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自治体でChatGPTはどう使う? リスクは? 活用事例とメリット・デメリットを解説

自治体でChatGPTはどう使う? リスクは? 活用事例とメリット・デメリットを解説

近年注目を浴びるChatGPT。自然言語処理の技術により大量データから学習し、人間のような対話を生成できるAI言語モデルとして多くの人が活用しています。

自治体がChatGPTを適切に活用できると、行政の効率や市民サービスの向上が期待できます。しかし一方で、リスクや課題も存在するため、慎重な検討が必要です。

本記事では、自治体がChatGPTをどのように利用できるかについて、その活用事例やメリット・デメリットについて解説します。

目次アイコン 目次

    ChatGPTの活用に適した自治体業務

    ChatGPTは自治体の業務でも活用できます。どのようなシーンで利用できるのでしょうか。

    • 資料の作成・編集・要約
    • 情報の収集
    • 問い合わせへの対応
    • アイデアの壁打ち・ブレインストーミング
    • エクセル関数の処理

    資料の作成・編集・要約

    ChatGPTは、大量のテキストデータを学習し、特定のトピックに関する情報を生成できます。そのため、自治体の職員が資料を作成・編集・要約する際にも有用です。たとえば、法令や政策に関する要点を素早くまとめたり、報告書の要約を生成したりすることが可能です。

    情報の収集

    ChatGPTは、自治体が業務で必要とする統計データなどを素早く検索、要約できます。そのため、行政の法令や会議時事録などの情報を迅速にまとめられるでしょう。

    問い合わせへの対応

    ChatGPTは、自然言語理解の能力を持っているのが特徴です。そのため、住民からの問い合わせや疑問への対応に適しています。自治体のホームページやポータルサイトに組み込むことで、一般的な質問への自動応答が可能であり、住民に対して効率的に情報が提供できるでしょう。

    アイデアの壁打ち・ブレインストーミング

    ChatGPTは、対話形式でアイデアを提示できます。自治体のプロジェクトや課題に関するブレインストーミングセッションの際に、ChatGPTと対話することで、新たなアイデアや解決策などが得られる可能性があります。

    エクセル関数の処理

    ChatGPTは、数学的な処理やエクセル関数の使用に関しても高い理解力を持っています。質問に即時に答えてくれるため、数式の解釈や複雑なエクセル関数の説明、データの整形に関する業務を効率化できるでしょう。

    ChatGPTの活用に不向きな自治体業務

    自治体におけるChatGPTの活用は、すべての業務に適しているわけではありません。使用に適さない業務には次のようなものがあります。

    法律など高度な専門知識が必要な業務

    ChatGPTは大規模かつ一般的なデータから学習します。そのため、高度で専門的な法律知識を必要とする業務での活用には不向きです。法的な文書や契約書の解釈など、深い専門知識が必要な場合は、その道の専門家の方がより正確で適切なアドバイスを提供できるでしょう。

    個人情報など機密性の高い情報を扱う業務

    ChatGPTは学習したデータの中に含まれる情報をもとに回答を生成します。個人情報など秘匿性の高い情報を学習させることは、プライバシーやコンプライアンスの観点から問題が指摘されています。また、セキュリティも不安視されており、情報漏えいのリスクをともなうため、学習させる内容には細心の注意が必要です。

    自治体のChatGPT活用事例【3選】

    ChatGPTを業務に活用する自治体は増えています。有名な3つの自治体の活用事例を紹介します。

    神奈川県横須賀市

    神奈川県横須賀市は全国で初めてChatGPTを業務にテスト導入した自治体です。テスト利用した職員の約80%が「業務の効率向上を感じた」と回答し、文書作成にかかる時間が1日あたり最低でも10分短縮できると試算されました。

    これを受けて同市は、外部の専門家を配置し、本格的な導入を決定しました。職員のスキル向上にも取り組み、ほかの自治体に導入・活用のノウハウを伝える研修も計画しています。

    また、活用範囲は入力情報を二次利用されない方式で、文章や要約の作成、誤字脱字のチェックなどに限定しています。機密情報や個人情報は取り扱わないルールを徹底し、情報の安全な取り扱いに努めているようです。

    参考:『自治体初!横須賀市役所で ChatGPT の全庁的な活用実証を開始(2023年4月18日)』神奈川県横須賀市(報道発表資料)
    参考:『ChatGPTの全庁的な活用実証の結果報告と今後の展開(市長記者会見)(2023年6月5日)』神奈川県横須賀市(報道発表資料)

    茨城県

    茨城県では、ChatGPTとAI音声対話アバターを組み合わせ、自治体公認VTuber『茨ひより』をAI化しました。これは国内初の試みです。

    『茨ひより』は自然な感情表現やアニメーションができるキャラクターの再現されており、同県の魅力をより広く発信することが期待されています。

    参考:『日本初!自治体公認VtuberをAI化※Chat GPTとAI音声対話システムを連携した「AI茨ひより」がニコニコ超会議2023に登場』茨城県(2023年 4 月20 日)

    奈良県生駒市

    奈良県生駒市は、ChatGPTへの入力情報が二次利用されることを防止するために、LGWAN環境で利用できるプラットフォームを整備しました。LGWANとは、日本の地方公共団体の間で安全な情報通信を行うための専用ネットワークです。

    また、個人情報などの機密情報は取り扱わない方針を公表しています。同市では主に定型文書や挨拶文の作成、議事録の整備、誤字脱字のチェックにおいてChatGPTを取り入れています。

    参考:『ChatGPTの全庁的な実証実験をスタートします』奈良県生駒市(2023年8月31日)

    ChatGPT禁止から暫定利用に転じた自治体

    情報漏えいのリスクを懸念して以前はChatGPTの使用を禁止していた自治体も、最近では暫定的に利用を始めているようです。

    鳥取県

    鳥取県は2023年4月時点では、県職員のパソコンからChatGPTへのアクセスを禁止していました。しかし同年7月以降は、一部業務に限定したうえで暫定的な利用を許可しています。

    ただし、独自のガイドラインを設けており、その主な内容は以下の通りです。

    • 利用は主に事務作業の補助や情報収集に限定する
    • 収集した情報の根拠を確認する
    • 機密情報の入力を行わない

    今後は、ChatGPTの使用に関して職員の責任を明確にし、業務への効果を検証しながら、さらなる導入を検討していく方針を公表しています。

    参考:『鳥取県がChatGPT禁止 知事「民主主義の自殺」』日本経済新聞(2023年4月20日)
    参考:『鳥取県、庁内でChatGPT暫定利用へ』日本経済新聞(2023年7月19日)

    自治体がChatGPTを活用するメリット

    自治体がChatGPTを活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

    仕事の効率が上がる

    自治体の職員は文書作成や要約、情報検索において業務においてChatGPTを活用できます。繰り返される定型タスクを自動化し、時間と労力が節約されるでしょう。

    職員はより重要な業務に集中できるようになるため、行政全体の業務効率が上がる可能性が高まります。また、ChatGPTにアイデアを提供してもらうことで、新たな視点を取り入れた企画を立案できるかもしれません。

    住民満足度の向上が期待できる

    ChatGPTの導入により、自治体は市民からの問い合わせや要望に対して、より迅速に対応する体制を整えられます。ChatGPTの仕組みを活用すると、住民は自身の都合にあわせて夜間や早朝なども問い合わせが可能です。結果として効率的で柔軟なサービスが提供できるため、住民の満足度の向上が期待できるでしょう。

    多言語対応により幅広い住民に対応できる

    ChatGPTは複数の言語に対応しており、日本語以外の言語を使用する住民や外国からの訪問者への対応や文書発信にも活かせます。異なる言語圏や文化に対応できる可能性が高まり、住民サービスの質向上が期待できます。

    自治体のChatGPTを活用するデメリット・リスク

    自治体でChatGPTを活用する場合、デメリットやリスクも押さえておかなければなりません。

    個人情報・機密情報の漏えい

    ChatGPTは学習データから生成された情報をもとに応答するため、慎重に管理されていないと、機密情報や個人情報が漏えいする危険性があります。適切なセキュリティ対策が講じられないことで、悪意を持った第三者によるアクセスや情報の不正利用が発生する可能性があります。

    誤情報や差別的な回答

    ChatGPTは与えられた文脈に基づいて予測を行いますが、結果として不正確な情報を提供する場合もあります。特に専門的な知識や最新の情報については、誤情報が返ってくることも少なくありません。

    また、バイアスや差別的な傾向を反映する可能性も否定できません。住民に不利益な結果をもたらすことのないよう、回答の正確性を確かめましょう。

    対話理解への限界

    ChatGPTは過去の文脈を蓄積できないため、現段階で複雑な対話や長期にわたる議論の理解に限界があります。特定のトピックにおいて十分な詳細を把握できず、不完全な回答を提供することも理解しておきましょう。

    自治体のChatGPTを活用するポイント

    ChatGPTを適切に使用すれば、自治体業務の効率化が実現します。リスクを最小限にとどめ、上手に活用するためのポイントを紹介します。

    情報の正誤を判断する

    ChatGPTを活用するうえで重要なのは、生成された情報の正確性を確認することです。ChatGPTが提供する情報がすべて正確であるとは限りません。回答を検証し、正確性を確保するために専門家の協力を得るなどの手段を講じる必要があります。

    セキュリティ対策を徹底する

    ChatGPTを自治体で使用する場合は、セキュリティ対策が不可欠です。通信の暗号化やアクセス制御のほか、権限管理やログの監視も行い、漏えいや不正アクセスを防ぎましょう。扱う情報を限定し、個人情報を含む機密データの使用を制限することも重要です。

    自治体の職員に対しては、利用方法や安全性への理解を促すために、定期的な研修を実施することも対策の一つです。

    ガイドラインを作成する

    ChatGPTの利用についてガイドラインを策定します。ChatGPTの使用範囲、対応できるトピックや質問、セキュリティルールなどを具体的に定義しましょう。職員や利用者にガイドラインを徹底させ、適切な利用を促進することが大切です。

    ChatGPTの利用に関する独自のガイドラインを作成し、公開している自治体もあります。以下のガイドラインも参考にしてみてください。

    参考:『文章生成AI利活用ガイドライン Version 1.2』東京都デジタルサービス局
    参考:『chat GPT 等の生成 AI の利用ガイドライン 第 1.0 版』千葉県デジタル改革推進局デジタル推進課
    参考:『令和5年度戸田市 chat GPT に関する調査研究事業 自治体における chat GPT 等の生成 AI 活用ガイド(本編)』埼玉県戸田市

    利用者のフィードバックを収集する

    自治体職員や住民など、実際にChatGPTを利用した人からのフィードバックをもとに、改善することも大切です。誤った応答の内容やセキュリティ上の懸念などの情報を収集し、安心して活用できるような体制を整えましょう。

    まとめ

    業務効率化や住民満足度の向上のため、ChatGPTを導入する自治体は増えています。便利なChatGPTですが、機密情報の漏えいや誤情報の提供といったリスクも指摘されています。利活用を検討している自治体はルールを作成し、安全な利用環境を構築しましょう。

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