ワークアウトとは? ビジネス目線の意味やメリット、手順を解説
ワークアウトとは、企業の従業員が組織の活性化や課題解決のために主体的に取り組む方法です。人材開発や組織成長では、従業員が企業の取り組みに受動的に応じるだけでなく、主体的に取り組むことでより大きな効果を期待できます。
本記事では、ビジネスにおけるワークアウトの概要やメリット、手順を解説します。人材開発や組織成長を願う企業の経営層や人事担当者はぜひ参考にしてください。
ビジネスにおけるワークアウトとは
ワークアウトとは、さまざまな意味で用いられる言葉ですが、ビジネスシーンにおいて、組織成長や人材開発のための取り組みとして用いられます。ワークアウトでは、従業員が積極的に発言し、主体的に参加すれば、課題解決のきっかけにつながります。
ビジネスにおけるワークアウトの発祥
ワークアウトは、1980年代にアメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)社の元会長ジャック・ウェルチによって導入された業務改善プログラムです。同社の「官僚主義的」な社風を改善するために活用されたことが始まりです。ニューイングランドのタウンミーティングを参考にし、ボトムアップを重視した改善策を実施するために制度化されました。
官僚主義とは
官僚主義とは、階層(役職)やルールに基づいて、組織を管理・経営する手法のことです。官僚主義は、ルールによって権限の所在が明確化されており、文書主義やピラミッド型の階級組織構造などが特徴とされています。
官僚主義は、組織を秩序立て、不当な権限濫用などの防止に役立ちます。しかし、変化の激しい現代において、ルールに基づき機械的に組織を運営する方法だけでは、組織の成長や改善が進まないことが少なくありません。
ワークアウトの一般的な意味
ワークアウト(=work out)の一般的な言葉の意味は、身体を鍛えたり見た目をよくするなど、運動に関する言葉です。単純に体型を変えるための運動の意味が強いといえます。ワークアウトは、運動のほか「解決」や「成功」「考える」などの意味合いで使われることもあります。
ビジネスにおけるワークアウトの特徴
ビジネスにおけるワークアウトでは「不要な仕事を外へ追い出す」意味で用いられ、組織改善のための手法として議論などに活用されます。ワークアウトで従業員が導いた結論や解決策は、その場で責任者が判断し、取り入れるかどうかが決まるのが特徴です。どうしてもその場で判断できないような場合は、期限を決めて対応します。
このように、ワークアウトは、実施から最終判断までが迅速に実施される点が魅力です。最終判断で採用なった場合、現場の意見がスピーディに反映されることになり、従業員の満足度や意欲の向上にも効果的です。
ビジネスにおいてワークアウトと混同しやすい言葉
ワークアウトには、ビジネスにおいて混同しやすい言葉があります。それぞれの言葉の意味や違いを整理してご紹介します。
ワークアウトと研修の違い
ワークアウトは、従業員を中心となり話し合い、結論によって現場で反映させる実践的な手法です。ワークアウトの目的は、成果につなげることや組織(人材)開発です。一方研修は、講師が参加者に向けて発信する方法であり、従業員は受動的に学びます。研修の目的は、一般的に人材教育です。
ワークアウトとケーススタディの違い
ケーススタディとは、過去の成功例や失敗例をもとに、リスクなどをテーマにして法則や原理を考えることです。ケーススタディでは、学びから参加者の問題解決力を身につける点に効果があります。ワークアウトとの違いは、従業員が現場で取り組みを実践するかどうかにあります。ケーススタディは、学習方法であり、実践までは行いません。
ビジネスでワークアウトを行うメリット
ビジネスにおいてワークアウトを取り入れるメリットにはどのような点があるのでしょうか。具体的なメリットを解説します。
- 従業員による積極的な意見が出やすい
- 人材育成につながる
- 現場目線の改善策を検討できる
- 組織風土を変革するきっかけになる
- 経営の立て直しを短時間で期待できる
従業員による積極的な意見が出やすい
ワークアウトは、従業員が主体的に参加する取り組みです。役職や年齢にかかわらず、組織を横断して積極的に意見を出し合います。そのため、普段は発言しにくい場合でも、安心して意見を言い合える点がメリットです。さらに、ワークアウトによって出した意見が反映されることになれば、従業員の自信につながり、行動や発言の主体性も向上します。
人材育成につながる
ワークアウトでは、従業員が積極的に意見を出し合い、実際の行動に移します。主体的な取り組みにより、責任感や意思決定力が育まれ、人材育成や開発が促進されます。討論や実践を通じて、リーダーシップが発揮され、次世代のリーダー育成にも効果的です。
現場目線の改善策を検討できる
ワークアウトの実施では、従業員が中心となって意見を出すため、現場に即したアイデアが生まれやすい特徴があります。現場で動く従業員が意見を出すからこそ、より現実的で改善につながりやすい改善策の発見を期待できます。
組織風土を変革するきっかけになる
ワークアウトでは、一連の流れをスピーディに実施できるため、意思決定までが迅速に進みます。これまで1つの取り組みに対して、意思決定までのプロセスや時間が長くかかる企業は、組織風土を変える機会です。ワークアウトの実施そのものが、従来の組織風土や文化からの脱却を促し、企業成長にもつながります。
経営の立て直しを短時間で期待できる
ワークアウトは、短期間で組織改善や成果創出など、経営の立て直しを期待できる点がメリットです。意見交換をして終わりではなく、解決策を現場で実践するかどうかを責任者がすぐに判断するため、プロセスがスピーディに進みます。そのため、解決策や結論によっては、組織改善や成果創出への効果がすぐに表れることもあるのです。
ビジネスにおけるワークアウトの手順
企業でワークアウトを実施する際の代表的な5つの手順を紹介します。
- 組織横断的に従業員を招集する
- テーマや問いから討論を行う
- 業務内容の見直し
- 解決策の実施判断
- 次の計画を検討する
これらの手順で進めれば、組織の問題解決能力が向上し、業務効率や生産性の改善、さらには企業全体の競争力強化につながることが期待できます。
1. 組織横断的に従業員を招集する
まず、企業がワークアウトを実施する際は、さまざまな部署や役職から従業員を集めます。集めた従業員の全体からグループ分けを行い、議論します。議論では、仕事において不要な取り組みや複雑化させている原因などを抽出することがポイントです。
2.テーマや問いから討論を行う
ワークアウトでは、討論が進みやすいように、あらかじめ大まかなテーマや問いを立てておきます。テーマや問いに対して、従業員同士で討論します。ワークアウトで特に重要な点は、臆することなく意見を出し合うことです。ワークアウトを実施する際は、役職や年齢などを気にせず、否定的な態度を取らない点を、事前に参加者へ伝えましょう。
ワークアウトのテーマ例
ワークアウトでは、さまざまな課題を対象に取り組めます。ワークアウトのテーマの例を以下で紹介します。
- 経営戦略
- 新規事業開発
- 商品開発
- 営業戦略
- マーケティング戦略
- 売上改善
- 人事戦略
- 事業戦略
- 各部門の課題解決
上記で挙げた例からさらにテーマの細分化で、よりワークアウトを効率的に進められます。ワークアウトで取り扱うテーマや問いは、あらかじめ用意しておくことが重要です。
3.業務内容の見直し
話し合いによって出た意見について、見直しが必要な業務の改善策を考えます。このプロセスでは、特に重要な点に絞って解決策の検討が大切です。細かい点や不要な点の解決策を考えても、得られる効果は小さいためです。
4.解決策の実施判断
ワークアウトによって導き出した解決策を、責任者に伝えます。責任者は、ワークアウトの結論を、基本的には即決で採用か不採用かを判断します。この迅速な流れが、ワークアウトの特徴です。解決策が採用された場合、リーダーに権限が付与され、取り組みを実施します。
5.次の計画を検討する
ワークアウトにおける解決策の実行によって得られた情報や結果をもとに、仮説を立てて次の計画を立てます。また、従業員は、自分の主体的な行動や思考力、課題解決力などの振り返りを行います。取り組んで終わりではなく、自分自身の振舞いを理解し、気付いた点から成長を促進するためです。
ワークアウトの注意点
ワークアウトを実施する際の注意点をご紹介します。ワークアウトを成功させるためにも、注意点を理解しておきましょう。
- ワークアウトの目的や本質を理解する
- 責任者は迅速に判断する勇気を持つ
- すべてを参加者のみに丸投げしない
ワークアウトの目的や本質を理解する
ワークアウトを実施する際は、目的を理解したうえで実施しなければなりません。ワークアウトは、単なる意見交換ではなく、組織改善が目的です。そのため、ワークアウトは、目的達成のための本質の理解が大切です。
責任者は迅速に判断する勇気を持つ
意見を出して終わりにしてしまうのであれば、ワークアウトとはいえません。迅速で現場目線の実践的なアイデアの実行に意味があるのです。そのため、責任者の迅速な判断が重要です。すぐに判断が難しい場合もあるかもしれませんが、ワークアウトのメリットを活かすためにも、すばやい決断をしましょう。
すべてを参加者のみに丸投げしない
ワークアウトでは、従業員による討論を行います。ただし、効率的に課題を解決するためには、課題や問うべき問題をあらかじめ絞っておくことが重要です。この点をすべて従業員に任せてしまうと、ワークアウトの効果が得られにくくなってしまいます。また、ワークアウトに関する外部サービスやコンサルタントによるサポートなども取り入れた実施で、ワークアウトが成功しやすくなります。
まとめ
ワークアウトは、企業の組織改善を行うために有効な手法です。従業員が主体的に取り組むことで、人材育成にも効果を期待できます。
ワークアウトで重要な点は、参加者が臆することなく意見交換できる環境整備や一連の流れを迅速に行うことです。特に、ワークアウトによって導かれた解決策に対して責任者は即時的な判断を行い、承認された際は速やかな実行がポイントといえます。
企業がワークアウトを実施する際は、このような注意点やポイントを理解したうえで、取り組みましょう。