自治体に人事評価システムは導入すべき? メリットや失敗しない選び方をまとめ
地方自治体にも人事評価制度の導入が義務づけられ、人事評価業務の効率化が課題となっている公共機関も少なくありません。人事評価システムには自治体に特化したものもあり、より効率的に人事評価制度を運用したいと考えるなら、導入を検討してもよいでしょう。
本記事では自治体向け人事評価システムの基礎を詳しく解説します。導入によるメリットや注意点、導入自治体の事例などをヒントに、システム検討にお役立てください。
自治体向け人事評価システムとは
自治体向けの人事評価システムとは、法律にも配慮しつつ、自治体職員の人事評価を適正かつ効率的に行えるシステムです。各社サービス内容は異なりますが、一般的に次のようなことが実現できます。
- 自治体の人事評価に準拠した効果的な運用
- 評価過程や結果の可視化
- 評価工程の半自動化
- 庶務事務の電子化
- 評価シートのクラウド管理
経済産業省によるDX推進も相まって、近年は人事評価システムを導入する自治体も増えています。また、比較的安価に導入できるクラウド型のシステムの普及により、導入のハードルが下がったことも背景にあるでしょう。
自治体に人事評価システムは必要?
2016年に施行された法律により、地方公共団体でも人事評価制度導入が義務づけられました。
しかし、評価方法に満足している自治体職員は3割程度という調査もあるようです。一般的に「評価と報酬の関連性」「評価基準」などに不満を持つ職員も少なくありません。
このような現状も踏まえて、自治体は人事評価システムを導入し、公平性・透明性・納得感のある人事評価制度を運用する必要があるといえます。
自治体に人事評価システムを導入するメリット
自治体で人事評価システムを導入することで、具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは人事評価システムがもたらす効果を4つご紹介します。
必要な人材情報を迅速に検索できる
人事評価システムのメリットは、膨大な人材情報をデジタル化して一元管理し、必要な情報を素早く検索できることです。エクセルでは限界があった複雑な情報管理なども、システムを活用すれば、工数が削減できる場合があります。
人事評価にかかるコスト削減や業務効率化ができる
人事評価システムを導入すると、用紙や印刷に掛かっていたコストの削減につながります。紙の評価シートを管理している自治体にとっては、大きなメリットといえます。
評価はシステム上で完結し、評価シートの配布から集計までのワークフローは効率化されるでしょう。職員の目標管理や評価結果の入力、シートの受け渡しや管理、結果データの集計・分析にかかる手間や時間的コストも省略できるかもしれません。
人事評価制度の整備や人材育成に力を入れられる
人事評価システムを導入して自治体担当者の業務効率化が進めば、時間と労力に余裕が生まれます。そうすると、人事評価制度の整備や職員の適性など考慮した配置に取り組めるでしょう。
自治体向け人事評価システムに集約している人材情報をもとに、適材適所に人材を配置したり、スキルアップのための育成プログラムを策定したりすることができます。
職員のエンゲージメントが向上する
自治体での人事評価システムの導入は、職員の意欲の面でもメリットが期待できます。公平で透明性の高い人事評価を行いやすくなるので、自身の評価結果に対する納得感を得られやすくなるからです。
年功序列や定期人事異動が一般的な自治体職員であっても、適正に評価されてスキルや志向に合った異動が行われれば、エンゲージメント向上につながるでしょう。
自治体向け人事評価システムの選び方・比較ポイント
自治体向けの人事評価システムを導入しようと考えたとき、どこで何から調べればいいか、迷ってしまう方もいるかもしれません。複数のシステム候補を挙げられたとしても、どのような点が重要かわからない方もいるでしょう。
そこで、比較検討に役立つ自治体向け人事評価システムの7つの比較ポイントをご紹介します。
LGWANやISMAPを取得しているか
自治体向け人事評価システムを比較する際は、行政として信頼性を担保できるかをチェックしましょう。
LGWANやISMAPなど、政府が定めるセキュリティ要件を満たしたシステムであるか否かは重要なポイントといえます。
セキュリティ対策は十分か
LGWANやISMAPにも関連して、行政が扱うシステムとして強固なセキュリティ対策がされているかも重要なポイントです。
特に自治体の場合、情報漏えいによるリスクは甚大なものです。社会から大きなバッシングを受け流など、住民からの信頼を失うことにもつながりかねません。
人事評価システムを選ぶ際は、第三者機関のセキュリティ審査をクリアしている否か確認しましょう。さらに、多くの公共機関での導入実績があるかなども比較ポイントとなります。
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必要な機能、法律への対応
候補に上がっている人事評価システムが、自治体に適した機能が備わっているかチェックしましょう。法律に準拠しているかはもちろん、法改正への対応なども重要ポイントです。
また、新たな評価制度を独自に運用する場合や現在の運用をそのままシステムで再現したい場合など、自治体によっても実現イメージは異なります。人事評価システムによって何ができて、どこまで効率化が進むのかよく確認するのも大切です。
操作は簡単か
人事評価システムは、誰でも悩まず直感的に操作できるものをおすすめいたします。操作が複雑だと限られた人しか使いこなせず、導入しても誰も使われていないという状況になりかねません。
導入や構築が運用開始に間に合うか
自治体で人事評価システムを導入する場合、あらかじめ予算が組まれ、運用開始時期が決められているケースがあります。想定スケジュールに間に合うのか、あるいは間に合うようにサポートが充実しているのかよく確認しましょう。
導入コスト、カスタマイズ費用
自治体では計画的に予算が組まれますので、その範囲内に抑えることが求められるでしょう。
人事評価システムは大きく分けると、クラウド型とオンプレミス型があります。それぞれ利点はありますが、導入にかかる費用は異なります。できるだけ初期費用を抑えたいのであればクラウド型が適しているといえます。
ただし、カスタマイズしたい場合はが適していますが、クラウド型と比べると導入コストがかかります。
自治体職員の場合、法改正などによりカスタマイズが必要になる場合もあるでしょう。比較的カスタマイズの自由度が高いのは、オンプレミス型です。ただし、クラウド型より導入コストがかかる場合が多いので注意しましょう。
サポート範囲
初めて自治体で人事評価システムを導入する場合は特に、サポート範囲は重要なポイントです。
・構築から運用までどの範囲までサポートしてもらえるのか
・サポートはどの範囲まで無料で、どこから有料なのか
・サポートサイトの充実度
などを確認しておきましょう。
自治体向け人事評価システム導入の注意点・ポイント
自治体に人事評価システムを導入するにあたって、注意すべき点や押さえておきたいポイントを5つご紹介します。
人事評価制度の目的やルールを明確にしておく
自治体に人事評価制度を導入する前に、最低限目的やルールを明確にしておく必要があります。地方自治体に人事評価制度の導入が義務づけられてから、独自の制度設計を行う事例も増えてきました。それらを参考に、新たに設計してもいいかもしれません。
人事評価システムによる運用を周知する
人事評価システムの導入や運用方法を職員に周知しておくことも大切です。自治体全体に得られる効果やメリットも共有し、疑問点などにも対応できる窓口を用意しておくのもいいかもしれません。
人事評価制度の運用に必要な機能を確認する
比較ポイントとしてもご紹介しましたが、自治体に必要な機能を明確にする必要があります。民間企業では、MBO(目標管理制度)や360度評価という評価手法に沿って、人事評価システムを活用しているところもあります。
各社比較し無料トライアルなども利用しながら、必要な機能を検討するといいかもしれません。検討中に実現イメージがわいてくる可能性もあります。
システム導入による評価基準や運用の変更は最小限にする
人事評価システム導入を機に、評価基準を大幅に変更するのは、あまりおすすめしません。運用に混乱が生じ、公平性の観点から職員から不満が生まれる可能性があるからです。特に給与や報酬、昇進・昇格に影響がある場合は、注意が必要です。
システム導入を機に新制度を導入する場合は、長期的に時間をかけて移行するといいでしょう。
システムを活用できるような体制を整える
人事評価システムが自治体に定着するよう、マニュアル作成や導入研修を行います。多くの自治体は、導入だけが目的ではなく、人事評価の効率化や職員を適正に評価することを目指しているはずです。
運用について事前に想定し、あらゆる対策を打っておくと混乱が少ないでしょう。自治体内にサポート窓口を設けるなども一案です。今後蓄積していくデータを、異動の判断材料や報酬などの待遇に活かしていけるようにしましょう。
導入するシステムのタイプをチェックする
人事評価システムには大きく分けてクラウド型とオンプレミス型があります。クラウド型は端末とネットワーク環境があれば、どこにいても使用できます。導入までにかかる時間も比較的短く、運用開始まで時間がない自治体に向いているといえます。
オンプレミス型は、新たにサーバーを設置するなど初期コストがかかりますが、カスタマイズ性に優れているというメリットもあります。目的や運用する人事評価制度に適したものを明確にしておくことが大切です。
自治体に人事評価システムを導入した事例
実際に人事評価システムを導入し、人事制度の刷新を行った3自治体の事例をご紹介します。
香川県善通寺市の例
香川県善通寺市は、かつて紙ベースによる人事評価を行っていました。当時は管理者が20名以上の職員を評価することもあり、必要な用紙の配布や回収に2週間、チェック作業に2日間もの工数がかかっていました。
法改正を機に人事システムを導入した善通寺市は、時間と労力の大幅削減に成功したそうです。さらに評価者の評価傾向の分析を行い、評価の公平性を高めることにも取り組んでいます。その結果、職員の評価に対する納得感が高まったそうです。
参考:『【善通寺市】公務員に人事評価システムを導入し職員の能力を活かす(人事評価導入の事例)』自治体通信
大阪府寝屋川市
大阪府寝屋川市では、2010年度より人事評価制度を実施しています。その目的は、頑張れば報われる職場環境づくり、人事評価に対する公平・公正性の向上、人材育成の3点です。
具体的には、360度評価や実績評価・能力評価・スキルアップ加点・貢献加点などを取り入れました。
これにより評価の納得感を高められ、職員のモチベーション向上につながっています。人材育成、人事異動、ボーナスなどにも活用できているそうです。
鳥取県
鳥取県では、2015年度に人材育成を目的として、人事評価制度を見直します。自己評価や評価結果の本人開示、評価者研修の実施、苦情相談体制の整備などを行い、人事評価のシステム化を実現しました。
評価結果など人材情報の蓄積し、面談などにも活用できているそうです。さらに、人事評価システムを給与システムと連携し、査定昇給や勤怠管理などの業務効率化を進め、人件費も削減できました。
参考:『鳥取県の人事評価制度』
自治体向け人事評価システムOne人事[Publicタレントマネジメント]
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まとめ
民間企業のみならず、自治体においても、人事評価業務の効率化や制度の見直しは課題となっています。人事評価システムを導入することで、時間や労力、コストの削減が期待できます。より円滑に、より公平な人事評価を実施するためにも、自治体においても人事評価システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。