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年末調整が必要な外国人とは|手続きの方法や注意点などを解説

年末調整は、従業員が外国人の場合、通常の対応と異なる対応が必要です。本記事では、対象となる外国人について解説し、年末調整の手順や注意点などをご紹介します。外国人の年末調整について知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

年末調整が必要な外国人とは|手続きの方法や注意点などを解説
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    年末調整の概要

    「年末調整」は、本来徴収すべき所得税の1年間の総額を再計算し、源泉徴収した合計額とあらためて比較することで、過不足金額を調整する手続きです。源泉徴収で天引きされる所得税額は、あくまで概算のため、所得税を納めすぎたときは還付され、不足があれば追加徴収されます。

    基本的に、会社勤めで源泉徴収があり「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人が年末調整の対象です。正社員だけでなく、契約社員やパート、アルバイトも含まれ、雇用形態にかかわらず行う必要があります。

    年末調整の対象となる外国人

    年末調整は、原則として、国内居住者である外国人も対象となります。具体的には、国内で働く外国人従業員で下記の条件に当てはまる場合、年末調整が必要です。

    国内に住所がある、または1年以上居住している(居所がある)
    給与は海外払いだが、国内に送金するなど国内で所得がある(駐在員など)
    年の中途まで国内に勤務し、そのあと海外に転勤している
    (ただし、出国するまでの所得については年末調整の対象)

    外国人と通常の年末調整手続きの違い

    外国人と通常の年末調整手続きの違いについて「社会保険料などの控除」「扶養家族が国外に居住している場合」「租税条約による特例が適用される場合」の3つの点からご紹介します。

    社会保険料などの控除

    外国人と通常の年末調整手続きの違いとして「社会保険料などの控除」が挙げられます。出身国の社会保険制度を利用していたり、生命保険や地震保険などを外国企業と契約していたりする場合は、日本で所得税の控除を受けることはできません。

    扶養家族が国外に居住している場合の対応

    外国人の国外扶養家族についても、通常の年末調整手続きとの違いの一つです。国外に居住している家族の「扶養控除」を受ける際は「親族関係書類」「送金関係書類」「外国送金依頼書の控えまたはクレジットカードの利用明細書」などを準備する必要があります。

    租税条約による特例が適用される場合の対応  

    外国人と通常の年末調整手続きの違いとして「租税条約による特例」が適用される点も挙げられるでしょう。外国人従業員の出身国と日本との間で租税条約が締結されているケースでは、所得税などが免除されることがあります。

    ただし、免除を受けるときは、雇用主を通して税務署宛に「租税条約に関する届出書」を提出しなくてはいけません。

    区分による納税の有無

    納税者は「居住者」「非永住者」「非居住者」の3つの区分に分けられ、外国人への所得税の課税はここで判断されます。それぞれの詳細について解説します。

    居住者

    区分の一つとして、居住者が挙げられます。居住者とは、日本国内に生活の拠点である住所を持っている人、または国内に1年以上居住している人を指します。居住者は、国内外のすべての源泉所得について課税されるため、年末調整が必要です。ただし、日本国内に生活の拠点である住所を持っているものの、その住所に住むことが1年未満になるとわかっている場合は、居住者に該当しません。

    非永住者

    非永住者も、区分の一つです。日本国籍を持たない居住者の中で、過去10年において住所または居所を持っている期間が5年以下の人が、非永住者にあたります。国内と海外で支払われた源泉所得のうち、国内に送金されるなど国内で得た所得には課税され、海外の所得で国外に保有される分については課税対象外です。非永住者の場合、年末調整が必要となります。

    非居住者

    居住者と非永住者のほかに、入国後1年未満で日本国内に住所を持たない人を指す、非居住者という区分もあります。非居住者は、国内の源泉所得のみに課税され、給与の源泉徴収税額は一律20.42%を、その月の翌月10日までに国に納付します。源泉徴収だけで課税額が確定する仕組みのため、年末調整は必要ありません。

    外国人の年末調整の手順

    外国人の年末調整を行う際の手順についてご紹介します。

    1.区分を確認する

    まず、外国人従業員の区分を確認することから始めます。区分には、居住者と非永住者、非居住者の3種類があり、それぞれ必要な手続きや書類が異なります。そのため、しっかり確認しておくことが重要です。

    2.控除の有無などを確認する

    次に、控除の有無などを確認します。国外居住親族がいる場合は扶養控除を受けることが可能です。また、保険料控除は、外国政府や外国企業との契約については控除されません。控除に関しては一人ひとりのケースで異なるため、注意が必要です。

    3.必要な書類を用意する

    外国人従業員の区分や控除について確認できたら、必要書類を用意しましょう。年末調整手続きに欠かせない書類のほか、各種控除を受けるためにも書類が必要です。

    必要な書類の詳細について、紹介します。

    給与所得者の扶養控除等(異動)申告書

    「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、年末調整の手続きにあたり、外国人従業員から雇用主に提出される主な書類の一つです。

    給与の支払いを受ける人(給与所得者)が、その給与について配偶者控除や扶養控除、障害者控除などの控除を受けるための手続きの際にも必要です。

    給与所得者の配偶者控除等申告書

    「給与所得者の配偶者控除等申告書」も、年末調整の手続きにおいて、外国人従業員から雇用主に提出される書類です。

    また、配偶者に関連する控除を受けるためにも必要となります。配偶者がいる場合、要件に該当すれば、所定の事項を記入して提出することで配偶者控除や配偶者特別控除を受けられます。

    所得金額調整控除申告書

    「所得金額調整控除」は、高所得者の中でも、養育すべき子どもや特別障害者がいるケースにおいて税負担を減らすための制度です。この控除を受けるために必要な「所得金額調整控除申告書」も、年末調整の手続きの際に外国人従業員が提出しなくてはいけない書類の一つといえます。

    所得金額調整控除の対象となる条件は、下記の通りです。

    本人の給与の収入金額が850万円超えている
    以下のいずれかを満たすこと
    ・本人が特別障害者
    ・同一生計配偶者が特別障害者
    ・扶養親族の1人が特別障害者
    ・扶養親族の1人が23歳未満

    参考:『所得金額調整控除』 国税庁

    親族関係書類

    外国人従業員の家族が国外に居住しており、その家族の扶養控除を受けるときに必要な書類として、「親族関係書類」が挙げられます。

    親族関係書類とは、本人と国外に居住中の家族が明確に親族であることを証明する書類のことで、具体的に下記のような書類が該当します。

    戸籍の附票の写しそのほかの国または地方公共団体が発行した書類、および国外居住親族のパスポートの写し
    外国政府または外国の地方公共団体が発行した書類
    (国外居住親族の氏名、生年月日および住所または居所の記載があるもの)

    ただし、戸籍の附票の写しやパスポートの写し以外は「原本」でなくてはいけない点に注意が必要です。

    送金関係書類

    「送金関係書類」も、家族が国外に居住していて、扶養控除を受ける場合に必要となる書類です。この書類によって、本人が国外に住んでいる家族の生活費・教育費に充てるために送金したことが証明できます。

    具体的な送金関係書類は、下記の通りです。

    金融機関の書類またはその写しで、その金融機関が行う為替取引により本人から国外居住親族に支払いをしたことがわかる書類
    クレジットカード発行会社の書類またはその写し、本人が作ったクレジットカードの家族カードなどを使用して国外居住親族が買い物をしたことがわかるものや「利用明細」のように使用した日付のわかるもの

    また、送金関係書類は、原本でなくコピーでも問題ありません。

    外国人の年末調整における注意点

    外国人の年末調整では、下記の2点に注意する必要があります。

    非居住者の外国人は年末調整が必要ない

    外国人の年末調整における注意点として、非居住者の外国人は年末調整の必要がないことが挙げられます。雇用している外国人が国外に居住している場合は非居住者に該当するため、給与の支払い時に、金額の20.42%の税率を乗じて源泉徴収を行います。

    税率が一定であり、給与を支払うごとに税額が確定することから、年末に差額が発生しません。よって、年末調整の必要がないといえます。

    特定の条件で扶養控除などを受けられる

    外国人は特定の条件で扶養控除などを受けられる点も、注意すべきポイントです。扶養控除の範囲は、民法で定められた親族の範囲である6親等内の血族と配偶者、3親等内の姻族とされています。

    外国人従業員は、国外扶養親族について控除を受ける場合、申請する扶養家族が親族であることを証明する「親族関係書類」と、本人がその親族を養っている証明に必要な「送金関係書類」を、給与の支払い者に提出または提示しなくてはいけません。

    また、提出または提示のタイミングは「親族関係書類」は「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出するとき、「送金関係書類」は年末調整が行われるときです。

    特定の条件を満たすと控除を受けられない

    国外扶養親族への扶養控除の適用は、年齢30歳以上70歳未満の非居住者で、以下のうちいずれかの条件に当てはまらない場合は受けられないので注意しましょう。

    • 留学により国内に住所および居所を有しなくなった者
    • 障害者
    • その適用を受ける居住者からその年において生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者

    参考:『国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係』 国税庁
    参考:『税制改正等の内容』 国税庁 

    まとめ

    外国人従業員の年末調整は、国内に住所がある、1年以上居住しているなど、特定の条件に当てはまると対象となります。また、社会保険料などの控除や国外に扶養家族がいる場合、租税条約の特例が適用される場合のように、通常の対応と異なる点も多いです。

    外国人は「居住者」「非永住者」「非居住者」の3つの区分に分けられるため、どれに該当するのか、さらに控除の有無についても確認しておくことも重要です。加えてさまざまな書類が必要となるので、あらかじめチェックしておきましょう。

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