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標準賞与額は何に使う? 上限を超えた場合の対応や保険料の計算方法も解説

標準賞与額は何に使う? 上限を超えた場合の対応や保険料の計算方法も解説

標準賞与額とは、社会保険料の計算において基礎となる金額です。健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、月々の給与だけでなく賞与に対してもかかります。

そのため、従業員に賞与を支給する際は社会保険料を計算し、正しい金額を徴収しなければなりません。社会保険料を適切に徴収・納付するためには、標準賞与額への理解を深めておく必要があります。

本記事では、標準賞与額の概要や算定方法、社会保険料の具体的な計算例などを解説します。

 

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    標準賞与額とは? 何に使う?

    標準賞与額とは、健康保険料や厚生年金保険料の算定に用いる基準額です。

    健康保険料や厚生年金保険料は、会社と従業員が半分ずつ負担して支払います。また、社会保険料は毎月の給与だけでなく賞与にもかかるため、従業員に賞与を支給する際には保険料を天引きしなければなりません。

    賞与から天引きする保険料を計算する際に用いられるのが、標準賞与額です。

    標準賞与額税引き前の賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てたもの

    標準賞与額に含まれる賞与

    標準賞与額に含まれる賞与には、以下のようなものがあります。

    • 賞与(役員賞与を含む)
    • ボーナス
    • 期末手当
    • 年末手当
    • 夏季手当
    • 冬季手当 など

    上記以外であっても、年3回まで支給される報酬などは標準賞与額に含まれます。

    名称に関係なく「労働の対価として支払われたもの」「年3回以内の回数で支給されたもの」という条件を満たしていることが重要です。

    名目上は賞与(ボーナス)であっても、年に4回(春夏秋冬)支給している場合は、標準報酬月額に含めて計算します。

    参照:『厚生年金保険の保険料』日本年金機構
    参照:『賞与の範囲』全国健康保険協会

    また、支給回数が年3回以内でも、以下の賃金については標準賞与額の対象外です。

    • 結婚祝金
    • 弔慰金
    • 私傷病見舞金
    • 災害見舞金
    • 出張旅費
    • 宿泊費
    • 交際費
    • 退職金
    • 解雇予告手当
    • 株主配当金
    • 休業補償給付 など

    上記は労働の対価ではなく、何らかの特別な事情や出来事に対して支払われる意味合いが強いため、標準賞与額には含まれません。

    本来含まれないものも一緒に計算してしまうと、誤った金額の保険料を徴収しかねないため、十分に注意が必要です。

    標準賞与額の上限

    標準賞与額には上限が定められており、超過した分については保険料を支払う必要はありません。ただし、健康保険と厚生年金保険では、それぞれ上限額が異なるため注意しましょう。

    健康保険の上限は573万円(年)

    健康保険の標準賞与額の上限は、年573万円です。毎年4月1日から翌年3月31日までを一区切りとし、その年度ごとの累計額で判断します。

    例として、7月と12月にそれぞれ300万円ずつ賞与を支給した場合を考えてみましょう。7月に支給する300万円には健康保険料がかかりますが、12月に支給する300万円のうち超過分の27万円に対しては天引きの必要はありません。

    一方、3月と4月に300万円ずつ賞与を支給する場合は、年度をまたいでいるので、それぞれ全額に健康保険料がかかります。

    参考:『賞与の範囲』全国健康保険協会

    厚生年金保険の上限は150万円(月)

    厚生年金保険の標準賞与額の上限は月150万円です。健康保険とは異なり、月ごとに上限が設定されている点に注意します。

    厚生年金保険の上限は年度の区切りに関係なく、月ごとの支給額が150万円以内であれば全額に保険料がかかります。たとえば、6月と12月にそれぞれ150万円を支給したら、その全額が保険料徴収の対象です。

    一方、7月と12月にそれぞれ300万円ずつ賞与を支給する場合は、どちらの月も150万円までが保険料の対象で、残りの150万円にはかかりません。

    また、通常の会社では考えられませんが、1か月に2回に分けて賞与を支給する場合も、月ごとに合計額を考慮します。たとえば、7月の第2週に100万円、第4週に80万円を支給した場合、超過分の30万円は保険料の対象外となります。

    参考:『厚生年金保険の保険料』日本年金機構

    標準賞与額が上限を超えた場合どうする?

    健康保険の上限である年573万円を超えて賞与を支給したら、管轄の保険者に「健康保険標準賞与額累計申出書」を提出しなければならない場合があります。

    健康保険標準賞与額累計申出書は、被保険者(従業員)から年間の賞与支給額が上限の573万円を超える旨の申告があったときに、会社が提出する書類です。

    ただし、年度の途中で転職してきた従業員以外については、申出書の提出は必要ありません。転職して同一年度内に複数事業所で被保険者期間があり、それぞれの賞与支給額の合計が上限に達する場合に必要な書類であるためです。

    たとえば、年度の途中で転職してきたAさんに対して、12月に賞与200万円を支給したとします。Aさんが前の会社で同年度内に賞与400万円を支給されていた場合は、累計額が600万円となるため申出書の提出が必要です。しかし、会社側は前の会社で支給された賞与額を把握できないので、被保険者からの申し出に基づいて提出します。

    なお、申し出のあと、つまり上限を超えたあとに、賞与を支給する際は、再度申出書を提出しなければなりません。

    参照:『年間の標準賞与額の累計額が573万円を超えたとき』日本年金機構

    標準賞与額を基礎とする保険料の計算

    続いて、標準賞与額に基づく保険料の計算方法を解説します。

    賞与にかかる保険料は、「標準賞与額×保険料率」の式で計算します。健康保険と厚生年金保険では保険料率がそれぞれ異なるため、注意しましょう。

    本記事では、以下のケースを例に取り上げて保険料を計算します。

    東京都 Aさん(協会けんぽに加入)
    夏のボーナス43万5,980円
    冬のボーナス45万5,060円

    1,000円未満は切り捨てて考えるため、標準賞与額はそれぞれ以下の通りです。

    標準賞与額
    夏のボーナス43万5,000円
    冬のボーナス45万5,000円

    健康保険の計算例

    健康保険の保険料率は、加入する保険者(運営母体)によって異なります。協会けんぽでは、都道府県によっても保険料率が異なるので注意しましょう。

    たとえば、協会けんぽにおける2024年度の東京都の保険料率は9.98%です。先ほど例に挙げたAさんの賞与に対する保険料は、以下の通り計算します。

    夏のボーナス

    43万5,000円×9.98%=4万3,413円

    冬のボーナス

    45万5,000円×9.98%=4万5,409円

    健康保険料は労使折半です。そのため、実際には上記で算出された金額の半額を従業員の給与から徴収します。

    夏のボーナス

    4万3,413円÷2=2万1,707円(50銭を超える分は切り上げ)

    冬のボーナス

    4万5,409円÷2=2万2,705円(50銭を超える分は切り上げ)

    参照:『令和6年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます』全国健康保険協会

    参照:『保険料の計算方法について』日本年金機構

    厚生年金保険の計算例

    厚生年金保険の保険料率は、全国一律18.3%で固定されています。そのため、Aさんの賞与に対する保険料は以下の通り計算します。

    夏のボーナス

    43万5,000円×18.3%=7万9,605円

    冬のボーナス

    45万5,000円×18.3%=8万3,265円

    健康保険料と同様、厚生年金保険料は労使折半です。そのため、実際には上記で算出された金額の半額を給与から徴収します。

    夏のボーナス

    7万9,605円÷2=3万9,803円(50銭を超える分は切り上げ)

    冬のボーナス

    8万3,265円÷2=4万1,633円(50銭を超える分は切り上げ)

    参照:『厚生年金保険料額表』日本年金機構

    標準賞与額と標準報酬月額の違い

    健康保険料や厚生年金保険料は、毎月の給与に対してもかかります。給与の保険料を計算する際に使用するのが、標準報酬月額です。標準賞与額と同様、毎月の給与の保険料は「標準報酬月額×保険料率」で計算します。

    標準報酬月額は、毎月の給与を1~50の等級(厚生年金は1~32の等級)に区切ってあらわしたものです。

    たとえば、2024年度の東京都における保険料額表にあてはめると、報酬月額が39万5,000円~42万5,000円の場合は、すべて標準報酬月額41万円として計算します。

    参照:『令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表

    また、通常、標準報酬月額は4月から6月までの3か月間の給与の平均額をもとに算定します。標準賞与額と標準報酬月額の違いをまとめると、以下の通りです。

    用途算定方法算定のタイミング
    標準賞与額賞与に対する社会保険料の計算1,000円未満を切り捨てる支給月ごとに算定
    標準報酬月額月給に対する社会保険料の計算1~50(厚生年金は1~32)の等級に当てはめる4月から6月の実績をもとに年1回算定

    年4回以上賞与を支給したら標準報酬月額に含める

    名目上は「賞与」「ボーナス」などであっても、年4回以上支給した報酬などは標準報酬月額に含めます。

    年4回(春夏秋冬)ボーナスを支給している企業は、標準賞与額ではなく、標準報酬月額の対象とします。その場合、標準報酬月額の定時決定の際、賞与額を一定のルールに基づいて各月の報酬に加算する処理が必要です。

    標準賞与額決定通知書とは

    従業員に賞与を支給したときは、賞与支払届を日本年金機構へ提出する必要があります。届出が受理されると交付されるのが、標準賞与額決定通知書です。通知書が届いたら、会社で大切に保管しておきましょう。

    また、決定した標準賞与額を従業員に通知することも大切です。

    標準賞与額を理解して正しく保険料を納付(まとめ)

    標準賞与額は、賞与にかかる社会保険料の計算に用いる基準額です。税引き前の賞与額から1,000円未満の部分を切り捨てて算定し、それぞれの保険料率を乗じることで保険料を計算します。

    社会保険料を正しく納めるためには、標準賞与額を正確に計算することが大切です。

    標準賞与額の取り扱いを誤ると、社会保険料の計算だけでなく、年末調整にも影響が及ぶ恐れがあります。社会保険の仕組みに対する理解を深め、給与額や徴収額を正しく計算しましょう。

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