給与計算の基本を解説|必要な流れやポイント、注意点なども紹介
給与計算は、従業員の満足度にも影響する人事労務担当者の基本業務の一つです。ミスが許されないことに加えて、労働基準法や所得税法への理解も求められます。必要な知識は多岐にわたるため、担当者として正しく認識しておきたいところです。
給与計算の基本的概要
給与計算とはどのようなものなのか、企業における現状や目的などを解説します。
給与計算は企業に欠かせない業務の一つ
給与計算とは、従業員一人ひとりの給与を計算して支給するための作業です。従業員の労働への対価を正確に支給することを目的としており、企業にとっては欠かせない業務といえます。
給与計算では、さまざまな要素が考慮されます。
- 基本給
- 労働時間
- 各種手当
- 残業の有無
賃金形態や働き方(労働時間・労働日数)によって計算結果が異なり、多様な雇用形態を管理する企業では、作業が煩雑になりがちです。さらに労働基準法の改正などにも対応しなければなりません。
給与計算は一般的にツールや専用システムが用いられる
最近では給与計算を簡単にするためのツールやシステムが普及しています。便利なツールやシステムを用いて、給与計算の自動化をはかっている企業も多くあるでしょう。
給与計算システムは一般的に、
- 給与計算の自動化
- 税金者破壊保険料の計算
- Web給与明細の発行
- 年末調整
などの作業を簡素化し、誤りを減らすことに役立ちます。しかし、コスト削減のために手動で給与計算を行っている中小企業や人数がまだ少ないスタートアップ企業もあるでしょう。
また、一部の企業では給与計算をアウトソーシングしています。
給与計算の流れ・手順
給与計算は、おおむね以下のような流れで行われます。
- 総支給額を計算する
- 控除額を計算する
- 総支給額から控除額を差し引いて給与を計算する
- 賃金台帳と給与明細を作成する
- 保険料と税金を納付する
それぞれのステップについて、以下で詳しく解説します。
1.総支給額を計算する
給与計算では、まず従業員に対する「総支給額」を計算します。ベースとなる基本給に加えて、各種手当やその月の残業代(割増賃金)など、従業員に支給するすべての賃金を合算しましょう。
なお、割増率は深夜残業や休日出勤など具体的な労働内容によって25〜50%と大きく変動するため、注意が必要です。
2.控除額を計算する
控除額、つまり給与から差し引く金額を種類ごとに計算します。具体的には、以下のような社会保険料や各種税金を計算しましょう。
- 健康保険料
- 厚生年金保険料
- 雇用保険料
- 所得税
- 住民税 など
社会保険料や各種税金は企業が計算から納付まで行う必要があるため、計算ミスのないように注意することが大切です。
3.総支給額から控除額を差し引いて給与を計算する
総支給額から控除額を差し引きます。この金額が、実際に従業員に給与として支給される金額です。先に計算した内容に間違いがないことを確認し、給料日や支給方法など会社ごとのルールにしたがって給与を支払いましょう。
4.賃金台帳と給与明細を作成する
給与計算が終了したら、従業員ごとに賃金台帳と給与明細を作成します。賃金台帳の作成・保管は、労働基準法で定められた企業の義務です。また、所得税法では給与明細の従業員への交付を義務づけています。また、給与明細は従業員に交付する必要があります。
5.保険料と税金を納付する
給与から差し引いた保険料と税金は、従業員に代わって企業が納付します。納付のタイミングは一律ではないため、それぞれのスケジュールを把握しましょう。
たとえば、雇用保険は年に1回、毎年7月に納付します。一方、各種税金は給与を支払った翌月の10日に、社会保険料は納付対象月の翌月末までに通知書にしたがって納付しなければなりません。
給与計算で意識すべきポイント
従業員の給与を計算、支給する際には、以下のポイントをおさえることが大切です。
- 「賃金支払いの5原則」を理解する
- 残業代の計算方法を明確にする
- 割増賃金の端数は労働基準法に準拠する
「賃金支払いの5原則」を理解する
従業員に対する給与の支払いについては、労働基準法第24条に定められています。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
労働基準法第24条をまとめたものを「賃金支払いの5原則」といい、企業はこの原則を遵守しながら給与を支給しなければなりません。5つの原則を簡潔にまとめると、次の通りです。
- 通貨で
- 労働者に直接
- 全額を
- 毎月1回以上
- 一定の期日を定めて
このうち「全額を」という原則を守るためには、正確な給与計算が欠かせません。給与計算は、労働基準法を遵守するためにも大切な業務なのです。
残業代の計算方法を明確にする
従業員が残業(時間外労働)をしたぶんの給与に対しては、通常の賃金に加えて割増率が適用されます。時間内労働と同じ扱いをしないよう、残業代の計算方法を明確にすることが大切です。なお、残業代に対する割増率は、労働した時間帯や休日出勤の有無によって異なります。
たとえば、通常の残業には25%以上の割増率を設定するよう定められていますが、残業時間に深夜労働(22時~翌5時)が含まれる場合は、さらに25%を上乗せして合計50%以上の割増率を適用しなければなりません。
一方、休日出勤には35%以上の割増率が適用されます。平日の残業と同様に、深夜労働が含まれる場合はさらに25%と上乗せし、合計60%以上の割増率の適用が必要です。
割増賃金の端数は労働基準法に準拠する
割増賃金に端数が出た場合は、労働基準法にのっとって処理しましょう。
具体的には「1時間あたりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合」または「1か月間における割増賃金の総額に1円未満の端数が生じた場合」は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げます。
給与計算時の注意点
従業員の給与を計算する際は、以下の点に注意しましょう。
- 守秘義務を意識する
- 手入力が必要な場面では複数のチェックを実施する
- 雇用形態や家族構成の変化などに注意する
守秘義務を意識する
給与に関する情報は、大切な個人情報です。そのため、給与計算を担当する従業員には守秘義務があります。個人の給与金額や残業代などを口にしたり、SNSで情報を発信したりなどの問題行動はあってはなりません。
手入力が必要な場面では複数のチェックを実施する
給与計算には、手入力が必要な場面もあります。人の手が加わる作業では、どうしてもミスが発生しやすいものです。ヒューマンエラーを防止するため、複数人でのチェックを実施し、問題がないことを担当者全員で確認するとよいでしょう。
雇用形態や家族構成の変化などに注意する
従業員の雇用形態や家族構成の変化は、給与の計算方法に大きく影響します。昇給や雇用形態の変更などがあった場合には、標準報酬月額の改定届の提出も必要です。
また、社会保険料の計算に用いられる社会保険料率や、税金の計算方法はたびたび変更されています。担当者は、各種制度やそれぞれの従業員について、常に最新の情報を把握しなければなりません。
給与計算でミスが発覚した際の対処法
万が一、給与計算でミスが起こってしまった場合は、以下のように対処しましょう。
- 速やかに連絡と訂正を実施する
- 再発防止策を考案する
速やかに連絡と訂正を実施する
給与計算のミスが発覚した場合は、速やかに報告し、計算結果の訂正をしましょう。また、部署内でミスの内容を共有するとともに、ミスが影響する従業員に対しても連絡する必要があります。ミスを認めて正しい給与計算結果を伝えるとともに、誠心誠意謝罪することが大切です。
再発防止策を考案する
同じようなミスを繰り返すことのないように、ミスの内容をまとめて、再発防止策を検討しましょう。ミスが起きた原因を確認し、そのあとの対処が適切だったのか精査することも大切です。また、必要に応じてマニュアルを作成するのもよいでしょう。
給与計算は専門サービスによる最適化がおすすめ
企業は基本給や各種手当、時間外労働の割増賃金などを加味して従業員の給与を正確に計算する必要があります。
しかし、手計算や手入力による給与計算では、どうしてもミスが生じやすいものです。労働基準法を遵守するためにも、給与計算や労働時間の集計を自動化し、単純なヒューマンエラーを減らすことが大切といえるでしょう。
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まとめ
給与計算は、企業にとって重要な業務の一つです。最近では専用ソフトを導入している企業も多くありますが、担当者が給与計算の基本的な流れや仕組みを理解することは、計算ミスやトラブルの防止のために重要です。
給与計算には社会保険料や税金、労働時間や割増賃金など多岐にわたる領域が関係しているため、制度や仕組みの基本を正しく理解しておきましょう。
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