号俸とは? 等級との違いや制度の決め方や上がり方もわかりやすく解説

号俸(ごうほう)制度とは、もともと公務員の給与を決めるために使われてきた仕組みです。最近では、民間企業でも、従業員の給与を決める方法の一つとして採用されることがあります。
しかし「号俸と等級の違いがわからない」「どのように決まるのか説明できない」と疑問に感じる担当者は少なくありません。
本記事では、号俸の特徴や等級との違い、メリットデメリットを解説しています。取り入れるときの注意点も紹介しているので、企業の経営層や人事担当者は、給与体系を見直す際の参考にしてください。
目次

号俸とは公務員の給与決定の仕組み
号俸(ごうほう)とは、職員(従業員)の基本給を決定するために用いられる指標です。基本給の金額に番号(号数)を割り振り、職員がどの給与水準にいるかを示しています。
本来は人事院が公開し、国家公務員の給与決定に使われてきました。現在では一部の民間企業でも制度が参考にされています
なお、「号棒」という表記は誤りであり、正しくは「号俸」です。
参照:『行 政 職 俸 給 表 イ 行政職俸給表(一)』人事院
参照:『国家公務員の給与制度の概要』人事院
号俸制の特徴
号俸は、主に勤続年数や年齢、年間評価などの基準によって序列化されたものです。号俸の決定要素として年齢・勤続年数を反映する場合と、職務内容・能力を反映する場合があり、企業や組織の方針によって異なります。
号俸制は、基本給の額や昇給の仕組みが明示されるため、賃金や昇給額の管理がしやすいという特徴があります。
号俸表・俸給表
公務員の号俸制では「俸給表」と呼ばれる表を使って給与額を決定します。「俸給」とは、民間の「基本給」に該当します。
俸給表には縦軸に号俸、横軸に等級が配置され、縦と横が交差する箇所で給与額が決まる仕組みです。表を用いて、職員の職務レベルと勤続年数・年齢などを反映した俸給(基本給額)が決定します。
民間企業で号俸制を導入する場合は、俸給表の代わりに「賃金表」または「号俸表」を作成して使用します。民間では号俸表の開示義務はありませんが、開示すると給与決定に関して透明性が上がり、従業員の納得感が得られるでしょう。また、労働基準法の労働条件の明示義務により、号俸による賃金の決定方法については、労働契約書や就業規則で明示しなければなりません。
号俸と等級
号俸と混同しやすい言葉に「等級」があります。
等級とは、能力レベルや職務内容に序列をつけた段階的な分類です。1級・2級・3級と記され、係員、主任、係長などの役職と連動するのが一般的です。等級の決め方や基準は、職種や業務によって異なります
一方で号俸とは、勤続年数や年齢あるいは評価に応じて設定され、昇給とともに1・2・3と上昇していきます。
等級は昇格によって、号俸は昇給によって上がる仕組みです。
号俸のメリット
号俸制には給与決定や管理においてどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットは次の4点です。
- 給与管理を行いやすい
- 給与決定の公正性を保ちやすい
- 従業員が理解しやすい
- 従業員のモチベーションを高めやすい
企業が号俸制を運用するにあたり、どのような点を意識すればよいのか参考にしてください。
給与管理を行いやすい
号俸制の最大のメリットは、賃金管理を行いやすいことです。号俸制では、俸給表や賃金表をもとに、賃金や昇給額を一目で確認できます。
号俸制を導入していない企業では、成果や評価、企業業績などに応じて給与が変動するため、給与管理が複雑になりがちです。号俸制では変動があっても機械的に反映できるため、担当者の負担を軽減できます。
給与決定の公正性を保ちやすい
号俸制は、俸給表や賃金表によって、給与決定の基準が明確に示されるのもメリットです。
従業員が納得しやすい公平な給与決定が実現します。
民間企業では、給与決定の理由が不透明で、不満の原因になることもあります。号俸制なら基準に基づいて機械的に給与額を決定できるため、公正性を保ちやすいといえるでしょう。
従業員が理解しやすい
号俸制のメリットには、従業員が給与決定の仕組みを理解しやすいという点もあります。自分の給与と賃金表を照らし合わせれば、給与決定の状況を把握できるためです。給与決定の仕組みがわかりやすいと、昇給までのステップやキャリアプランを立てやすくなるでしょう。
従業員のモチベーションを高めやすい
号俸制により、透明性や公平性が確保され、従業員のモチベーションを高める効果も期待できます。給与への納得感が高まれば、仕事への意欲が高まり、全体の生産性も向上するでしょう。
号俸のデメリット
号俸制にはメリットもありますが、一方で制度上の制約やリスクもあります。号俸制の具体的なデメリットを2つ紹介します。
- 業績変動に対応しにくい
- 適切な評価が反映されにくい
あらかじめデメリットを把握することで、運用時のトラブルを防ぎましょう。
業績変動に対応しにくい
号俸制では、俸給表や賃金表に基づいて給与額が決定されるため、給与水準が固定的になります。そのため、企業の業績が悪化した場合でも給与を下げにくく、状況に応じた柔軟な対応が難しい点がデメリットです。
財務状況が悪化し続けると、固定された給与体系が企業の財務を圧迫することも考えられます。反対に業績が好調でも、号俸制では即時の還元が難しいため、意欲低下や不満の原因になってしまうでしょう。
適切な評価が反映されにくい
号俸制では、個々の成果や貢献度が給与に反映されにくいという課題があります。多くの場合は、勤続年数や年齢といった基準に基づく仕組みになっているためです。
成果に関係なく昇給できると、高い成果を上げた従業員のモチベーションが低下してしまいます。成果主義を重視する組織文化の会社にはなじまない制度といえるでしょう。
企業における号俸の決め方や上がり方
企業が号俸制を導入する場合、給与の決まり方や上がり方のルールは、自社の裁量で自由に設定できます。公務員の号俸制を参考にしながらも、自社が大切にする価値基準や評価項目にあわせて検討する必要があります。
とくに重視したいのは、従業員にとって納得感のある仕組みになっているかという点です。
制度が不透明だと従業員のモチベーション低下につながるため、理解しやすく公平性の高い設計を考えましょう。
号俸の決定・昇給ルールの設計ポイント
新たに号俸制度を導入する際は、以下の点を明確に定める必要があります。
- どの条件で号俸が上がるのか(例:勤続年数、評価結果など)
- 号俸が下がるケースがあるか
- 昇給時に号俸がいくつ変動するか
年功序列型を採用するなら毎年必ず号俸が1つ上昇、成果主義型を採用するなら人事評価で上位○%の従業員は複数号俸が上昇といったルールを適用することも可能です。
以下では、号俸の種類や型とその特徴を紹介していきます。
号俸制の種類と特徴
号俸制にはいくつかの種類があり、企業の方針や評価基準に合わせて選択できます。代表的な種類と特徴を紹介します。
種類 | 特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
固定号俸制度 | 役職や職務内容や勤続年数ごとに給与を固定 | わかりやすさ、公平性 | 成果が給与に反映されにくい |
成果主義号俸制度 | 成果や貢献度で給与を決定 | 成果の反映、モチベーション向上 | 過度な競争、短期成果重視のリスク |
混合型号俸制度 | 固定給与+成果に応じた上乗せ | 安定性と成果反映の両立 | 固定と成果部分の配分が難しい |
固定号俸制度
固定号俸制度は、職務内容や役職の重要性や勤続年数などに応じて給与額を固定する仕組みです。たとえば、一般社員、係長、課長など役職ごとに給与を設定します。
固定号俸制度のメリットは、わかりやすさと公平性です。従業員も給与体系を理解しやすいのが特徴です。一方で、成果やスキルの反映が難しく、高い成果を上げても給与に反映されにくいのはデメリットです。
成果主義号俸制度
成果主義号俸制度は、従業員が出した成果や貢献度に基づいて給与額を決定する仕組みです。具体的には、成果指標や目標達成度、組織への貢献度合いを評価基準とします。
成果が給与に反映されやすく、モチベーション向上につながるのは成果主義号俸制度のメリットです。
一方で過度な競争が生まれやすく、長期的な成果が軽視されるようになるのはデメリットになる場合もあります。成果主義号俸制度を選択する場合は、評価基準や目標設定における難易度のバランスを整える必要があります。
混合型号俸制度
混合型号俸制度は、固定号俸制度と成果主義号俸制度の両方の特徴をあわせ持つ制度です。
固定給与による安定性を確保しつつ、成果に応じたインセンティブを支給します。
安定性と成果反映のバランスを実現できるのは、混合型号俸制度のメリットです。固定号俸制度と成果主義号俸制度のデメリットをカバーできます。
ただし、固定部分と成果部分の配分設定は簡単ではありません。納得感が得られやすい配分を調整し続ける必要があります。
号俸の計算方法

出典:『行政職俸給表 イ 行政職俸給表(一)』人事院より一部抜粋、加工
号俸制における計算方法について、公務員で用いられる例に基づいて解説します。
縦軸と横軸で計算
号俸制では、俸給表を使って基本給額を確認します。俸給表は2つの軸で構成されています。
横軸:級(等級) | 職務階層(例:1級〜10級) |
---|---|
縦軸:号俸 | 勤続年数・年齢・評価などを基に設定された指標 |
給与額は、自分が属する等級(級)と割り当てられた号俸(指標)を、俸給表の横軸と縦軸で探し、交差する位置の金額を参照して決まります。
一般的な公務員の俸給表における横軸で展開されるのは、「1級」から「10級」までの「級」です。
横軸(級)は、職務のレベルや責任範囲が上がるほど右に進みます。縦軸(号俸)は、勤続年数や経験、評価結果に応じて数字が大きくなり、給与額も上昇します。
号俸制を取り入れる際の注意点
号俸制を民間企業が導入する際には、注意したいポイントがあります。制度設計の段階から課題を想定し、適切に対応することが重要です。
企業の経営層や人事担当者は、以下の点を押さえましょう。
- 昇給や昇格の決め方や仕組みを明確にする
- 成果主義の観点も取り入れる
- 定期的に制度運用を見直す
昇給や昇格の決め方や仕組みを明確にする
号俸制を導入する際は、昇給や昇格の決め方や仕組みを明確に定めることがとても重要です。従業員が「どのように給与額が決まるのか」「昇給・昇格のルール」を理解できれば、制度への納得度が高まります。給与決定の透明性を確保することで、企業への信頼性も向上します。
成果主義の観点も取り入れる
号俸制の種類によっては、個人の成果や貢献度が反映されにくい場合もあります。成果を上げても、勤続年数や年齢が低いという理由だけで給与が上がらないと、生産性の高い従業員のモチベーションは低下してしまいます。企業は、賞与や手当なども工夫して、成果が反映されるような仕組みを検討しましょう。
定期的に制度運用を見直す
号俸制度を導入したあとも、定期的に見直しましょう。適切な給与水準は、社会情勢や経済動向によって変わることがあります。従業員の声に耳を傾け、同業他社を調査するなどして、号俸制が適切に機能しているかを評価し、必要に応じて改定も検討しましょう。
号俸制が向いている企業
号俸制は、従業員数が多い企業に適した給与制度です。従業員が多いと、個別に給与を決定・見直しする作業が膨大になり、人事担当者の負担が大きくなります。
号俸制を導入すれば、給与決定の基準を固定化できるため、業務効率化が進み、担当者の負担を減らせます。
ただし、ここまで紹介してきたように、業績や個人成果を反映させにくいという制約もあります。優秀な従業員に還元したい場合は、号俸制とあわせて賞与や手当で成果を評価する方法を検討するとよいでしょう。
まとめ
号俸制は、もともと公務員の給与決定に用いられてきた制度で、現在では民間企業でも取り入れられています。法律に定められた制度ではないため、導入する企業が独自に昇給の上がり方を決める必要があります。
号俸の制度設計では、勤続年数や年齢などの客観的要素に加え、成果や貢献度を反映できる仕組みもあわせて検討しましょう。
従業員の納得感と公平性を両立する制度が、従業員のモチベーション向上にもつながります。
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