ソフト面とハード面とは【違い】ビジネスでの意味や職場別の例を解説

ソフト面とは「人・組織・関係性」など目に見えない環境要素、ハード面とは「設備・制度・物理環境」など目に見える要素を指します。
企業が職場環境を整備するうえでは、ソフト面とハード面の両方の視点を持って、対応しなければなりません。
本記事では、ソフト面とハード面の違いを明確にしたうえで、職場ごとの具体例や整備のポイントを紹介します。人事施策や組織改善を構造的に整理したい方は、ぜひお役立てください。

目次

ソフト面とハード面とは
ソフト面とハード面とは、目に見えるかどうかで分類される職場環境の要素です。
ソフト面は人材や組織風土など、形のない「見えないもの」、一方のハード面とは、オフィスの設備やツールなど、物理的に存在する「見えるもの」を指します。
職場においては、ソフト面が「人や情報」、ハード面が「設備や道具」と捉えるとよいでしょう。たとえば、風通しのよい職場文化やマネジメント手法、ルールはソフト面。空調やオフィスのレイアウト、使いやすいシステムはハード面にあたります。
従業員の働きやすさを向上させるためには、ソフト面とハード面の両方をバランスよく整備することが大切です。
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ビジネススキルにおけるソフト面とハード面
ソフト面とハード面という言葉は、職場環境だけでなく、ビジネススキルの領域でも使われます。ビジネスの現場では、ソフトスキルとハードスキルの両方が求められます。
ソフトスキルとハードスキルには、以下のような違いがあります。
ソフトスキルは、従業員個人の性格や経験に根ざした、目に見えにくい力です。意図的に向上させることはできますが、客観的な評価が難しいという特徴があります。
一方でハードスキルは、知識や技術といった業務専門性に基づくスキルで、研修や学習によって習得・向上させやすく、評価もしやすいのが特徴です。
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企業はソフト面とハード面の環境整備が必要
ソフト面とハード面のどちらか一方だけを整えても、従業員が働きやすい職場環境にはなりません。企業が目指したいのは、人間関係や風土づくり(ソフト)と物理的な設備(ハード)の両立です。
たとえば、企業が最新の設備や便利なシステムを導入しても、現場のルールやモラルが守られておらず、意思疎通がとれなければ、快適な職場とはいえません。
ハード面で効率性や利便性を高めるだけでなく、ソフト面で人が精神的に安心して働ける空気をつくることも同じくらい重要です。
企業が環境整備を進めるときは、目に見える部分(ハード)だけでなく、見えにくい部分(ソフト)にも目を向ける必要があります。

ソフト面とハード面の対策例【職場別】
企業がソフト面とハード面の環境整備を進める際、業種や職場ごとの特性を踏まえることが重要です。同じ「働きやすさの改善」でも、現場によって優先順位や方法は異なります。
以下では、代表的な6つの職場(業態)におけるソフト面・ハード面の具体例を紹介します。
ソフト面の対策例 | ハード面の対策例 | |
---|---|---|
介護福祉施設 | ・人材採用 ・介護研修 ・マニュアル作成 ・安全/衛生管理 ・介護技術の向上 | ・バリアフリーの建物構造 ・スロープや手すりの設置 ・エレベーターの設置 ・車椅子の用意 ・介護用トイレの設置 ・福祉車両の用意 ・介護用ベッドの整備 |
配送業 | ・シフト管理 ・体調管理 ・ドライバーの採用 ・安全管理 ・長時間勤務の防止策を考案 | ・車両の管理 ・タイヤ交換 ・配送管理システムの導入 ・事務所の整理整頓 |
理美容施設 | ・研修 ・シフト管理 ・人材採用 ・資格取得者の採用 | ・鏡の用意 ・チェアの用意 ・予約管理システムの導入 ・内装の整備 |
宿泊施設 | ・シフト管理 ・研修 ・不規則な勤務をしている従業員の健康管理 ・サービスの充実 | ・ベッドのメンテナンス ・レストランにおける設備の整備 ・宿泊予約システムの導入 ・防犯カメラの設置 ・インターネット環境の安定化 |
教育 | ・保育士や教師など資格取得者の採用 ・福利厚生の改善 ・研修 ・シフト管理 | ・おもちゃや絵本、学習道具の調達 ・遊具や運動用具の安全確認 ・安全設備の確認 ・空調設備の確認 ・登降園管理システムの導入 ・連絡アプリの導入 |
飲食店 | ・ホールスタッフや調理師の採用 ・研修 ・メニュー考案 ・衛生管理 ・(店舗デザイン) | ・テーブルや椅子の調整 ・調理設備の整備 ・空調設備の整備 ・証明の調整 ・調理器具や食器の用意 ・(店舗デザイン) |
自社の業態と照らし合わせながら、必要な環境整備のヒントとしてご活用ください。
介護福祉施設
介護福祉施設における職場環境の整備では、人材不足の解消に向けた採用活動や、無理のないシフト管理がソフト面の対策例です。
一方でハード面では、介護を支えるための設備が該当します。たとえば、施設をバリアフリー化することで、利用者の安全が確保できるだけでなく、介助する従業員の負担も減らせるでしょう。
配送業
配送業におけるソフト面の対策例としては、長時間労働の防止策や安全運転を強化する取り組みが挙げられます。
ハード面では、荷物を運ぶための車両管理や配送管理システムの導入が対策の一つです。
システムの導入によって業務効率が向上し、ドライバーの負担を軽減できます。
理美容施設
理美容施設では、技術向上のための研修や、スタッフの働きやすさに配慮したシフト管理がソフト面を支えています。
一方でハード面では、施術に必要な椅子や鏡などの備品準備が欠かせません。また、予約管理システムの導入により、顧客情報の管理や来店対応を効率化できます。
宿泊施設
宿泊施設におけるソフト面では、宿泊者に対するおもてなし力を高める研修や、不規則な勤務に対応するシフト管理が重要な対策です。
ハード面には、客室のベッドやレストラン、防犯カメラなどの物理的な設備が挙げられます。たとえば、厨房機器を整備することで、大量調理が実現でき、安全性も高められるでしょう。
教育
教育の現場のソフト面の対策例は、保育士や教員といった資格保有者の採用や、育成を目的とした研修制度が該当します。
ハード面には教具や遊具のほか、登降園システムや連絡アプリが含まれます。ツールの導入により、家庭との連携がスムーズになり、保護者の満足度を高めることにもつながるでしょう。
飲食店
飲食店には、調理や接客を担うスタッフの採用・研修や、メニュー開発、シフト管理など幅広いソフト面の対策が考えられます。
ハード面としては厨房機器や空調設備、予約管理システムが含まれます。テーブルや椅子といった顧客向けの設備も、店舗の印象や回転率にかかわる重要な要素です。
また、働き手と顧客にとって快適な店舗デザインも、ソフト面とハード面の橋渡しとなる視点といえます。
ソフト面とハード面の整備方法【企業の課題別】
ソフト面とハード面を整備することは、従業員の働きやすさを高め、企業の生産性向上につながる重要な取り組みです。ただし、取り組み方は、企業が抱える問題・課題によって変わってきます。
では、企業が直面する課題に対して、どのようにソフト面とハード面を整備すればよいのでしょうか。
以下では、企業が抱えやすい5つのテーマを取り上げ、それぞれにおける具体的な整備のポイントを紹介します。自社の状況と照らし合わせながら、現場改善のヒントとしてお役立てください。
生産性の向上
生産性向上は、あらゆる企業にとって共通の重要な課題です。人手不足や業務の属人化、長時間労働といった課題を抱えるなかで、働き方や職場環境を見直す企業も増えているでしょう。
組織の生産性を向上させるには、以下のソフト面・ハード面の整備が求められます。
ソフト面 | ハード面 | |
---|---|---|
生産性の向上 | ・人材の増員 ・研修実施 ・残業廃止 ・休暇取得の促進 | ・人事管理システムの導入 ・機器や設備の導入 ・AIやITツールの活用 |
ソフト面では、人材を増やしたり、スキルを向上させたりする取り組みが挙げられます。
また、長時間労働によって疲れや体調不良を招くと、生産性が低下してしまいます。企業は、従業員の過度な残業を廃止したり、休暇制度によってリフレッシュさせたりすることも重要です。
ハード面では、業務効率を高めるシステムや設備の導入が挙げられます。AIやITツールを活用すると、業務の自動化や情報共有のスピードが上がり、生産性向上の効果が期待できます。
家庭との両立
従業員の育児や介護を支援することは、多くの企業にとって避けて通れない課題です。家庭の事情を抱えながら働く従業員が増えるなか、企業には柔軟な働き方の整備が求められていることでしょう。
家庭との両立を支援するには、以下のソフト面・ハード面の整備が有用です。
ソフト面 | ハード面 | |
---|---|---|
家庭との両立 | ・産育休関連の情報提供 ・育児や介護向け企業の独自制度の導入 ・職場の理解促進 | ・企業内保育所の導入 ・キッズスペースがあるサテライトオフィスの導入 ・搾乳室の設置 |
ソフト面では、従業員が育児や介護をしながら働き続けられるよう、制度の導入や周囲の理解を促す取り組みが求められます。柔軟な働き方の選択肢を用意し、社会保険料の免除など必要な情報を届けることも重要です。
ハード面では、企業内保育所やキッズスペース、搾乳室など、実際の生活に寄り添った設備の整備が効果的です。従業員が安心して働ける環境をつくるためには、ハード面のサポートが欠かせません。
多様性の確保
近年、多様な人材を活かす職場づくりへの関心が高まっています。障がい者や外国人労働者など、異なる背景を持つ従業員が安心して働ける環境を整えることは、企業の成長にもつながる要素です。
多様性の確保によって、これまでにない価値観や企業変革につながるアイデアが生まれる可能性もあります。多様性を確保し、個々の力を引き出すためには、以下のようなソフト面・ハード面の整備が必要です。
ソフト面 | ハード面 | |
---|---|---|
多様性の確保 | ・多様性の理解促進 ・障がい者や外国人向け従業員の研修 ・定期的な面談実施 | ・障がい者や外国人のためのマニュアル作成 ・障がい者に対応した機器やシステムの導入 ・多様な言語表示 ・点字、多目的トイレの整備 |
ソフト面では、社員一人ひとりが多様性を理解し、受け入れる意識を持つことが欠かせません。研修や面談、マニュアルの整備などを通じて、安心して働ける関係性や風土を育てていく必要があります。
ハード面では、障がいのある方や外国人労働者にとって使いやすい設備やシステムの導入が必要です。点字や音声案内、多言語表記といった配慮を進めると、多様な人材が能力を発揮しやすい環境が整うでしょう。
高齢従業員への配慮
少子高齢化が進むなかで、企業における高齢従業員の活用はますます重要になっています。
雇用の継続が一部義務化されていることもあり、年齢に応じた働きやすい環境づくりが求められています。
高齢従業員が安心して働き続けられるようにするためには、以下のようなソフト面・ハード面の整備が必要です。
ソフト面 | ハード面 | |
---|---|---|
高齢従業員への配慮 | ・体調管理のサポート ・柔軟な働き方の実施 ・配属先の考慮 | ・バリアフリー化 ・勤務先や休憩場所の空調設備 ・資料などの文字サイズの適正化 |
ソフト面では、体調への配慮や働き方の柔軟性を高めることが重要です。また、本人の負担や希望に応じた配属先を検討するなど、適材適所のマネジメントが求められます。
ハード面では、バリアフリー化や空調・照明などの快適性に配慮した職場づくりが必要です。資料の文字サイズを大きくするなど、小さな工夫も高齢従業員の働きやすさにつながるでしょう。
従業員の健康管理
企業は、従業員が心身ともに快適な状態で働くために、健康管理が大切です。
健康経営の観点からも、従業員が心身ともに健康で働ける環境を整えることは、企業の持続的な成長に欠かせません。メンタルヘルスの不調や体調不良を未然に防ぐためにも、日頃からの健康管理への取り組みが求められています。
従業員の健康を守るためには、以下のようなソフト面・ハード面の整備が必要です。
ソフト面 | ハード面 | |
---|---|---|
健康管理 | ・心理的安全性の確保 ・ハラスメント研修 ・面談の実施 ・相談窓口の設置 ・(フリーアドレス化) | ・空調管理 ・防音設備 ・(フリーアドレス化) |
ソフト面では、心理的安全性を高める取り組みや、相談しやすい雰囲気づくりが重要です。
定期的な面談やハラスメント防止研修を通じて、従業員の不調や変化に早く気づける体制を整えておきましょう。
ハード面では、温度や音などの職場環境が心身のストレスに影響することもあるため、空調や防音の設備に配慮が必要です。また、フリーアドレスの導入でハード面を変えると、社内コミュニケーションの活性化といったソフト面の整備にもつながります。
まとめ
ビジネスにおけるソフト面とハード面をバランスよく整備することは、従業員の働きやすさや職場環境を改善するために重要な取り組みです。
オフィスに最新設備を導入したとしても、職場の人間関係や運用ルールが整っていなければ、職場環境が改善したとはいえません。
ハード面で「環境」を整えるだけでなく、ソフト面で「人や組織」の状態を整えることが、働きやすい職場づくりには欠かせないのです。
企業はまず、自社の現状や課題を見つめ直し、何のソフト面・ハード面に手を入れるべきかを明確にする必要があります。そのうえで、両面をバランスよく整備していくことで、職場全体の生産性の向上にもつながっていくでしょう。
組織のソフト面・人的資本データを可視化|One人事[タレントマネジメント]
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