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雇用保険料率が2023年4月から引き上げ|変更点や負担額の計算方法を解説

企業が従業員を雇用する際、一定条件を満たしている場合は、雇用保険に加入する義務があります。雇用保険料の計算において、欠かせない数値が雇用保険料率。雇用保険料率は2023年4月に変更されているため、企業の担当者はあらためて確認しておくと安心です。本記事では、2023年4月以降の最新の雇用保険料率や、雇用保険料の計算方法について解説します。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

雇用保険料率が2023年4月から引き上げ|変更点や負担額の計算方法を解説
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    雇用保険の基本

    まずは、雇用保険という制度の概要を解説します。

    雇用保険は従業員が働けなくなった際の支援制度

    雇用保険とは、従業員が働けなくなった際に、給付金の支給や能力開発のサポートなどを実施する支援制度です。企業は雇用している従業員に対して、必要に応じて雇用保険の加入手続きを行う義務があります。

    雇用保険料は事業主と従業員の両方で支払う

    雇用保険の支払いは、事業主と従業員の双方で負担するものです。しかし、雇用保険料の負担率は同じではなく、基本的には事業主が多く負担する仕組みが採用されています。

    雇用保険への加入は義務なのか

    日本には雇用保険以外にもさまざまな支援制度がありますが、なかには事業主や従業員が任意で加入する制度も存在します。では、雇用保険への加入はなぜ義務なのでしょうか。

    雇用保険は強制保険に該当する

    雇用保険は任意保険ではなく、条件を満たすすべての企業が加入する必要があります。条件を満たしているにもかかわらず加入手続きを怠った場合、ハローワークからの勧告や罰則が科せられる可能性もあるため注意が必要です。

    雇用保険の加入条件

    雇用保険の加入条件は、以下の通りです。

    • 勤務開始時から最低31日間以上にわたり、働く見込みがあること
    • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
    • 学生ではないこと(例外あり)

    雇用保険は2つの条件を満たすことで加入が必須

    「31日以上の雇用が見込まれている」「1週間の所定労働時間が20時間以上である」という2つの条件を満たす従業員に対して、企業は雇用保険の加入手続きを行う義務があります。パートやアルバイトなどの雇用形態は関係なく、条件を満たす働き手は全員雇用保険の対象です。

    なお、上記の条件を満たす場合でも、高校生や大学生は「本業が学生」とみなされるため、雇用保険の加入対象から除外されるケースが一般的です。ただし、例外として、大学の夜間部や定時制高校などに通う学生は雇用保険に加入できます。

    雇用保険と労災保険の違いとは

    雇用保険や労災保険は、どちらも労働保険の一種です。両者の保障内容にはどのような違いがあるのでしょうか。

    労災保険は仕事や通勤中の負傷や疾病に対する保障制度

    労災保険は、業務中や通勤中に発生したけがや病気に対して、必要な給付金やサポートを提供する保障制度です。たとえば、以下のようなケースに対して給付金が支給されます。

    • 業務中の事故で足を骨折した
    • 他県に出張している際にけがをして、入院することになった
    • 通勤中に車の衝突事故に遭い、身体に障がいが残った
    • 業務中の事故で従業員が死亡した(遺族に対して支給)

    労災保険は正社員やパート・アルバイトなどの雇用形態に関係なく、雇用日から加入が必要です。

    2023年4月から雇用保険料率が変更になった

    雇用保険の保険料率は一定ではなく、定期的に改定が行われています。直近では2023年4月に雇用保険料率が見直されたため、注意が必要です。

    雇用保険料率の引き上げが行われた

    雇用保険料率は、2023年4月に引き上げが実施されました。従業員負担と事業主負担の両方が上がったため、企業は保険料の負担増加に備える必要があります。

    2023年4月以降の事業ごとの雇用保険料率

    雇用保険料率は、企業の事業内容によって異なります。2023年4月以降の雇用保険料率について、事業ごとに解説します。(※2024年4月以降も据え置きです)

    一般の事業における雇用保険料率

    一般の事業を営む企業の雇用保険料率は、2023年4月から以下の通り変更されています。2022年10月~2023年3月までと比較して、従業員負担と事業主負担はそれぞれ1/1,000ずつ引き上げられました。

    従業員負担事業主負担全体
    2022年10月~2023年3月5/1,0008.5/1,00013.5/1,000
    2023年4月~6/1,0009.5/1,00015.5/1,000

    農林水産・清酒製造の事業における雇用保険料率

    農林水産・清酒製造事業を営む企業の雇用保険料率は、2023年4月から以下の通り変更されています。2022年10月~2023年3月までと比較して、従業員負担と事業主負担はそれぞれ1/1,000ずつ引き上げられました。

    従業員負担事業主負担全体
    2022年10月~2023年3月6/1,0009.5/1,00015.5/1,000
    2023年4月~7/1,00010.5/1,00017.5/1,000

    建設の事業における雇用保険料率

    建設事業を営む企業の雇用保険料率は、2023年4月から以下の通り変更されています。2022年10月~2023年3月までと比較して、従業員負担と事業主負担はそれぞれ1/1,000ずつ引き上げられました。

    従業員負担事業主負担全体
    2022年10月~2023年3月6/1,00010.5/1,00016.5/1,000
    2023年4月~7/1,00011.5/1,00018.5/1,000

    参考:『令和5年度雇用保険料率のご案内』厚生労働省
    参考:『令和6年度の雇用保険料率について』厚生労働省

    雇用保険料の計算方法を解説

    続いて雇用保険料の計算方法を解説します。計算例もご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

    雇用保険料は「従業員に支払う賃金×雇用保険料率」で計算

    雇用保険料の計算式は「従業員に支払う賃金×雇用保険料率」です。保険料率と実際の賃金をかけあわせることで簡単に計算できます。たとえば、サービス業に従事するAさんの賃金が40万円の場合を考えてみましょう。

    雇用保険料の計算式は

    雇用保険料=従業員に支払う賃金×雇用保険料率

    であり、従業員と事業主の雇用保険率は以下の通りです。

    従業員負担事業主負担
    雇用保険料率(一般事業)6/1,0009.5/1,000

    これらをもとに計算することで

    Aさんの負担分 400,000×6/1,000
    =2,400(円)
    事業主の負担分 400,000×9.5/1,000
    =3,800(円)

    Aさんと事業主の雇用保険料が算出できました。

    雇用保険料の計算には各種手当や賞与も含まれる

    雇用保険料の計算に利用される「賃金」とは、通勤手当や時間外手当などの各種手当や賞与を含んだ給与総額です。そのため、従業員の時間外労働が多かった月や、賞与を支給した月は、雇用保険料の負担額が大きくなります。

    雇用保険の納付方法

    雇用保険料は、納付するところまでが企業の仕事です。保険料の計算を終えたら、適切な方法で納付しましょう。

    雇用保険料と労災保険料をあわせた「労働保険料」を企業が納付する

    雇用保険料は、労災保険料とあわせて「労働保険料」として納付します。また、その際は『概算・確定保険料申告書』と『納付書』を作成する必要があるため、注意してください。従業員から徴収した保険料と事業主負担分を合算して、期限までに納付しましょう。

    なお、納付単位は原則として4月1日から3月31日までの1年単位で、納付時期は毎年6月1日から7月10日までです。納付先は、日本銀行(本店、支店、代理店および歳入代理店)・所轄の都道府県労働局・労働基準監督署のいずれかから選択します。

    最新の雇用保険料率を確認して、保険料を正しく計算

    雇用保険料率は一定ではなく、定期的に見直しが行われるものです。直近では2023年4月に改定され、一般の事業における従業員負担は6/1,000、事業主負担は9.5/1,000に引き上げられています。また、雇用保険料は「従業員に支払う賃金×保険料率」で計算可能です。納付するところまでが企業の役目であるため、担当者は納付先や納付期限をあらためて確認しましょう。

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