自治体DXとは【わかりやすく】解決できる課題と推進手順や事例を解説
自治体DXとは、自治体がITやテクノロジーを活用して業務効率化や生産性向上をはかり、住民に対する行政サービスの維持と向上を目指す取り組みのこと。昨今叫ばれているDX推進は、自治体でも急務とされています。
本記事は、主に公務員の方に向けて、自治体DXの基礎や先進事例、自治体DXによって解決できる課題について解説しています。推進ポイントや手順もご紹介していますので、ぜひご活用ください。
自治体DXとは
自治体DXの基礎について解説します。
そもそもDXとは
そもそもDXとはDigital Transformationの略語で、直訳すると「デジタルによる変容」です。デジタル技術によって生活やビジネス環境が変わることをいいます。
自治体DXとは
自治体DXとは、現在のアナログ的な体制を改善するために自治体においてDXを推進することです。デジタル技術を用いて「住民の利便性を向上させること」「業務効率化による行政サービスの向上」を目指します。
総務省による自治体DXの定義
総務省では自治体DXを『自治体DX推進計画』の中で以下のように定義しています。
デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会 〜誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化〜
引用:『自治体デジタル・トランスフォーメーション (DX)推進計画』
自治体DXに期待されること
自治体DX推進によって、主に次の4点が期待されています。
住民の利便性の向上
自治体DX推進によって、住民の利便性を向上させることが期待できます。時間や手間のかかるアナログな行政手続きのオンライン化などが一例です。住民からの申請数が多い業務から着手するなど、住民目線で取り組むことが重要です。
業務効率化
デジタル技術やAIの活用で業務効率化をはかることができます。業務プロセスの見直しや効率化によって行政サービスの改善が進み、人口減少による労働力不足を補うことができるでしょう。
行政サービスの向上
自治体DXによって行政サービスの向上が期待できます。業務効率化が進み、限られた労働力を行政サービスの向上につながる業務に振り分けることができます。
新たな価値創出
自治体DXによって得られるデータが源泉となって、新たな価値が創出されます。データを活用して自治体間で連携をはかることで、新たな民間のデジタル・ビジネスを生み出すことにもつながります。
自治体DX推進計画とは
自治体DX推進計画とはどのようなものでしょうか。
自治体DXで取り組むべき内容をまとめたもの
自治体DX推進計画とは、自治体が自治体DXにおいて具体的に取り組むべき内容や各省庁による支援策をまとめたものです。4回にわたり開催した「地方自治体のデジタルトランスフォーメーション推進に係る検討会」での議論を踏まえて策定されました。
自治体DX推進計画の軸
自治体DX推進計画の軸となっているのが、ガバメントクラウド(Gov-Cloud)です。
ガバメントクラウドは国や各自治体が共同で利用できるクラウドサービスです。1つのクラウドに共通化・標準化した行政サービスを構築し、保守・監視運用できます。自治体DXを推進するための基盤となるものです。
なぜ自治体にDXが必要なのか
自治体にDXの必要性、ここまで注目を集めている理由について解説します。
自治体DXが今求められているのは、住民に対するサービスの利便性向上、アナログな業務のデジタル化という課題を解決するためです。
少子高齢化にともなう人口減少により、多くの地方自治体でインフラサービスや公共交通サービスの提供が難しくなってきます。また将来的には地方公務員も人手不足が懸念されています。
こういった課題を解決するために、最新のデジタル技術の活用によって自治体DXを進めていくことが必要とされているのです。
自治体DXで解決できる課題
それでは、自治体DX推進によって、どのような問題を解決できるのでしょうか。
労働力人口不足への対応
自治体DXにより、労働力人口不足を補うことができます。AIやRPAといったデジタル技術を活用することで業務効率化をはかれ、少ない労働力で効率的に業務を回せるようになるでしょう。
アナログ文化の行き詰まり
自治体に根強く残るアナログ文化の改善が期待できます。これまでの紙ベースの行政手続きや対応業務をデジタル主体に切り替えていくことで、効率化が進みます。
デジタル人材確保・育成
自治体DXを推進することは、デジタル人材の確保、育成を進めることにつながります。DXを進めていくにはデジタル分野のプロフェッショナル人材の確保・育成が必要となります。自治体DXを進めることは、必然的にデジタル人材の確保・育成になります。
職員の業務量増加
自治体DXによって、自治体職員の業務量増加を抑えることができます。人口減少によって働き手が減っていく中、アナログな業務を続けていけば、業務量が増えていくばかりです。DX化でより効率的な業務体制になり、職員の業務量増加を抑えることができます。
多様な住民ニーズに対応
DX化により、住民一人ひとりのニーズに合ったサービスの提供が可能となります。積極的にデータを活用することで、多様なニーズに対して利便性の高いサービスを提供することができます。
感染症流行で見えてきた課題
自治体業務におけるテレワークの促進が期待されます。新型コロナウイルスによって民間企業においていち早く拡大したテレワークですが、自治体業務においてもテレワークの普及が課題となっています。
自治体DXの先進事例
実際にDXを取り入れている自治体の先進事例を3つご紹介します。
AIチャットボット
AIチャットボットとは、文字情報や音声を介して人と対話するためのプログラムのことです。窓口業務やWEBサイトでの質問対応、社内ヘルプデスクでのサポート業務など、窓口・案内業務をAIチャットボットで対応することができます。
栃木県那須塩原市では、館内案内役として4か国語に対応する『AIさくらさん』を導入しました。職員は案内業務に割いていた時間を、サービス向上のための仕事に注力できるようになっています。
地域通貨
地域通貨とは、特定の地域・コミュニティ内でのみ通用する、法定通貨と同等の価値を持つ貨幣のことです。地域通貨はその地域内で使われるtめ、地域の経済活性化が期待できます。
埼玉県深谷市では、人口減による地域経済衰退抑止のため、デジタル地域通貨『ネギー』を発行しています。ネギーはスマホなどを利用してキャッシュレス決済を行います。1negi=1円で換算し、現在使用できる店舗数は760店になっています。
RPA
RPAとはRobotic Process Automationの略語で、ロボットを使って業務の効率化・自動化をはかるものです。RPAによって人手不足の解消が期待でき、総務省では2018年から自治体へのRPA導入支援を推進しています。
広島県広島市では、RPAを活用して膨大な申請書類の処理作業を効率化しました。職員は人間でないと処理できない仕事に注力できる環境を整えています。
自治体DXの推進ステップ
自治体DXを推進するための、4つのステップを解説していきます。
ステップ0:DXの認識共有・機運醸成
DX推進の前提となる認識の共有と機運の醸成に取り組むステップです。
これからDXに着手していく自治体が取り組むべきステップとなります。「利用者目線で業務の効率化・改善等を行う」「住民の利便性の向上」を求めていく自治体DXの前提を踏まえて認識を共有します。
ステップ1:全体方針の決定
DX推進のための全体方針を決定するステップです。全体方針はDX推進のビジョンと工程表とで構成され、組織内で共有します。
ステップ2:推進体制の整備
全体方針を踏まえて、組織と人材の両面から体制を整備するステップです。組織面ではDX推進担当部門を設置したうえで、組織横断的な推進体制を構築します。
人材面ではデジタル人材の育成、必要に応じた外部人材の登用などを行います。
ステップ3:DXの取り組みの実行
関連するガイドラインを踏まえて、個別のDXの取り組みを実行するステップです。PDCAサイクル、OODAループなどのフレームワークの利用がおすすめです。
自治体DX推進手順書とは
自治体DX推進手順書とは、『自治体DX推進計画』を踏まえ、円滑にDX推進に取り組めるように具体的な方針や方法を示したものです。
次の4つの項目で構成されています。
自治体DX全体手順書 | 自治体DX推進の手順をまとめたもの |
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自治体情報システムの 標準化・共通化に係る手順書 | 情報システムの標準化・共通化に関する内容をまとめたもの |
自治体の行政手続の オンライン化に係る手順書 | 行政手続きのオンライン化についてまとめたもの |
自治体DX推進手順書 参考事例集 | DX推進の先進事例をまとめたもの |
自治体DX推進のポイント
自治体DXを推進する際にポイントとなる6点を解説します。
最適な提供価値の創出
住民にとっての最適な価値を提供することが重要です。
行政サービスの向上は自治体DXの目的の一つである行政サービス向上のため、住民の声に耳を傾けて必要なサービス改善や体制を構築します。煩雑な行政手続きを簡素化するなど、仕組みやサービスを最適化することが大切です。
小さな成功体験の積み重ね
小さな規模からでよいので、まずは施策をスタートし、小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。実際にスタートしてみることで、新たな課題が見つかったり、住民からのフィードバックを得られます。
データの蓄積と分析
DXを進める中で、生成されるデータの蓄積と分析を進めていきます。
蓄積したデータを分析し、DXの取り組みにフィードバックして改善を加えます。この繰り返しで施策をブラッシュアップしていきます。またデータの蓄積と分析に時間とエネルギーをかけすぎないようにするのがポイントです。
DX推進組織体制の構築
DXを推進するための組織体制を構築することはDX推進の土台となります。デジタル人材を確保して適材適所への配置を進め、合わせて育成計画も進めていきましょう。
自治体DXで取り組むべき6つの重点事項
自治体DX推進計画で重点的に取り組む内容として、以下の6つの施策をあげています。
自治体の情報システムの標準化・共通化
自治体ごとに構築されている情報システムを標準化・共通化します。税金・保険など基幹となる17の業務システムを共同利用できるようになり、業務の効率化・自動化が進みます。
マイナンバーカードの普及促進
政府は2022年末までにほとんどの住民がマイナンバーカードを持つことを目指しています。
デジタル化実現において、オンラインで本人確認ができるマイナンバーカードの普及は重要なポイントです。交付円滑化のため、出張申請受付や土日開庁など、交付体制の充実をはかっています。
行政手続のオンライン化
行政手続きについて、申請件数の多いものからオンライン化が進みます。直接窓口に出向く手間が省けるため、住民の利便性が向上します。国と自治体とで連携するため、情報システムの整備も進めています。
AI・RPAの利用推進
公務員の膨大な事務作業を自動化するため、AI・RPAの導入・活用が進められます。少子高齢化に伴う労働力人口減少に対応するため、AI・RPAによる業務効率化は重要な課題です。政府は自治体向けにAI・RPA導入のためのガイドブックの作成を進めています。
テレワークの推進
自治体業務におけるテレワークを推進しています。
テレワークが進むことで、職員の多様なライフステージの変化に対応できるようになります。テレワークによって、業務効率化による行政サービス向上、感染症対策など非常時における行政機能の維持にも役立ちます。
セキュリティ対策の徹底
個人情報や機密情報の漏洩防止のため、セキュリティ対策が進められます。
オンライン化が進むと情報漏えいのリスクも高まるため、セキュリティ対策の強化も必要となってきます。セキュリティポリシーの見直し、民間のクラウドサービスへの移行などの施策を進めています。
自治体DXとともに取り組むべきこと
自治体DXを推進するにあたって、同時に対応すべきことが2点あります。
地域社会のデジタル化
すべての地域がデジタル化のメリットを享受できるよう、地域社会のデジタル化を推進することを目指します。光ファイバーや5Gなどの情報通信基盤の整備が求められます。
取り組み事例 |
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・地域におけるデジタル人材の育成・確保 ・中小企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)支援 |
デジタルデバイド対策
デジタル化の恩恵をすべての人が受けられるよう、情報格差をなくすための取り組みです。年齢、性別等によらず、誰も取り残さない形でデジタル化を実現できるような環境整備が必要とされています。
主な支援策 |
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・高齢者がオンライン手続きやサービスを利用する際に、助言・相談等を行う事業者への補助 ・講座開催やアウトリーチ型の相談対応など、地域住民へのきめ細かなデジタル活用支援 |
自治体DXの推進に対する補助金
自治体DXを導入・推進する自治体には、補助金を利用することができます。補助率や補助対象など、条件によって変わってくるので公募要項をよく読み込んで活用しましょう。
IT導入補助金
ITツール導入のための経費の一部を補助する制度です。経費の一部を補助することで業務効率化、売上アップをサポートすることが目的です。
対象事業者は中小企業と小規模事業者で、補助率や上限・下限金額など、区分によって分かれています。商工会などの支援機関に相談することもできます。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
新商品開発・新サービス導入など経営革新のための設備投資等を支援する補助金制度です。対象事業者は主に中小企業や小規模事業者で、生産性の向上が目的です。
従業員規模によって補助上限額が変わります。一般型、グローバル展開型、ビジネスモデル構築型など、区分が分かれています。
事業再構築補助金
新型コロナを背景に、業態転換や新聞屋への展開を支援する補助金制度です。対象事業者は新型コロナの影響を受けた中小企業、中堅企業などです。従業員数などによって補助金額や補助率は変わってきます。
まとめ
人口減少が避けられない日本において、自治体DXは避けては通れないもの。補助金や民間のサポートも活用しながら、それぞれの自治体に合ったDX構築に取り組んでいきましょう。
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