対応するために必要なもの

    最後に、個人がパラダイムシフトに対応するために必要な行動や意識を紹介します。

    固定観念に縛られず、多角的な視点を持つ

    パラダイムシフトに対応するためには、多角的な視点を持つことが大切です。社会や組織を全体的に見ることで、新たな気づきを得られます。

    また、これまで当たり前とされてきた価値観や考え方に縛られず、自由な視点からものごとを捉えることも重要です。

    リスクを取って行動する

    これまでの常識をくつがえすためには、失敗を恐れない姿勢が必要です。ある程度のリスクを許容しながらチャレンジを続けていくことが、やがてイノベーションを生み出し、社会に大きなインパクトを与えることにつながるでしょう。

    スキルを更新し続ける(リスキリング)

    パラダイムシフトが加速する社会では、求められる知識やスキルも次々と変化します。たとえば、デジタル技術の進化に対応するためには、知識や技術を持つ人材が必要です。これからのビジネスパーソンには、時代の流れに合わせて自分のスキルを更新し続ける姿勢が必要とされるでしょう。

    パラダイムシフトを起こせる組織づくりへ

    パラダイムシフトとは、それまで常識とされてきた価値観や考え方が大きく変化することです。デジタル技術の進化やSNSの普及などにより、現代はパラダイムシフトが加速しているとされています。

    パラダイムシフトに対応するためには、社会の変化に常にアンテナを張り、多様な人材を採用して組織力を強化することが重要です。人事領域では、人材を「資本」とみなし、それぞれのスキルや個性を最大限発揮できるような環境を整備することも求められるでしょう。

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