住民税の特別徴収と普通徴収の違いとは? 手続きや切り替えも解説

住民税の特別徴収と普通徴収の違いとは? 手続きや切り替えも解説

住民税とは、区市町村や都道府県に納める地方税です。企業は、従業員の住民税を給与から天引きするため、担当者は違いを理解しておかなければなりません。

本記事では、住民税の特別徴収と普通徴収の違いについて解説します。企業の中で、従業員の給与を扱う人事労務担当者はぜひ参考にしてください。

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    住民税の特別徴収と普通徴収とは

    住民税の納税方法は、特別徴収と普通徴収があります。両者はそれぞれどのような特徴があるのか、解説します。

    特別徴収とは

    特別徴収は、会社が従業員の給与から住民税を天引きし、従業員に代わって市区町村へ納付する方法です。主に給与所得者が対象となり、毎月の給与から12分の1ずつ天引きされます。

    普通徴収とは

    普通徴収は納税者本人が直接市区町村へ住民税を納付する方法です。自営業者やフリーランス、給与所得のない方が主な対象となります。年4回に分けて納付するか、1年分を一括納付するかを選択できます。

    そもそも住民税とは

    住民税とは、その年の1月1日に居住する地域に納める地方税のことで、都道府県民税と区市町村民税があります。

    住民税の仕組みとして、前年の所得から住民税額が決まったら納税者に通知を行います。通知を受けた納税者は、居住地の区市町村に納税を行います。その後、区市町村が、所属する都道府県に、一定割合の金額を支払うという仕組みです。

    住民税の税率

    住民税の税率には、以下のように所得割と均等割があります。所得割は、所得から計算式にあてはめて算出し、均等割は収入額にかかわらず共通の金額が設定されています。

    所得割均等割
    森林環境税1,000円
    市町村民税6%1,000円
    道府県民税4%3,000円

    政令指定都市について所得割は、道府県民税が2%、市民税が8%です。

    なお、市町村民税と都道府県民税の所得割の料率および均等割の金額は、地方自治体ごとに若干の差があります。

    住民税の計算

    住民税の計算方法は、特別徴収でも普通徴収でも同じです。具体的には以下のような手順で計算を行います。

    1. 総所得金額を算出する
    2. 所得控除を確認する
    3. 課税所得額を算出する
    4. 所得割の課税額を計算する
    5. 税額控除金額を差し引く
    6. 均等割を加算する

    特に、所得控除や税額控除の種類には、いくつもの種類がありますので、国税庁などの情報を確認し、正しく把握しましょう。

    さらに、住民税は、状況によって非課税扱いになる場合があります。非課税になるのは、所得割が非課税になるパターンと、所得割と均等割の両方が非課税になるパターンがあります。それぞれ非課税になる要件が定められていますので、総務省や国税庁の情報などを確認しましょう。

    参照:『総務省|地方税制度|個人住民税』総務省

    住民税の特別徴収と普通徴収の違い

    住民税の特別徴収と普通徴収にはどのような違いがあるのでしょうか。具体的な違いを解説します。比較表も紹介しますので、理解に役立ててください。

     納付する人納付方法徴収回数開始時期
    特別徴収企業
    (納税者の代わり)
    給与天引き毎月
    (年12回)
    6月
    普通徴収納税者本人
    (個人事業主やフリーランスなど)
    ・納付書による払い込み(役所窓口やコンビニなど)
    ・その他クレジットカードや決済アプリ、口座振替など
    一括
    もしくは
    年4回分納
    6月

    ※2024年に限り、定額減税の対象となった方の特別徴収は7月から開始されました。

    住民税の特別徴収と普通徴収のメリットとデメリット

    住民税の特別徴収と普通徴収には、それぞれメリットとデメリットがあります。具体的にはどのような点があるのでしょうか。具体的なメリットを解説します。

    特別徴収のメリット

    住民税における特別徴収のメリットは、企業が納付してくれるため、納付漏れなどを防げる点にあります。企業が毎月の給与から天引きして代わりに納付してくれるため、納税の手間も省けます。また、特別徴収は毎月(年12回)納付することになるため、1回に支払う納税額を抑えられる点もメリットです。

    特別徴収のデメリット

    住民税の特別徴収におけるデメリットは、特に企業側に負担がかかりやすいという点が挙げられます。特別徴収がない場合、納税者は住民税の納税について、納付書を確認したり、通知したりなどの手間がかかります。

    特別徴収では企業が代わりに納付するため、納税者側に時間や労力の負担はかかりにくいといえます。また、従業員の住民税に関する知識が育まれない可能性がある点もデメリットの一つです。

    普通徴収のメリット

    住民税の普通徴収におけるメリットは、納付方法が豊富な点です。納付書による役所窓口やコンビニ店頭はもちろんのこと、口座振替や自治体によってはクレジットカードやスマホ決済アプリによる納税が可能です。

    普通徴収のデメリット

    住民税の普通徴収におけるデメリットは、納税者本人が納付する必要があるため、納付漏れが起こる可能性があるという点です。納付を忘れてしまうことによって、未納や滞納、遅延が起こり、滞納金の請求や差し押さえが行われる危険性があります。

    また、納付回数の少なさも納税者によってはデメリットといえます。普通徴収では、一括納付もしくは年4回の分納としているため、1回に支払う納税額が大きく、納税者にとって負担になる場合があります。

    住民税における特別徴収と普通徴収の手続き

    住民税における住民税と普通徴収を行う際の手続きを解説します。

    特別徴収の場合

    住民税の特別徴収を行う場合は、以下の手順で行います。

    1. 企業が給与支払報告書を区市町村に提出する
    2. 区市町村から特別徴収税額決定通知が届く
    3. 納税者(従業員)の給与から天引きする
    4. 納税者の代わりに企業が納付する

    住民税の特別徴収では、年末調整によって企業から各自治体に提出された給与支払報告書をもとに税額を計算します。その後、各自治体から企業に特別徴収税額決定通知書が届くため、企業側は決定額を確認し、納税者(従業員)の給与から毎月天引きしたうえで代理納付を行います。

    普通徴収の場合

    住民税の普通徴収を行う場合は、以下の手順で行います。

    1. 所得税の確定申告データから自治体が計算する
    2. 住民税決定通知書が納税者に届く
    3. 納税者が住民税決定通知書の確認と納税を行う

    住民税の普通徴収では、納税者の確定申告の内容から、各自治体が住民税額の計算を行います。その後、住民税決定通知書が納税者宛てに届きますので、納税者は通知書に記載された住民税額を納付します。

    住民税の特別徴収から普通徴収への切り替え

    企業に勤める人が住民税を納付する方法は、原則として特別徴収です。ただし、例外的な事情や状況によって、特別徴収から普通徴収に切り替えるケースもあります。企業は、該当するケースがあった場合に問題なく対応できるよう、仕組みを理解しておきましょう。

    山梨県中央市の例

    山梨県中央市の例では、以下のような場合に特別徴収から普通徴収に切り替えられます。

    • 総受給者数(専従者・乙欄・退職者を除いた合計)が2人以下
    • ほかの事業所で特別徴収・普通徴収として扱う乙欄該当者
    • 毎月の給与が少なく、税額が引けない
    • 給与の支払期間が不定期(例:給与の支払が毎月ではない)
    • 普通徴収として扱う事業専従者(個人事業主のみ該当)
    • 退職者・退職予定者(5月末日まで)

    上記の理由や特別な事情がある場合、企業側は給与支払報告書と切替理由書を提出しましょう。退職以外では、休職や休業等で税額を控除することができず切り替えるケースがよくあります。なお、上記の理由や特別な事情がない場合は、本人の希望などによっても特別徴収から普通徴収に切り替えることはできません。

    このように、一般的には上記に記載した理由や特段の事情がある場合に、住民税を特別徴収から普通徴収に切り替えることができます。特別徴収から普通徴収への切り替えを希望する納税者は、まずは企業や自治体に相談や確認をしてみましょう。

    参照:『【事業者向け】普通徴収への切替理由書について』中央市

    住民税の徴収方法を担当者は理解する

    担当者は住民税の徴収方法を理解する必要があります。特別徴収の場合は、納税者の代わりに納付を行い、普通徴収では納税者本人が支払います。誤認識から徴収漏れや二重納付が発生すると、従業員の不信感のもととなるばかりでなく、煩雑な訂正処理も必要になりますので、注意してください。

    納税者は、住民税の納税方法にどのような種類があるのかという点を理解し、納付方法を正しく把握しておきましょう。

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    まとめ

    住民税には、特別徴収と普通徴収の2種類があります。企業では、特別徴収のため、従業員の住民税を給与天引きして代理納付します。

    従業員によっては、特別徴収ではなく普通徴収を希望する場合もあるかもしれませんが、自治体が認める特別な理由がない場合、認められません。

    企業の担当者は、住民税の特別徴収や普通徴収の違いを理解し、正しい計算や適切な納付を行えるよう徹底しましょう。