勤怠管理の電子化とは? ペーパーレス化や導入のメリット、タイミング、注意点を解説
勤怠管理の効率を上げるために、勤怠管理システムを導入している企業は多いのではないでしょうか。法改正や働き方改革のタイミングで、勤怠管理を電子化すると業務効率化につながります。
本記事では勤怠管理を電子化するタイミングやメリット・デメリットについて解説します。人事担当者や経営者は参考にしてください。
勤怠管理の電子化とは
勤怠管理の電子化について以下の項目で解説します。
- 勤怠管理のペーパーレス化
- 勤怠管理システムの導入
- 勤怠管理の電子化を検討するタイミング
勤怠管理のペーパーレス化
勤怠管理のペーパーレス化とは、タイムカードや出勤簿などの用紙や有給休暇の申請書類をなくすことを意味します。勤怠管理システムの導入で、年々ペーパーレス化が進んでいます。
また、タイムカードや出勤簿など、紙媒体での勤怠管理は集計作業が必要です。従業員数が多いと集計業務に膨大な時間を要します。勤怠管理システムの導入で効率的な業務が行えるでしょう。
勤怠管理システムの導入
勤怠管理を電子システムで行うことで、従業員の勤務状況をリアルタイムで確認できます。紙のタイムカードや出勤簿とは異なり、インターネットにつながった端末を使って、いつでも外出先でも利用可能です。すでに導入している企業や導入を検討している企業は多いでしょう。
勤怠管理の電子化を検討するタイミング
勤怠管理の電子化は、一般的に次のようなタイミングで行われます。
- 従業員が増えたとき
- 勤怠管理のルールが変更・追加されたとき
- 法改正により労務管理の取り組みが強化されたとき
従業員数が多くなるほど労働時間の集計にかかる時間は増えるため、電子化した方が効率的といえます。特に直行直帰やテレワークなどさまざまな働き方に対応するには、紙での勤怠管理が難しいことがあるためシステムの導入が求められます。
客観的な記録による労働時間の把握の義務化
2019年4月から労働安全衛生法が改正・施行され、客観的な方法で出退勤時刻や入退室時刻を記録することが義務づけられています。
客観的な方法とは、タイムカードの出退勤記録やパソコンの使用時間などの情報です。手書きで記入する出勤簿は改ざんされる可能性があるため、客観的記録とみなされません。
主な勤怠管理サービス4種類
勤怠管理が行える主なサービスは以下の4つです。
- タイムレコーダー型
- クラウド型
- オンプレミス型
- タブレット型
順番に解説します。
1.タイムレコーダー型
タイムレコーダー型の勤怠管理サービスは、従来の紙のタイムカードを電子化した形式です。比較的シンプルで導入しやすく、打刻方法には指紋認証やICカードなどの種類があります。
勤怠データは簡単に抽出できるため、データ管理や分析が容易であり、特に小規模な企業やコストを抑えたい企業に適しています。
2.クラウド型
クラウド型勤怠管理システムは、インターネットを介してサービスを提供する形式で、月額や年額の契約で利用します。インターネット接続があれば、どの端末からでもアクセス可能であり、リモートワークや多拠点での業務に対応しやすいです。
また、比較的低コストで導入できるという特徴があります。
3.オンプレミス型
オンプレミス型は、自社のサーバーに勤怠管理システムを構築する方法です。初期投資は高いですが、データの保管と管理を自社でコントロールできるため、セキュリティが重視される大企業や特定の業界に適しています。
また、システムのカスタマイズも比較的柔軟にできるため、特定の業務要件や複雑な勤怠ルールに対応する必要がある企業にも適しています。
4.タブレット端末型
タブレット端末型の勤怠管理システムは、タブレットを利用して勤怠管理アプリを運用する方法です。一定の条件下で一部無料で利用できるサービスもあります。比較的低コストで導入でき、打刻時に顔写真を撮影する機能もあり、従業員の本人確認を強化できます。
特に、直接的な従業員の監視が必要な業務現場や、顔認証によるセキュリティ強化を求める企業に適しています。
勤怠管理を電子化するメリット
なぜ勤怠管理を電子化が求められているのでしょうか。電子化による主なメリットは以下の2つです。
- 集計作業の負担・ミスを削減できる
- リアルタイムで労働時間を把握・管理できる
順番に解説します。
集計作業の負担・ミスを削減できる
勤怠管理の電子化システムには自動計算機能が備わっており、労働時間や残業時間の集計が自動的に行われます。人手による計算と異なり、自動化された集計はミスが発生しにくく、より正確な業務を遂行できます。
また、データの修正もシステム上で簡単に行えるため、誤りがあった場合も迅速に対応できるでしょう。なかには給与計算ソフトと連携が可能なサービスもあり、集計から計算までの業務がスムーズになり、全体的な業務効率が向上します。
リアルタイムで労働時間を把握・管理できる
勤怠管理の電子化により、従業員の労働時間をリアルタイムに把握できます。一部の従業員に負担をかけすぎていないか、残業がまん延している部署がないか、長時間労働の実態を確認できるのです。
過剰な残業が常態化している場合、業務の再配分や労働環境の改善のために施策を検討できるでしょう。法定労働時間の遵守するとともに、従業員のワークライフバランスを保てるため、結果的に従業員満足度の向上にもつながります。
勤怠管理を電子化するデメリット
勤怠管理の電子化はメリットがある一方でデメリットもあります。主なデメリットは以下の3つです。
- 従業員によっては受け入れにくい
- 導入時に時間と手間がかかる
- 導入と運用にコストがかかる
順番に解説します。
従業員によっては受け入れにくい
新しい勤怠管理システムに対して、従来の方法に慣れている従業員は適応するまで時間を要することがあります。管理画面が複雑であったり、直感的でない操作方法であったりすると、システムを十分に活用するのが難しくなります。
従業員からの不満が出る前に研修を実施し、マニュアルも作成しておきましょう。
導入時に時間と手間がかかる
勤怠管理システムの運用を開始する前に、既存の就業ルールをシステムに反映させる作業が発生します。紙のタイムカードを使用している企業は、特に時間と手間がかかるかもしれません。これまでの就業ルールを詳細に洗い出し、システムに適切に反映させる必要があります。
導入と運用にコストがかかる
勤怠管理の電子化には初期費用がかかり、また運用にも月額または年額のコストが発生します。タイムカードなど紙の運用と比較して、月々のコストが増加する可能性があるのはデメリットです。
ただし長期的に見ると、手作業での集計業務が不要になるため、その時間をコア業務に充てることができ、効率化によるコスト削減が期待できます。
勤怠管理システムの目安費用
勤怠管理を電子化する場合、実際にどれほどの費用がかかるのでしょうか。費用の目安について、システムの種類ごとに解説します。
【クラウド型】初期費用が安い
クラウド型の勤怠管理システムは、比較的初期費用が抑えられるといわれています。料金の相場は以下の通りです。
金額(目安) | |
---|---|
初期費用 | 0〜50万円 |
維持費用(月額費用) | 100〜500円/人 |
導入時必要なサービスは企業によって異なりますが、ライセンス発行料やシステムの導入移行サポート料が発生すると覚えておきましょう。日常的に個人専用のパソコンを使用していない病院などの職場では、専用デバイスの購入も検討する必要があります。
多くの場合、月額費用は従業員数による従量課金制であり、サーバーの保守や管理はサービスの提供元が行います。
【オンプレミス型】導入後の費用が固定
オンプレミス型は、自社の運用にあわせてカスタマイズしやすく、自由度が高いため、従業員数が多い企業に適しています。価格の相場は以下の通りです。
金額 | できること | |
---|---|---|
初期費用 | 30〜150万円 | ・サーバー設置 ・パッケージ購入 ・システム構築 ・システムインストール |
維持費用(月額費用) | 30〜50万円 |
主な初期費用は、サーバー設置費用です。そのほかにもパッケージ購入費やシステム構築とインストール料が発生すると覚えておきましょう。
オンプレミス型は従業員数が増えてもランニングコスト(維持費用)は上がりにくいのが特徴です。維持費用としてはサーバー保守運用のためのエンジニアの人件費が考えられます。
勤怠管理を電子化する際の注意点
勤怠管理を電子化する際はどのようなことに気をつければいいでしょうか。主な注意点は以下の3つです。
- 自社の雇用形態や職場環境に合うシステムを選ぶ
- 従業員に導入のメリットをしっかり理解してもらう
- 勤怠管理システムのカバー範囲を決める
順番に解説します。
自社の雇用形態や職場環境に合うシステムを選ぶ
自社の特定の状況にあわせた勤怠管理システムを選びましょう。
たとえば、フルタイムやパートタイム、リモートワークなど異なる勤務形態の従業員がいる場合、それぞれのニーズに対応しなければなりません。
特にテレワークが多い部署では、オンラインでの打刻やリモートアクセスが可能なシステムが適しています。従業員の勤務状況を正確に把握し、効率的な勤怠管理を実現しましょう。
従業員に導入メリットをしっかり理解してもらう
新しい勤怠管理システムの導入に際しては、従業員にメリットを伝え、必要性を理解してもらうことが重要です。従来のやり方に慣れている従業員の中には、新システムへの移行を不便に感じる人もいるでしょう。
マニュアルを作成したり、導入後にフォローしたりすることで、スムーズな移行を促進し、従業員の不安を軽減できる可能性があります。
勤怠管理システムでカバーする範囲を決める
導入する勤怠管理システムがカバーする範囲を明確に決めましょう。具体的には、すでに使用している給与計算ソフトや人事管理システムとの連携を確認します。
また、自社の業務フローにあわせて、システムがスムーズに機能するかも検証しておきます。勤怠管理の精度を高め、社内全体の業務を最適化するためにも重要なチェックポイントです。
まとめ
勤怠管理システムの電子化は、紙の記録から脱却し、デジタルへの移行を意味します。ペーパーレス化により、従業員の出退勤時間の記録、休憩や残業の管理が自動化されるため、手作業による時間の記録や集計から解放されます。
導入初期には従業員への説明が必要ですが、長期的に見ると、労働時間の正確な管理と人事・給与計算の効率化が実現するでしょう。勤怠管理の精度を高め、管理業務を効率化したい企業は検討してみてください。
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