シンパシーとは? 意味や類語とエンパシーとの違いを解説
「シンパシー」とは、他者の感情や状況に対して共感し、理解する感覚のことを指します。ビジネスシーンでは、同僚やクライアントとの信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションを取るために活用できる概念です。
本記事では、シンパシーの意味や類語、エンパシーとの違いを詳しく解説します。
シンパシーとは
シンパシーとは、他者の感情や状況に共感する感覚を指す言葉です。日本語では「共感」や「同情」と訳され、相手が困難な状況にある場合に、気持ちや状況を理解し、同情を抱くときに用いられます。
日常会話では「シンパシーを感じる」「シンパシーを抱く」「シンパシーを覚える」などの表現で使われ、相手と気持ちが通じ合ったときに使われます。
シンパシーの語源
シンパシーはギリシャ語の「συμπάθεια」が語源です。「συν(一緒に)」と「πάθος(同情、哀しみなど)」の2つの語が組み合わさり、「ともに感情を抱く」という意味になりました。
そして、ラテン語の「sympathia」や、フランス語の「sympathie」を経て、現在の英語「sympathy」へと変化しました。語源の背景からもわかるように、シンパシーには「感情をともにする」「他者と心を共有する」意味合いが強く含まれています。
シンパシーの類語
シンパシーの類語には、「同感」「同調」「意気投合」などが挙げられます。他者の意見や感情に対して賛同し、同じような感覚や考え方を持つ場合に使われます。
シンパシーの類語には、「同感」「同調」「意気投合」などがあります。他者の意見や感情に賛同し、同じ気持ちや考え方を共有する場合に使われます。
同感 | 相手と同じ感情や考えを持ち、賛同する際に使われる |
同調 | 相手の考えや意見に同意し、同じ方向を目指す場合に使われる |
意気投合 | お互いの気持ちや考えが自然に合い、親密な関係を築くことを指す |
シンパシーの対義語
シンパシーの対義語としては、「反感」や「アンチパシー(antipathy)」が代表的です。相手の考えや感情に賛同できず、むしろ反発する感情を抱く場合に使われます。
シンパシーの対義語には、「反感」や「アンチパシー(antipathy)」が挙げられます。相手の考えや感情に共感できないどころか、むしろ反発や否定的な感情を抱く場合に使われます。
反感 | 相手に対して不快な感情を持ち、逆らおうとする気持ちをあらわす |
アンチパシー | 相手の感情や行動に対して強い拒否感や嫌悪感を持つことを意味する。語源もシンパシーと対照的で、ギリシャ語の「anti-(反対)」が接頭辞として使われる |
シンパシーを使った例文
シンパシーはビジネスシーンでも使われています。例文は以下の通りです。
例文 |
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クライアントの厳しい予算の制約を聞き、彼らの困難な状況にシンパシーを覚えました。 |
部下が失敗して落ち込んでいるとき、ただ叱るのではなく、彼の気持ちにシンパシーを示し、ともに解決策を考えました。 |
同僚が家族の介護で悩んでいるとき、彼女の状況にシンパシーを感じ、業務スケジュールの調整を提案しました。 |
上司がプレッシャーを感じているのを見て、シンパシーを持ち、進捗報告をこまめに行うなど、負担を軽減する工夫をしました。 |
プロジェクトの進行が遅れて、プレッシャーを感じている同僚にシンパシーを感じ、「一緒にがんばろう」と励ましました。 |
シンパシーとエンパシーの違い
「シンパシー(sympathy)」と「エンパシー(empathy)」は、日本語ではどちらも「共感」と訳されますが、ニュアンスは大きく異なります。
シンパシーは、他者の感情に対する「同情」や「あわれみ」の意味合いが強く、相手の苦しみに寄り添い、いたわる感情を指します。たとえば、誰かが悲しんでいるときに「かわいそうに」と感じるのがシンパシーです。
一方、エンパシーは、相手の立場に立って気持ちを「自分ごと」として感じ取る能力です。自分とは異なる考えを持つ他人に自己を投影し、相手がどのように感じているかを想像する力であり、問題解決にも役立ちます。たとえば、相手の悲しみに感情移入し、理由を理解したうえで、自分も同じ感情を共有するのがエンパシーです。
エンパシーの種類
エンパシーには次の4つの種類があります。
種類 | 例 | |
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エモーショナル・エンパシー | 相手の価値観や感情に深く共感して示す | 他者の感情に敏感で、共感力が高い |
コグニティブ・エンパシー | 相手の視点や立場を理解しようとする | 異なる背景を持つクライアントニーズを相手の視点で理解する |
コンパッショネイト・エンパシー | 理解・共感した相手の感情に基づいて行動する | 相手の悩みを理解して具体的な解決サポートをする |
ソマティック・エンパシー | 他者の苦痛や感情を想像し て、自分の身体にも同様の感覚を引き起こす | 体調不良の人のそばにいると、自分も同様に体調が悪く感じる |
エンパシーが高い人は、他者の感情に対する好奇心と理解力があり、傾聴力も備えています。そのため、相手に安心感を与え、信頼関係を築くことが可能です。
ビジネスでは、顧客のニーズに寄り添う営業、消費者の視点を反映したマーケティング、顧客の問題を解決する商品開発にエンパシーが活かされ、深いコミュニケーションと成果の向上が期待できます。
シンパシーを深める方法
シンパシーを深める方法を4つ取り上げて解説します。
- さまざまなことを体験する
- 傾聴を意識する
- 共感的な言葉を用いる
- カードを送る
さまざまなことを体験する
シンパシーを深める方法の一つは、自分とは異なる経験や視点を持つ人と触れ合い、多くを体験することです。人が持つ背景や価値観は異なりますが、さまざまな文化や考え方に触れることで、他者の感情や状況を理解しやすくなるでしょう。
シンパシーを感じるためには、相手に共感できるエピソードが必要です。エピソードを豊富に持つと、多様な価値観に柔軟に対応できるようになります。
傾聴を意識する
傾聴は、シンパシーを深めるために欠かせないスキルです。傾聴とは、単に相手の話を聞くのではなく、相手の感情や言葉の裏にある思いに寄り添い、理解しようとする態度を指します。傾聴を通じて、相手は「自分が本当に理解されている」という安心感を得られます。
たとえば、「それはつらかったですね」といった言葉を添えると、相手の気持ちを自分も理解しているメッセージを伝え、信頼関係を深める効果があります。
共感的な言葉を用いる
シンパシーを深めるためには、共感的な言葉を適切に使うのが有効です。可能な限り肯定的な言葉で、共感の気持ちを伝えるように心がけましょう。相手が話す内容に対して、感情に寄り添った言葉を選び、気持ちをくみ取ることで、相手は「自分が理解されている」と感じやすくなります。
具体的には、相手が難しい状況にあるときには、「本当に大変でしたね」「私も同じ経験をしたことがあります」といった言葉を使うことで、共感を示せます。
カードを送る
シンパシーを深めるシンプルな方法として、カードを送るのも有効です。感謝や励まし、思いやりの気持ちを伝えるためにメモを書く、カードを送ることで、シンパシーを深められます。特に、メッセージを手書きで書けば、相手の心に深く響くことが多いでしょう。
シンパシーの英語圏でのニュアンス
英語圏で使われる「シンパシー(sympathy)」は、本来ネガティブな状況で使う言葉です。
日本語での「共感」とは少し異なり、主に相手の不幸や悲しみに対して「同情」や「お悔み」を示す場面で使われます。
「お悔み」のシーンで使われる際は、「I feel sympathy for the earthquake victims(地震の被害者に同情します)」といった表現がされます。
そのため、英語圏で日常的な共感や賛同をあらわす際には「sympathy」よりも「I agree with you(同意します)」「I feel for you(理解します)」といった表現が一般的です。
英語で「sympathy」を不適切に使うと、相手に違和感を与えてしまう場合があるため注意しましょう。
シンパシーは重要なビジネススキル
シンパシーは、共感や理解を通して、相手との信頼関係を築くための重要な要素です。取引先や同僚との関係では、相手の立場や感情に寄り添うことで、より深い協力関係が生まれます。
また、顧客との関係においても、顧客のニーズや価値観を理解し、それに応じたサービスや製品の提供で、長期的な信頼とロイヤルティを獲得できます。シンパシーを持つことは、ビジネスで大切なスキルといえるでしょう。