パートやアルバイトの有給休暇をわかりやすく解説! 取得条件や付与日数と賃金の計算方法
有給休暇は、正規雇用やパートタイム・アルバイトという雇用形態にかかわらず取得できます。しかし、従業員がフルタイム勤務の場合とそうでない場合で、有給休暇の取り扱いがどのように異なるのか、整理できていない担当者もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、有給休暇の概要からパート・アルバイトの付与日数と給与の計算方法、法改正の内容、企業の注意点まで詳しく解説します。企業で勤怠管理を担当している人は、ぜひ参考にしてください。
有給休暇はパート・アルバイトも取得できる
有給休暇は、雇用形態にかかわらず、一定条件を満たすすべての従業員に与えられます。正規雇用の従業員だけでなく、パートやアルバイトも取得が可能です。
有給休暇が付与される条件
従業員が有給休暇を取得するためには、以下の2つの条件を満たす必要があります。
- 半年間継続的に雇用されている
- 全労働日の8割以上出勤している
参照:『事業主の方へ|年次有給休暇取得促進特設サイト』厚生労働省
全労働日とは、労働契約上、労働が義務づけられている日です。具体的には、就業規則などで定められた休日以外の日を数えます。
つまり、雇用後半年が経過した時点で、全労働日数が120日の場合、「120×0.8=96」日以上出勤していれば有給休暇が発生します。
パート・アルバイトの有給休暇付与日数と計算方法
雇用形態ごとの有給休暇の付与日数と、具体的な計算方法を解説します。
以下のポイントに注意しながら確認しましょう。
- 勤続年数によって変動する
- 雇用形態にかかわらず同じ日数が付与される
- 週の所定労働日数や所定労働時間によっては付与日数が変動する
フルタイム勤務の場合
所定労働時間が週30時間以上または所定労働日数が週5日以上の場合は、雇用から6か月が経過した時点で年間10日分の有給休暇が付与されます。
また、付与日数は勤続年数に応じて勤続1年半で年間11日分、2年半で12日分と増加し、勤続6年半以上になると年間20日が与えられます。
もちろん「全労働日の8割以上出勤している」という条件も必須です。
有給休暇の付与日数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
勤続年数 | 6か月 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 |
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
出典:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省
週4日以下勤務の場合
週の所定労働時間が30時間未満かつ週の所定労働日数が4日以下の場合は、フルタイム勤務よりも有給休暇の日数が減少します。
具体的には、週の所定労働日数に応じて有給休暇を付与する「比例付与」により、以下の通り変動します。
週の所定労働日数 | 年間の所定労働日数 | 勤続年数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
6か月 | 1年半 | 2年半 | 3年半 | 4年半 | 5年半 | 6年半以上 | |||
付与日数 | 4日 | 169~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
3日 | 121~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | |
1日 | 48~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
週の所定労働日数の決まりがない場合は、直近6か月間の労働日数の2倍、または前年の労働日数を基準として所定労働日数を算出します。
フルタイム勤務の場合と同様に、有給休暇を付与するには従業員の出勤率(出勤日数÷全労働日)が8割以上でなければなりません。
参照:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省
有給休暇を取得したパート・アルバイトの賃金の計算方法
有給休暇を取得したパートタイム・アルバイトの賃金を計算するには、3つの方法があります。
- 通常の賃金から計算する
- 平均賃金から計算する
- 標準報酬日額から計算する
それぞれの計算方法について、詳しく解説しましょう。
通常の賃金から計算する
所定労働時間や所定労働日数が決まっている場合は、通常支給される賃金額をもとに算出します。パートタイム・アルバイトは時給制が多いため、有給休暇を取得した場合の賃金額は「所定労働時間×時給」で計算が可能です。
たとえば、時給1,200円で所定労働時間が4時間の場合は、以下の通り計算します。
1,200円×4時間=4,800円 |
平均賃金から計算する
労働時間や労働日数に変動がある場合は、直近3か月の実績から計算しましょう。なお、賃金が時間額や日額、出来高給などの場合には平均賃金の最低保障規定があります。具体的には、以下のうち金額が高い方を採用します。
- 直近3か月の給与総額÷勤務日数
- 直近3か月の給与総額÷実労働日数×60%
具体例として、直近3か月の給与総額が330,000円、勤務日数が60日、実労働日数が55日の場合を計算してみましょう。それぞれの式に当てはめると、計算結果は以下の通りです。
- 直近3か月の給与総額÷勤務日数=5,500円
- 直近3か月の給与総額÷実労働日数×60%=3,600円
この例では、1の金額の方が高いため、5,500円を支給します。
標準報酬日額から計算する
アルバイトやパートタイム労働者が健康保険に加入している場合は、標準報酬日額から計算する方法もあります。
ただし、ほかの2つの方法と比べて金額が低くなる可能性があり、労使協定の締結が必須です。標準報酬日額から計算する方法は、従業員にとって不利になるリスクをともなうため、きちんと同意を得る必要があるのです。
標準報酬日額は「標準報酬月額÷30」の式で計算します。標準報酬月額とは、基本給や手当など従業員に支給した給与を1〜50の等級(厚生年金保険は1~32の等級)で区分したものです。
アルバイトやパートタイムの標準報酬月額は、その年の4~6月における支払基礎日数(給与の支払い対象の日数)に応じて、以下の通り変動します。
支払基礎日数 | 標準報酬月額の決定方法 |
---|---|
3か月とも支払基礎日数が17日以上ある場合 | 3か月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3か月のうち支払基礎日数が17日以上ある月が1か月でもある場合 | 17日以上の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3か月とも支払基礎日数が15日以上17日未満の場合 | 3か月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
支払基礎日数が15日以上17日未満の月が1か月または2か月ある場合(ただし、17日以上ある月が1か月以上ある場合は除く) | 15日以上17日未満の月の報酬月額の平均額をもとに決定 |
3か月とも支払基礎日数が15日未満の場合 | 従前の標準報酬月額で決定 |
たとえば3か月間の支払基礎日数が「4月は15日、5月は16日、6月は16日」という内訳なら、3か月とも15日以上17日未満なので、3か月の報酬月額の平均額をもとに決定します。
最低5日間の有給休暇取得が義務化
2019年4月の労働基準法改正により、従業員に年間5日以上の有給休暇を取得させることが義務化されました。
有給休暇取得率の改善を目的に施行され、事業規模にかかわらずすべての企業に義務づけられています。違反すると未達成の従業員1人あたり当たり30万以下の罰金が科せられる恐れもあるため、注意が必要です。
また、この法改正では、有給休暇の取得が特定の時期に集中するのを防ぐため「有給休暇の取得時期を事前に指定すること」という内容も盛り込まれました。
参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』厚生労働省
有給休暇の取得義務化の対象者
年5日以上の有給取得が義務化されるのは、年間10日以上の有給休暇を付与される従業員です。アルバイトやパートタイムなどの雇用形態に関係なく、すべての従業員を対象とします。
所定労働時間が週30時間以上・所定労働日数が週5日以上の場合は、有給休暇が付与された時点で年間10日以上であるため、フルタイム勤務はすべての従業員が対象と考えてよいでしょう。
また、週の所定労働時間が30時間未満かつ週の所定労働日数が4日以下でも、勤続年数に応じて年間10日以上の有給休暇が付与されます。たとえば、週の所定労働日数が4日のパートタイム従業員は、勤務歴が3年半以上であれば義務化の対象です。
有給休暇管理簿の作成・保存の義務
企業は、従業員の有給休暇の取得状況を正しく把握するため、従業員ごとに「年次有給休暇管理簿」を作成する必要があります。
年次有給休暇管理簿とは、「誰が・いつ・何日分の有給休暇を取得したのか」を管理する書類です。一人ひとりの取得状況を記録することで、年5日の有給休暇を確実に取得しているかを確認できます。
また、ただ作成するだけでなく適切に保存することも重要です。5年間(経過措置により当面3年間)の保存が義務づけられています。
参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』厚生労働省
パート・アルバイトが有給休暇を取得する際の注意点
有給休暇の取得は従業員の権利ですが、なんらかの事情により有給休暇の承認が困難な状況もあるでしょう。
従業員からの申請に対して時季変更権を行使する場合や、従業員から有給休暇の買い取りを希望された場合は、以下のように対処します。
企業が時季変更権を使うとき
従業員からの有給休暇の取得申請に対して、企業側の判断で取得日を変更できる権利を時季変更権といいます。
通常、有給休暇の取得日は従業員の希望に沿って決定するものです。しかし、取得申請が集中しやすい時期や繁忙期などにすべての申請を承認すると、深刻な人手不足に陥る恐れもあります。
そこで、企業運営が妨げられるようなやむを得ない事情がある場合に限り、企業が有給休暇の取得日を変更させられるのです。
ただし、時季変更権の行使理由が解消された時点で、従業員の要望に合わせて速やかに有給休暇を取得させなければなりません。また、トラブルを防止するため、有給休暇の取得を控えてほしい場合は、事前に通達するのがおすすめです。
有給休暇の買い取り申請があったとき
有給休暇の買い取りは原則として認められません。しかし、有給休暇が時効により消滅した場合などは、買い取りが認められることがあります。企業が余っている有給休暇を買い取った場合、その分の金額を賞与に上乗せする方法で支給します。
ただし、有給休暇はあくまでも従業員に十分な休息を与えるための制度です。あらかじめ買い取りを約束するなどの行為は、制度の趣旨に反するとして認められないため、十分に注意しましょう。
有給休暇はパートやアルバイトも取得可能
有給休暇は、雇用形態にかかわらずパートタイムやアルバイト、契約社員などの有期雇用労働者も取得が可能です。
また、労働基準法改正により、2019年からは年5日以上の有給休暇取得が義務化されました。対象の従業員が年5日以上の有給休暇を取得できなかった場合、責任を負うのは企業側です。
しかし、有給休暇の付与日数や給与は従業員によって異なるため、取得状況の管理や給与計算は複雑になりがちです。有給休暇の管理を効率化するなら、勤怠システムの導入を検討するのも一つの方法です。
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