従業員の源泉所得税の納付方法【法人向け】種類とメリット、支払い期限を解説

従業員の源泉所得税の納付方法【法人向け】種類とメリット、支払い期限を解説

従業員の給与から差し引いた源泉所得税の納付業務は、経理・労務を一手に担う担当者にとって毎月の大きなプレッシャーです。手順や仕組みに次のような不安を感じていませんか。

  • 自社にとって最適な納付方法はどれか
  • インターネットバンキングやe-Taxの具体的な流れ
  • 納付期限を過ぎた場合のリスクや対応策も知っておきたい

本記事では源泉所得税の納付方法ごとの特徴やメリット・デメリット、e-Taxやネットバンキングを使った具体的な納付手順、納付期限と遅延時のリスク・対応策まで、詳しく解説します。

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    従業員の所得税(源泉所得税)は会社が納付する

    従業員の給与から差し引かれる所得税、いわゆる源泉所得税は、会社が従業員に代わって納付する義務があります。

    給与を支払う事業者は、給与支給時に所得税を天引きし、決められた期限までに国へ納めなければなりません。従業員が自分で税金を計算して納付する手間やミスを防ぎ、確実に税収を確保するために設けられています。

    給与や賞与を支払う際、会社は「源泉徴収義務者」として、従業員の給与から所得税を差し引きます。差し引いた税金は、原則として給与を支払った月の翌月10日までに、税務署や金融機関を通じて納付しなければなりません。正社員だけでなく、パートやアルバイトにも適用されます。

    また、源泉徴収の対象や税額は「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて決定されます。

    参照:『令和8年分 源泉徴収税額表』国税庁

    源泉所得税の納付方法|種類と支払い別メリット

    源泉所得税の納付方法は、大きく分けて「アナログ(現金)」と「キャッシュレス(電子)」の2つの方法に分かれます。

    アナログ金融機関や税務署の窓口
    コンビニでの現金納付
    キャッシュレスe-Taxによるダイレクト納付
    インターネットバンキング
    クレジットカード
    スマホアプリ

    それぞれの納付方法には特徴やメリット・デメリットがあり、事業規模や業務の効率化、証憑管理のしやすさなど、会社の実情に合わせて選ぶことが大切です。

    ここからは、各納付方法の概要と特徴、選び方のポイントを詳しく解説します。

    e-Taxによる口座振替(ダイレクト納付)

    e-Taxのダイレクト納付は、電子申告終了後に利用者が登録した銀行口座から税額を即時または指定日に自動引き落としできる方法です。

    手数料は一切かからず、納付するたびに金融機関や税務署へ出向く必要がありません。納付日も自由に設定可能で、大規模法人から個人まで幅広く利用されています。​

    注意点は次のとおりです。

    • 登録完了まで一定期間かかる
    • 残高不足による滞納に注意
    • 紙の領収書は発行されない

    利用にはあらかじめ「ダイレクト納付利用届出書」の提出が必要で、登録は通常1か月ほどかかるため余裕を持って準備しましょう。

    利用開始後は、e-Taxのメッセージボックスで納付完了の通知を確認する必要があります。

    万一、残高不足で引き落としができないと延滞税が生じることがあるため、納付日までの資金管理は必須です。

    源泉所得税の申告・納付忘れ防止や、納付業務の効率化を重視したい事業者はとくにおすすめの納付方法といえます。

    参考:『G-2-2 ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続』国税庁

    口座の変更方法

    口座の変更を希望する場合、次の書面を所轄税務署へ提出します。​

    国税ダイレクト方式電子納税解約届出書現在登録している口座を記載したもの
    国税ダイレクト方式電子納税依頼書兼国税ダイレクト方式電子納税届出書新たに利用する口座の情報を記載したもの

    手続きには通常1か月ほどかかるため、納税スケジュールに余裕をもって、対応することが重要です。

    変更手続きの間は新旧口座双方で資金管理が必要になる場合もあるため、急な資金移動や口座閉鎖前には余裕をもって準備しましょう。

    書類内容に不備があると遅延するため、各項目の記入漏れも必ず確認しなければなりません。

    参考:『G-2-2 ダイレクト納付(e-Taxによる口座振替)の手続』国税庁

    インターネットバンキング・ATMによる納付・支払い

    インターネットバンキングやATM(ペイジー)を利用した納付では、e-Taxで申告後、納付情報(納付区分番号など)を使い、金融機関のネットサービスやATMから税金を支払えます。

    多くの都市銀行・地方銀行・信用金庫が対応しており、次の2つの方式があります。

    • 事前登録不要の入力方式
    • e-Taxで納付情報を登録しておく登録方式

    自宅やオフィスまたは24時間対応のATMから納付できるので、隙間時間や急な納付にも便利です。​

    注意点は次のとおりです。

    • 振込手数料がかかることが多い
    • 原則として紙の領収書は発行されない
    • 入力ミスに注意

    支払った記録は、ネットバンキングやATMの利用明細・取引履歴で確認し、必要に応じて保存しておきましょう。公式な証明が必要な場合は、e-Taxや税務署で納税証明書を申請できます。

    なお、ID・パスワードの入力や番号の入力は利用者側の操作になるため、納付金額や納付目的コード、納付内容にミスがないか注意しましょう。確定前の確認画面で必ずチェックすることが大切です。

    参考:『G-2-3 インターネットバンキング等からの納付手続』国税庁

    クレジットカードによる納付・支払い

    クレジットカードでの納付は、国税専用「クレジットカードお支払サイト」から、税額・税目・納付者情報を入力し、カード決済で支払う方法です。

    カードポイントが貯まるほか、支払い猶予を伸ばしたり分割払いやリボ払いも選択可能です。

    注意点は次のとおりです。

    • 1万円ごとに手数料が発生
    • 利用限度額やカード決済規約の事前確認が必要
    • 納付額が大きい場合は限度額に注意
    • 領収書は発行されない

    納付の際は利用可能な国税だけでなく、カード会社・限度額にも制限があるため、納付額が大きい場合は注意しましょう。

    納税証明書が必要な場合は別途申請となります。納付完了はe-Taxのメッセージボックスやサイトで確認できます。

    参考:『G-2-4 クレジットカード納付の手続』国税庁

    スマホアプリによる納付

    スマホアプリによる納付は、国税庁が指定するキャッシュレス決済アプリを使い、QRコードを読み取って税金を支払う方法です。

    【キャッシュレス決済アプリの例】

    • PayPay
    • LINE Pay

    手数料はかかりませんが、1回あたりの納付上限は30万円です。法人は利用できるケースが限られるため、主に個人向けの方法といえます。

    納付は24時間可能で、支払履歴はアプリ上で確認できます。

    注意点は次のとおりです。

    • 事前にアプリの登録や残高の準備(チャージ等)が必要
    • 領収証書は発行されない(必要に応じて税務署やe-Taxで納税証明書を申請)

    納税証明が必要なら税務署やe-Taxなどで別途申請すれば受け取れます。納付前には、残高不足や上限額などの利用条件を確認し、期限直前にならないよう早めに準備しておきましょう。

    コンビニでの納付

    コンビニ納付はQRコードやバーコード付き納付書を使い、全国の主要コンビニで現金納付する方法です。

    【対応するコンビニエンスストア】

    • ファミリーマート
    • ローソン
    • ミニストップ
    • セブンイレブン

    納税者は事前に国税庁ホームページの「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」やe-Tax、確定申告書作成コーナーでQRコードを作成・印刷します。税務署から送付されたバーコード付き納付書も利用が可能です。

    納付方法は、作成したQRコードをコンビニの端末で読み取り、バーコード付き納付書を出力、レジで現金を支払い完了という流れです。

    注意点は次のとおりです。

    • 領収証書は発行されない
    • 対応店舗や端末、サービス上限金額を事前に確認が必要
    • QRコードを鮮明に印刷する
    • 記載漏れに注意

    納付証明が必要な場合は別途申請できます。作成したQRコードの印字品質にも注意が必要です。

    コンビニ納付は便利な反面、売り上げ税目や納期限などの記載漏れには、十分に気を付けたほうがよいでしょう。

    金融機関・税務署窓口で納付書を使った現金納付

    窓口での現金納付は、納付書と現金を持って銀行窓口や税務署で支払う方法です。昔からあるやり方で、手続きがシンプルなのが特徴です。

    利用できるのは窓口の営業時間内に限られますが、その場で領収証書を受け取れるのはメリットの一つです。証憑管理や経理処理で、原本が必要な場合には向いています。

    とくに法人や大口納付で、支払った証拠を確実に残したいときに選ばれやすい方法でしょう。

    注意点は次のとおりです。

    • 窓口が混み合い、待ち時間が発生することがある
    • 納付書の記入ミスや、現金の持参忘れに注意
    • 営業日・営業時間を確認し、期限に余裕をもって行く
    • 郵送で届いた納付書は、期限・金額などの記載を確認する

    納付後の領収証書は紛失しないよう保管しましょう。納付金額が大きい場合は事前に銀行へ連絡し、受け入れ体制の確認をしておくと安心です。

    e-taxによる源泉所得税の納付準備と手続きの流れ

    e-Taxで源泉所得税を納付すれば、窓口に行かずオンラインで支払いまで進められます。事前に登録などの準備は必要ですが、手順どおりに進めればスムーズに納付可能です。

    電子納付にすると、納付書の作成や移動の手間が減り、納付漏れも起きにくくなります。一方で、利用開始前の設定や口座残高の確認など、事前におさえたい点もあります。

    ここでは、e-Taxによる納付の準備と流れをわかりやすく解説します。

    事前準備の流れ

    e-Taxで源泉所得税を納付するには、最初に利用開始の準備が必要です。流れは以下のとおりです。

    • 利用者識別番号を取得する
    • 電子証明書を取得する
    • e-Taxソフト(WEB版)をパソコンにセットアップする

    利用者識別番号とは、e-Taxの開始届出書をオンラインまたは書面で提出することで発行されるIDです。

    納付方法によっては追加の準備も発生します。

    ダイレクト納付(口座振替)は、「ダイレクト納付利用届出書」を所轄税務署に書面で提出しなければなりません。登録した口座が利用できるようになるまで、約1か月かかるため早めに手配しましょう。

    インターネットバンキングやクレジットカード納付も、各金融機関やカード会社で事前手続きが必要です。

    申告から納付までの流れ

    事前準備が完了したら、e-Taxソフト(WEB版)にログインし、源泉所得税の申告と納付を進めます。

    1. メニューの「申請・納付手続を行う」から「新規作成」を選ぶ
    2. 「給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(一般)」を選ぶ
    3. 提出先税務署と、納付内容(支払い年月日、人員、支給額、税額など)を入力する
    4. 内容を確認して、申告データを送信する

    送信後、メッセージボックスに「受信通知(納付区分番号通知)」が届くので、納付方法を選択して手続きを進めましょう。ダイレクト納付を選ぶと、即時または、指定日に口座から自動引き落としされます。

    納付が完了すると、「ダイレクト納付完了通知」がメッセージボックスに格納されるため、必ず確認が必要です。残高不足などで納付ができなかった場合も、エラー通知が届くので、内容を確認して、再度手続きを行いましょう。

    e-Taxを使うと納付作業や記録の管理がやりやすくなります。手続きの流れをおさえて、無理のない手順で進めてください。

    所得税のおすすめの納付方法

    源泉所得税には複数の納付方法があり、それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なります。会社の規模や納付金額、業務効率化の観点から最適な方法を選ぶことが重要です。

    ここでは法人向けに、主要な納付方法を比較できるよう表にまとめました。納付上限額や手数料、事前手続きの有無を確認し、自社の運用に合う方法を選びましょう。

    納付方法利用限度額手数料利用条件・注意点おすすめの法人
    e-Taxダイレクト納付制限なし無料事前に口座登録と届出が必要。領収書は発行されない。口座残高の管理が必要。納付額が大きい、効率重視
    インターネットバンキング制限なし無料または銀行所定金融機関のネットバンク契約が必要。領収書は発行されない。オンライン業務に慣れている
    クレジットカード納付1,000万円未満納付額1万円ごとに99円利用枠・手数料に注意。領収書は発行されない。資金繰りに余裕がない場合
    スマホアプリ納付30万円未満無料法人利用は限定的。残高不足に注意。領収書は発行されない。小規模・少額納付
    コンビニ納付30万円未満無料バーコード・QR付き納付書が必要。現金納付のみ。領収書は発行されない。小規模・現金管理重視
    金融機関・税務署窓口制限なし無料現金納付。領収書が発行される。窓口営業時間内のみ対応証憑管理重視、初めての法人


    e-Taxによるダイレクト納付やインターネットバンキングは、納付額が大きくても手数料がかからず、オンラインで完結できるため、業務効率化を目指す法人におすすめです。ただし、いずれも領収証書は発行されないため、社内で必要となる「支払いの証拠」は、e-Taxの通知や取引履歴で管理します。

    一方でクレジットカード納付は、支払いタイミングを調整したい場合に使えますが、手数料がかかります。手数料は金額に応じて増えるため、コスト面も踏まえて検討しましょう。

    また、スマホアプリやコンビニ納付は、どちらも30万円未満までという上限があるため、小規模事業者や少額納付向きです。利用条件を事前に確認しておくと安心です。

    金融機関・税務署窓口での現金納付は、その場で領収証書を受け取れる点が特徴です。証憑として原本が必要な場合や、初めて納付する法人にも安心感があります。窓口の営業時間に左右されるため、期限直前は避けるのがおすすめです。

    自社の納付金額、社内の運用体制、領収証書の要否に合わせて方法を選び、必要な事前手続きは早めに進めましょう。

    源泉所得税の納付期限はいつ? 過ぎたときの対応

    期限を過ぎると、追加の税金として加算税・延滞税がかかることがあります。納付漏れを防ぐためにも、毎月の締め作業のなかで納付日までの流れを決めておくことが大切です。

    ここでは、納付期限の考え方や特例制度、遅れた場合の対応を解説します。

    期限が過ぎたら追徴課税が課される

    納付期限を過ぎると、追加で税金がかかることがあります。代表的なのが 延滞税と不納付加算税です。

    延滞税税金の納付が期限に遅れたときにかかる利息
    不納付加算税源泉所得税を期限までに納めなかった場合にかかる税金

    延滞税は期限の翌日から発生し、納付する日までの日数に応じて増えます。年利は納期限の翌日から2か月以内は原則7.3%、2か月を超えると14.6%です。ただし、現在の税率は、納期限の翌日から2か月以内は延滞税特例基準割合+1%、2か月を超えると延滞税特例基準割合+7.3%の特例の税率が適用されます。

    不納付加算税は、自主的に納付した場合は5%、税務署から指摘を受けて納付した場合は課税は10%です。納付意思があり1か月以内に納付した場合や、金額が5,000円未満の場合は課税されないこともあります。

    従業員が10名未満なら特例が適用される

    給与を受け取る従業員が常時10人未満の法人や事業主は、「納期の特例制度」を活用できます。

    特例制度を使うと、給与や退職金、税理士・弁護士など特定士業への報酬から源泉徴収した所得税を年2回にまとめて納付可能です。

    利用するには、税務署へ 「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出し、承認を受ける必要があります。申請が受理された場合の納付期限は次のとおりです。

    • 1〜6月分:7月10日
    • 7〜12月分:翌年1月20日

    特例は毎月の納付作業を減らせますが、半年分をまとめて納めるため、納付月に向けた資金準備と管理が欠かせません。人数が増えて要件を満たさなくなった場合や士業以外の報酬は対象外となるため、該当する場合はすみやかに届け出ましょう。

    会社で対応できなかった場合は確定申告をしてもらう

    会社が源泉徴収や納付をしていない場合、従業員はみずから確定申告を行い、納税する必要があります。確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までです。

    ただし、本来の源泉徴収義務は会社にあります。対応が遅れると、会社側が税務署から指摘を受けたり、追加の税負担が発生したりする可能性があります。

    従業員に余計な手間をかけないためにも、会社は納付期限を守り、年末調整を含む手続きを進めることが大切です。

    納付期限や特例制度を正しく理解し、遅延やミスを防ぐことが、担当者に求められます。

    従業員の源泉所得税が確定する年間スケジュール

    従業員の源泉所得税は、年末調整で1年分を精算し、必要に応じて書類の回収や申告手続きも行って、最終的な税額が決まります。

    そのため会社は、毎月の給与計算に加えて、年末調整の準備や各種書類の回収・提出を計画的に進める必要があります。

    年間の流れを把握しておくと、ミスや漏れを防ぎやすくなり、従業員が確定申告をしなくて済むケースも増えます。ここからは、源泉所得税が確定するまでの流れを時系列で整理します。

    時期会社がやること
    入社時〜初回給与前扶養控除等申告書を回収・確認
    毎月(給与・賞与のたび)源泉所得税を計算して給与から控除
    毎月(原則)源泉所得税を納付
    年2回(納期の特例)半年分まとめて納付(該当する場合)
    11月頃年末調整書類の案内・回収
    12月頃年間支給額・控除情報を集計
    12月〜翌1月年末調整を実施
    12月または翌1月の給与還付・追加徴収を給与に反映
    精算を反映した月の翌月源泉所得税を納付

    入社時に「扶養控除等申告書」が提出される

    新しく入社した従業員には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらいます。本人や扶養家族の状況を会社に伝えるための書類で、毎月の源泉徴収税額の計算や年末調整で使います。

    申告書が提出されない場合、従業員は乙欄で計算することになり、通常よりも高い税率が適用されてしまう点に注意が必要です。また、原則として年末調整の対象にもできません。

     提出期限は、入社後最初の給与支払日の前日までが目安です。

    扶養親族がいない場合でも、氏名や住所などの記入は必要です。入社手続きのタイミングで回収し、不備がないか確認して会社で保管しましょう。

    毎月の給与から源泉所得税を徴収する

    企業は給与や賞与を支給するたび、扶養控除等申告書の内容と社会保険料控除後の金額をもとに、国税庁の源泉徴収税額表で税額を計算し、給与から差し引きます。

    差し引いた源泉所得税は、原則として翌月10日までに納付します。

    従業員が常時10人未満であれば、申請して承認を受ければ納期の特例を利用可能です。

    特例を適用する場合は、源泉所得税を半年分まとめて年2回(7月10日/翌年1月20日)納付が認められています。

    給与明細には源泉徴収額が載るため、毎月の計算と納付の突合は欠かせません。

    11月頃に年末調整書類を回収する

    年末調整に向けて、11月頃から従業員に必要書類を提出してもらいます。

    たとえば、「保険料控除申告書」「配偶者控除等申告書」など、控除に関する申告書類です。書類がそろわないと、12月の年末調整で正しい税額を出せません。

    提出漏れや記入ミスがあると、還付額や追加徴収額に影響します。早めに社内へ案内を出し、締切を決めて回収し、不備があれば差し戻して整える流れが一般的です。

    なお、年末調整システムや労務管理システムを利用すると、書類回収の手間が省け、ペーパーレス化も実現できます。

    12月頃に従業員の年間給与支給額が確定する

    12月の給与計算にあわせて、従業員ごとに1年間の支給額(基本給、手当、賞与など)を集計します。あわせて、社会保険料や各種控除の情報もそろえ、税額の計算に使います。

    集計結果は、年末調整だけでなく、翌年に交付する源泉徴収や、市区町村への住民税関係の書類提出にもつながります。金額の集計ミスはあとに影響するため、とくにチェックが重要です。

    年末調整:1年間の所得税額が確定する

    年末調整によって1年間の所得税額が正式に決定されます。

    年末調整は、毎月いったん差し引いてきた源泉所得税と、1年分の正しい所得税額を比べて、過不足を精算する年次業務です。

    従業員が提出した各種控除申告書の内容や、家族構成の変化も反映して、最終的な税額を確定させます。

    確定した所得税額は、翌年1月10日までに税務署への納付が必要です。複雑なケースや計算に不明点があれば税理士や専用ソフト、マニュアルを活用してミスを防ぎましょう。

    過不足税額を給与に反映する

    年末調整で出た源泉所得税の差額を、12月または翌1月の給与で調整します。還付なら給与に上乗せ、不足なら追加で差し引きです。

    精算の結果は、従業員の給与明細や源泉徴収票にも反映され、本人・自治体・税務署に通知・報告されます。提出期限にも気をつけて、確実な納税処理を徹底しましょう。

    源泉所得税の猶予・延納制度について

    源泉所得税を期限までに納めるのが難しいときは、救済措置として猶予や延納ができる場合があります。

    資金繰りの悪化や、災害・突発的な事情などで、一時的に納付が困難な法人を対象にした制度です。

    制度を利用できれば、納付を先送りしたり分割したりもでき、あわせて延滞税の負担が軽くなるケースもあります。ただし、適用には要件があり、原則として申請手続きが必要です。

    ここから、猶予・延納制度の概要、利用できる条件、申請の流れを解説します。

    猶予制度

    所得税納付の猶予制度は、災害・病気・盗難、事業の損失などの事情で、期限どおりの納付が難しいときに、申請して納付を待ってもらうための制度です。分割納付も可能です。猶予が認められると、状況により延滞税の負担が軽くなることがあります。 

    猶予の種類は大きく以下の2つです。

    期間分割
    納税の猶予災害、病気、盗難、事業の休廃業などで納付が難しい原則1年以内(延長の申請ができる)できる
    換価の猶予一括で払うと事業の継続や生活維持が難しくなるおそれがある原則1年以内(最長2年まで延長あり)できる

    申請の流れは以下のとおりです。

    • 所轄税務署へ「納税猶予申請書」や財産収支状況書などの必要書類を提出する
    • 「猶予許可通知書」が届く

    猶予を受ける金額が100万円を超える場合は担保が必要です。しかし3か月以内や特別な事情があれば不要になります。

    猶予期間中は延滞税が軽減または免除される場合もあります。

    申請期限は原則として所得税の納期限までです。やむを得ない理由が続く場合は、猶予期間の延長を申請できます。

    延納制度

    所得税納付における延納は、確定申告で納める所得税の一部について、申請によって5月31日まで延ばせる制度です。

    源泉所得税の「毎月の納付」を延ばす制度ではありません。

    所得税延納の流れは以下のとおりです。

    • 本来の期限3月15日までに、納付すべき税額の2分の1以上を納付
    • 確定申告書に延納の届出額を記載して提出
    • 残りを5月31日までに納付


    ただし、利子税率0.9%(令和6年度)を延納した日数分だけ日割りした金額が上乗せされます。利子税の負担が1,000円未満の場合は課税されません。

    延納制度は、資金繰りが一時的に厳しい場合や、分割納付で納税負担を調整したい場合に認められています。申請によって利用可能なため、申請しないまま本来の納付期限を過ぎると延滞税が発生します。

    参考:『No.9206 国税を期限内に納付できないとき』国税庁

    まとめ|源泉所得税をスムーズに納付するには?

    源泉所得税は、会社が給与から天引きして国に納付する義務があります。納付方法は、窓口納付のほか、e-Tax(ダイレクト納付)やインターネットバンキング、コンビニ納付、クレジットカード納付など複数あります。オンラインで完結できる方法を選ぶと、移動や納付書作成の手間が減り、納付漏れも起きにくくなります。

    納付期限は原則として「給与支給月の翌月10日まで」です。常時10人未満の源泉徴収義務者は、申請により「納期の特例」で年2回にまとめて納付できます。期限を過ぎると延滞税や不納付加算税が発生するため、毎月の納付日から逆算して作業日程を固定しましょう。

    年末調整で1年分を精算し、必要に応じて確定申告につながる流れもおさえておくと、対応漏れを防げます。会社で年末調整できない場合は従業員が確定申告を行うこともありますが、源泉徴収・納付の義務は会社側にあります。

    業務量やミスを減らしたいなら、給与計算から申告・納付の準備、期限管理、証憑管理までを一連で運用できるツールの活用もおすすめです。課題を解決するために、多くの企業が給与計算システムを活用しています。