自治体DXの先進事例15選|最先端技術から働き方やDX人材確保までユニークな取り組みを紹介
自治体DXの推進が政府主導で進められる中、多くの自治体で先進的な事例も見られてきました。「ほかの自治体の先進事例が知りたい」「自治体DXを何から始めればいいかわからない」という行政担当者も方も少なくないでしょう。
本記事では、自治体DXの先進事例をまとめました。最先端技術から働き方、DX人材の確保まで、15のユニークな取り組みをご紹介しています。自治体DXの参考にぜひご活用ください。
自治体DXをおさらい
自治体DXとは、デジタル技術を活用してアナログな行政サービスを向上させていくことです。デジタル化によって、住民の利便性の向上と行政サービスの業務効率化を目指します。
自治体DXが求められている背景として、少子高齢化による労働力人口の減少、高齢化社会での行政サービスに対するニーズの増加があります。職員1人当たりの業務量が増加している中、行政サービスの利便性向上を求める声は高まっています。
さらに感染症への対応では、自治体間で横断的にデータを活用できないという課題も浮き彫りになりました。
このような状況の中、自治体DX推進は各自治体において急務となっています。
自治体DXの先進事例【先端技術編】
ここからは自治体で進められているDXの先進事例について、種類に分けて紹介していきます。まずは先端技術を活用した自治体DXの先進事例を4つご紹介します。
神奈川県藤沢市(ドローンで海岸パトロール)
神奈川県藤沢市では、ドローンを活用した海岸パトロールを活用しています。
ドローンに搭載したカメラとマイクを通してライフセーバーのパトロール活動を支援し、ライフセーバーが少ないときも海岸の安全確保に努めています。その結果、多くのライフセーバーから「人の目や声が届かない場所も監視できた」と有効性を実感する声が上がっています。
参考:『「夏期海岸藤沢モデル2020」が本格的にスタートします!』
鳥取県(ICT活用で生活習慣病対策)
鳥取県では、最新のICT機器やウェアラブル端末を活用した住民の生活習慣病対策を行っています。
健康状態が相対的に悪い40〜60代の働き盛り世代に対して、3か月間バイタルデータのセルフモニタリングと生活習慣改善指導を行い、糖尿病の発症を予防するプログラムを実施しています。
ICT機器やウェアラブル端末を活用して、参加者の負担や制約を取り除くことで、高い継続率を維持しているそうです。
愛媛県西条市(遠隔合同授業)
愛媛県西条市では、ICTを活用して小学校での遠隔合同授業を行っています。
少子化による小学校の統廃合が全国的に進むなか「小学校は地域の活力を維持するために欠かせない存在」との理念から、西条市は小学校の統廃合をしない方針を掲げています。この方針を維持するために、ICTを活用した遠隔合同授業を取り入れました。
遠隔合同授業、教育現場での反応もよく、地域間格差を埋められるという期待の声も上がっているそうです。
参照:『人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業』
宮崎県都城市(LINEでの問い合わせ対応)
宮崎県都城市では、総合政策課の問い合わせ対応業務にLINEのチャット機能を導入して業務効率化をはかっています。
問い合わせの6割を占める電話において、相談者は開庁時間内に電話をかける必要があり、自治体職員は折り返しの時間を考慮して、つながるまで何度もかけ直す必要がありました。
そこでLINEのチャットツールを導入し、双方が時間を気にせずやりとりできるようにしました。写真やURLも簡単に共有でき、使い勝手のよいLINEを積極的に活用しています。
自治体DXの先進事例【ユニーク事例編】
続いて自治体DXのユニークな先進事例を4つご紹介します。
北海道天塩町(相乗りサービスの空き状況の見える化)
北海道天塩町では、『notteco』というマイカー相乗りサービスを行っています。具体的には、病院などのインフラがある稚内に車で移動予定の住民と、乗せてほしい住民をマッチングさせる仕組みです。バスや鉄道代と比べて利用料金が安いため、天塩町にとって必要不可欠なインフラとなっています。
『notteco』では、ICTを活用し、移動予定のマイカーの空席を「見える化」し、マッチングを強化しているそうです。
参照:『相乗り相手が見つかる国内最大ライドシェアサービス「notteco」』
愛知県(高齢者が高齢者を支援する仕組み)
愛知県では、デジタルの教え手となる高齢者を育成し、高齢者が高齢者を支援する仕組みを整えています。
市町村から推薦を受けた高齢の候補者に対し、愛知県が無料で講習を行い「高齢者デジタルサポーター」として育成します。高齢者デジタルサポーターは、市町村の依頼を受け、デジタルに慣れていない高齢者に対してスマートフォンやマイナンバーカードの利用方法を教えています。
高齢者同士ということで、同じ目線で教えられるため、効果が出ているようです。
参照:『高齢者デジタルサポーター』
参照:『高齢者デジタルサポーター事業 テキスト』
広島県(スタートアップ企業とDX推進)
広島県は、AIやIOTなどに強いスタートアップやベンチャー企業を支援し、連携してDXを進めています。
AI、IoT、ビッグデータ等インダストリー4.0や次世代技術のノウハウと技術を持っている広島県内外の企業や人材が、共創で試行錯誤できるオープンな実証実験の場として、広島県を丸ごと実証フィールドにしているそうです。
これまで、農林水産、観光、交通、製造など、幅広い分野で地域課題の解決を目指して実証実験が実施され、その実証データを公開しています。さらにその次のステップとして、すでに顕在化している、もしくはこれから顕在化すると思われる課題を解決するための実証実験プログラムをスタートさせています。
参考:『ひろしまサンドボックス』
参考:『D-EGGS PROJECT byひろしまサンドボックス』
三重県(地方公共団体版のデジタル庁を新設)
三重県は「三重県版デジタル庁」として、2021年4月にデジタル社会推進局を設立しています。
外部人材の最高デジタル責任者(CDO)を全国で初めて常勤職として迎え入れ「誰もが住みたい場所に住み続けられる三重県」をビジョンに掲げ、県民がやってみたいことを実現する「あったかいDX」を推進しています。
具体的には「スマート自治体」の実現を目指して、AI、 RPA、ペーパーレス化等による行政手続きの電子化など県政のDX化を進めています。ほかにも「空飛ぶクルマ」を活用して交通・観光・防災・生活等の様々な地域課題を解決する計画も進めています。
参考:『デジタル社会推進局』
参考:『「三重県 デジタル社会の未来像」を公表!』
自治体DXの先進事例【職員の働き方編】
続いて、職員の働き方に関する自治体DXの先進事例を3つご紹介します。
静岡県掛川市(サテライトオフィス勤務)
静岡県掛川市では、合併して空きが出た町村の会議室をサテライトオフィスとして活用しています。
サテライトオフィスができたことで、それまで本庁のみだったオフィスが計3か所となり、職員の移動時間の削減や業務の効率化に役立っています。職員は申請をすればサテライトオフィスでテレワークを行うことができ、庁内ネットワークへもアクセス可能なため、自席と同じネットワーク環境で仕事ができます。
空きPCを活用するなど、空いている施設や設備を利用しているため、経費を抑えながらサテライトオフィス勤務を実現しました。
参照:地⽅公共団体におけるテレワーク推進のための⼿引き』総務省(令和3年4月)
京都府(ペーパーレス化&テレワーク推進)
京都府では、紙の出勤簿を廃止してペーパーレス化を実現し、テレワークを進めています。
ペーパーレス化のきっかけは感染症の流行です。テレワークを実施するにあたって、職員の勤怠管理をオンライン化する必要がありました。そこでシステム上で勤怠を一元管理するシステム改修を実施し、ペーパーレス化を実現しました。
参照:『自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】』総務省(令和3年7月7日)
和歌山県(ワーケーション推進)
和歌山県では、ワークとバケーションを組み合わせた「ワーケーション」を推進しています。
以前より和歌山県は、ワーケーション環境が整っていることを利点に、白浜町を誘致拠点として県外企業の誘致に力を入れています。白浜町が選ばれたポイントは「ネット環境が整っている」「空路・陸路の交通網が整備されている」「観光スポットが多い」という点です。
さらにITビジネスオフィスの整備や、地域住民との交流、農業体験なども多方面の整備を進めているそうです。
参照:『WAKAYAMA WORKATION PROJECT』
参照:『和歌山ワーケーションプロジェクト』2021年8月 和歌山県情報政策課
自治体DXの先進事例【人材育成・確保編】
最後に、人材育成や確保に自治体DXを活用した先進事例を4つご紹介します。
栃木県(DX人材を育てる職員研修)
栃木県では、自治体DXに実績のある企業と連携して、役職に応じたDX研修を実施しています。具体的には、幹部職員に対してはトップセミナー、その他職員に対してはマインドセットのための動画研修を設計しています。
さらに、各部署に「DX推進員」を置き、DXへの具体的な取り組み手法を学ぶためのワークショップも行っています。
参照:『自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】』総務省(令和3年7月7日)
三重県(スマート人材の育成)
三重県では、フィールドワークを通じてスマート人材の育成に取り組んでいます。
庁内の若手職員20人に、AI・RPA導入プロジェクトやスマート農業・漁業のフィールドワークの機会を提供しています。さらに選抜者を「スマート改革スペシャリスト」に任命し、担当業務におけるスマート改革やDX推進の取り組みを促進しています。
参照:『自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】』総務省(令和3年7月7日)
参照:『スマート人材育成事業最終報告会』(令和3年2月22日)
神奈川県横浜市(採用試験区分にデジタル職を設置)
神奈川県横浜市では、新卒・中途採用ともに、デジタル職の採用枠を設けています。
採用後は、行政のデジタル化を担う存在として、ICT利活用施策の企画立案や庁内の各種システムの開発・運用に従事することが求められています。
受験資格は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施するIT関係の資格18種、いずれかに合格していることなどが挙げられています。
参照:『自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】』総務省(令和3年7月7日)
参照:『令和4年度横浜市職員(社会人)採用試験 受験案内』
山梨県甲府市(システム部門のOBを採用)
山梨県甲府市では、情報システム関連部門を経験した県庁職員OBをフルタイムの任期つき職員として採用し、デジタル推進課に配属しています。
県庁職員のOBは、地域の特性や自治体業務に詳しいため、ミスマッチが起こりにくいことが利点といえます。また、県や県内市町村とのパイプ役としての役割も担っています。
参照:『自治体DX推進手順書参考事例集【第1.0版】』総務省(令和3年7月7日)
自治体DXの取り組みポイント
ここまで自治体DXの先進事例を多数ご紹介してきました。これらの自治体はどのような点に気をつけて自治体DXを進めてきたのでしょうか。
これから自治体DXに本格的に取り組む自治体に向けて、ポイントをまとめました。
- 長期的な計画立案と取り組みの継続
- DX化への理解と予算確保
- 組織全体での横断的な推進体制構築と部署連携
- デジタル人材の確保と育成
- 職員のITリテラシー向上とセキュリティ対策
- BPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の取り組み
- 適切なシステムの導入ペールイエローなし
以上のポイントを押さえて、自治体DXに取り組む目的を明確にしつつ、進めていくといいでしょう。自治体DXそのものが目的にならないようにするのが重要です。
まとめ
自治体DXと一口にいっても、自治体によって課題も異なるため、取り組み方も変わってきます。労働力人口の減少や自治体サービスへのニーズが高まっているなか、本記事で紹介した自治体DXの先進事例を参考に、それぞれの自治体に適した体制の構築を進めてみてはいかがでしょうか。
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