【例文あり】始末書の書き方とは?ポイントと注意点を解説

従業員が業務上でミスやトラブルを起こした場合、始末書の提出を求めるケースがあります。始末書は会社に提出する公式な書類です。そのため、書き方について悩む方もいるかもしれません。

本記事では始末書の書き方やポイント、似たような書類との違いなどを詳しく解説していきます。状況別の例文もぜひ参考にしてみてください。

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    始末書とは

    始末書とは、従業員が業務においてミスやトラブルを起こし、さらに反省の意や再発防止への対策方法の提示を求める場合に提出する書類です。報告書の一種ではありますが、始末書には懲戒処分の意味合いがあります。

    始末書の目的

    始末書はミスやトラブルの原因だけでなく、反省・謝罪の意を述べ、再発させないことを誓約するために作成します。始末書を作成することで、本人の反省や再発防止の意識を高める効果があります。また企業側は、始末書によってミスやトラブルの原因を把握するとともに、従業員の処分の証拠として残すこともできます。

    始末書を提出するとき

    始末書の提出が必要となるシーンは多岐にわたります。

    始末書を提出するシーン
    ・金品や備品、データなどを紛失・破損させたとき
    ・就業規則を違反したとき
    ・勤怠データの改ざんや企業イメージを損なう行為などを行ったとき
    ・重大なミスやトラブルで取引先や顧客に対して迷惑をかけたとき
    ・社用車などで事故を起こしたとき
    ・個人的理由で遅刻が続くとき

    このほかにも、従業員の行動によって第三者が多大な迷惑を被ったり、大きな損失を与えてしまったりといった場合は始末書の提出が必要なケースが多いです。

    また始末書は、ミスやトラブルが発覚したらすぐ、または処分が下されたらすぐに提出します。ただし、製品の不具合や欠陥など、引き続き調査や原因の追求が必要な場合は、始末書よりも先に報告を優先する必要があります。いずれにしても、始末書が必要となる場面に遭遇したら、迅速な対応を心掛けなければいけません。

    始末書とほかの文書の違い

    始末書と似たような文書に「顛末書」や「反省文」といった文書があります。ここでは始末書とそれぞれの違いを解説します。

    始末書と顛末書の違い

    始末書と似た書類に「顛末書」があります。始末書は、ミスやトラブルの経緯報告とともに起こしてしまったことに対する反省・謝罪の意を示すことが目的です。一方の「顛末書」は、起きてしまったミスやトラブルの経緯を報告するとともに、解決策を自社に向けて報告することが目的です。始末書は基本的には直属の上司に提出するのに対し、顛末書は会社に提出するものと考えてもよいでしょう。

    始末書と顛末書、どっちが重い?

    始末書と顛末書は目的が異なるため、どちらが重いかを比べるのは難しいといえます。しかし、直属の上司に提出することが一般的な始末書と比べ、顛末書はさらにその上の上司にも提出が必要であるため、顛末書の方が重いと考えることはできるかもしれません。

    ただし一方で、始末書には法的な効力を持つ側面があります。これについてはあとに解説しますが、始末書は裁判での証拠としても使用できるため、始末書の方が重要度は高いととらえることはできそうです。

    始末書と反省文の違い

    始末書はミスやトラブルの事実とそれに対する反省・謝罪の意、再発防止策を伝えるものです。一見すると「反省文」と同義に感じられるかもしれません。しかし反省文は、業務上の失敗やミス、社内での迷惑行為によって起こしたトラブルなどに対し、自分の行動を振り返り、反省と改善の意思を伝えるための文書です。

    両者はほとんど同じ意味合いを持つように見えますが、始末書を提出するケースでは会社からなんらかの懲罰を受けるのに対し、反省文を提出するケースでは「個人的な報告」にとどまり、直属の上司と従業員間で完結する場合が多いでしょう。

    始末書の書き方 構成とポイント

    始末書は読み手に伝わるように書く必要があります。もし、自社に始末書のフォーマットが準備されていない場合、次のポイントを押さえた構成で作成するとよいでしょう。

    年月日や時間を記載する

    まずは始末書を作成した年月日を書類の上部右側に「令和◯年◯月◯日」のように記載します。本文では、事象が起こった年月日に加え、時間も記載します。

    提出先・自分の氏名・所属を記載する

    始末書を提出する相手の役職名・氏名を書類の上部左側に記載します。始末書は一般的には直属の上司に提出することが多いため、会社名は省略しても問題ありません。自分の氏名や所属は、始末書の作成年月日の下に記載します。なお、自分の氏名の横に捺印しておくことでその書類が責任をもって作成された証にもなります。

    件名を記載する

    次に書類の中央部に「始末書」という件名を記載します。件名が記載されていることで、その書類がひと目で始末書であることが相手に伝わります。

    事実を簡潔に記載する

    始末書は読み手に配慮した文章で、事実を記載することが重要です。文字数が多かったり、冗長な文章だったりすると、反省の意はなかなか伝わりません。「いつ・どこで・何を起こしたのか」といった情報も明確にし、読み手が時系列を追いやすくするのも配慮の一つです。文字数を気にするよりも、わかりやすさを意識して簡潔に記載することが肝心です。

    始末書の書き方 ケース別例文

    ここからは、実際に始末書を作成する場合の例文をケース別に紹介します。いずれのケースでも、時系列や事象の原因、今後どう改善するのかがわかるように記載することが大切です。

    紛失

    令和◯◯年◯月◯日、会社より貸与されているパソコンを、帰宅途中で紛失した件につきまして、皆さまに多大なるご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。紛失当夜に立ち寄った◯◯駅、飲食店等帰路経路を捜索、警察に遺失物届を提出いたしましたが、◯月◯日現在も発見できておりません。今後このようなことのないよう、貸与物は最新の注意を払い取り扱うことを固くお誓いいたします。

    破損

    令和◯◯年◯月◯日、会社より貸与されているノートパソコンを外部に持ち出したところ、不注意で落としてしまい破損させてしまいました。これにより、皆さまにご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。本来ならケースに入れて持ち運ぶべきところを、ケースに収納せずにそのまま鞄に入れていたため、取り出した際に誤って落としてしまったことが原因です。二度とこのようなことが起きないよう、ノートパソコンを持ち運ぶ際は必ずケースに収納するよう固く誓います。

    ミス

    この度、カタログ掲載の◯◯の価格表記につきまして、私の不注意で誤った金額を記載してしまい、会社に多大なるご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。◯◯年◯月◯日に該当部分を訂正するシールを発注いたしました。しかしながら、シールの納品と貼付作業に日数を要するため、現在は誤表記のお詫びと正規価格を記載した用紙をカタログに添付して配布しております。二度とこのようなミスを起こさないようお誓い申し上げるとともに、今後は担当者間で二重チェックするなどし、細心の注意を払うことに努めます。

    遅刻

    このたびは、◯◯年◯月◯日から◯◯年◯月◯日の期間、正当な理由もなく◯◯回の遅刻をいたしました。遅刻を繰り返したことにより、会社、チームの皆さまに多大なる迷惑をおかけしてしまったこと、大変申し訳ございませんでした。◯◯課長より、再三の注意を受けていたにもかかわらず、遅刻を繰り返してしまったことは、私の自己管理能力の欠如が原因です。今後はこれまでよりも1時間早く起床するほか、健康に留意するなどの自己管理に努め、二度と遅刻することがないよう固くお誓い申し上げます。

    交通トラブル・事故

    このたび、令和◯◯年◯月◯日午後◯◯時頃、◯◯区◯◯町の◯◯交差点において、私の前方不注意により、追突事故を起こしてしまいました。幸い、双方ともに怪我はありませんでしたが、車両は両方破損してしまいました。このことにより、会社や部署の皆さまに多大なるご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。現在、車両の破損については総務部に修理を依頼しております。今後このようなことを二度と起こさないよう、運転には細心の注意を払い、安全運転に努めることを固くお誓い申し上げます。

    始末書の内容チェックリスト

    始末書を作成する場合、記載すべき内容が書かれているかを確認するチェックリストがあると便利です。以下の内容をリストにし、始末書を提出する前に内容に抜け漏れがないかをチェックするとよいでしょう。

    始末書の内容チェックリスト
    日付書類を作成した日付が記載されているか
    宛名書類を提出する相手の肩書き・氏名が記載されているか
    件名中央に「始末書」という件名が記載されているか
    作成者始末書を作成する人の氏名が記載されているか
    不始末の内容いつ・どこで・何を起こしたのかを時系列に沿って記載されているか
    不始末の原因何が原因でその事象が起こったのかが記載されているか
    反省・謝罪の意起こしてしまったこと、迷惑をかけたことに対する反省や謝罪の意が記載されているか
    改善策同じことを二度と繰り返さないために実施する改善策が記載されているか
    誓約同じことを二度と繰り返さないことを誓う一文が記載されているか

    始末書の書き方・注意点

    始末書を提出しなければならなくなった場合、慌てずに作成することが大切です。始末書はただ書いて出せばよいものではありません。始末書の書き方・注意点に留意し、適切に作成することを心掛けましょう。

    どのような形式で作成すべきかを確認する

    始末書をどのような形式で作成・提出すればよいかは企業によって異なります。手書きで始末書を作成するよう求める企業もあれば、パソコンで作成するよう指示する企業もあるでしょう。まずは始末書の形式を確認し、もし専用のフォーマットが用意されているのであれば、それを使用するようにします。

    事実だけを記載する

    始末書には事実を記載する必要があります。起こしてしまったミスやトラブルに脚色を加えたり、責任逃れのために一部を隠蔽したりしてはいけません。自分の過ちを正当化せずに、正直に事実だけを記載します。また、時系列に沿ったわかりやすい内容であることも大切です。冗長にならないよう、読み手に配慮した簡潔な文章を心掛け、できるだけ素直に反省・謝罪の意を記しましょう。

    できるだけ早く提出する

    始末書を提出するように指示された場合は、すぐに作成に取り掛かり、できるだけ早く提出することを心掛けましょう。ミスやトラブルが起きてすぐに提出を求められるケースもあれば、事態が収束してから求められるケースもあります。いずれの場合でも、事実を記載し、反省・謝罪を述べ、今後の改善策を述べることが肝心です。始末書の提出を求められたにもかかわらず、提出を後回しにしてしまうと、反省や謝罪の気持ちが伝わらない可能性が高まります。

    始末書の提出について解説

    始末書はなぜ提出を求められることがあるのでしょうか。また、求められているにもかかわらず提出しなかった場合、どのようなことが起こるのでしょうか。ここでは始末書の提出について、さまざまなことを解説していきます。

    始末書提出の必要性

    始末書は法的拘束力を持っている書類です。ミスやトラブルにより企業に何らかの損失があり、企業と従業員間で裁判に発展した場合、始末書は従業員に非があることを示す証拠になります。また従業員が自分に下された懲戒処分に不服を申し立てた場合でも、始末書があれば処分が適正であることを法的に示せます。ただし、法的な効力を持つ書類であるため、従業員に始末書の提出を求める場合、企業は事実をしっかりと確認し慎重に判断しなければなりません。

    始末書の提出は必須?

    先に述べたように始末書は法的効力を持つため、何か問題が起きた際の証拠となる重要な書類となります。そのため、ミスやトラブルを起こした従業員に対して始末書の提出を指示するケースもあるでしょう。しかし、もし就業規則に提出が必要である旨が記載されていない場合、企業は従業員に提出を強制することはできません。提出を強要した場合、パワハラなどの問題に発展する可能性もあるため注意が必要です。まずは専門家に相談するとよいでしょう。

    始末書を提出しないとどうなる?

    先に述べたように、始末書の提出を強要することはできません。これには、憲法で定められた「思想・良心の自由」が絡んでおり、反省や謝罪の意を感じるか、述べるかどうかは本人の自由とされているからです。しかし、始末書の提出を拒否されたからといって、企業が何もしないわけにもいきません。その場合、始末書ではなく顛末書の提出を求め、再発防止や業務改善をはかるようにしましょう。

    始末書の提出の仕方は?

    始末書は基本的に「A4」または「B5」サイズの用紙で作成します。手書きの場合は、ビジネス用の便箋に黒のボールペンで記載します。文字が滲むことがないよう、油性のものを使用するとよいでしょう。また、始末書は必ず封筒に入れて提出するようにします。封筒に入れずにそのまま提出すると、反省や謝罪の意が伝わりません。このとき、始末書は三つ折りにし、それに合った封筒を選ぶようにしましょう。封筒の色は基本的に白で、二重になっているものを使用します。「始末書」と表題を書き、裏には所属部署と氏名を左下に記載します。

    始末書に関して人事が対応すべきこと

    ここでは始末書を提出した事実のある従業員に対して、人事が対応すべきことを説明します。

    始末書と人事評価

    始末書の提出があった従業員に対しては、人事評価でマイナスの評価をつけることになります。ただし、始末書に関連する件と業務そのものに関する評価を混同しないことが大切です。提出回数や内容によってマイナス評価のポイントを設定しておくことも、公平な評価へつながります。なお、逆に始末書の提出が合ったにもかかわらず、人事評価にまったく反映させない場合、「公平な評価」とはいえなくなります。

    始末書をもとに人事評価を行う際は、以下の3つのポイントに注意しましょう。

    評価期間中の活動を適切に評価し、そのうえで始末書に関する件をマイナス評価する
    始末書の提出回数や賞罰の内容に沿った評価ポイントを設定する
    マイナス評価となるポイントがどこにあるのかを本人に伝える

    始末書を繰り返し提出させないためには

    同一の従業員が始末書を何度も提出するような場合は改善が見込めないということで、就業規則にのっとり「減給」「出勤停止」「降格」「懲戒処分」などが与えられます。さらに重大な不始末を繰り返す場合は「懲戒解雇」「論旨解雇」などの重い処分を検討することもあります。そのような事態に発展させないような施策を考えるのも人事の大切な役目です。

    原因の根本を探り改善方法を指導する

    ミスやトラブルを繰り返してしまう従業員にヒアリングを行います。たとえば何度も遅刻してしまうケースでは、就寝時間や睡眠時間などを聞き取り、もしも睡眠が足りていないような場合は、どうすればそれを解決できるのかをアドバイスしましょう。もし、体調がすぐれないことが原因であれば、通院や休暇を取ることを進めるのも一案です。根本的な原因がわかれば、それを改善する策を講じることができます。

    モチベーションを向上させるための面談を実施する

    始末書を提出することになった従業員は仕事に対するモチベーションが下がっている可能性があります。そのままにしておくと、ミスやトラブルを起こすことを恐れて出社しにくくなってしまったり、再び似たような不始末を起こしてしまうかもしれません。二度と同じことを繰り返さないためにも、今後どのようなことに注意すればよいかをアドバイスし、前向きに業務に取り組めるようメンタル面のサポートを目的とした個人面談を実施することも大切です。

    まとめ

    始末書は起こしてしまった不始末に対する反省・謝罪の意を伝える文書です。事実に沿って反省・謝罪を述べ、同じことを繰り返さないよう誓うことで、業務改善・効率化の実現につなげます。大切なのは文章の量よりも、誠意の有無です。相手に伝わるような構成で作成し、適切な方法で提出することが大切です。

    人事は始末書を提出することになった従業員に対し、適切な評価とケアを実施することを忘れてはいけません。二度と同じことを起こさないためにも、日頃から密なコミュニケーションをはかることにも注力しましょう。

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